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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術10巻4号

1982年04月発行

雑誌目次

病気のはなし

Sjögren症候群

著者: 奥田稔 ,   谷垣内由之

ページ範囲:P.304 - P.309

Sjögren症候群とは
 Sjögren(シェーグレン)症候群(Sjsと略す)は涙腺,唾液腺を上体に,皮膚汗腺,外陰部分泌腺,消化器(胃,腸,口腔,咽頭など),気道(喉頭,鼻,気管)の分泌腺など,全身の外分泌腺の分泌不全による乾燥症候群で,分泌不全は各臓器へのリンパ球の著明な浸潤,腺実質の破壊,線維化によると解される.さらにしばしば筋,関節,甲状腺,心,肺,肝,腎などに膠原病の病像を示し,免疫血清学的異常を伴い,自己免疫疾患の一つと考えられている.

技術講座 血液

血液検査のための成分分離法

著者: 亀井喜恵子

ページ範囲:P.332 - P.336

成分分離の目的
 血液は無形成分と有形成分から構成されている.無形成分とは血漿(血清)であり,有形成分とは細胞成分,すなわち血球(赤血球,血小板,白血球)である.
 血液検査に用いる検体(試料)は検査の目的によって採取方法や分離方法が異なる.例えば血液一般検査には抗凝固剤処理した全血を,凝血学的検査には血漿〜血清を,さらに細胞の機能検査には目的とする血球を単離するという具合いに,それぞれの検査に必要な試料を機能的にも形態的にもできるだけ変化させることなく純粋に分離しなければならない.

生理 超音波診断・1

肝・胆道・膵の超音波診断—基本走査と超音波像

著者: 江原正明 ,   御園生正紀 ,   篠崎文信 ,   漆原昌人 ,   大野孝則 ,   土屋幸浩

ページ範囲:P.337 - P.342

 超音波検査は,電子走査型などの診断装置の開発や改良により,簡便な操作で鮮明な映像が得られるようになり,CTやアイソトープ診断とともに肝,胆道,膵の診断に不可欠な方法となった.
 消化器疾患に対する超音波診断は,非侵襲的な検査で,被検者に苦痛を与えないで行うことが可能で,特にリニア電子スキャンの超音波診断には次のような長所がみられる.

血清

血液型亜型検査の進め方

著者: 渡部準之助

ページ範囲:P.343 - P.349

 日本における血液型学の発展はめざましく,ここ十数年来多くの新しい型が発見されており,従来は血液型に対し最も恵まれた人種であると言われていたものが急に複雑となってきて,血液型を学ぶ者にとっては大きな興味を持ってその検索に当たることができるようになった.
 さて,その複雑な血液型の中でここではABO式血液型の亜型の検査法について解説することにする.

検査法の基礎理論 なぜこうなるの?

胃液の酸度とは

著者: 森賀本幸

ページ範囲:P.310 - P.317

 1966年にシカゴで開催されたアメリカ消化器病学会において,胃液酸度の測定について1963年以来検討をつづけていたMooreの理論に基づいて,Hightower・Janowitz・Moore・Grossmanの連名で胃液酸度に関する提唱が行われた.その内容の第一行目に"胃液酸度とは何か?"の項目があるが,今回の表題に同じであり,その解答がそこに見いだされるといってよいであろう.ここでは,上記の提唱が意図したところと,今日日本消化器病学会の胃液測定法検討委員会が合議の上で提出した標準的胃液検査法とにしたがって述べてみたい.

血液の凝固

著者: 磯部淳一

ページ範囲:P.318 - P.324

生体における血液凝固の意義
 血管が損傷されると血液は血管外へ流出する.その際,損傷された血管の種類,太さ,及び血管周囲組織の傷害の程度により,皮内出血にとどまる場合から,出血死に至る場合まで,生体のうける被害は様々である.これに対して細動脈のごとき血管は,生体防御反応として止血反応で対処する.本反応には血管収縮,血小板粘着・凝集,さらに血液凝固,血管修復の過程があり,血液凝固はその一部を担うにすぎないが,止血能全般からみても重要であることに異論はない.
 正常状態では血液が血管内で流動性を失うことはない.しかし厳密にいえば,わずかずつではあるが凝固反応は進んでおり,血中で生理的に存在する凝固阻止因子あるいは線溶因子によって,凝血塊の形成ないし増大が抑えられ,見かけ上,非凝固状態に置かれているにすぎない.そしてこれらの因子の作用が病的に低下すると,血液は過凝固状態に傾き,血管内で凝血塊が生じる.動脈壁がアテローム(粥状)硬化に陥ると,接触因子が活性化され,血小板の活性化,さらに動脈血栓の形成へと進展してゆく.このように血液凝固は生体を守る一方,病的状態をひきおこす両刃の刃でもある.

