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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術10巻6号

1982年06月発行

雑誌目次

病気のはなし

偽膜性大腸炎

著者: 稲松孝思 ,   島田馨

ページ範囲:P.488 - P.493

抗生物質の副作用
 抗生物質の発見は細菌感染症の治療に画期的時代をつくり,20世紀後半の人類に多大な福音をもたらした.この抗菌化学療法剤の作用の基礎原理は,選択毒性,すなわち病原微生物に対しては強力な毒性を発揮して死滅させるが,ヒトの細胞,臓器に対してはなんら毒性を発揮しないことにある.しかし,本来薬物はヒトの体に対しては異物であり,ヒトの体に対する不利益を完全に無くすることは今のところできていない.この不利益が,いわゆる副作用である.抗生物質の場合,副作用の発現機序は以下の三種類に大別して考えるのが便利である.

技術講座 生化学

免疫グロブリンの定量

著者: 橋本寿美子

ページ範囲:P.504 - P.509

 免疫グロブリン(immunoglobulin;Ig)は血清蛋白成分の10〜20%を占め,生体の主要な防御機構の一つである免疫系にあって大きな役割を担っている,したがってその病的な変動は生体の免疫機構の異常と密接に関連する.
 現在,Igには五つのクラス(IgG,IgA,IgM,IgDおよびIgE)のあることが知られており,Igの定量は総γ-グロブリン量の測定とともに各クラスごとに行われる.Igはすべて,一対のH鎖(heavy chain)と一対のL鎖(light chain)の4本のポリペプチド鎖よりなる基本単位から構成されている,L鎖にはκ(カッパー)型とλ(ラムダ)型があり,各クラスに共通している.一方,H鎖は各クラスごとに特徴があり,抗原性も異なる.Igのクラス別定量は,このH鎖の抗原性の違いにもとづき免疫学的に測定される.

血液

血液塗抹標本の作製方法

著者: 大竹順子

ページ範囲:P.510 - P.515

 血液像検査は,白血球数,血小板数の増減貧血の有無,赤血球,白血球,血小板の形態異常など,多数の情報が得られる検査である.しかし塗抹標本の作り方が適切でなければ正しい情報が得られないので注意深く行わなければならない.

一般

交差適合試験

著者: 川越裕也

ページ範囲:P.516 - P.521

 血液銀行アメリカ協会(AABB)の技術的解説では適合試験の中に,
 (1)患者の血液型,これまでの不規則性抗体などの検査結果の点検,(2)今,提出された患者検体のABO式,Rh式血液型判定,Rh式血液型判定,抗体検出,(3)使用予定輸血液のABO式,Rh式血液型判定,抗体検出,(4)狭義の交差適合試験,が含まれている.ここでは狭義の交差適合検査(交差試験)に限定して,その技術を中心に紹介する.交差試験は受血者(患者)血清と供血者(輸血液)血球との反応(主試験),および供血者血清と受血者血球との反応(副試験)があるが,赤十字血液センターからの輸血液に限り,血清中の不規則性抗体がチェックされているので副試験は省略してもよい.しかし院内採血のときには副試験も必要である.

細菌

細菌検査における検査材料の取り扱い方

著者: 立花勇一

ページ範囲:P.522 - P.527

 臨床細菌検査は感染症の原因菌を検索し,それらの薬剤感受性試験を行うことが主な使命である.これらの成績は検査材料(以下検体という)の採取方法の適否によって大きく左右される.原因菌の変遷も激しく従来からのサルモネラ,赤痢など法定伝染病原因菌のほかに,最近では日和見感染の原因となる平素無害菌(弱毒菌)などによる感染症が増加してきており,検査室サイドでも種々の検体に対する対応の仕方が変わってきている.検体中の微生物に何の変化も与えずに,培養までの操作を迅速に行うためには,微生物の生物化学的性状と検体取り扱いを十分熟知したうえで行う必要がある.

検査法の基礎理論 なぜこうなるの?

血液型不適合妊娠検査の基礎理論

著者: 支倉逸人

ページ範囲:P.494 - P.498

なぜ血液型不適合妊娠が問題になるのか
 1.妻Rh-型,夫Rh+型の場合
 Rh不適合妊娠が原因で新生児溶血性疾患が起こることは,一般の人々にもよく知られていて,Rh-型の女性が妊娠すると抗体検査を必ず行うようになってきた.
 "不適合妊娠"とは,母が持っていない抗原を胎児が持つことである.胎児の持つ抗原で母にないものは,父から遺伝したものである(これが親子鑑定の原理でもある).したがって,妻の持たない抗原を夫が持つことを不適合妊娠の可能性があるという意味で"血液型不適合結婚"という.

