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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術10巻9号

1982年09月発行

雑誌目次

病気のはなし

大腸癌

著者: 高橋孝

ページ範囲:P.770 - P.776

大腸の特徴
 幽門を越えて十二指腸に入った食物は,空腸,回腸を経て,約4時間ほどで回盲弁を越えて大腸に達する.大腸は盲腸,結腸,直腸とに分かれるが,結腸はさらにその形態にしたがって上行,横行,下行,S状結腸に区分される.さらに直腸の先には肛門管があるが,臨床的にはこれを含めて直腸と呼称している.したがって一般に腸管と呼ばれる部分は幽門を越えた所より始まり,肛門管に終わるまでの部分であり,大腸はそのおよそ下半部分を占めているわけである.
 臨床的には,盲腸は結腸の一部に組み入れられるので,大腸は結腸と直腸とに大別される.このように区分することは解剖学的な区分と一致しないのであるが,診療する側からはきわめて重要なことである.なぜならば,大腸のこの二つの部分はあらゆる観点からみて互いに相違を示しているからである.この相違点を表1にまとめておく.

技術講座 血液

ヘモグロビンAI

著者: 老籾宗忠

ページ範囲:P.793 - P.798

 1968年Rahbarらにより糖尿病患者のヘモグロビン(Hb)には,電気泳動上majorHbであるHbAIIに対し,fast moving Hbが増加していることが指摘され,fast HbあるいはHbAIと称されている.またこのfast HbはHbのβ鎖のN末端valine,あるいはα,β鎖ともにlysineのε-amino基にグルコースがシッフ(chiff)塩基結合し,さらにはアマドリ(Amadori)転位してケトアミンを形成することから1),glycosylated Hbとも称されている.
 このシッフ塩基結合は可逆的なゆるい結合であり,アマドリ転位生成物であるケトアミンは不可逆性の強固な結合である(図1).さらにカラムクロマトグラフによる分析上,HbAIはHbAI a,b,c,d,eに分けられるが,d,eはごく微量であり,現在はa,b,cが注目されている,そのうちでも量的にHbAIの大半を占めるHbAICがHbAI変動の主体をなしている.このHbAIはグルコースの有無を除けば構造上HbAIIと差がないため,その分析法は主としてグルコースが結合することにより,HbAIIに比べて陰性に荷電することを利用したものが多い.

血清

CEAの測定法

著者: 大倉久直 ,   向島達

ページ範囲:P.799 - P.804

 CEA(carcinoembryonic antigens;癌胎児性蛋白抗原)は,1964年カナダのGoldとFreedmanによって発見された,分子量約20万の糖蛋白質である.この物質が胎児の腸管や胎便中に存在する正常成分であるだけでなく,成人の大腸癌,直腸癌の腫瘍組織や血液中にも9割以上検出されると報告され,以来癌の免疫診断への応用に多くの努力がなされている.現在CEAは大腸癌でも作らぬ例があり,一方他の癌(胃,胆管,膵臓,肺,乳腺など)でも30〜60%の陽性例があることが知られている.また癌のみでなく,いくつかの良性疾患でも血清CEAの上昇することが報告されている.
 血清中のCEAはナノグラム(1×10-9g,ng)のオーダーで存在し,その検出,定量には高感度なラジオイムノアッセイ(radioimmunoassay;RIA)や酵素免疫測定法(エンザイムイムノアッセイ,enzymeimmunoassay;EIA)が利用されている.測定用試薬キットも幾種類かあるが各キットの測定値が必ずしも1対1の相関を示さず,あるものは他法の2〜5倍の数字になるので,どの方法で測定したかが,値を読むときに重要である.この原因は,以下のことに起因している.

