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雑誌目次

雑誌文献

medicina44巻10号

2007年10月発行

雑誌目次

今月の主題 最新ガイドラインに基づく喘息とCOPDの診療

著者: 滝沢始

ページ範囲:P.1819 - P.1819

 気管支喘息もCOPDも日常臨床で遭遇することの多いコモンディジーズであり,しかも疫学調査によると確実に増加している.両者はともに閉塞性換気障害を示すため,歴史的にも概念の混乱がみられたが,近年の病態をめぐる研究の進歩をふまえて,最新の診療ガイドラインが相次いで公表された.また,新規の薬剤が使用可能となり,両疾患の診断と治療には一段と進歩がみられる.このような状況から,これらの疾患をいかに的確に診断し治療・指導するかが,一般臨床医にとっても重要な問題となってきている.

 本特集では以上の観点から,まず,両疾患の病態の理解のために,疾患概念の歴史とガイドラインの現状を整理し,それぞれの疫学,そして病態の最新の考え方を概観した.

病態の理解のために

気管支喘息とCOPD―疾患概念の歴史とガイドラインの現状

著者: 滝澤始

ページ範囲:P.1820 - P.1823

ポイント

●気管支喘息の病態として,アレルギー性気道炎症とともにリモデリングが重要である.

●COPDの病態としては肺胞領域の破壊と末梢気道の炎症が重要である.

●気管支喘息とCOPDにはオーバーラップが存在し,鑑別が困難なことがある.

●薬物治療の優先順位は異なるが,治療薬の種類には共通するものが多い.

最新データからみた喘息の疫学

著者: 庄司俊輔

ページ範囲:P.1824 - P.1827

ポイント

●喘息の有症率の国際比較において,日本は小児においても成人においてもまだ高率である.

●わが国の喘息患者は10年間に学童では1.5~2倍になり,成人でも1%以上増加している.

●喘息患者は自分の症状を実際より軽症に考えており,吸入ステロイドの使用はいまだに少ない.

●わが国の喘息死亡数は減少傾向だが,高齢者の死亡の割合が大きくなってきている.

わが国初の大規模調査によるCOPDの疫学

著者: 青柴和徹

ページ範囲:P.1829 - P.1831

ポイント

●わが国のCOPD患者数は推定500万人以上である.

●わが国のCOPDの有病率は世界諸国と同程度である.

●90%のCOPD患者は医療機関で診断されていない.

喘息の病態―最近の考え方

著者: 國分二三男

ページ範囲:P.1832 - P.1835

ポイント

●アレルギー性炎症:好酸球,T細胞,肥満細胞(マスト細胞),好塩基球などの炎症細胞の気道への浸潤により形成される.

●気道リモデリング:気道炎症の遷延によりもたらされる気道構造の非可逆的変化

●吸入ステロイド薬:気道慢性炎症治療の第一選択薬

COPDの病態―最新の考え方

著者: 一ノ瀬正和

ページ範囲:P.1836 - P.1839

ポイント

●COPDはタバコ煙や有毒粒子・ガスなどの吸入によって起こる肺の異常な炎症に起因した進行性の気流制限をきたす疾患である.

●COPDの気流制限には,細気管支領域の閉塞と肺弾性収縮圧低下による気道の易虚脱性が関与している.

●COPDでも気管支拡張薬によってさまざまな度合いの可逆性を示す.

●長時間作動型気管支拡張薬投与はCOPD患者の症状の予防およびコントロールに有効である.

ガイドラインに基づく喘息とCOPDの診断

喘息をいかに診断するか―鑑別のポイント

著者: 谷本英則 ,   谷口正実 ,   秋山一男

ページ範囲:P.1840 - P.1843

ポイント

●喘息を診断するために,まずは疾患の定義を十分に理解する.

●喘息を診断するうえで,最も重要となるのは他疾患との鑑別である.

●特に重要な鑑別疾患として,うっ血性心不全やCOPDなどが挙げられる.

