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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術10巻5号

1982年05月発行

雑誌目次

病気のはなし

ニューモチスティスカリーニ肺炎

著者: 森健

ページ範囲:P.396 - P.401

 ニューモチスティスカリーニ(Pneumocystis carinii)肺炎は,はじめ第二次世界大戦後のヨーロッパで,孤児院などにいる未熟児や虚弱児,栄養失調の小児に流行性に発生する肺炎として注目されたが,最近では免疫不全をきたす疾患を有する患者や,免疫抑制剤の投与をうけている患者に発生する日和見感染症の一つとして脚光を浴びている疾患である.我が国では,1961年吉村らの報告1)が最初で,死亡例の報告が相次いだが,この疾患に対する認識も高まると同時に,ST合剤が治療薬として有効であることもあって,ここ数年の間に生前診断して治療した症例や,治癒せしめた症例の報告がみられるようになってきた.

技術講座 生化学

インスリンの定量

著者: 小口修司

ページ範囲:P.419 - P.424

 インスリンは,A鎖とB鎖の2種のポリペプチドがS-Sにより結合した分子量6,000の比較的小さいペプチドホルモンである.それは膵ラ氏島β細胞から分泌され,α細胞より分泌されるグルカゴンに拮抗し血糖の調節機構に重要な役割を果たしている.このバランスがくずれると糖尿病が引きおこされてくる.血糖低下作用のみならず脂肪合成,蛋白同化作用の促進,その他広い作用を持っている.
 インスリンの測定は真性糖尿病,二次性糖尿病の鑑別診断上,血糖測定と並んで重要な検査である.1959年,Berson & Yalow1)により開発されたインスリンのラジオイムノアッセイ(RIA)は特異性に優れ,高感度でもあり,以後,インスリン測定に限らず各種のペプチドホルモン,ステロイドホルモン,その他の非ホルモン物質などの定量の分野にまで応用され発展してきた.インスリンの測定法には,このRIAを含めた免疫学的測定法の他に生物学的測定法,受容体を利用した測定法などがあるが,現在特殊な目的をもった実験の場合を除きRIAが一般に広く用いられている.ここではRIAによるインスリン測定の技術解説をするとともに,データ評価を行う上での注意点に重きをおいて解説したい.

血清

パネルセルの使い方

著者: 神田靖男 ,   石野たい子

ページ範囲:P.425 - P.431

 輸血に際して行う交差適合試験は最も基本的かつ重要な検査であることは過去も現在も変わりはない.しかしながら臨床の実際においては緊急時または休日,夜間など,一部人員や設備の整った施設においてはともかく,多くの医療施設ではそれ以外の場合においてもかなりグローバルな方法で行っていることをよく耳にする.しかし,不規則性抗体の存在は表1のごとく患者においては約1%に,また妊婦においては5%の頻度で検出され,その検出の意義は高い.現在,不規則性抗体検出に対しては,自家製のパネルセルを使用するより市販のものを使用する施設が多く,またその効果を支えるいろいろな検出用試薬も採用されているが,今回は赤血球抗体,特に不規則性抗体の検出,および同定の過程ではパネルセルがどのような役割を果たしているか自験例を含め解説したい.

生理 超音波診断・2

婦人科

著者: 小林充尚

ページ範囲:P.432 - P.437

 超音波診断法は,現在最も情報量の多い検査法の一つとして,各科領域にわたって広く用いられている臨床検査法である.
 この検査法の特徴は,特殊な前処置が不要であること(ただし産婦人科領域の検査では,膀胱が十分に満たされていることが必要),無痛性非侵襲性検査であること,胎児にとっても放射線被曝の危険のないこと,すぐその場で結果がわかること,などである.

病理

病理検査の環境保全

著者: 長嶋和郎 ,   諏訪幸次 ,   岩坂茂 ,   須山貞子

ページ範囲:P.438 - P.441

 病理学は病気の診断と原因を追求する学問として,医学と医療に大きく貢献している分野である.この偉大な使命の下に病理検査に日常たずさわる多くの入々は,自らの身の回りの環境保全についてはむしろ無関心で仕事に没頭してきたと言っても過言ではなかろう.
 本稿は現在行っている病理検査の過程で遭遇する危険なものに目を向け,そして現在考えられる対応策について考察するのが目的である.便宜上危険物を化学的物質と生物学的物質とに分け,それぞれを実際の病理検査過程に即して記載したい.また付記として,最近問題となっている放射性同位元素に関する点およびCreutzfeldt-Jacob病の病理検査についても言及したい.

