国循×天理×ACHD,納得の一冊として推薦します!
『国循・天理よろづ印』の名を冠したシリーズ第2弾,『症例とエコー×イラストで学ぶ 成人先天性心疾患』は,初作『心エコー読影ドリル』をさらに発展・深化させた一冊です.「国立循環器病研究センター」と「天理よろづ相談所病院」という,わが国を代表する二つの施設の叡智が融合し,相乗効果によって誕生した書籍といえます.
国立循環器病研究センター(国循)は,日本で2番目のナショナルセンターとして1977年に設立され,先天性心疾患を含む循環器疾患の克服に取り組んできました.一方の天理よろづ相談所病院(天理)は,1966年に奈良県で開院し,翌年には年間100例を超える体外循環手術を達成.黎明期には心房中隔欠損症や心室中隔欠損症が多く,後にファロー四徴症,大血管転位,総動脈幹,単心室などの複雑症例も増加しました.小児循環器領域の田村時緒先生らの尽力により,天理は全国から先天性心疾患患者が集う拠点として発展しました(p.49コラム参照).そして小児期に手術を受けた患者たちが成人へと成長し,現在も同院でフォローを受けている─この歴史の積み重ねこそが,「成人先天性心疾患」という分野の成熟を象徴しています.
本書の中心的執筆者である泉知里先生は,まさにこの二つの施設で医師人生の大半を過ごし,臨床と教育の最前線で研鑽を積んでこられました.成人先天性心疾患の診療・教育の双方を牽引してきた泉先生が,症例の息づかいをそのままにまとめ上げたのが本書です.特にQRコードを通じて動画を何度でも視聴できる構成は,実際の症例カンファレンスを超える教育効果をもたらします.読者はまるでその場に参加しているかのように,討論の臨場感と知的興奮を味わうことができます.
第2章の症例カンファレンスは,臨床現場の息づかいを感じるような臨場感に満ち,読み進めるうちに自然と引き込まれます.冒頭の第1章(大内秀雄先生)はわずか8ページながら,成人先天性心疾患の基礎知識が凝縮された充実の内容で,第2章の軽妙で熱気あふれる展開を絶妙に引き締めています.さらに随所に配置されたコラムは,著者陣の情熱がほとばしるようで,読む者にエネルギーを与えてくれる“栄養ドリンク”のような存在です.
本書は心エコーを学ぶ医師・技師にとって有益であるのはもちろん,「先天性心疾患は難しいな」と思っている読者にこそ,新たな視点をもたらしてくれるはずです.成人先天性心疾患の奥深さと魅力を再発見させてくれる,まさに読む価値のある一冊です.自信を持って推薦いたします.

●B5/頁152/2025年
定価:7,920円
(本体7,200円+税10%)
[ISBN978-4-260-06220-6]
医学書院 刊