理学療法ジャーナル 59巻 11号 (2025年11月発行)

特集 Common diseaseとしての高齢者肺炎

電子版ISSN:1882-1359
印刷版ISSN:0915-0552
印刷版発行年月:2025年11月
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特集 Common diseaseとしての高齢者肺炎

EOI(essences of the issue)

59巻11号 , 2025年11月 , pp.1282-1283
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 肺炎は高齢者で致死的かつ再発・重症化しやすいcommon diseaseであり,日本の死亡原因5位に位置します.高齢者では呼吸,嚥下,ADL,認知機能など全身的な対応と同時進行で再発予防対策も求められます.肺炎は理学療法の「中止基準」ではなく「積極的適応」であり,急性期から呼吸理学療法や早期離床,予防介入を進める必要があります.本特集では肺炎の基礎から最新の治療・管理,理学療法と関連ケアを整理し,医療,介護や在宅の現場で実践に役立つヒントを提示します.

肺炎の基礎知識

59巻11号 , 2025年11月 , pp.1284-1288
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Point

●肺炎死亡の大半は高齢者であり,高齢化の進行とともに対策の重要性が増している

●A-DROPスコアで重症度を評価し,治療の場と抗菌薬選択を適切に決定する

●高齢者肺炎の診療ではアドバンス・ケア・プランニングに基づく意思決定支援が不可欠である

誤嚥性肺炎と医療・介護関連肺炎

59巻11号 , 2025年11月 , pp.1289-1294
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Point

●2011年に本邦で提唱された医療・介護関連肺炎(nursing and healthcare associated pneumonia:NHCAP)であるが,もととなったHCAPという概念は,2016年に米国胸部疾患学会で消滅し,最近ではaspiration community-acquired pneumonia(ACAP)が提唱され始めた.2008年の本邦の調査によると,CAPの約6割は誤嚥由来である

●NHCAPの臨床像やリスク因子は,肺炎サルコペニアをキーとした誤嚥性肺炎の病態時間軸という概念で,ほぼ捉えることができる

●誤嚥性肺炎の病態時間軸は,例えば,経口摂取の推進か否かなど,アプローチ方法を決めたり今後の予後を示唆したりする「道しるべ」になる

高齢肺炎患者のアセスメント

59巻11号 , 2025年11月 , pp.1295-1300
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Point

●誤嚥性肺炎は発症を繰り返すリスクが高いため,リスク因子の把握など予後を見据えたアセスメントが重要である

●高齢者肺炎では,肺炎の典型的な症状が現れにくいという特性があるため,日頃からバイタルサインを把握しておくことで,重症化を予防する早期発見のアセスメントへつながる

●運動機能や摂食・嚥下機能だけでなく,退院後の社会的なサポートなども見据えた多面的なアセスメントが必要である

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Point

●高齢肺炎患者は早期離床が重要であり,可能な限り速やかに離床を進めていく

●気道クリアランス能力が低下している患者が多く,患者個々に合わせて手技を選択し実施する

●臥床傾向に陥りやすいため,理学療法のみならず多職種との密な連携と継続的な介入が重要である

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Point

●高齢者肺炎には摂食嚥下障害と低栄養が複合的に影響する

●安全な摂食練習(safe swallow)が嚥下機能回復と再発予防の鍵である

●理学療法士は呼吸リハビリテーションと多職種連携の要として貢献できる

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Point

●高齢者肺炎により機能・生命予後ともに悪化しやすい

●高齢者肺炎における入院関連機能障害には多くの因子が関連するため,各症例に応じた詳細なアセスメントが必要となる

●高齢者肺炎の入院関連機能障害を予防するためには,早期からの呼吸理学療法だけでなく多職種で情報共有を行い,介入戦略を適宜立案することが必要不可欠である

肺炎の予防,再発予防

59巻11号 , 2025年11月 , pp.1319-1324
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Point

●適切な栄養管理による免疫機能維持と,専門的口腔ケアを通じた肺炎リスクの低減が高齢肺炎の再発予防において不可欠である

●リハビリテーションスタッフ,医師,看護師,管理栄養士,歯科衛生士,薬剤師の多職種が協働し,情報共有とチーム医療を推進することが予後改善につながる

●ワクチン接種,生活環境の整備,慢性疾患の管理など,多面的な予防策を継続的に実施することで肺炎の再発率を低減できる

在宅での理学療法アプローチ

59巻11号 , 2025年11月 , pp.1325-1330
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Point

