東京2020パラリンピック競技大会(以下,東京2020)から早5年が経とうとしている.東京2020がめざしたレガシーがどのような形で具現化されているかを検証し,今後の方略を考えるにはよいタイミングである.筆者は現在,日本車いすバスケットボール連盟(Japan Wheelchair Basketball Federation:JWBF)の中長期計画推進委員会や,日本代表の強化活動支援を主な役割とする技術委員会に所属し,主には車いすバスケットボールの競技力向上にかかわる事業を担当している.本稿では,車いすバスケットボールにおける強化と普及,そしてそれをつなぐ育成の取り組みを中心に,東京2020を経て変わったこと,変えるべきこと,変わらず守り続けたいことをまとめてみたい.
日本における車いすバスケットボールを取り巻く環境とその変化
1.東京2020へ向けての強化活動
2013年9月の東京2020招致決定後,ほかの競技団体と同様に,車いすバスケットボールにおいても本大会でのメダル獲得をめざし,強化合宿の長期化が進んだ.さらに,海外遠征や海外からライバル国を招聘して国際大会を開催するなど,強化活動の活発化が図られた.2019年7月からはナショナルトレーニングセンターイーストが段階的に供用開始となり,パラリンピック競技団体が優先的に利用できる国立の強化拠点が日本にも誕生した.これにより,東京2020に向けて各競技団体の強化活動をいっそう加速させることにつながると期待された.
そのようななか,2020年に発生した新型コロナウイルス感染症(COVID‒19)の世界的流行が日本にも及び,2020年3月には東京2020の1年延期が発表された.1年延期となったとはいえ,いつ中止になるかわからない不確定な状況下で,開催を前提に日本代表の強化活動を継続しなければならなかった.厳重な感染対策のもと,隔離された環境下で合宿を続けたが,これは過去のパラリンピックでは実現できなかった日本代表の集中強化をある意味で実現したことになる.その結果,東京2020では男子日本代表が銀メダルを獲得し,女子日本代表も6位入賞を果たすなど,一定の成果を挙げた.