●喘鳴を伴わない慢性咳嗽では,咳喘息を見落とさないようにする.

COPDをいかに診断するか―COPDを見逃すことなくスクリーニングし,鑑別するためのポイント

著者: 相澤久道

ページ範囲:P.1844 - P.1848

ポイント

●COPDは高い有病率にもかかわらず,未診断例が非常に多い.

●COPDは,治療によりよくなる疾患である.

●COPDの診断にはスパイロメトリーが最も大切である.

●スパイロメトリーがないときは質問票により評価し,診断的治療を行ってみる.

●しかし,必ず呼吸機能の評価は必要なので,病診連携を促進する.

高齢者における喘息とCOPDの診かた

著者: 寺本信嗣

ページ範囲:P.1850 - P.1854

ポイント

●喘息は完全に可逆的な気流閉塞性疾患,COPDは完全に可逆的ではない気流閉塞性疾患である.

●喘鳴があれば,喘息または喘息の合併COPD例の可能性が高い(吸入ステロイドの有効性が期待される).

●喀痰検査で好酸球が認められる場合,喘息の可能性が高い.

●急性増悪時に喘息とCOPDを厳密に鑑別することは困難である(治療を優先すべきである).

●臨床的には,吸入抗コリン薬が効果を発揮する閉塞性換気障害がCOPDである.

病歴,身体所見からみた診断のポイント

著者: 佐田誠

ページ範囲:P.1855 - P.1857

ポイント

●喘息の発作性呼吸困難や喘鳴には日内変動や季節変動がある.

●発作と無症状期を繰り返すのが喘息の特徴である.

●COPDでは無症状期はなく,常に(特に労作時に)息切れがある.

●COPD患者では,進行するにつれて特徴的な理学的所見を呈する.

●喘息とCOPDの合併例は少なくない.

呼吸機能検査・動脈血液ガス検査のポイント

著者: 三嶋理晃

ページ範囲:P.1858 - P.1861

ポイント

●喘息は原則として気道可逆性をもつが,COPDでも気道可逆性の認められることが多い.

●フローボリューム曲線は形状による鑑別診断と,検査手技の正当性の評価に有用である.

●肺拡散能力(DLCO)は,COPDの肺気腫病変による肺毛細血管床の減少をよく反映する.

●ピークフロー(PEF)によって喘息の病態が客観的に把握でき,患者の自己管理に有用である.

●A-aDO2の開大した状態で肺胞性低換気が進行すると,重篤な低酸素血症に陥る.

画像診断の意義と限界

著者: 田中裕士

ページ範囲:P.1862 - P.1865

ポイント

●COPDの画像診断の意義は,初期病変,合併症(肺炎,気胸)の検出にある.

●COPDの胸部X線検査では,過膨張所見,気道炎症所見,肺性心の所見がキーポイント.

●COPD,喘息のCTは,高分解能CTで評価する.

●喘息の発作期の画像は,さまざまな陰影を呈するため,画像のみでは他の疾患との鑑別がつかないことがあり,注意が必要.

血液検査・呼気ガス検査

著者: 山口正雄

ページ範囲:P.1866 - P.1868

ポイント

●アレルギー検査は喘息診断の参考になるとともに,抗原の特定・回避に有用な情報となる.

●吸入抗原に対する特異的IgEは,アトピー型喘息の判定の参考になる.

●血中の好酸球数や総IgE値は疾患特異性が低く,喘息診療において診断的価値は低い.

●呼気NOは喘息で増加する.

●検体検査はCOPD診断における有用度は低いが,増悪時の病態把握には重要である.

ガイドラインに基づく喘息とCOPDの治療

救急現場で役立つ気管支喘息急性期の治療

著者: 幸山正

ページ範囲:P.1870 - P.1872

ポイント

●低酸素血症でないか確認する.SpO290%以下であれば,酸素投与する.

●気管支喘息なのか鑑別する.

●β2刺激薬の吸入とステロイドの点滴投与で治療を開始する.

