はじめに
―仮想空間から生活の「第三の場所」へ
近年,インターネット上の三次元仮想空間「メタバース」が急速に発展し,単なる娯楽の場から,生活における「第三の場所(サードプレイス)」としての役割を担いつつある.特にVRChatなどのソーシャルメタバースでは,ユーザーがアバターを介して他者と交流し,コミュニティを形成し,現実世界と遜色のない,あるいはそれ以上に豊かな人間関係を築く事例が数多くみられる1).そこでは,現実の身体や所属から切り離された匿名性と,まるでその場にいるかのような高い没入感が両立している.この独特の環境が,若者を中心に新たな「居場所」として機能し始めているのだ.
一方で,現実社会では孤立・孤独や不登校といった課題が深刻化している.従来の支援手法ではアクセスが困難だった人々が,メタバースに存在しているという現状は,われわれ支援者にとって無視できない変化である.本稿では,教育,障害者雇用,行政,文化伝承など,さまざまな分野における社会課題解決に向けたメタバース活用の8つの先進的な取り組みを紹介し,デジタルアウトリーチの新たな可能性と,分野横断で設計する未来社会の姿を論じる.