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理学療法ジャーナル 59巻12号 (2025年12月発行)
特集
慢性炎症と運動療法—運動による炎症制御の可能性
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pp.1402-1403 , 発行年月 2025年12月

 本特集では,慢性炎症が血管老化,生活習慣病,心不全,筋疾患,変形性関節症,がんなど多岐にわたる疾患の病態基盤であることを示し,その抑制に運動がきわめて有効であることを論じています.運動は,細胞老化の制御,免疫細胞の機能変化,アディポカインバランスの是正などを介して,全身・局所の慢性炎症を軽減します.多様な疾患に対する運動の幅広い抗炎症効果を,細胞・分子レベルから全身機能まで多角的に解説し,理学療法士による継続的な個別化された運動介入が,疾患の進行を断ち切り,管理と予防にきわめて重要であると提言しています.

運動による骨格筋再生と細胞老化制御 齋藤悠城,他

 細胞老化は,がん抑制や組織修復といった生命維持に不可欠な役割を担う一方,その蓄積は加齢や慢性炎症を促進する要因ともなる生命現象である.近年,この細胞老化の二面性は,運動ストレスに応答する骨格筋においても認められることがわかってきた.実際に運動は,細胞老化を介して筋の修復・再生を促す有益な効果をもつと同時に,慢性炎症や線維化といった病態の進行に関与する可能性が指摘されている.したがって,運動が誘発する細胞老化の制御機構を理解することは,新たな筋疾患治療法の開発に向けた重要な鍵となる.本稿では,骨格筋における細胞老化の役割について,特に運動による組織修復プロセスとの関連に焦点を当てて概説する.

血管の老化と慢性炎症 真鍋一郎

 血管は加齢とともに変化し,大血管は硬くなり,血管内皮細胞機能は障害され,拡張性は低下する.また,組織によっては微小血管の密度が低下する.これらの血管自体の変化に加え,血管が存在する組織の変化も合わさることで,血管では炎症反応が活性化される.血管での炎症は動脈硬化などを進行させるだけでなく,さらなる血管機能の低下という悪循環をもたらす.このような血管機能の低下と血管での炎症反応の活性化は,周囲の組織での炎症も促進し,多様な加齢関連疾患において炎症を誘導・増悪させている可能性がある.一方,運動は加齢による血管機能障害を改善し,それにより炎症を抑制する可能性がある.

運動と慢性炎症―改善効果と作用機序 川西範明

 脂肪組織や肝臓,骨格筋などの組織局所における慢性炎症は糖尿病や代謝機能障害関連脂肪肝炎(metabolic dysfunction associated steatohepatitis:MASH)などの慢性炎症性疾患の発症に関与する.持久的運動は肥満誘導性の組織局所の慢性炎症を抑制することで,MASHなどの病態の進行を軽減させること明らかになってきた.このような運動による組織局所での慢性炎症の抑制はマクロファージやT細胞などの免疫担当細胞のフェノタイプ(表現型)の変動を介することが示されている.

生活習慣病と慢性炎症
―運動がもたらす予防・改善効果とそのメカニズム 髙村大祐,他

 運動不足や生活習慣の乱れに伴う肥満や脂肪細胞の肥大は,悪玉アディポカインの分泌増加と善玉アディポカインの分泌減少をもたらし,全身での慢性炎症を惹起してさまざまな生活習慣病を引き起こす.継続的な運動は,アディポカインのバランスの是正効果をはじめとしたさまざまな機序を通じて,全身の慢性炎症を軽減する.理学療法士は,運動療法によって生活習慣病と慢性炎症の負の連鎖を断ち切ることができる.

心不全と慢性炎症―病態形成と運動の抗炎症効果 井澤和大,他

 慢性炎症は,心肥大や心不全を含む循環器疾患の病態形成において重要な役割を果たすことが示されている.有酸素運動やレジスタンストレーニングは,炎症性サイトカインの抑制を通じて,生活の質の向上と機能回復に寄与する有望な手段として注目されている.本稿では,高血圧や血行力学的過負荷が慢性炎症を惹起する機序を概説し,理学療法の観点から運動療法による抗炎症効果について考察する.

筋疾患と慢性炎症と運動・栄養療法の役割 吉本由紀

 骨格筋の機能維持や高い再性能には内在性のサテライト細胞や間葉系細胞がかかわっている.筋ジストロフィーやサルコペニアなど骨格筋の機能低下を招く病態においては,慢性炎症が関与しており,特にマクロファージを介した影響により内在性の細胞の機能が障害される.本稿では,これらの骨格筋疾患病態における慢性炎症の影響と,さらに病態改善に向けた運動療法の効果や近年の研究の動向を紹介する.

変形性関節症と慢性炎症―疼痛発生機序と運動効果 木藤伸宏,他

 変形性関節症は関節軟骨の「摩耗と損傷」だけではなく,関節を構成する器官と組織に起こる低悪性度慢性炎症が膝関節破壊の進行要因として重要である.関節への力学的負荷は関節構成体の器官と組織の恒常性維持には重要であるが,過度の力学的負荷は機械的炎症を引き起こす.運動で関節に加わる力学的負荷を適切に調整するには,関節軟骨を含む関節構成体器官と組織に何らかの利点を与える可能性がある.

運動によるがん予防と慢性炎症 武藤倫弘,他

 身体活動の低下は,生活習慣病患者数やがん患者数の増加にかかわっていると考えられている.一方,適度な運動は,慢性炎症抑制効果もあり,糖尿病などがんリスクの高い生活習慣病やがんそのものの予防に役立つと考えられている.がん化にかかわる液性分子の運動による分泌には全身の臓器が関与する.本稿では,それら液性分子分泌を担う全身臓器が,腫瘍微小環境を改善することにより腫瘍発生に対し予防的に作用するメカニズムの一部を紹介する.

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