救急現場で役立つCOPDの急性期の治療

著者: 土原一真 ,   栂博久

ページ範囲:P.1874 - P.1877

ポイント

●病歴,理学所見,検査所見を総合した重症度の評価が重要となる.

●重症以上のCOPD患者では入院治療が必要な場合が多い.

●酸素投与を行う場合,二酸化炭素の貯留に注意が必要であり,必ず再評価が必要となる.

ガイドラインに基づく喘息の慢性期治療―ステップに応じた治療法

著者: 長瀬洋之

ページ範囲:P.1878 - P.1881

ポイント

●喘息予防・管理ガイドライン (JGL2006)では,重症度に応じて薬剤投与を行う.

●重症度判定では症状の頻度を参考にすると簡便だが,スパイロメトリーも極力行う.

●ステップ1では,長期管理薬は連用しない.

●ステップ2では,低用量吸入ステロイド(ICS)単剤投与を行う.

●ステップ3では,中用量ICSに気管支拡張薬を一剤または複数併用する.

●ステップ4では,高用量ICSに気管支拡張薬を複数併用し,必要なら経口ステロイドを追加する.

ガイドラインに基づくCOPDの慢性期の治療

著者: 伊藤洋子 ,   西村正治

ページ範囲:P.1882 - P.1885

ポイント

●慢性期のCOPDの薬物治療は,症状の軽減と急性増悪を減少させることである.

●気管支拡張薬による治療が,COPDの症状のコントロールの中心である.

●気管支拡張薬による治療は,単独あるいは併用療法を行う.

●長時間作用型気管支拡張薬は,短時間作用型と比較し効果的かつ利便性がよい.

●重症以上で有症状かつ急性増悪を繰り返す患者には,吸入ステロイド投与を行う.

●ステロイドの全身投与は,慢性期のCOPD患者には,原則行うべきではない.

喘息とCOPDの治療で重要な薬物の基礎知識

吸入ステロイド

著者: 髙久洋太郎 ,   永田真

ページ範囲:P.1886 - P.1890

ポイント

●吸入ステロイド薬(ICS)は,持続型気管支喘息の第一選択の長期管理薬である.

●高用量のICSは,視床下部・下垂体・副腎系の抑制をきたすことがある.

●ICS各製剤には特徴があり,症例や病態に即して選択する.

●ICSはCOPDでも急性増悪抑制やQOL改善効果をもたらす.

●ICS/LABA(長時間作用性β2刺激薬)合剤は,COPDの予後を改善することが報告されている.

β2選択的刺激薬

著者: 林ゆめ子 ,   福田健

ページ範囲:P.1891 - P.1894

ポイント

●β2選択的刺激薬には,LABAとSABAがある.

●LABAはICSと併用しコントローラーとして用い,SABAは発作時にリリーバーとして用いる.

●LABAの剤形には吸入,貼付,経口があるが,吸入薬の使用が最も推奨される.

テオフィリン

著者: 藤井一彦 ,   興梠博次

ページ範囲:P.1896 - P.1899

ポイント

●テオフィリン徐放製剤は,喘息長期管理において吸入ステロイド薬に併用する薬剤として有用である.

●テオフィリン徐放製剤は,COPD慢性期の治療薬として有用である.

●喘息・COPDの増悪時のテオフィリンは使用はされるが,エビデンスは少ない.

●安全にテオフィリンを使用するには,血中濃度への配慮が必要である.

抗コリン薬

著者: 山谷睦雄

ページ範囲:P.1901 - P.1903

ポイント

●抗コリン薬は主にM3受容体を遮断して,副交感神経による気管支収縮を抑制する.

●チオトロピウムは受容体からの解離が遅く,長時間作用型の薬理効果をもたらす.

●気管支喘息では,増悪時に,β2刺激薬に抗コリン薬追加を検討されてよいと位置づけられている.

●長時間作用型抗コリン薬は,中等症以上のCOPD患者の安定期長期管理に推奨されている.

●COPDにおける管理・治療には,抗コリン薬がファースト・チョイスとして用いられる.

