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総合リハビリテーション 53巻11号 (2025年11月発行)
特集
プレハビリテーションの時代—回復力を最大化する術前戦略
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pp.1082-1083 , 発行年月 2025年11月

The era of prehabilitation:optimizing resilience before surgery

 プレハビリテーションは,単なる術前リハビリテーションを超えた,運動,栄養,心理的サポートを中心とし,認知・呼吸・禁煙・禁酒・口腔内衛生,貧血対策・睡眠の適正化などを含むマルチモーダルなアプローチです.本特集は,エビデンスから実践方法まで,多彩な角度からご解説いただきました.「自分のところでもやってみよう」と思いたくなる内容満載です!

 

1. 周術期リハビリテーションの進化
―プレハビリテーションの概念と意義

笠井史人氏ら

 プレハビリテーションは,「術前から介入して機能のベースラインを高め,障害の発生や重症度を減らすために身体的・心理的側健康を促進する連続的ケアプロセスであり,身体・栄養・心理的評価を含むもの」と定義されている.従来の「治療後の機能回復」から,「治療前のリスク管理と予備力最適化」に軸足を移したところが大きな転換点である.周術期支援/患者支援センターなどを中心に術前の外来時点から開始され,そして在宅での実施のために遠隔システムの開発も必要とされている.

2. ここまでわかったプレハビリテーションの効果

佐藤眞理子氏ら

 186 件のランダム化比較試験,15,684 名を対象としたレビューでは,マルチモーダルなプレハビリテーションプログラムのなかでも,特に運動と栄養が主要アウトカムに対し最も有効性が高い要素であった.在宅ベースのプレハビリテーション研究のレビューでも,確実性は院内監視運動療法よりも低いが,臨床的に意味のある効果と,心理面の改善が確認されている.在宅での遵守率を高める手段を組み合わせたプログラムの構築が望まれる.

3. 患者サポートセンター起点のプレハビリテーション

中谷昌平氏ら

 患者サポートセンター受診から入院までの平均日数が11 日と,限られた介入期間のなかでプレハビリテーションを実施するために,運動禁忌の明確化,動画二次元コード付きパンフレットによる運動療法指導,初日購入の機器による呼吸運動訓練を指導,管理栄養士の指導,oral nutrition supplements の処方,心理的サポート,口腔衛生の維持,禁煙・禁酒指導などをそれぞれツールやプロトコールに従い実施し,記録用紙を入院時に専門職が確認している.

4.プレハビリテーションの栄養管理

南村智史氏

 術前の栄養介入に際しては,対象者の生活習慣に合わせた食事に対するアドバイスに加え.oral nutrition supplements も導入している.フィットネスに関しては地域のメディカルフィットネス施設2 か所と連携して合同カンファレンスも実施している.このような院内外の連携により,プレハビリテーションを推進している.

5.プレハビリテーションにおける運動の評価と指導

井上順一朗氏

 プレハビリテーションにおける運動療法は,術後合併症予防と入院期間短縮,身体的予備能増強と術後機能回復促進のエビデンスがあり,特に高齢患者・フレイル患者における意義が注目されている.また,精神機能・心理面にも効果がある.指導の実際としては,有酸素運動+筋力トレーニング+呼吸筋トレーニングを組み合わせる.在宅での実施が現実的かつ費用対効果の高い方法であり,アドヒアランスの維持に,遠隔デジタル技術が活用されつつある.

6.プレハビリテーションの普及と展望―経済的側面と戦略

佐藤典宏氏

 45 件の論文のレビューでは,65%では通常のケアよりもプレハビリテーションの費用対効果が高かった.しかし費用は環境により異なり,本邦では,外来での診療報酬面でのメリットがないことが普及の阻害要因である.産業医科大学ではクラウドファンディングを利用してガイドブックとYouTube 動画を作成して効率を改善した.在宅での実施のためのアプリケーションの開発も進んでおり,企業と名古屋大学医学部リハビリテーション科が共同開発した「Preha」が本邦でも公開されている.

【特別寄稿】
英国におけるプレハビリテーションと心肺運動負荷試験(CPET)
― 一(いち)消化器外科医・骨盤外科医の視点と考察 

矢野秀朗氏

 英国では,特に大きな腹部手術にあたっては,Cardiopulmonary Exercise Test(CPET)が,周術期リスク評価,術後アウトカムの予測,患者意思決定のガイド,医療資源・リソースの有効活用につながっている.拡大手術ほど,プレハビリテーションの重要性が高く,CPET-directed optimisation が行われている.腫瘍自体の生物学的振る舞いは患者にはコントロール不可能だが,フィットネスは患者自身がコントロールできる・改善できる因子であることの理解が,患者の治療への主体性をもたらす.

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