生理 誘発電位・1

体性感覚

著者: 飛松省三 ,   柴崎浩

ページ範囲:P.805 - P.809

 ヒトまたは動物に感覚刺激を加えると,一定の潜時で脳に電位変動がおこる.これを大脳誘発電位と呼ぶ.その電位変化は非常に小さいので,頭皮上に電極をおいて脳波計で記録するのみでは背景脳波から識別することは困難である.
 1947年,Dawsonは重畳法を用いてヒトにおける体性感覚誘発電位(somatosensory evoked potential;SEP)を記録し,続いて加算平均法を導入した.これは一定の刺激を反復して加え,その刺激をトリッガーとして加算平均すると,その刺激に直接関連した誘発電位は刺激に対して一定の潜時をもって出現するため加算により増大するが,背景脳波は刺激と関係なく出現するため加算により相殺されることを利用したものである.以後,医用電算機の発達に伴い,SEPは臨床検査法として広く用いられるようになった.さらには近年,脊髄や脳幹部に起源を有する短潜時体性感覚誘発電位(short latency SEP)も検査できるようになってきた.

細菌

リン菌,髄膜炎菌の分離と同定

著者: 小原寧

ページ範囲:P.810 - P.814

 リン菌(Neisseria gonorrhoeae)と髄膜炎菌(N.meningitidis)は,それぞれ淋病と流行性脳脊髄膜炎の原因菌として知られる代表的な病原性ナイセリア(Neisseria)である.国内では髄膜炎菌感染症は多くないが,淋病の届出患者は年間7,000件を越える.しかも,性病実態調査の患者数は届出の10数倍で,実態のつかめない女性無自覚症患者をも考慮にいれると,年間の患者実数は10万に近いものと推定される.淋病の届出が少ない理由はいろいろ考えられるが,本菌の検査に対する信頼性の欠如が,医師の検査依頼意欲を失わせているのも理由の一つであると指摘する学者がある.
 両菌種ともいろいろな病態を示すことがあり,非病原性ナイセリアといわれる菌種やブランハメラ(Branhamella catarrhalis)も,病巣から分離されることがある.最近,これらの菌の中に,β-ラクタマーゼ(β-lactamase)を産生するペニシリン耐性株が増加し,その感染症はますます複雑になってきた.

検査法の基礎理論 なぜこうなるの?

細菌検査成績を特に急ぐ場合とその対応策

著者: 小栗豊子

ページ範囲:P.777 - P.782

 細菌検査では,検体を受領した日のうちに検査成績が得られるのは塗抹標本による顕微鏡検査だけである.塗抹検査で細菌が検出可能な場合は検査材料中の菌数が多い場合に限られ,少ない場合は培養検査に頼らなければならない.培養検査の成績は早くとも2日,遅い場合には7日以上の日数を要する.このように検査のために時間がかかるのであるから,検査成績を遅延させないように注意するのは当然のことである.しかしながら検査成績の遅延が患者の生死にかかわる場合や,たとえ患者を救命できたとしても後遺症のため不幸な転帰をとる場合がある.かかる場合は検査室側ではあらゆる手段を尽くして検査成績を一刻も早く提出できるように努力しなければならない.このような場合,得られた成績は通常のルートで依頼医師に返却することなく,検査室より直接依頼医師に連絡する必要がある.このように細菌検査においていわば超特急で検査をしなければならないのはどんな場合であるかを考え,またその対応策についても述べてみたい.

抗インスリン抗体の検索

著者: 小口修司 ,   竹下栄子 ,   加野象次郎

ページ範囲:P.788 - P.792

 インスリン依存型糖尿病患者(Insulin-Dependent Diabetes Mellitus)の治療にウシやブタなどのインスリン製剤が投与されるが,これら異種動物のインスリンは非自己として認識され,患者血中にその外因性インスリンに対する抗インスリン抗体が出現することはよく知られている.また,1970年に平田ら1)はインスリン投与の既往がないにもかかわらず,何らかの原因で自己のインスリンに対する抗体の出現するインスリン自己免疫症候群を報告した.
 インスリンの測定にはBerson & Yalow2)により開発されたラジオイムノアッセイ(RIA)が広く用いられており,その定量値は免疫学的方法に基づくことにより,インスリンの免疫活性(immunoreactive insulin;IRI)として表わされる.抗インスリン抗体保有患者の血中IRI測定においては,この血中の抗体が測定系の抗原抗体反応に干渉を及ぼすため,IRI測定の目的である膵β細胞機能の推定は不可能となる.ここでは血中に抗インスリン抗体が存在したときの検索について,データの評価も含めて解説したい.