ロイコトリエン受容体拮抗薬,抗アレルギー薬

著者: 大林王司

ページ範囲:P.1904 - P.1907

ポイント

●システイニルロイコトリエン(CysLTs)は,強力な気管支収縮物質である.

●経口ロイコトリエン(LT)受容体拮抗薬は,吸入より服薬コンプライアンスに優れる.

●LT受容体拮抗薬は抗炎症作用を有し,末梢気道領域移行も血流的であり,良好である.

●効果と薬剤費の両者とも,ICSがガイドラインにおける第一選択薬である.

●リリーバーとして静注薬の効果発現は早く,30分以内に一秒量の改善を認める.

●LT受容体拮抗薬は,レスポンダー(有効な症例)は約70%といわれる.

喘息とCOPDの非薬物療法

禁煙,ワクチン,運動,食事の生活指導

著者: 高野義久

ページ範囲:P.1908 - P.1912

ポイント

●喫煙は,COPD最大の原因であり,禁煙なしにCOPDの治療はありえない.

●医師の積極的禁煙支援により,患者の喫煙は確実に減少する.

●喫煙習慣を尋ね(Ask),禁煙の必要性を助言し(Advice),禁煙への意思を確認する(Assess)ことから治療が始まる.

●禁煙は,医師と患者が協力しながら,行動療法とニコチン代替療法を併用し,一気に始めることが肝要である.

●インフルエンザワクチンは,COPDの重篤な病状と死亡を減少させる.

●運動療法では,下肢運動療法(散歩・階段昇降)に最も高いエビデンスがある.

●COPDに対する食事療法の効果を示した唯一のエビデンスは,フルーツ摂取のみである.

●体重減少はCOPDの予後悪化因子であるため,カロリーの積極的摂取が推奨されている.

呼吸リハビリテーション

著者: 植木純 ,   北原エリ子

ページ範囲:P.1914 - P.1917

ポイント

●下肢による全身持久力トレーニングの有用性が最も高い.

●COPDの運動療法と長時間作用型吸入抗コリン薬との併用は相乗効果を示す.

●COPDは,ステージII以上が診療報酬上の適応となる.

在宅酸素療法,在宅人工換気療法

著者: 高崎雄司 ,   吉田浩幸 ,   金子泰之 ,   玉谷青史

ページ範囲:P.1918 - P.1925

ポイント

●早期からのHOT導入は意味がない.

●高流量の酸素投与は患者の状態をかえって増悪させることもある.

●HMVは呼吸筋疲労を改善させる.

知っておきたい治療のコツ

治療抵抗性喘息へのアプローチ

著者: 岡田千春

ページ範囲:P.1927 - P.1929

ポイント

●治療抵抗性の喘息患者に対しては,まず診断の再検討,合併症の有無をチェック.

●アスピリン喘息やAGA(アレルギー性肉芽腫性血管炎)などの特殊な喘息を理解する.

●患者の治療に対するアドヒアランス不足,心理的要因の重要性を理解する.

●ステロイド抵抗性喘息などの重症難治性喘息の知識を修得する.

アスピリン喘息―どう疑い,いかに治療するか

著者: 佐々木文彦 ,   榊原博樹

ページ範囲:P.1930 - P.1934

ポイント

●アスピリン喘息は,ほぼすべての非ステロイド性抗炎症薬によって喘息発作が誘発される.

●アスピリン喘息の頻度は,成人喘息の約10%で,鼻・副鼻腔の合併症をもつ症例が多い.

●アスピリン喘息の確定診断には,詳細な病歴の聴取とともに負荷試験が必要である.

●誘発物質を避けること以外に,アスピリン喘息に対する特異的な治療はない.

●ガイドラインに則した吸入ステロイド薬を主体とする治療が最も有効である.

妊娠と喘息―治療の基本と薬剤の選択

著者: 土橋邦生

ページ範囲:P.1936 - P.1939

ポイント

●喘息を有する妊婦では,喘息治療薬の服用は,症状を放置しておくより安全である.