分離分析シリーズ・4

超遠心法

著者: 岡島慶明

ページ範囲:P.325 - P.331

 超遠心機(ultracentrifuge)は1920年代に,スウェーデンのT.Svedbergらにより研究が進められて以来,理論,装置両面にわたり多くの学者の研鑚を得て,今日の盛況を迎えるに至った.
 一般に超遠心機は分離用超遠心機(preparativeultracentrifuge)と分析用超遠心機(analyticalultracentrifuge)との二種類に大別される.

マスターしよう基本操作A

位相差顕微鏡の使い方

著者: 磯辺雄二 ,   嶋田裕

ページ範囲:P.357 - P.364

 位相差顕微鏡は,対象物と媒質との光学的厚さ(屈折率と厚さの積)の差を明暗のコントラストに変えることによって,色あるいは明暗のない対象物の観察を行うことができるようにした装置である.したがって位相差顕微鏡を用いることにより,ほとんど透明な生きた細胞,細胞内の構造,微生物や結晶などに染色をほどこすことなく,そのままの状態で観察することができるのである.この特徴を生かして,臨床検査の分野では血液検査のほか,尿沈渣,微生物や虫卵の検査,培養細胞の観察など,広い範囲で位相差顕微鏡が用いられている.
 位相差検鏡は普通の生物顕微鏡に位相差装置を取りつけることで可能となり,その使い方は一般の光学顕微鏡と比べて特に難しいことはない.しかし正しい使い方をしないと,位相差の効果を十分に発揮させることはできない.今回はNikon Optiphot顕微鏡に位相差装置を取りつけたもので,スライドグラスとカバーグラスを用いた標本を観察する場合を例にとり,その使い方を説明する.

マスターしよう基本操作B

抗酸菌の検査法—特に分離培養と簡単な鑑別法

著者: 奥住捷子 ,   水岡慶二 ,   正井秀雄

ページ範囲:P.365 - P.373

抗酸菌の感染による疾病として,伝染性の強い慢性特異性炎症性疾患である結核症が存在することは周知のことであるが,近年結核菌以外の抗酸菌によって起こる結核症と酷似する疾患が数多く報告されるようになった.これらの抗酸菌群を非定型抗酸菌と呼んでいる.集落の生化学的,形態学的性状が異なるだけで,その他の点は結核菌とよく似ているが,ヒトからヒトへの伝播性のないこと,抗結核剤が無効である例が多いことなどから,結核菌との鑑別が必要となる.非定型抗酸菌には病原性のあるもの,ないものが含まれ,多種多様であり,抗酸菌の鑑別,同定によって,患者に対する治療方針が決定される.抗酸菌を最初に分離・同定鑑別し得るのは細菌検査室であることを自覚し,手技を十分にマスターしよう.染色:抗酸性染色を実施することで,抗酸菌と他の細菌を区別できる.他の細菌と異なり発育速度が非常に遅いので培養の結果を得る前に,塗抹(標本)の鏡検成績が診断の一助となる例が多い.分離培養:抗酸菌の同定,感受性試験も生菌を得ることから始まるので,前処理液,濃度,時間,検査材料との比率などに注意して,良い結果を得るようにする.感染予防:"結核は治る"という知識のせいか,安全管理軽視がみられるが,より一層の注意が望ましい.

おかしな検査データ 検査事故における原因解析の進め方,考え方・3

ある患者の血清無機リン値が極端な異常高値を示した

著者: 畑義治 ,   天川勉

ページ範囲:P.374 - P.376

 今日の臨床化学検査は,オンラインシステムによるマルチ自動化がますます盛んな状況にあり,大量検体処理の迅速化,省力化に追われているのが現状である.
 そのような中で,今もし,通常ではありえないような異常値が発見された場合,皆さんはどう対処されるでしょうか.直ちに再検確認してほぼ同一値であったならば,「再検済,測定値には間違いなし」として報告するかもしれません.