筋電図検査・1

筋電図

著者: 高橋和郎

ページ範囲:P.783 - P.787

 筋電図は筋肉内に電極を刺入して筋からの活動電位を記録し,神経筋疾患の診断に役立てるものである.特に障害が末梢神経あるいは脊髄前角細胞性のものか(神経原性)あるいは筋肉自身の疾患か(筋原性)を鑑別するのに極めて有用な検査法である.以下,その原理を述べる.

おかしな検査データ

ASO価の異常値—脂質による影響とその対策

著者: 三上通英 ,   小池道雄 ,   川真田克明

ページ範囲:P.818 - P.820

 扁桃炎,急性リウマチ熱,急性糸球体腎炎など,溶レン菌感染症の診断に今や欠くことのできないスクリーニング検査の一つとなったASO価の測定は,毒素中和阻止反応によるRanz-Randall法あるいはそのマイクロタイター法,およびラテックスあるいは死菌菌体を用いる受身凝集反応と大別されるが,現在では,ラテックス法が普及したとはいえやはりRanz-Randall法が広く行われている.
 毒素中和阻止反応には,周知のように避けられない問題として脂質による非特異的な溶血阻止がみられる.それはASO価の疑陽性あるいは高値となって表われる.

マスターしよう基本操作A

イムノフィクシェーション電気泳動法

著者: 大竹和子 ,   東海林礼子 ,   大竹皓子

ページ範囲:P.825 - P.832

 イムノフィクシェーション(Immunofixation)電気泳動法とは,支持体電気泳動法によって分離されたある特定の成分を検出する場合に,抗血清を直接その支持体の上に層積して反応させ,生じた免疫沈降帯を染色して検出するという方法である.
 主に血清蛋白の異常例や酵素結合性免疫グロブリンの解析などにこの方法が用いられている.従来の免疫電気泳動法とほぼ同じ目的で応用されるが,免疫電気泳動像とは違って,二重拡散を生じることなく抗原である蛋白は電気泳動された状態のまま免疫固定されて,シャープなバンド状の沈降帯として検出される.この方法は,異常成分の電気移動度の対応がきちんととれる,感度が良い,短時間の操作で結果が得られる,種々の支持体での電気泳動に適用できるなどの利点があり,異常成分を同定するうえで臨床検査にはたいへん役に立つ方法である.ここでは,セロゲル膜を用いた方法について説明する.

マスターしよう基本操作B

細胞診の塗抹標本作製

著者: 福島範子 ,   朝隈蓉子

ページ範囲:P.833 - P.840

 細胞診の成否の第一歩は細胞採取法にあり,第二には標本作製にかかわり,第三には鏡検者の見識に基づく.標本作製の基本としては常に以下の2点を考慮して対処すべきである.
 第一にはいかに症例に適した標本を作るかということで,第二にはいかに良好な標本を作るかである.策一の問題は具体的には症例ごとに必要な染色を選定し,それに応じた枚数の塗抹を作り,適当な固定と染色法を選ぶことである.その他にも塗抹後の沈渣,上清,その他の材料をそのまま捨てるか,次の操作に進めるかの問題が入る.ここでは,臨床の情報を十分に理解し対処する必要がある.第二の問題は良好な塗抹,固定,染色を行うという技術的なことになる.なかでも塗抹から固定までにかかる成否が大きい.細胞診材料は保存できず,追加ややり直しがほとんどできないからである.どのことがらも臨機応変な判断と経験,修練を要する一発勝負の真剣な問題であるが,今回は基本操作につき述べることにする.