●在宅での肺炎予防に必要な呼吸理学療法は,慢性呼吸器疾患,神経筋疾患,および嚥下障害を合併しやすい脳血管障害の患者が対象となる

●在宅で行っている呼吸理学療法の内容を肺炎の予防的アプローチ,治療的アプローチ,およびセルフマネジメントの3つに分類した

●終末期を在宅で過ごしたいと希望する人が増えるなか,患者の病態に応じた呼吸理学療法を実施し,セルフマネジメントができるよう教育することが必要である

肺炎とエンドオブライフ・ケア

59巻11号 , 2025年11月 , pp.1331-1336
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Point

●日本呼吸器学会「成人肺炎診療ガイドライン2024」は,高齢者のエンドオブライフにおける誤嚥性肺炎に対して,緩和ケアを中心とし,高齢者の意思とQOLを考慮した医療・ケアを行うことを推奨している

●緩和ケアは消極的な医療ではなく,一人ひとりの尊厳とQOLを可能な限り維持するための積極的な医療・ケアであり,高齢者においてはいっそう重要である

●理学療法士には医療・ケアチームの一員として,一人ひとりの老化の程度を把握し,多職種で情報共有し,適切な意思決定支援につなぐことが求められている

Close-up 大規模災害に対する支援体制

災害後避難による健康影響とその対策

59巻11号 , 2025年11月 , pp.1338-1341
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緒言

 日本では近年,災害の激甚化・多発化が進んでおり,特に2011年の東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所事故(以下,原発事故)では広範囲かつ長期の避難が生じ,健康状態悪化のリスクが顕在化した.第3回国連防災世界会議(2015年)の成果文書として採択された「仙台防災枠組2015-2030」1)では,減災のための備えの強化が強調されている.

 近年の災害支援において,リハビリテーション活動の主体は,一般社団法人日本災害リハビリテーション支援協会(Japan Disaster Rehabilitation Assistance Team:JRAT)から,時間の経過とともに現地の地域リハビリテーションの担い手や地域包括ケアシステムへと移行する.したがって,地域で活動する理学療法士の誰もが,自身の居住地近辺で大規模災害が発生した際に支援活動の主体となる可能性がある.

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はじめに

 わが国は地震や台風,豪雨といった自然災害の多発地域であり,近年では地球温暖化に伴う異常気象の影響も相まって,その頻度や規模はますます増加傾向にある.こうした災害発生時において,避難生活の長期化やインフラの遮断により生じる「生活不活発病」や「災害関連死」のリスクが深刻な問題として浮き彫りになっている.

 このような状況のなかで,2024(令和6)年6月に災害時のリハビリテーション支援チーム(Japan Disaster Rehabilitation Assistance Team:JRAT)が防災基本計画に明記され,リハビリテーション専門職への期待がいっそう高まっている.JRATは災害発生直後から地域に入り,避難所や在宅被災者を対象にリハビリテーションの提供を行うことで,被災者の生活機能の維持と回復を支援することを目的としている1)

 本稿では,福島県災害リハビリテーション支援協議会(福島JRAT)が2019年の令和元年東日本台風災害支援活動などを通じて得た知見をもとに,平時からの備えと災害時の対応,さらに今後求められる地域との連携について考察する.

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令和6年能登半島地震の特性

 2024(令和6)年元日,石川県能登半島を震源とする最大震度7の地震が発生した.この地震は,能登地方を中心に建物の倒壊,津波,火災,土砂崩れなどの被害に加え,断水,停電など広範囲かつ復旧に長期間を要する甚大なライフラインの壊滅をもたらした.被害は海底隆起や地盤沈下,液状化現象など広域にわたる土地の変形にも及び,インフラの損壊によって被災地への物資輸送や人材支援に大きな遅れと困難が生じたうえ,行政による初動体制が大きく制限されただけでなく,過去の災害経験や教訓を経て繰り返し構築・改善されてきた機動性の高い災害医療支援専門団体の初動活動すら難航した.

 内閣府は,避難所に関して指針やガイドラインを示しているが,今回の震災において課題となった点に鑑み,2025年6月4日に行われた「防災庁設置準備アドバイザー会議」1)において,災害時やその後の復旧・復興期を通じて「場所(避難所)」の支援から「人(避難者,被災者)」を中心に据えた支援の充実への転換がとりまとめられ,その重要性が繰り返し指摘された.