選択培地の機構・2

グラム陽性球菌用選択分離培地

著者: 猿渡勝彦

ページ範囲:P.499 - P.503

 臨床細菌学および基礎細菌学の分野における検査あるいは研究を行ううえには,細菌を人工的に増殖させる必要がある.このような目的で用いられる培地は細菌の増殖に必要な炭素源,窒素源およびPO42-,SO42-,K,Mg2+,Ca2+,Fe2+,Mn2+,Cu2+などの無機イオンなどを含有する必要がある.これらの物質はペプトン,肉エキスあるいは酵母エキスなどに多量に含有されており,一般に培地はこのようなペプトンあるいはエキス類を主成分として作製されている.炭素源,窒素源あるいは無機イオンなどは前述したようにペプトンまたはエキス類に含まれており,ほとんどの細菌はこれらの成分中のもので十分であり,特に添加の必要はない.しかし場合によっては緩衝作用のあるリン酸塩あるいは硫酸マグネシウムなどの塩類を加えることもある.さらに窒素源としてはアミノ酸類,アンモニウム塩など,炭素源としてはブドウ糖をはじめとする糖類グリセリンなどのようなアルコール類,有機酸塩などを加える場合がある.また多くの培地に用いられている塩化ナトリウムは主として浸透圧調整の意味で用いられている.
 この培地には大きく大別して寒天培地(固形培地)と液体培地があり,さらにこれらは非選択培地と選択培地とに分けられる.血液寒天培地やチョコレート寒天培地のように,一般に用いられる培地には多くの菌種が増殖できるが,選択分離培地は,多くの細菌が混在している材料から目的とする菌種を選択的に分離するもので,そのために他の細菌の増殖を阻害するような物質,例えば色素,抗生物質および薬品などを加えて,目的菌だけを増殖させるように工夫されたものである.

知っておきたい検査機器

自動血球洗浄装置—自動クームス試験装置

著者: 内川誠 ,   遠山博

ページ範囲:P.535 - P.538

 抗グロブリン試験(クームス試験)は血清中の抗体の検出,各種血液型の判定(間接抗グロブリン試験),また自己免疫性溶血性疾患,溶血性輸血副作用,新生児溶血性疾患の診断(直接抗グロブリン試験)など輸血検査の中でも特に重要な検査法の一つである.
 交差適合試験は,現在のところプロメリン法が広く普及しているが,これが抗グロブリン法に移行することが予想される.抗Rh抗体(抗D,抗C,抗E,抗c,抗eなど),その中でも日本で輸血事故のもっとも多い抗E抗体の検出については,ブロメリン法は間接抗グロブリン法を上回る感度を示すが,もっとも検出率の高い抗Lewis(抗Lea,抗Leb),特に抗Lea抗体の検出には,逆に間接抗グロブリン法が優れている.さらに抗Diego(抗Dia,抗Dib),抗Kidd(抗Jka,抗Jkb),抗Duffy(抗Fya,Jsb)などの諸抗体の検出は,プロメリン法ではほとんど不可能であることは,銘記して,抗Fyb),抗Ss(抗S,抗s),抗Kell(抗K,抗K,抗Kpa,抗Kpb,抗Jsb)などおかなければならない.

マスターしよう基本操作A

真菌検査法

著者: 阿部美知子 ,   大谷英樹 ,   久米光

ページ範囲:P.539 - P.546

 真菌症は歴史的には皮膚科領域で早くから注目され,30数年前までは真菌症と言えば皮膚糸状菌症とCandidaによる鵞口瘡や間擦疹程度の認識でしかなかった.しかし,1950年頃から内臓真菌症が散見され始め,特に最近では多彩な病型を示す皮膚真菌症の増加や内科領域における真菌症の経年的増加などが注目されつつある1,2).現に日常微生物検査に携わっていると真菌症例に遭遇する機会は最近では決して少なくなく,今や真菌検査をぬきにして微生物検査は行い得ないのが現状であろう.いわゆる真菌症の起因菌には,①培養形態やその性状に特徴をもつ糸状菌類,②形態学的にほとんど差がなく一般に酵母あるいは酵母様真菌と呼称される菌群および,③分類学的には細菌類に属するが培養形態やその機能などからむしろ真菌に近い性状を示すいわゆる放線菌類,の三つに大別される.したがって真菌検査もこれら三つの菌群にそれぞれ適した方法がとられる,以下,これらの病原による真菌症の検査室内検査法について,塗抹(直接標本)―分離培養―同定について概述し,検査法上特に肝要と思われる所見について例示するとともに,スライドカルチャー法について概説する.