検査法の基礎理論 なぜこうなるの?

ICGとBSPの不一致

著者: 浪久利彦 ,   山城雄二 ,   及川洋子

ページ範囲:P.402 - P.406

 ICG試験もBSP試験も肝の色素排泄試験として用いられ,特にICG試験は副作用が少ないということから,現在では肝機能検査法として欠くことのできない試験となっている.ICG試験がこのように広く用いられるようになるまでに,ICG試験はBSP試験の代わりに使えるかという疑問から,この両試験の差について観察した研究は多くみられるが,一般にはその差を示すことはなく,相互の結果は大体同じように解釈できるとされている1,2).しかし現実に両試験を行って一致しない場合も決して少なくないので,その原因について検討した結果を述べたい.

検尿と精度管理用物質

著者: 富田仁

ページ範囲:P.407 - P.412

 検尿は,臨床検査として最も古くから行われ,現在でも健診,検診をはじめスクリーニング検査としてベッドサイド検査として,また,follow up検査,時に確認検査として,どこでもいつでも高頻度に行われている.しかし,精度管理の面から眺めると,検尿は他の臨床検査に比してもっとも遅れている.試験紙法が出現する以前までは,検尿の検査法は,ほぼ一定していたが,試験紙法が出現し,検査法の変遷が急ピッチに起こってからは,検尿データの動揺は想像以上に大きく,世界中どの国のcontrol surveyの成績を見ても,C.V.が30〜180%である.これは,検体そのものが不安定であるばかりではなく,標準物質(standard material)ないし参考物質(reference material)といわれるような精度管理用物質を使用しなかったたあと肉眼で見るという個人差が大きく出るためである.
 最近ようやく,検尿においても標準物質なり参考物質を使用しなくてはならないし,標準法ないし参考法も確立しなくてはならないとの気運が高まってきた.しかし血清に比べ,尿は著しく多くのプラスないしマイナスの干渉物質を含んでいるために,ある一つの物質と方法に限定することはできない.したがって,現在なお多くの問題点を含んでいて,未解決のものがほとんどであるが,検尿の際に用いられているないし用いられるであろう精度管理用物質(成績管理用物質)について,その一部を紹介しよう.

選択培地の機構・2

嫌気性菌

著者: 森伴雄

ページ範囲:P.413 - P.418

 かつて嫌気性菌感染症といえば,芽胞をもつClostridiumによる破傷風,ガス壊疽,ボツリヌス食中毒などであったが,これらの疾患は頻度が低く,一般に特殊なものと考えられていた.
 しかし,嫌気性菌の分離培養法の急速な進歩に伴い,無芽胞嫌気性菌に関心が高まりつつある.無芽胞嫌気性菌はヒトの正常細菌叢を構成する主要な細菌で,酸素に対してClostridiumより敏感であるが,嫌気性菌用培地の国産化,簡便な嫌気培養装置の開発などにより嫌気性菌の分離率は飛躍的に増加し,培養陽性材料の15〜20%から分離され,そのほとんどが無芽胞嫌気性菌である.これらの大部分は非病原菌あるいは弱毒菌と考えられていたが,近年,悪性腫瘍,白血病,自己免疫疾患のように重篤な基礎疾患を有する患者の増加とともにopportunistic infectionの起因菌としても重要視されるようになってきた.

マスターしよう基本操作A

脳波電極の付け方

著者: 石山陽事

ページ範囲:P.451 - P.458

 電極の付け方は生体電気現象導出の基本であり,雑音の少ない良い記録を得るためには,もっとも重要な検査技術の一つである.最近は生体現象用増幅器の性能が向上し(雑音の少ない高入力インピーダンスを持った差動増幅器が使用されている),かつ電極の材質も良くなっており,心電図程度の微少電位(mV=10-13Vの桁の電位)ならいとも簡単に増幅し記録することが可能となっている.しかし電極を皮膚に接着する技術は従来どおりであり,かなりの熟練が必要である.特に脳波導出に関しては脳波そのものの電位が小さく記録に雑音が混入しやすいばかりか,使用する電極も心電図電極に比して小さく,それだけ皮膚と電極との間の接触抵抗は大きくなる.加えて脳波検査は頭髪の影響も無視できないなど,電極接着技術のマスターは容易ではない.ここでは皿電極による電極の付け方について解説する.