最近の検査技術

IgM抗体検出法—特にトキソプラズマ症,風疹に関して

著者: 亀井喜世子

ページ範囲:P.377 - P.382

 感染あるいは免疫の過程で初めに現われる抗体はIgM抗体である.IgM抗体の産生は一過性であり,ついでIgG抗体が流血中に現われる(図1).IgG抗体はIgM抗体に比べ低分子で容易に組織中に拡散するが,IgM抗体は胎盤を通過しない(図2).したがって臍帯血あるいは新生児血中に特異IgM抗体が検出されれば,新生児は子宮内で感染を受けたことの確定診断となる.
 また成人の血清中に特異IgM抗体が証明されれば,それは感染を受けて間もないという感染の時期を類推できる.特にトキソプラズマ,風疹ウイルス,サイトメガロウイルス,ヘルペスウイルスなど母体が感染すると胎盤を経て病原体が胎児に移行し,障害児を産生する恐れのある感染症では母体の感染時期,胎児の感染の有無が問題とされる場合が多い.この場合,特異IgM抗体の検出をいかに早く,かつ特異的な方法で行うかが一つの鍵となる.そこでまず初めに,トキソプラズマ症,風疹について簡単にふれたのち,現在行われているIgM抗体の検出法について,著者のトキソプラズマ症における実験データをおり混ぜて紹介したい.

知っておきたい検査機器

硬組織ミクロトーム

著者: 塩澤俊一 ,   今井康雄 ,   藤田拓男

ページ範囲:P.383 - P.387

 一般に組織学的検索は,パラフィンなどの包埋剤に組織を埋めてミクロトームで薄い切片を作ることにより行われるのであるが,骨のような硬い組織の場合,これをそのままパラフィンに包埋して切片を得ることができない.それはパラフィンと骨に硬度差があって例えよく切れるナイフを用いて骨を切ったとしても,パラフィンがずれてしまってうまく切片とならないのである.つまり組織切片を得るには,(1)目的とする組織を切ることのできるナイフ (2)組織と周りの包埋基材との間にできるだけ硬度差が少ないことの二つが同時に満足される必要がある.そして従来の方法はその骨組織を脱灰することによってその硬度を減らし,(1)普通のミクロトームのナイフで切れるようにする (2)周りの包埋基材と同等の軟かさを得ようとするものであった.

トピックス

クレアチニン選択性酵素電極

著者: 中根清司

ページ範囲:P.350 - P.350

 G. G. Guilbaultら1)はクレアチニナーゼを膜に固定化し,アンモニアガス電極にセットしてクレアチニン選択性酵素電極を考案した.臨床検査の中でクレアチニンはスクリーニング検査としての自動分析法と緊急検査としての測定法が必要である.クレアチニン選択性酵素電極は後者の測定法として有用になるであろう.
 クレアチニナーゼといわれている酵素には2種類あり,その一つはクレアチニンアミドヒドロラーゼ(EC3.5.2.-)で他の一つはクレアチニンイミノヒドロラーゼ(クレアチニンディイミナーゼ,EC 3.5.4.21)である.Guilbaultらの方法は後者で,その反応原理は次のようである.

梅毒治癒判定の指標としてのIgM抗体の検出

著者: 菅原孝雄

ページ範囲:P.351 - P.351

 梅毒が治癒したか否かを判定することは非常に難しく臨床上重大な問題で,特に潜伏および晩期潜伏梅毒で重要である.
 これまでも,血清中の梅毒トレポネーマに対する特異的なIgM抗体を検出し,梅毒治療の指標とする試みが多くの学者によってなされてきた.1972年にJohnstonは,螢光標識抗ヒトIgMを用いたFTA-ABS-IgM法を臍帯血の検査に使用し,新生児の梅毒感染の有無の判定に利用できると発表した.しかしこの方法は偽陽性を示す例が多く,7S(IgG)抗体が反応したり,リウマチ因子が非特異的に反応するので広く利用されるに至らなかった.

腫瘍マーカー

著者: 溝口香代子

ページ範囲:P.352 - P.352

 元旦の新聞に,がんによる死亡率がついに脳卒中を抜いて第一位になったことが報じられていた.癌――悪性腫瘍の成因論や治療に関しての研究は現代医学の最大の課題となっている,癌の診断には種々の方法が駆使されているが,最近,本来生体内ではほとんど存在しないが,癌などの腫瘍組織での産生,もしくは局在が証明される物質が続々と明らかにされるようになってきた.これらのものを総称して腫瘍マーカーと呼んでいる.腫瘍マーカーとしては,癌胎児性蛋白,腫瘍関連抗原としての蛋白成分,各種の酵素やそのアイソエンザイム,ホルモン,ヌクレオシド,ポリアミンなどが報告されており,それらの分析方法や陽性率と偽陽性率,診断のための有効な組み合わせ(multiple markers assay)等についての議論が活発になってきているようである.1981年9月には第1回腫瘍マーカー研究会が開催され,また第28回臨床病理学会総会でもシンポジウムのテーマとして取上げられている.
 肝癌におけるα-フェトプロテイン(α-FP),消化器瘤におけるCEAなど,当初は腫瘍に特異的と考えられていたものも,その大部分は必ずしも悪性朧瘍特異的でないことが明らかにされてきている,しかしその臨床的意義は,特に悪性疾患の術後管理や治療効果判定マーカーとして重視されており,特に各種マーカーの効果的組み合わせによって再発再燃の予知ができるとの議論が多いようである.腫瘍マーカー研究会で発表された各種マーカーは次のようなもので,測定方法はRIA及びEIAが多かった.

