Point
●治療薬物モニタリング(TDM)は薬物の血中濃度を測定し,その結果を参考に個別最適な投与を行う手法.
●血中濃度測定には迅速なフィードバックが重要で,精度管理も必須.
●TDM実施で診療報酬が算定可能な場合があり,そのためには評価記録が必要.
はじめに
治療薬物モニタリング(therapeutic drug monitoring: TDM)とは,薬の効果や副作用の指標として,薬物の血中濃度やさまざまなバイオマーカーを測定し, 薬物動態学(pharmacokinetics:PK)と薬力学(pharmacodynamics:PD)の情報に基づいて,患者ごとに最適と考えられる投与方法を提供することで,薬物治療を最適(個別)化する手法です.医療現場でコンサルテーションサービスが始まったのは1970年代半ばごろであり,Nooneらは1974年に,がん患者や術後患者68例を対象に,アミノグリコシド系薬(aminoglycosides:AGs)の血中濃度を良好にコントロールできた群では,経過が良好であったことを報告しています1).また,近年ではTDMを実施する際に考慮すべき分野として,ゲノム薬理学(pharmacogenetics)が挙げられます.この分野は,PKやPDの情報に加えて,薬物反応の個人差に影響を与える遺伝的要因を研究するものです.ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction:PCR)技術などの進歩により,一塩基多型(single nucleotide polymorphism:SNP)などの遺伝的検査が臨床でも活用されるようになっています.
本稿では,感染症診療に焦点を当て,TDM時のポイントを解説します.