連載 とびら
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それでも理学療法士になりたい

 ワタシの左足は義足.反対側の足部もインソールなしには歩けない障害がある.46年前小学1年生,通学途中の交通事故だった.病院の廊下の手すりを使って母親と一緒に歩行練習したことを今でも思い出す.理学療法士と出会ったのは小学高学年だった.このワタシを歩けるようにしてくれたのは理学療法士だった.子どもながらに,なんてカッコイイ! なんて素晴らしい仕事なんだ! と,その職業に憧れた.

 「あなたに人の体を支えるような仕事は難しいんじゃない?」と,中学の担任に言われたときは落胆したが,理学療法士になることをあきらめきれなかった.養成校を受験するときには,(今では考えられないが)義足であるという理由で受験を断られた学校もあった.「そんな学校はこちらからお断り!」と,限られた養成校のなかで受験をし,生まれ育った山形から東京へ出るきっかけとなった.

連載 運動器疾患に対する超音波画像評価とエコーガイド下運動療法—EBPTに活かす!・第7回
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症例

50歳台後半の女性.以前からしゃがみ込み動作や長時間の歩行,歩き始めに股関節に疼痛を自覚していたが,疼痛自制内のため,近医にてリハビリテーションを受けて経過を観察していた.最近になり,股関節の痛みが強くなり,YouTubeで調べていて,股関節唇損傷の可能性があるのではないかと思い,当院を受診した.X線画像上,Cam形態を認め,magnetic resonance imaging(MRI)では軟骨損傷も認めているため,変形性股関節症と診断され,まずは理学療法開始となった.

*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2028年11月30日).

連載 車椅子・歩行補助具の選び方・第5回

競技用義足の普及と支援のかたち

59巻11号 , 2025年11月 , pp.1351-1353
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はじめに

 近年,パラスポーツへの社会的関心が高まっている.なかでも義足を使用するパラアスリートは象徴的な存在としてメディアに頻繁に取り上げられており,その活躍は多くの人々に感動を与えている.しかし,日本国内における競技用義足の使用者数は依然として少なく,これを製作・調整できる義肢装具士や関連スタッフも十分とは言えない1).さらに,義足使用者の多くがスポーツ用義足に関心をもちながらも,情報や交流の場の不足を感じていることが示されている2)

 本稿では,競技用義足に関する基礎知識や日常用義足との違い,普及・体験の機会,そして義足使用者が求める交流ニーズについてまとめ,パラスポーツの今後の課題と可能性を考察する.

連載 薬剤と理学療法・第11回

抗悪性腫瘍薬

59巻11号 , 2025年11月 , pp.1355-1360
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 わが国では,2人に1人が生涯のうちに悪性腫瘍(以下,がん)に罹患し,4〜6人に1人ががんで死亡している1).がんの進行に伴い,日常生活活動に障害を生じ,QOLの著しい低下を招くことから,がん領域でのリハビリテーションの重要性が指摘されている.2016年に成立したがん対策基本法改正法の第17条では,がん患者の療養生活の質の維持向上のため,がん患者の状況に応じた良質なリハビリテーションの提供を確保することが明記され,2023年から開始された第4期がん対策推進基本計画では,がん患者に対する適切なリハビリテーションの提供が取り組むべき施策とされている.

 がんの治療には主に,手術療法,放射線療法,化学療法,免疫療法がある.化学療法および免疫療法では,単体または複数の抗悪性腫瘍薬(以下,抗がん剤)を投与することで抗腫瘍効果を発揮するが,一方で多くの患者が抗がん剤によるさまざまな副作用を経験する.副作用は,リハビリテーションの阻害因子となるだけでなく,リハビリテーションを行ううえでの安全管理においても重要である2).本稿では,抗がん剤とその代表的な副作用,リハビリテーションにおける安全管理について,具体的な症例を交えて解説する.

連載 COVID-19パンデミック後の変革・第2回
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はじめに

 COVID-19パンデミックは,世界の医療体制に深刻な影響を及ぼした.日本においても,高齢入院患者の身体・精神機能の急速な低下により自宅復帰が困難となり,入院の長期化や急性期病床の回転率の低下が顕著となった1).その結果,急性期病院におけるリハビリテーション体制の不備や,急性期から回復期への連携の脆弱さが浮き彫りとなった.これを受け,厚生労働省は2023年の「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」において,「リハビリテーション・栄養・口腔管理の一体的推進」を明記した.さらに,2024年度の診療報酬改定では,入退院支援における理学療法士の関与を評価し,「リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算」が新設された.