我らのシンボル

技師会マークの誕生—社団法人日本臨床衛生検査技師会

著者: 冨川榮一

ページ範囲:P.353 - P.353

 社団法人日本臨床衛生検査技師会の前身である,日本衛生検査技師会当時のことである.
 永年運動を続けてきた「衛生検査技師法」が実を結び,昭和34年10月に,第1回の「衛生検査技師法」による国家試験が行われた.

自慢の職場

自然に仕事に情熱をかきたてられる職場—三菱油化メディカルサイエンス

著者: 中山雄二郎 ,   佐川直敏

ページ範囲:P.354 - P.355

プロフィール
 本社及び研究所は東京都板橋区にあり,その他に関西事務所と広島事務所が置かれている.発展途上の検査センターです.創立は4年前の昭和53年3月1日で,資本金は3億円,代表者は福田順一となっています.創立間もないとはいえ,従業員はすでに260名にもなっています.

検査を築いた人びと

検眼鏡,角膜計を発明した ヘルマン・フォン・ヘルムホルツ

著者: 酒井シヅ

ページ範囲:P.356 - P.356

 眼科学は19世紀以降飛躍的な発展をつづけているが,それがヘルムホルツの検眼鏡の発明に負うところが大きいことは万人が認めるところである.ヘルムホルツは眼科学のみならず,医学と物理学を結びつけ,20世紀における医学の飛躍的発展の基礎づけに重要な役割を果たした人である.
 ヘルムホルツは1821年,ベルリンの郊外のポツダムに生まれた.父親はギムナジウムでギリシァ語を教えていた.父親の影響で少年時代からギリシァ語の詩を鑑賞し,将来はギリシァの古典を研究したいと思う日もあった.しかし,彼がいちばん得意としたのは数学で,将来物理学者になりたいと思っていたが,家庭の事情から,ベルリンの軍医養成所の給費生となって医学を学んだのである.しかし,在学中にここで19世紀の医学の巨匠ヨハネス・ミュラーの知遇を得ることができた.ミュラーは生理学,発生学の方面に多大な功績を残し,ロマン主義哲学に陶酔していたドイツ医学界を目覚めさせるのに大きな役割を果たした人である.ヘルムホルツは彼から深い感化を受けていた.

コーヒーブレイク

ウオークマン

著者:

ページ範囲:P.388 - P.388

 私は流行をすぐ追いかけるのはあまり好きでない.いや本当は好きで,電気的なヒント商品がでるとすぐ買いたくなるのだがじっと我慢しているのが正直なところである.しかしラジオも録音装置もないウォークマンに,何だって人気があるのか不思議だった.
 あんなもの聴いていると難聴になるぞと脅していたが,娘は我慢しきれず買ってきた.片耳だけのイヤホーンとは大違いで,洒落た軽いレシーバーを両耳にあてると,低音は少し物足りないが切れの良いきれいな高音で,両耳に直接入るから室内においたスピーカーで聴くより遥かに立体感がある.電車の中などで音が漏れて不愉快だという投書記事を読んだにとがあるが,自分に適した音量だとほとんど他人には漏れない.ディスコやカラオケの騒音ともいえる音のエネルギーに比べたら,聴覚にあたえる悪影響もそうあるとは思えない.四次元的な良い音,テクノっぽいレシーバー,ソニーというブランド,ちょっと高目の値段などが若い人たちを巧みにとらえたのであろう.

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略語シリーズ

ページ範囲:P.382 - P.382

CPK creatine phosphokinase;クレアチンホスフォキナーゼ.creatine kinase(CK)ともいう.CPKは,ATPナクレアチン⇄ADPナクレアチンリン酸の反応を触媒し,筋肉,心筋,神経組織に多く含まれ,そのアイソザイムはそれぞれMM,BM,BBであり,それらの疾患とくに心筋梗塞と筋ジストロフィーの診断に有用である.
C.V. closing volume;クロージング・ボリューム.肺機能検査の一つで,末梢細気管支の閉塞性病変の早期診断の指標となるといわれる.通常,N2が2を指示が2として呼出濃度曲線をみると,低肺気量位では曲線は急激に変化する.それはIV phaseと呼ばれ残気量位までの肺気量をC.V.という.

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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