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検査と技術 54巻4号 (2026年4月発行)
書評
マイスター直伝! 「心電図」が「臨床」とつながる本
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瀬古 征志 1
1主体会病院総合リハビリテーションセンター
pp.459 , 発行年月 2026年4月

“自分だけの一冊”に作り上げる最高のパートナー

 近年,心電図検定が大ブームとなり,心電図関連の教科書や問題集が数多く出版されています.興味を持って勉強を始めたものの,難解な波形にぶつかったり,成果が実感できなかったりして挫折した方も多いのではないでしょうか.私もその一人でした.最初はワクワクしていたはずの心電図学習が,いつの間にか負担に感じる時期もありました.
 そんな方にぜひ手に取っていただきたいのが,本書です.
 私は理学療法士で,医師や臨床検査技師ほど日常的に心電図を読む機会は多くありません.しかし,心疾患患者の運動療法では,(1)心ポンプ能,(2)心筋虚血リスク,(3)不整脈リスクの評価が不可欠です.このうち(2)(3)の評価には一定の判読力が求められます.また,過去の心筋梗塞や肺高血圧など,介入前に把握すべき病態を知るためにも心電図の知識は欠かせません.読めるようになると評価の選択肢が増え,より安全で効果的なリハビリテーションを提供できると実感しています.
 本書の最大の魅力は,心電図マイスターである松永圭司先生が「薬剤師時代の自分でもわかるように」と書かれた平易な文章です.講義やSNSで人気の内容を厳選し,惜しみなく公開されています.
 構成も初学者に優しく,0章では「心電図の勉強を始める前に知っておいてほしいこと」がまとめられています.「何のために心電図を見るのか」を再確認でき,見落としを防ぐ思考法や,松永先生の実践的な判読手順が詳しく解説されています.
 1章以降は本格的な内容に入りますが,「楽しく,もっと知りたい」と思える順序が意識されています.誰もがつまずく心臓の解剖や興奮伝導は,豊富な写真とイラストで視覚的に理解可能です.その後の不整脈・波形異常の解説も,先生の経験談や文献に基づき,まるで隣で教えてもらっているような親しみやすさです.
 実践的テクニックも満載で,「QRS波やT波に隠れたP波の探し方」「AFとAFLの見分け方」など,すぐに現場で使えるコツが学べます.また「安全と思われがちな疾患の落とし穴」など,目からウロコの知識も豊富です.
 特に印象的だったのは,タイトルにも込められたメッセージ─「臨床とつながる」には「人とつながる」ことも含まれる─という言葉です.心電図をきっかけに他職種とコミュニケーションを取ったり,一緒に勉強する仲間が増えたりすれば,異常波形の発見率が上がり,患者さんの予後改善につながります.
 ページをめくるたびに心電図の意義と楽しさを再発見させてくれる本書は,初心者から中級者まで,全ての人に新たな気付きを与えてくれる必読の一冊です.心電図学習に行き詰まっている方は,ぜひ手に取ってみてください.きっとまた「読みたい」気持ちが蘇ります!


●A5/頁168/2025年
 定価:3,300円
 (本体3,000円+税10%)
 [ISBN978-4-260-06244-2]
 医学書院 刊

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