●正しいモニタリングで,正確な重症度判定を行う.

●吸入ステロイド中心の薬物治療により,確実に喘息をコントロールする.

COPD重症例,呼吸不全の管理

著者: 桑平一郎 ,   永井明日香 ,   岩元徳全

ページ範囲:P.1940 - P.1943

ポイント

●COPDの重症,最重症の分類:一秒量の予測値に対する割合(%FEV1)が50%未満は重症,30%未満は最重症と分類される.

●気管支拡張薬の選び方:中等症以上のCOPDでは,抗コリン薬でもβ2刺激薬でも長時間作用型吸入気管支拡張薬が治療の中心的役割を果たす.

●吸入ステロイド薬の意義:長時間作用型β2刺激薬との組み合わせは,急性増悪防止,QOL改善に大きな意義がある.

●肺容量減少手術の適応:上葉優位に気腫性変化があり,運動能力の低下した症例では生存率に対し有益性があるので適応を検討する.

●日本での肺移植の現状:COPD,特に肺気腫に対しては日本ではほとんど施行されていないのが現状である.

喘息,COPD患者の外科手術―術前・術中・術後の注意点

著者: 三藤久 ,   阿部直

ページ範囲:P.1944 - P.1948

ポイント

●気管支喘息患者やCOPD患者は,周術期に呼吸器合併症を生じやすい.

●気管支喘息患者あるいはCOPD患者であっても,適切な診断・治療が行われていれば,周術期の呼吸器合併症のリスクは低減できる.

●気管支喘息患者では,気管内挿管を可能であれば控える.また,発作時はβ2刺激薬の気道内投与やステロイドの全身投与などを行う.

●COPD患者では,術前に禁煙,肺理学療法を薬物療法とともに行う.また,麻酔中は過度の気道内圧の上昇に注意を払い,術後には適切な疼痛管理を行う.

座談会

外来で診る喘息とCOPD―一般内科医・研修医のために

著者: 滝澤始 ,   加藤冠 ,   平田曉識 ,   安田敏男

ページ範囲:P.1950 - P.1961

 日常診療で頻繁に遭遇する喘息やCOPDにどう対応するかは,プライマリケアの最前線を担う一般内科医や,救急外来で多くの患者を診る若手医師・研修医にとって大きな課題だ.

 「最新ガイドラインに基づく喘息とCOPDの診療」をテーマ掲げた本号では,両疾患の診療の最前線で活躍される4人の医師にお集まりいただき,「喘息とCOPDの一般外来での診かた」についてわかりやすくお話しいただいた.

連載 成功率が上がる禁煙指導 誰にでもできる日常診療の工夫・4

保険診療での禁煙治療のテクニック2

著者: 安田雄司

ページ範囲:P.1968 - P.1973

 前回は保険診療による禁煙治療を行うための患者へのチェック事項を記載した.今回は私が実際に行っている禁煙治療について述べてみたい.禁煙治療の方法は手順書に則って行われればどのような方法を取り入れるかは各医師が考えればよい.私の禁煙治療の流れも参考になれば幸いである.とにかく患者に禁煙を達成させることが最終目標であることを念頭に行っていけばよい.

内科医が知っておきたいメンタルヘルスプロブレムへの対応・10【最終回】

心身医学的対応

著者: 中尾睦宏

ページ範囲:P.1974 - P.1977

 今回で連載の最終回となった.第9回までの特集では,内科診療で遭遇するケースが多く,特に注意が必要な精神科疾患を選んで解説した(表1).内科医の先生方が実地ですぐに応用できるよう平易で短い解説を心がけたので,少し乱暴なまとめ方があったらお許しいただきたい.

外来研修医教育への招待・10

研修医の外来診療はマイナスばかり??