マスターしよう基本操作B

セルロースアセテート膜(セルロゲル膜)を用いたアイソザイムの分画法

著者: 嵯峨実枝子 ,   杉山陽子

ページ範囲:P.547 - P.554

 日常検査でアイソザイムを分画する場合,電気泳動法(寒天,セルロースアセテート膜,ポリアクリルアミドゲル),イオン交換クロマト(カラム法),免疫学的方法(酵素活性阻害,RIA,EIA),阻害法(活性阻害剤,熱処理)などが用いられている.これらの分画法の中の一つであるセルロースアセテート膜を用いる方法(電気泳動法)は通常の蛋白分画用の装置をそのまま便用し,微量の試料で測定でき,しかも安価で簡便,迅速,再現性もよい,測定上やデータ評価のうえでいくつかの問題点はあるが,優れた分面法の一つである.ここでは私どもが日常ルーチンワークで行っているセルロゲル(セルロースアセテートゲル)膜を用いたLDH,ALP,AMY,CKの各アイソザイムの簡便な測定法を示す,手技のうえではLDHアイソザイムが基本で,ほかのアイソザイムはそれを応用したものである.

最近の検査技術

ラテックス凝集反応の初速度による免疫定量法と応用

著者: 沢井政信 ,   右田俊介

ページ範囲:P.555 - P.559

 ラテックス凝集反応は,抗原または抗体の簡便な,しかも鋭敏な検出方法として広く定性的に用いられている.ふつうは,たとえば抗hCG(ヒト胎盤性性腺刺激ホルモン)抗体をつけたポリスチレンラテックスを試薬として,その1滴をスライド板上で尿検体に1滴と混合し,2〜3分間ゆり動かして凝集状態を観察して,もし凝集(はじめの牛乳状のラテックスが,小さな粒状に変化することをいう)が起きていれば"+",すなわち妊娠していると判定するというように用いられている.しかし,最近になってこのラテックス凝集反応をより精密に光学的に追跡して,その凝集速度を測って,抗原または抗体を定量する技術が進歩し,たとえば三菱化成で開発に成功したLPIAシステムのように,広く抗原や抗体の定量に応用されるようになってきた.ここでは,このラテックス凝集反応の速さを光学的に測る測り方と,その応用について解説する.

おかしな検査データ 検査事故における原因解析の進め方,考え方・4

標準液中のホルマリンによる事故および標準液記載表示の誤解による事故

著者: 畑義治 ,   天川勉

ページ範囲:P.560 - P.562

 臨床化学分析の正確度において,もっとも基本となる「ものさし」は「標準物質の正確度」である.そして標準物質の選定および取り扱い方については,従来より常々問題提起されているが,大きな進展を見ないままである.それはなぜであろうか.その大きな理由としては次のことがあげられよう.
 1)臨床化学分析は一般に純粋な分離分析ではなく,多くは迅速性が要求される混合分析であることより生ずる問題の複雑性.
 2)酸素的測定法の目覚ましい発展により,従来は考えられなかった安定剤,保存剤,界面活性剤などの影響や液性による反応性の違いなどの問題が複雑化してきたこと.

トピックス

核磁気共鳴(NMR)による血液・尿の化学分析

著者: 吉川研一

ページ範囲:P.528 - P.529

 体内の水の信号を取り出すことにより,人体の断層像を得ることのできる装置としてNMR-CT法(NMR断層法)が注目されている.昨年辺りから,実際に頭部や胸・腹部の鮮明な断層像が報告されはじめている.現在市販の装置はアメリカのFONAR社のものだけであるが,これから1〜2年の間に臨床診断用の装置が電気・臨床機器メーカーから競い合って発売される予定となっている.
 このNMR-CT法は,水の信号の強度や緩和時間を測定することにより,ノータッチで癌などの診断を行えるうえに,X線のような有害な放射線を用いないですむとして,大きな期待を集めている.今年から来年にかけては,かつてのCTフィーバーを上回るNMRフィーバーがまき起こると予想するむきもある.