マスターしよう基本操作B

血清分離のしかた

著者: 稲次洋子 ,   石橋みどり ,   溝口香代子

ページ範囲:P.459 - P.466

 血清分離または血漿分離操作は諸検査に用いる血液検体の前処理として一般的である.近年この操作の簡便化を図るため,自動血清分離分取装置および種々の血清分離剤などが開発,市販されている.今回は臨床化学検査室を例にとり,単に血清分離だけでなく,分離の前段階である検体受付より血清保存までを,検査の重要な位置を占める一連の作業と認識し,血清分離剤の使用知見を含め,当検査室での実状を交えながら話を進める.
なお,遠心機の使い方についての詳細は木誌vol.7 no.12(1979年)の本欄「遠心機の種類とその使い方」を参照されたい.

最近の検査技術

酵素イムノアッセイによる血中薬物濃度の測定

著者: 西村成子 ,   宮本侃治

ページ範囲:P.467 - P.472

 血中薬物濃度の測定法は,主として化学的方法(特にクロマトグラフ)と免疫化学的方法に大別でき,木稿で述べる酵素イムノアッセイ(enzyme immunoassay:EIA)は後者に属する.
 EIAは抗原または抗体を酵素でラベルし,この酵素の活性を指標にして抗原一抗体反応物の測定を行い,反応系に加えられた抗原または抗体の定量を行う方法である.免疫化学的分析法にはほかにラジオイムノアッセイ(radioimmunoassay:RIA:1959),螢光イムノアッセイ(fluoroimmunoassay,FIA,1972)やスピンイムノアッセイ(free radical assay technique:FRAT,1972)も含まれるが,EIAのラベルに用いられている酵素の代わりに,RIAは放射性同位元素を,FIAは螢光性物質を,またFRATはスピンラベルを用いている.またその他の免疫化学的方法としてのネフェロメトリックイムノアッセイ(nephelometric immunoassay:NIA,1979)はポリハプテンを競合抗原として用いた場合の抗原-抗体反応による結合物を散乱光法あるいは比濁法で測定する方法である.
 EIAは1971年にAvrameasら1),Engallら2)およびVan Weemenら3)によって報告され,Scharpeら4)およびWisdom5)により総説されている.EIAは抗原-抗体反応により得られた結合物を,非結合物から物理的に分離することの有無により,ヘテロジニアス(非均一系)EIAと,ホモジニアス(均一系)EIAとに分類される.歴史的には前者は生体活性物質の測定に利用され,1972年Rubensteinら6)により開発された後者は薬物測定方法として発展してきた.近年薬物療法に際して血中薬物モニタリングの必要性が認められ,現在は実用化の段階となっている.種々の薬物濃度測定の中で,本稿ではEIAについて略述するが,薬物測定への応用もすでに総説7,8)されている.

知っておきたい検査機器

自動血清分取・分注装置

著者: 堀越晃

ページ範囲:P.473 - P.478

 臨床検査の高度利用による検査件数の増加に伴い,自動分析装置の導入が進み,検査の能率はかなり向上した.しかし,検査以前の前処理といわれる検査依頼から測定開始までの作業を,能率化またはシステムすることについては,あまり関心が払われている施設は少ない.これは前処理という作業が大切なことはわかっていても,ここに費用をかけることには直接収入に結びつかないことから後回しにされているのである.しかも大切な前処理に臨床検査技師を配置している施設は少なく,全く資格のない素人が配置されてこれらの作業を行っているのが実情ではないだろうか,ところがこれらの前処理が正しく,しかも迅速に行われているかどうかによって,それ以後の検査業務に大きな影響を及ぼしている.
 検体検査として用いられる検体のうち,生化学検査,核医学(RIA)検査,血清(含輸血)検査および特殊検査などに血清あるいは血漿を用いる検査では,採血から血清(血漿)を分離するまでの前処理作業が必要である.毎日検査室に運び込まれる大量の検体を部門別に整理し,番号をつけて遠沈分離し,血清が分取・分注されて検査に入るまでには,かなりの時間と労力が必要である.これらの作業は検査以前の前処理として全く人手にたよって実施されてきたが,検体数の増加に対処するために,機械化による能率アップ,感染予防,採血管の取り違い,分注作業のミスなどをなくすために,システム化によって自動的に処理する装置の開発が行われるようになってきた.

おかしな検査データ

自動血球計数器のヘマトクリット値における誤差要因について

著者: 木村寿之 ,   佐々木正照 ,   黒川一郎

ページ範囲:P.479 - P.481

 諸種の自動血球計数器が使用されてくるとともに,計数器間の測定値の差があることが指摘され,われわれもこの点2,3検討し報告してきた1,2).今回特に赤血球容積値に及ぼす諸種要因と,測定器間で測定値差の生じやすい疾患例の赤血球について検討比較した結果と,最近われわれが経験した,おかしなヘマトクリット値について,その原因と対策についても検討を加えたので報告する.