 本稿では,COVID-19対応を通じて神戸市立医療センター中央市民病院(以下,当院)がどのように管理体制を更新し,リハビリテーション部門がいかに貢献したかを概観するとともに,これらの経験が,地域連携の強化やリハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算の導入といった「ポストコロナ時代」の新たな地域医療構想にいかに生かされているかを述べる.

連載 文献収集と管理・第11回

Mindsガイドラインライブラリ

59巻11号 , 2025年11月 , pp.1367-1371
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Mindsガイドラインライブラリの特徴

 Minds(マインズ)ガイドラインライブラリは,日本医療機能評価機構が厚生労働省委託事業であるevidence-based medicine(EBM)普及推進事業の一環で運営する,診療ガイドライン[本連載第3回(第59巻第3号)を参照]のデータベースウェブサイトである.Mindsは,medical information distribution serviceの頭文字に由来し,EBM普及推進事業の通称として用いられている.Mindsは,診療ガイドラインの評価選定・公開,作成支援,活用促進を事業の柱とし,Mindsガイドラインライブラリを通じて,日本で発行され,Mindsで評価・選定された質の高い診療ガイドラインや一般向けの解説などを公開している.さらに,診療ガイドラインの作成方法や活用方法,国際的な動向などの関連情報についても幅広く提供している.

 Mindsガイドラインライブラリには現在,550件以上の診療ガイドライン,その英語版やダイジェスト版,一般向けのガイドライン解説などの情報が登録されている.国内の診療ガイドラインの多くは有料の刊行物となっており,すべてを閲覧できるわけではないが,無料公開に向けて進展している.理学療法のガイドラインも,2021年に最新版の第2版が医学書院から発刊されるとともに,当初は日本理学療法学会連合ウェブサイトにおいて会員限定で公開されていたが,現在はMindsガイドラインライブラリで無料公開されている(https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00687/).

連載 私のホッとする時間・2

Coffee time

59巻11号 , 2025年11月 , pp.1372
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 読者の皆さんはコーヒーを飲むだろうか? まったく飲まない人,たまに飲む人,毎日飲む人,何かで自分を追い込むときにたくさん飲む人,ミルクで割って飲む人……なかには趣味のようにこだわって飲む人もいるかもしれない.コーヒーとのかかわりは,十人十色でとても面白い.かく言う私にとって,コーヒーは忙しい時間に隙間を与えてくれる存在である.

 コーヒーの奥深さを知ったのは,もう随分前に秋田県の08COFFEEというコーヒー屋さんでナチュラル精製・エチオピア産・浅煎りのコーヒーをいただいたときだと記憶している.エチオピアはコーヒー発祥の地とも言われており,農園にもよるがそのコーヒーはストロベリーやメロンのような甘味や香りが感じられることで有名である.“フルーティー”なコーヒーとも称される.初めてその香りを感じ,口に運んだときは自分のなかのコーヒーという概念が覆されたのを,今でもよく覚えている.

連載 臨床実習サブノート 効果的かつ安全な起居動作へのアプローチ・第8回

脊椎椎体骨折

59巻11号 , 2025年11月 , pp.1373-1378
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脊椎椎体骨折後の治療の概要

 骨粗鬆症性椎体骨折の治療について,葉1)は以下のように述べています.

 骨粗鬆症に対しては薬物療法,ADL障害に対してはリハビリテーションを実施します.保存療法で問題となるのが,椎体圧潰,偽関節,神経症状の出現などです.

 ① 急性期臥床期:骨折以外による疼痛を緩和し,安静による廃用性の機能障害を予防します.骨折椎体への負荷を考慮した運動を行います.ADL指導としては寝返り動作が重要です.

 ② 急性期離床期:この時期の目的は,日常生活での活動性向上のため,骨折椎体への負荷を考慮した運動および動作を習得することです.ADL指導としては起き上がり,立ち上がり動作が重要となります.

 ③ 回復期(生活期):この時期の目的は,退院後の生活におけるQOLの維持・向上のために,骨折椎体の再骨折予防と同時に,身体機能向上,ADL能力向上を進めることが重要です.ADL指導としては,退院後の日常生活に向けた応用的な動作を考慮しなければなりません.

連載 私のターニングポイント・第68回
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 かつて集中治療室(intensive care unit:ICU)で生死の境をさまよった方が,今では外来で笑顔を見せ,「次の目標は職場復帰です」と力強く語ってくれます.この光景こそ,私が理学療法士として感じる最高の喜びであり,私の理学療法士人生を大きく変えた「ターニングポイント」の先にたどり着いた景色です.

