
B5判・248頁
定価:5,280円(本体4,800円+税10%)
医学書院刊,2024年
運動器疾患の疑問を解剖学から紐解くという臨床思考が学べる一冊
本書の編集である工藤慎太郎先生,執筆者の一人である森田竜治先生と私は同門であり,臨床・研究・教育の第一線でご活躍されておられるお二人は,ともに後輩でありながら尊敬する理学療法士です.
好評であった初版をいっそう進化させた本書では,疾患ごとに症例に生じた症状について,その発生要因や評価するべきポイントを,解剖学的視点からわかりやすく詳細に解説されています.臨床で運動器疾患を診ている理学療法士や作業療法士の多くが悩む「どの組織を治療ターゲットにするべきか?」,そして「どう治していくべきか?」を明確にするためには,解剖学的視点から病態を考察していくという「臨床的思考過程」が欠かせません.
われわれが対象とする運動器疾患の病態には,静的構造体である解剖学的構造に動的負荷が加わることが関与しています.このことは,Culmann’s craneに代表される荷重を受けた主応力の作用方向によって骨梁構造が決まるということや,軟部組織の機械的刺激により骨形態が変わるというWolfの法則からも明らかです.つまり,解剖学的構造や形態の一つひとつに意味があり,力学的変化に影響を受けるということです.
解剖学的構造を理解することで,「どのように組織に負荷がかかるのか?」が理解できるようになり,「どのように評価すると症状が再現できるのか?」も理解できるようになります.このことは運動器疾患の症状と病態を理解するうえでとても重要なポイントであり,治療ターゲットを絞り込むために必須となります.
本書の特長は,症例提示を通して,症状とその発生要因を解剖学的構造から紐解くだけでなく,治療に必要な技術につなげられるところにあります.詳細な解剖とその機能がオールカラーで図示されており,解剖学的構造を視覚的にイメージしやすくなっています.そのうえで,写真とWeb動画で具体的な治療技術についても学ぶことができます.
初学者の理学療法士や作業療法士には,本書を手に取って実際の臨床と対比させながら反復して「思考」することをお勧めします.本書では一貫して,症状の発生要因は何か,解剖学的にどのように解釈したか,そして症状消失に至った要因は何か,について記載されています.これらの「思考過程」が臨床家には必要なのです.
エビデンスのもととなっている文献も記載されていますから,これらも合わせて読むことで,論文から得られた情報をどのように解釈して臨床に反映させているのか,という著者たちの「臨床的思考過程」も学んでいただきたいと思います.
「すべては患者さんの笑顔のために」本書を大いにご活用されることをお勧めします.