著者: 山本亮 ,   川尻宏昭

ページ範囲:P.1978 - P.1982

 これまでの数回ではケースを挙げながら,「緊急度」,「見逃してはいけない」,「頻度」という軸を使い,さらにフォローアップという「時間軸」も利用して外来教育を行っていく方法について述べてきました.ここまで読み進めていくと,「研修医が外来診療を行うことは大変だなあ」,「患者さんにとって時間もかかるしあんまりよくなさそうだなあ」と思われている方も多いかもしれません.本当に,研修医が外来診療を行うことはマイナスばかりなのでしょうか? 今回は,研修医が診察することでよかったケースについて,少し考えてみたいと思います.

研修おたく海を渡る・22

病気のテンポ

著者: 白井敬祐

ページ範囲:P.1983 - P.1983

 「あとどれぐらい残されているのですか?」

 がん診療をしていると,日々直面させられる質問です.過去のデータをもとに,がんのタイプとステージから大まかなことはわかるのですが,それが目の前の患者さんに当てはまるかどうかは,僕にはまったくもってわかりません.

聖路加Common Diseaseカンファレンス・7

あなたは経口血糖降下薬を上手に使えますか?

著者: 坂田道教 ,   出雲博子

ページ範囲:P.1984 - P.1988

糖尿病診療 まずここを押さえよう
①糖尿病はインスリン作用不足(インスリン分泌不全・インスリン抵抗性)を原因として発症することを念頭に置こう.
②経口血糖降下薬は作用機序に応じて,それぞれの症例で使い分けよう.

目でみるトレーニング

著者: 長嶋道貴 ,   山原英樹 ,   森本聡 ,   渡邊奈津子

ページ範囲:P.1989 - P.1995

書評

イラストで学ぶ―心臓ペースメーカーStep by Step

著者: 清水昭彦

ページ範囲:P.1894 - P.1894

 この度,医学書院より刊行された『イラストで学ぶ 心臓ペースメーカーStep by Step』の書評の依頼を受けて,この本を読む機会を得たが,私はページをめくり最初に驚いたのはその内容の斬新さである.どのページにもカラーのイラストが描かれ,文字も適所にカラーが使われており,この手の本にありがちな難解な専門用語が並び,その用語の説明が長々と記述してあるという従来のものとはまったく異なっていた.また,人物や動物の絵が適時挿入されていて,研修医や看護師,理学療法士などのコメディカルの方々も手にとって楽しく学べるように構成されている.患者さんの説明にも,わかりやすくてよいのではないかと思う.

血管造影のABC―研修医レベルから始める20エピソード

著者: 宮城征四郎

ページ範囲:P.1912 - P.1912

 箕輪良行先生と七條祐治先生による『血管造影のABC』に目を通した.両先生は,臨床研修病院の指導医である.箕輪先生は聖マリアンナ医科大学救急部,七條先生は船橋市立医療センター放射線科で研修医の指導にあたっている.本書の20の章は24名の方々が執筆している.内科医4名,救命救急医5名,脳神経外科1名,循環器科1名,残りの執筆者は放射線科医で,脳,心臓,肺,肝臓,膵臓,結腸,四肢などの臓器について,それぞれの方が自分の得意分野を中心に,血管造影の適応,種類,方法と手技(消毒,穿刺,止血,読影)などを解説している.

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編集室より

著者:

ページ範囲:P.2006 - P.2006

●「英国パブが完全禁煙に」,新聞紙面を飾ったこんな見出しをご記憶の方も多いだろう.パブで紫煙をくゆらせる英国紳士の姿は,映画でもお決まりのワンシーンであり,英国式生活の代名詞とも言える.それだけに,2007年7月より英国全土で実施された禁煙法のニュースは,日本でも大きく報道された.

●この法律は,パブやレストラン,オフィスはもちろん,若者でにぎわうクラブや会員制の飲食店にも例外なく適用され,家庭やホテルの客室などのごく一部を除いて,屋内での喫煙を禁止するという強力なものである.英国議会で同法成立を主導した労働党内も,さすがに全面禁煙派と一部容認派の意見が鋭く対立,党議拘束を外して採決に臨まざるを得なかったが,結局,大差で全面禁煙案が可決された.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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