酒は飲むべきか?—アルコールとHDLの抗動脈硬化作用をめぐって

著者: 木下安弘

ページ範囲:P.529 - P.530

 酒は飲め飲めと民謡にうたわれているアルコールは,1960年以降,世界的にその消費量が増え続け,第1位のポルトガル,2位のフランスを筆頭に,日本も23位に入っている.他方,また,狭心症,心筋梗塞といった心臓の病気(虚血性心疾患)も増え続け,その原因として高コレステロール血症,高血圧,タバコが心臓の動脈(冠状動脈)硬化症の3大要因に取りあげられた.その結果,血清総コレステロールとトリグリセライドの測定が,一時期全盛を極あ,それが今日,臨床検査法の一つとして定着した.しかし,幸いこの方面の研究が進み,超遠心法,電気泳動法,沈殿法,カラムクロマトグラフィー,免疫学的方法などにより血中脂質と結合する血漿リポ蛋白の測定が,次第に日常の臨床検査にも取り入れられるようになって,事態は一歩前進した.
 さて,アルコールは,これまで心臓の筋肉自体に悪い作用を及ぼし,心不全や不整脈を起こし,突然死にも関係するといわれてきた.また,身体の幹部に脂肪を沈着させて肥満をつくり,高コレステロール血症と高血圧を促進するから,狭心症や心筋梗塞の危険因子につらなるとされてきた.しかし,反面,なぜか昔から慢性のアルコール中毒患者には動脈硬化症の軽いことが知られており,加えて1974年にKlastkyらがアルコール飲用者では,心筋梗塞の危険が少なくなるといい始めてからは,にわかにこの問題が,愛飲家を弁護するかのように精彩を帯びるに至った.

冠動脈病変の超音波検査

著者: 井川幸雄 ,   鈴木恒夫

ページ範囲:P.530 - P.530

 超音波心臓検査法は心疾患の診断および心機能評価にとって,欠くべからざる検査法として広く利用されているが,特に最近では,心エコー法(UCG)では検出困難とされていた冠動脈像も,リアルタイム心断層法を併用することによって描出可能となり,臨床面での応用範囲が拡大した.
 心断層法による冠動脈の描出方法は,患者を仰臥位とし左冠動脈(LCA)については,探触子を心基部に置き,大動脈弁輪部短軸面よりやや左上方向に向け,大動脈腔と連続する比較的輝度の高い管腔としてとらえ,右冠動脈(RCA)は,その位置よりわずかに反時計方向に探触子を回転させ,人動脈腔と連続する管腔としてそれぞれ描出する.しかし冠動脈開口部からわずか数mm(4±2mm)の管腔を持つ冠動脈の走行をうまくとらえる必要があるため,技術上かなりの熟練を要し,さらに患者の体型の変化,解剖学的位置関係のバリエーションから患者すべてに描出可能なわけではなく,小児では90〜100%の描出率をほこるものの,成人では60〜70%程度である.

我らのシンボル

創立者の生き姿と学科別ワッペン—川崎医療短期大学

著者: 川上亀義

ページ範囲:P.531 - P.531

 わが川崎医療短大の設置母体である川崎学園は,ほかに医科大学,附属高等学校およびリハビリテーション学院を持つ医療系教育の総合学園である.その創設は昭和45年医科大学と附属高校設置に始まり,医療短大は昭和48年開設し10周年を迎えようとしている.医科大学は私学としては戦後最初の認可校である.
 学園創設者である現理事長川崎祐宣は,岡山市において30年の長きにわたり,医師としてまた病院長として,自ら診療にまた病院経営に当たるとともに,推されて県市の医師会,病院協会の会長となり医療界に活躍し大きく貢献されてきた.先生の医師としての信条は"名利を顧みず,安逸を思わず,唯己れをすてて人を救わんことを希うべし"という緒方洪庵の扶氏医戒の精神そのもので,患者のため24時間診療に徹し,己を空しうして患者のためすべてを捧げつくされた.このため遠近を問わず名医良院長として先生を慕い先生の手当を受けようとする人が日夜殺到した.

