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理学療法ジャーナル 59巻12号 (2025年12月発行)
書評
—坂井 建雄,小林 靖,宇賀 貴紀(編)—「構造と機能がつながる神経解剖生理学」
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森岡 周 1
1畿央大学
pp.1498 , 発行年月 2025年12月

A4判・280頁
定価:8,250円(本体7,500円+税10%)
医学書院刊,2024年

解剖と生理が交差する学び

リハビリテーションの実践に役立つ神経科学

 私たちが日常的に行っている「見る」,「動かす」,「感じる」といった営みは,脳と神経の複雑なネットワークによって支えられている.その神秘に触れる手がかりとして,本書『構造と機能がつながる神経解剖生理学』は,リハビリテーション専門職やその学生にとって心強い存在となる.神経解剖学と神経生理学を統合的に学べる本書は,「脳の地図」と「脳の動き」を並行して理解できる独自の構成を有する.見開きの2ページで解剖と生理を対比して解説しており,知識が積み重なる感覚を味わえる.
 目次が「である」調で記されている点も特徴的である.各項目が明確に示されており,学習の指針として有効である.リハビリテーション専門職にとって,神経障害のみならず解剖学や生理学といった幅広い基礎知識を習得し,統合的に理解することは不可欠である.複雑な情報が簡潔にまとめられている本書は,現場での実践にも直結し,学びの効率も高まるであろう.
 本書を読み進める際には,神経生理学と神経症候学を区別しつつも,統合的に理解することが求められる.神経生理学は「神経系の標準的な機能」を解き明かす学問であり,神経症候学は「損傷や病変による神経機能の変化や症状」を扱う.リハビリテーションでは,神経系がどのように機能し,適応するのかを理解することが重要である.それにより,損傷や機能低下が生じた際の対応力が養われる.本書は,神経系の標準機能と病態を並行して学べるように設計されており,両者の関連性が自然に理解できる点が大きな魅力である.
 運動機能障害や運動回復のメカニズムについても詳述されている.リハビリテーションに携わる専門職にとって,こうした知識は臨床で不可欠である.神経症状の理解に加え,回復に向けた介入のヒントが得られるのは,解剖学と生理学が一体化された「統合型テキスト」である本書の強みである.
 また,本書の価値は運動機能にとどまらない.高次脳機能の章では,認知,言語,情動といった領域にも踏み込んでいる.リハビリテーションでは多職種連携が不可欠であり,脳の多様な働きについての理解が進めば,患者をより多角的に支援できる.視覚情報の処理や情動の制御といった高度なテーマも,フルカラーの図版やイラストによってわかりやすく解説されている.脳の仕組みが立体的に理解でき,断片的な知識がつながっていく感覚を得られる点も特筆すべきである.
 本書は,神経系のマクロな構造から脊髄,脳幹,感覚・運動機能,高次脳機能障害まで幅広くカバーしている.実践的な内容が多く,学生だけでなく,現場で活躍する専門職にとっても知識をアップデートするためのよき指針となる.今後は,神経ネットワークの視点がさらに強化されることを期待したい.
 本書はリハビリテーション専門家や医療系学生が神経科学を深く学び,臨床で生かしていくための強力な道しるべとなるであろう.基礎知識と臨床応用を橋渡しする「統合型テキスト」として,学ぶ楽しさを実感させてくれる一冊である.

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