肺炎は高齢者で致死的かつ再発・重症化しやすいcommon diseaseであり,日本の死亡原因5位に位置します.高齢者では呼吸,嚥下,ADL,認知機能など全身的な対応と同時進行で再発予防対策も求められます.肺炎は理学療法の「中止基準」ではなく「積極的適応」であり,急性期から呼吸理学療法や早期離床,予防介入を進める必要があります.本特集では肺炎の基礎から最新の治療・管理,理学療法と関連ケアを整理し,医療,介護や在宅の現場で実践に役立つヒントを提示します.
肺炎の基礎知識 武田和明,他
2024年に「成人肺炎診療ガイドライン」が改訂された.本稿ではその内容をもとに肺炎の疫学,分類,診断,治療に関する基礎知識を概説する.市中肺炎,医療・介護関連肺炎,院内肺炎の分類とそれぞれの特徴を整理し,肺炎の重症度評価や標準的な治療方針についても触れることで,現場で求められる基本的理解を提供する.
誤嚥性肺炎と医療・介護関連肺炎 海老原孝枝
これまで,誤嚥性肺炎は医療・介護関連肺炎臨床像の一部に該当すると考えられてきたが,「肺炎サルコペニア」をキーとする誤嚥性肺炎の病態時間軸が明らかになった今,医療・介護関連肺炎はほぼ誤嚥性肺炎に該当すると考えられる.したがって,高齢者肺炎を診療するときは,誤嚥由来であることを念頭に置き,誤嚥性肺炎の病態時間軸におけるその患者の立ち位置を把握し適切なアプローチを行うことが推奨される.
高齢肺炎患者のアセスメント 沖 侑大郎
本邦は世界でも群を抜く速さで高齢化が進んでいる.そのため,全死亡原因のうち肺炎の割合が増加しており,そのほとんどが高齢者で占められている.高齢者の肺炎はほとんどが誤嚥性肺炎であり,その病態は予後不良とされる.誤嚥性肺炎の診療においては治療とともに予防に焦点が当てられることが多いが,誤嚥性肺炎は繰り返し発症するリスクを有するため,抗菌薬の投与のみでは予後改善は難しいことを示唆しており,理学療法をはじめ多面的な観点からのアセスメントが重要となる.高齢者肺炎における身体所見の特徴,摂食嚥下,認知機能,身体運動機能など多面的な観点からのアセスメントについて紹介する.
高齢者肺炎のアプローチ 呼吸理学療法と早期離床 森下辰也,他
高齢者肺炎に対する理学療法には早期離床が重要であり,その効果が示されている.しかし,併存疾患や喀痰不全などにより,離床に難渋する患者も一定数存在する.本稿は早期離床と気道クリアランス手技を中心にその意義と実施手順を整理した.加えて,多職種での介入の重要性やそのポイント,呼吸筋トレーニングの可能性にも言及する.
高齢者肺炎のアプローチ栄養管理と摂食嚥下リハビリテーション 俵 祐一,他
高齢者肺炎の多くは摂食嚥下障害に起因する誤嚥性肺炎であり,その予防と対応には摂食嚥下機能の正確な評価と適切なリハビリテーションが不可欠である.理学療法士は,呼吸機能の維持や姿勢・筋力の改善を通じて,摂食嚥下リハビリテーションや栄養管理,多職種連携において重要な役割を果たす.本稿では,スクリーニング・摂食嚥下リハビリテーション・栄養管理の実践方法とともに,誤嚥性肺炎予防における理学療法士の具体的な関与と多職種協働の要点を概説する.
高齢者肺炎のアプローチ身体活動とADL能力の低下予防 村川勇一,他
近年,さまざまな疾患において入院関連機能障害 (hospital-acquired disability:HAD) が注目されており,高齢者肺炎でもHAD予防の重要性が認識されてきている.高齢者肺炎のHADには多くの因子が関連するため,理学療法士だけでなく多職種にて各症例に応じた詳細なアセスメントの結果をもとに早期から呼吸リハビリテーションを行い,HADの発生を予防する必要性がある.
肺炎の予防,再発予防 嶋﨑勇介,他
世界的にみても高齢化が進んでいるわが国では,肺炎が死因の上位を占めており,肺炎予防は重要な課題である.本稿では,栄養や薬剤管理,口腔ケア,多職種連携の重要性に焦点を当て,肺炎予防の具体的戦略を論じる.適切な栄養摂取と口腔ケアが誤嚥性肺炎の発症を低減し,多職種介入が再発防止に寄与する.また,ワクチンや生活環境改善などの予防策も含め,再発防止のための多面的介入の重要性を考察する.
在宅での理学療法アプローチ 瀧澤弥恵,他
療養期間が長期に及ぶ慢性呼吸器疾患や神経筋疾患,また嚥下障害を合併しやすい脳血管障害の患者では,在宅で病状を悪化させないために肺炎などの合併症を予防することが重要となる.肺炎予防のために在宅で行っている呼吸理学療法の内容を肺炎の予防的アプローチ,治療的アプローチ,およびセルフマネジメントの3つに分類し,症例を提示してその具体例を述べた.
肺炎とエンドオブライフ・ケア 会田薫子
時代の変化のなか,肺炎治療も変化している.日本呼吸器学会「成人肺炎診療ガイドライン 2024」は高齢者のエンドオブライフにおける誤嚥性肺炎に対して,広域抗菌薬投与ではなく緩和ケアを中心とし,患者の意思とQOLを重視した医療・ケアを提供するよう推奨している.緩和ケアは消極的な医療ではなく,一人ひとりの尊厳とQOLを最期まで可能な限り維持するための積極的な医療・ケアであり,高齢者においてはいっそう重視されている.