自慢の職場

良心的でけなげな技師たち—千葉大学病院検査部

著者: 降矢震

ページ範囲:P.532 - P.533

1.人手不足下の電算機化
 本稿を依頼され,軽く引きうけたものの,さて書こうとしてはたと困りました.新築して間もない病院だから,さぞや新式の充実した検査部になっただろうとお思いになったのでしょうが,見回したところ,自慢し得るものはなかなかみつかりません.技師は病床数の5%以下という少人数のうえ,外来は2,000人をこえる日も多く,一人当たりの作業量はトップクラスで,ゆっくりお茶を飲んでいる暇もありません.面積にしても計画の半分しか実現せず,廊下まで使って測定している始末です.機器類も特に目新しいものはありませんが,強いていえば,院内の総合電算機システムの一環として,検査部もこれに組み込まれたことです.これも他所でも行っており,特に御披露することもないのですが,人手不足に悩む検査部のやり方として,あるいは何らかの御参考になるならば幸いと,その一部につき述べさせていただきます.
 まず部分的完成をみてから総合化するのが常道だそうですが,今まで何もしていないのに,一挙にやろうというので大変困りました.幸いにして検査部の電算化は普及していますし,総合システムの病院もいくつかあります.見学したり書類を集めたりして検討しましたが,困ったことに良い所をそのまま真似るわけにはゆかぬことがわかりました.当部は技師数が少ないうえに,電算化しても一人も増やしてくれない.すでに総合化している病院ははるかに人数が多いという基本条件が全く違います.また予算が少ない点もあります.この状態でやろうということになれば,"人力と機械力の調和""電算機の効率的な使い方は,できるだけ使わぬことだ"ということになるのですが,いざ実際に直面すると各入の物差しがかなりくい違っているから,なかなか一致点は見つかりません一受付から報告までの今までの方法や手順も変更しなければならぬが,これがまとまらない.また,電算機ならあれもできるはずだ,これもできるだろうとの医師側の要望に対しては,人にも機械にもそれだけの処理能力がないということにも悩まされました.

検査を築いた人びと

導光器を発明した フィリップ B ボッチーニ

著者: 酒井シヅ

ページ範囲:P.534 - P.534

 近年の内視鏡の発達は目を見張らさせるものがある.それだけに内視鏡は近代医学の発展の中で生まれてきたように思いがちであるが,その源流は紀元前までにさかのぼることができる.ボッチーニはこの長い歴史の中で,体内の神秘を探るために,内部を照らす道具を考案した人である.

コーヒーブレイク

結婚式,披露宴あれこれ

著者:

ページ範囲:P.527 - P.527

☆ 終戦直後,某青年医師が某女と恋愛関係に落ち入った.その話をかぎつけた田舎の厳父殿"親に何も言わずに,素性のわからぬ女と結婚するとは何事だ.嫁は家の方で探す"と立腹し,それから暫くして,その厳父殿は一人の娘を連れてきて,"お前の嫁はこの人だ.この人は○○高女を首席で卒業し,品行方正,学業優秀で,おれ達の家系には最適の人である"と言う,彼女と気の進まぬ彼氏を無理矢理神社に連れて行き,結婚式をあげさせた.ときに,彼女はモンペ姿,彼氏はカーキー色の詰め襟の洋服に戦闘帽姿であり,披露宴は行われなかったが,その後の結婚生活は仲がよく幸福そのものであった.
☆ ある有名な結婚式場で,大安吉日の日曜日45組の結婚式と披露宴が行われた.その38組の結婚式に出席した,一つの式場からおごそかな笛の音が聞こえてくるかと思うと,一つの披露宴からは"高砂や…"の謡曲やら別の会場からは流行歌が聞えてくる.広い庭を眺めるとあちらでもこちらでも絶えず三組か四組の記念撮影が行われている.一度坐った場所を離れるときには,必ず自分の持物は全部持って行き,必ず顔見知りの人の後におくれないようについて行かないと,他家の行列に入ってわからなくなる.式も披露宴もすべて時間厳守であり,全くのコンベアシステムの結婚式・披露宴であり,自動分析のフローシステムにのせられたような味気ない感じであった.

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略語シリーズ

ページ範囲:P.493 - P.493

AHD antihyaluronidase;抗ヒアルロニーダーゼ価.溶血性レンサ球菌中には,ヒアルロニダーゼを産生するものがあるが,その菌の感染を受けた患者血清中にAHDが出現する.健康人ではAHD価は256単位以下と言われている.溶血性レンサ球菌の感染が疑われるとき,特にASO価の上昇が認められないとき検査してみる価値がある.
SI unit Systeme International d'Unites;International Unit,国際単位.

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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