知っておきたい検査機器

感受性検査自動読み取り器—Zone Measureヤマト科学ZM-31型ACCU-DATA SYSTEM

著者: 笠原和恵 ,   森安惟一郎

ページ範囲:P.841 - P.845

 一濃度ディスク法は,わが国における薬剤感受性検査測定法として広く用いられてきたが,阻止円を計測すること,ならびにそれからMIC近似値を換算し,成績提出というプロセスが繁雑なため,薬剤感受性検査測定法としてはむしろ三濃度ディスク法を用いる施設も少なくない.しかし筆者らは,カップ法による薬剤感受性検査の原理を反映した一濃度ディスク法が,感受性・耐性というデータのみにとどまらず,連続した数値で成績が残せる利点を推奨し用いてきた.一濃度ディスク法については,その再現性の問題などを論ずる人も少なくないが,規定された培地を用い,厚さやpHなど技術者なら当然の遵守しなければならない条件にそって行えば,良いデータが得られることは論をまたない.
 一方欧米においても,一濃度ディスクによる阻止円の径を計測し,耐性(R),中間(M),感受性(S)の成績が出されているところが多く,それによってそれぞれの国内における耐性菌の動態(阻止円の径とともに)が把握されている.

最近の検査技術

尿沈渣染色法

著者: 今井宣子

ページ範囲:P.846 - P.850

 尿沈渣検鏡は新鮮尿の無染色生標本をもって行うのが原則である.しかし現実には無染色生標本の観察は容易なことではなく,また,これだけでは決して満足な結果は得られない.重要な成分の見落としを避け,できるだけ詳細な情報を臨床側に提供するためには,尿沈渣の染色標本を観察するほうがよりベターである.そのためには各種染色法の特徴や使用上の注意点をよく理解しておく必要がある.
 ここでは現在尿沈渣染色法として利用されているもののうち主要なものをいくつか取りあげ,解説する.

トピックス

フッ素イオン選択性電極によるIgGのEIA測定法

著者: 中根清司

ページ範囲:P.815 - P.815

 EIAによる免疫グロブリン定量,血中薬物濃度測定,ホルモン定量は,近年,急激な発展を遂げ,IgG測定に関する論文も数多く報じられている.その中で,フッ素イオン選択性電極でIgGを測定しようという論文が,Alexandarら1)によって報じられた.
 近年,臨床化学分野においては,比色分析法に代わって電極測定法が応用されるようになり,このフッ素イオン選択性電極によるIgG測定法も興味ある測定法の一つといえよう.

CRPとIFN

著者: 富田仁

ページ範囲:P.816 - P.816

 CRP(C-reactive Protein;C反応性蛋白)は,急性炎症や組織の破壊があれば,流血中に増量するいわゆる急性反応物質の一つとして,万人周知の血清蛋白の一成分である(産生細胞は,網内系細胞とか肝細胞などといわれているが定説ではない).急性炎症といっても,菌血症,溶レン菌感染症,化膿性炎症,腎盂尿路感染症,胆道感染症やリウマチ,膠原病の発熱時などにおいて,CRPは強陽性に出やすいが,インフルエンザ,急性肝炎,脳炎,麻疹,耳下腺炎など純粋なウィルス感染だけのときには,CRPは強陽性には出難い.そのようなウイルス感染のときには,IFN(interferon;インターフェロン)が増量していると推定される.
 CRPは,分子量120,000〜140,000といわれ,5〜6個のsubunit(分子量約20,000)から成る糖蛋白で,好中球の細菌に対する貪食作用を促進する(phagocytosis Promoting factor)とか,補体系のclassical pathwayを活性化するとか,血小板機能を抑制するとか,T細胞の機能を調節するなどして,生体防御に重要な役割を果たしているとされている.