 数年前までの私は,現在の姿からは少し離れた場所にいたように思います.入職以来,私の情熱はスポーツリハビリテーションに注がれていました.もちろん,理学療法士として知識の幅を広げる必要性は感じており,キャリアプランの一環として心臓リハビリテーション指導士と認定理学療法士(循環)の資格を取得しました.しかし正直に言えば,当時の私にとって心臓リハビリテーションはあくまで「知識」であり,そこに心からのやりがいを見出せていたわけではありませんでした.

症例報告
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要旨 症例はボート競技の社会人チームに所属する男性である.他院にて尺骨神経前方移行術後に右肘内側の弾発現象が出現し,尺骨神経の走行に沿った疼痛や違和感が継続していた.弾発現象を超音波にて可視化すると,上腕三頭筋内側頭内の索状物と内側上顆との間で弾発現象が生じており,これに伴い尺骨神経が腹側へと圧排される動きや,背側へと引きつれる動きが観察され,これらの動態に合わせて症状の再現を認めた.理学療法は,上腕三頭筋内側頭や同筋と尺骨神経との境界部に対する徒手操作を超音波ガイド下に実施することで,弾発現象が激減し症状の改善を得た.一般に肘内側の弾発現象は,尺骨神経脱臼が代表的な原因であるものの,それ以外にも上腕三頭筋内側頭の弾発現象により尺骨神経障害を発症するsnapping triceps syndromeという病態が存在する.本症例を通して,弾発肘に対しては本症候群を念頭に置く必要があり,その評価には超音波を用いた動態評価ならびに超音波ガイド下の運動療法が有効であると考えられた.

学会印象記
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 第11回日本栄養・嚥下理学療法学会学術大会が,東京たま未来メッセにて開催されました.本学会は,現地開催に加えてLive配信・オンデマンド配信も行われ,500名を超える過去最多の参加者を集め,大変盛況のうちに幕を閉じました.テーマは「Fresh—栄養嚥下理学療法の個性」であり,新たな視点から理学療法士の役割を問い直し,多職種のなかでの“個性”を考える内容が多く,実り多い学会となりました.

書評
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 本書の編集である工藤慎太郎先生,執筆者の一人である森田竜治先生と私は同門であり,臨床・研究・教育の第一線でご活躍されておられるお二人は,ともに後輩でありながら尊敬する理学療法士です.

 好評であった初版をいっそう進化させた本書では,疾患ごとに症例に生じた症状について,その発生要因や評価するべきポイントを,解剖学的視点からわかりやすく詳細に解説されています.臨床で運動器疾患を診ている理学療法士や作業療法士の多くが悩む「どの組織を治療ターゲットにするべきか?」,そして「どう治していくべきか?」を明確にするためには,解剖学的視点から病態を考察していくという「臨床的思考過程」が欠かせません.

目次

59巻11号 , 2025年11月 , pp.1280-1281

動画配信のお知らせ

59巻11号 , 2025年11月 , pp.1276

バックナンバー・次号予告

59巻11号 , 2025年11月 , pp.1388-1389

編集後記

59巻11号 , 2025年11月 , pp.1390
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 2025年も11月になろうとしています.「今年もあと2か月」と思うと,一段と時間が過ぎる早さを実感するかと思います.本誌も第11号をお届けすることとなりました.特集は「Common diseaseとしての高齢者肺炎」です.高齢者の肺炎は,すべての病期,どの施設でも理学療法士がかかわる機会があるきわめて「common」な疾患です.本特集では高齢者肺炎の基本的知識から,理学療法の実際ならびに関連するケアや管理のあり方までが網羅されており,最新の内容がわかりやすく解説されています.肺炎は理学療法の重要な適応疾患であり,発症後の急性期から積極的に理学療法を展開する必要があります.また同時に(再発)予防にも取り組む必要性や終末期のかかわり方などの重要な課題もあります.読者の皆様にとって多くの有益な情報が得られるものと期待しますとともに,こうした課題についても考える機会になればと思います.

 Close-upは「大規模災害に対する支援体制」です.地震や豪雨など多くの自然災害と隣り合わせの日本では災害発生時の対応活動は言うまでもなく,平時からの備えも不可欠です.本号では災害への支援体制についてリハビリテーションならびに理学療法の立場から解説をいただきました.実際に災害支援にかかわられた執筆者による説得力のある内容であり,特に平時からの備えや理学療法士のかかわりの重要性が理解できる大変貴重な内容です.皆様にとりましても「対岸の火事」ではないということを痛感するのではないでしょうか.