トピックス

わが国におけるLegionella pneumophilaの分離

著者: 斎藤厚

ページ範囲:P.443 - P.444

 1976年夏米国のフィラデルフィアで発生した原因不明の集団肺炎(Legionnaires'disease,在郷軍人病)はこれまで知られていなかった細菌で起こった細菌性肺炎であることが明らかになり,この菌はLegionella pneumophilaと名付けられた.本菌は従来のいかなる細菌用培地にも発育しないが,その培養法も考按,改良され,本症の診断法(菌の分離,直接螢光抗体法による検体中の菌の証明,間接螢光抗体法による血清抗体価の測定)が確立され,1978年以降は米国のみならず,世界各国から本症の発生が報告され,さらに過去の原因不明の発熱疾患や肺炎のいくつかが本症であったことも明らかにされた.その臨床像は集団肺炎としてみられるものから散発例,特に病院内で感染防御能の低下した患者にopportunistic infectionの形でみられるものの頻度も高いことが注目されてきた.
 本症は我が国にも例外なく存在すると思われていたが本菌の培養法や診断法1)が従来の細菌感染症におけるものとやや趣を異にするため,その発見が遅れたようであり,1980年(昭和55年)11月劇症肺炎で死亡した患者の肺からLegionella pneumophila,serogroup 1が検出されたのが我が国における最初の報告であった(感染症誌,55,124,1981).その後血清学的診断法により本症の集団発生(柏木ら;日医新報,2986,15,1981)が報告され,本症に対する関心も高まってきた.

遺伝子工学

著者: 新井俊彦

ページ範囲:P.444 - P.445

 特殊なウイルスを除いて,あらゆる生物が親から子に伝える性質の全情報はそのDNAを構成する塩基の配列によって決められている.したがって,それぞれの生物の持つDNAの全塩基配列がわかれば,その生物の能力,活動のすべてを知ることができる.最も単純な生物である細菌やそのウイルスを用いて,その生命機能を分子レベルで解析した分子生物学は,ついにこの分子下の解析を可能にしたのである.そこで,この技術を取り扱いが困難な生物や複雑な高等生物の遺伝子の研究にも取り入れるために開発されたのが遺伝子操作技術である.これは単なる技術であるが,その応用域が広く,また期待できる成果も大きいために,この技術を用いた研究とその成果を含めて遺伝子工学という名称が与えられるにいたっている.
 このように,現在,遺伝子操作は分子遺伝学の基本手技になっており,分子レベルでの遺伝子研究が行われているあらゆる生物に応用されている.したがって,分子遺伝学研究者でこれができない者はいないし,基本手技を紹介した雑誌,単行本も多い.興味ある方には,比較的読みやすい「遺伝子操作実験法」(高木康敬(編):講談社サイエンテイフィク)をおすすめしたい.

多層フィルム法による血液化学分析

著者: 近藤朝士

ページ範囲:P.445 - P.445

 本年1月の日本糖尿病学会関東甲信越地方会において,"多層フィルム法による新しい血糖測定法"の検討結果が東大第3内科を中心とするグループによって発表され,糖尿病外来でのリアルタイム血糖検査の可能性が示唆された.
 多層フィルム法とは,化学検査スライドと反射測光方式のアナライザーとの組み合わせからなる血中の化学成分測定システムで,患者から採取した新鮮全血の1滴を1枚のスライド上に点着するだけの単純操作で,6分後には血糖量がプリントアウトされる様式の,完全ドライ型のものである.この簡便さにもかかわらずその定量性能は現在検査室で常用されているものと同等であり,さらに全血を試料としながら測定される血糖量は従来と同じく血漿中のブドウ糖濃度であることは注目に値する.

我らのシンボル

"心"とその世界—日本循環器学会

著者: 佐々木稔

ページ範囲:P.447 - P.447

 "William Harvey, 4th Century Memorial Lecture" が1978年9月,第8回世界心臓学会の冒頭を飾った.彼は「心臓と血液の運動」(1628)によって血液循環の発見者として知られている近代科学創始者の一人である.心臓の持つ神秘な謎に挑戦したHarveyも,心臓を血液に精気を付与する器官として出発し,その後も血液の膨張に伴って伸縮する器官としてとらえていたそうです.
 生命が発生するためには栄養と成長の能力が必要であり,発生期の胚には"霊魂"が宿っていなければならない.とすれば,生命の発生過程の最初に分化する器官,心臓にこそ"霊魂"は宿るべきだ.しかも心臓は上半身の中心,人間にとって最も貴い場所に位置しているではないか.心臓の運動が精神の影響を受けやすいのは,全身器官に栄養と熱とを配給する血液がその心臓で作られ,"霊魂"の感覚能力を発揮しているからである,

自慢の職場

産業医学の分野につくられた新設検査部—産業医科大学病院中央検査部

著者: 榊原博一

ページ範囲:P.448 - P.449

1.産業の発展に伴う創立
 産業医科大学は昭和47年6月に制定された労働安全衛生法(産業医制度)に基づき,労働環境と健康との関係や,環境と人との係りあいの中で環境改善,疾病の予防,社会復帰などの将来を先き取りした「健康管理」に重点をおいた教育を行い,医学の発展と産業医学の分野に就業する医師の養成確保を図るために設立されました.そしてこの教育病院として,54年7月に産業医科大学病院が開院することになり,現在は3年が過ぎました.
 当大学は,"無法松の一生"や"花と竜"そして"青春の門"でおなじみの,北九州は折尾に位置し,医科大学ではかなり広い敷地34万6千m2を有しています.正門から見た大学建物の全景は,しぶいレンガ色をした巨大な軍艦が重なり合ったような形をしており,その重量感に圧倒されます.毎朝"おはようございます"と守衛さんが元気に声をかけてくれます.

検査を築いた人びと

心臓カテーテル法を発明した テオドール・オットー・フォルスマン

著者: 酒井シヅ

ページ範囲:P.450 - P.450

 今世紀,血管心臓病学は目覚しい進歩を遂げたが,この発展に欠かせなかった検査法の一つが心臓カテーテル法である.これは青年フォルスマンが自分自身に試みて開発の糸口をつかんだものである.

コーヒーブレイク

総合保健・医療大学

著者:

ページ範囲:P.412 - P.412

 医療の中で中央検査室の占める役割は大きい.検査データをもとにして診断ついで,治療,予後の追求,治癒の判定などを行うことが正しい医療であるということが,人々の間に常識となって定着している.例えば実際に胃の内視鏡検査,ついで生検,癌の診断の確定,ついで手術といった一連の過程は外科手術のできる病院なら何処でも行われている.胃の早期癌など僻地の小さな病院でこのような過程で処理されて,立派な診療が行われている.医療を医師,看護婦,薬剤師などで行ってきた時代はすぎ去り,医療に携わる人々の幅がずっと広がった.直接の医療に関与するだけでも検査技師,レントゲン技師の参加だけでは医療は成り立たなくなってきている.
 例えば検査値の時間的経過を追うことも必要である.病歴に検査値データがたくさん貼りつけてあり,それを眺めて,データの変動から病気の推移を判断する.素データとして病歴にデータが保存されていることは必要であろう.しかしこれらデータをコンピューターにデータベースとして記憶させ,検索プログラムを用意しておけば,コンピューターは経時的変化を表あるいはグラフにして瞬時に我々に提供してくれる.素データを眺めながら頭の中に表やグラフを描くような,まのあたりに表やグラフを眺めたほうがより正確な判断ができる.病理の組織診断でも頻度の少ない疾患では診断の困難のことが多い.また良性・悪性の境界病変などはいつも悩みの種である.このような症例でも,10年,20年といった長い期間の標本が保存されていればその中に含まれていることが期待できる.しかもそれら症例がデータベースとしてコンピューターに記憶されていれば,その症例を容易に探し出し,標本のコレクションから標本をとり出し,現在直面する診断困難の症例と対比することができる.このような業務にたずさわる人も医療には必要になる.

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第22回臨床検査技師国家試験—解答速報

ページ範囲:P.442 - P.442

略語シリーズ

ページ範囲:P.472 - P.472

ChE cholinesterase;コリンエステラーゼ.これは,いろいろのコリンエステルをコリンと有機酸に加水分解する酵素である,血清ChEは肝臓で生成されるので,肝障害とくに実質障害で低下する.肝臓の蛋白合成能が盛んなとき,例えばネフローゼ症候群では高値を示すことがある.
CH50 50% hemolytic unit of complement;血清補体の50%溶血単位(補体価).血清補体の総活性の測定には,感作ヒツジ赤血球による溶血反応が用いられる.その際,100%溶血法より溶血法のほうが精度が良いので,それにより測定した補体価をCH50と記す.血清補体価の正常値は,Meyer原法で30〜45 CH50,Meyer変法で70〜110CH50単位である.

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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