Cryptococcus neoformansの同定のための二つの迅速色素産生試験

著者: 猿渡勝彦

ページ範囲:P.817 - P.817

 Cryptococcus neoformansの同定は,通常臨床検査室では形態,ウレアーゼ,糖利用試験および硝酸塩還元試験によって行われるが,Kaufmann, C. S. & Merz,W. G.(J. Clin. Microbiol.,15, 339, 1982)は,菌の産生するフェノール・オキシダーゼ活性による色素産生性を利用して,Cryptococcus neoformansの迅速同定のための二つの試験法を開発し,報告したのでその要点について紹介する.
 供試した菌種は,C. neoformans52株,本菌以外のCryptococcus属4菌種19株およびCandida albicasn,C. guilliermondii,C. krusei,C. lusitaniae,C. Para-Psilosis,C. Pseudotropicalis,C. tropicalis,Geotrichumspp.,Rhodotorula spp.,Saccharomyces cerevisiae,Torulopsis glabrata,Trichosporon boigeliiを含む酵母様真菌1800株を用いた.これらのすべての菌種の同定は,形態,炭水化物の発酵および利用試験,ウレアーゼおよび硝酸塩還元試験により行った.

我らのシンボル

三つの研究技術をデザイン化—日本臨床病理学会

著者: 河合忠

ページ範囲:P.821 - P.821

 日本臨床病理学会の前身は臨床病理懇談会で,東京およびその近郊で臨床検査に従事している医師が中心になって第1回会合が開かれたのが1951年(昭和26年)11月20日である.当時の日本における臨床検査室の状態はきわめて不完全なものであったから,臨床検査室の病院における位置,役割を検討し,改良するよう話し合うことを目的として始められたのだという.それが全国的な組織とすることが決まったのが1953年12月で,名称も「日本臨床病理学会」と改められ,翌年に第1回の総会が行われた.そして,学会の機関紙として,「臨床病理」が1953年1月から刊行された.その後,臨床検査の急速な進歩とともに,会員も増加し,学問的な発表も広範な領域で活発に行われるようになり,1975年には日本医学会への加盟が承認された.学会認定医制度については1955年ころから検討を始めていたが,諸般の事情があり,ようやく1979年1月1日より正式に「認定臨床検査医制度」が発足したのである.このような国内での実績ができるとともに,会員の国際的交流も活発となり,日本臨床病理学会はInternational Society of Clinical Pathologyに加盟し,後に1969年から現在のWorld Association of Societies of(Anatomic and Clinical)Pathology〔WAPS〕と改名された.そして,1978年には,WASPの第12回世界会議を日本臨床病理学会が主催して日本で開催されることが正式に決まったのである.
 このように,認定医制度の発足ならびに世界会議の東京開催を目前にして,学会のシンボルマークの設定の気運が盛り上がり,会員から公募することになった.1979年8月30日に応募を締切り,幹事会において討議した結果,東洋工業病院臨床病理部安松弘光会員より送られた一点を選出し,同年10月12日第26回総会において披露された.その後,安松弘光会員の原案をもとに専門家に依頼してデザイン化したのが,現在使用されている学会シンボルマークであって,「臨床病理」誌の表紙,認定臨床検査医認定証,認定病院認定証に使われている.なお,これを基調にして,第12回世界臨床病理学会議,第30回記念総会のたあのシンボルマークも作られた.

自慢の職場

少人数で高能率にこなす—筑波大学附属病院臨床検査部

著者: 村井哲夫

ページ範囲:P.822 - P.823

 筑波大学附属病院は,1985年に万国科学技術博覧会が開かれる筑波学園都市のほぼ中央部に,1976年10月に開院し現在に至っており,臨床検査部も同時に業務を開始した.それ以来しだいに人員,設備ともに整備され現在は表に示す人員構成で検査部を運用している.検査部の広さや,分析器などの設備は最新鋭のものが利用できることなど,十分とはゆかないまでもほぼ満足できる状態にあるが,検査技師数が,国立大学病院技師の定員に限りがあるため非常に少なく,現在に至るまでも検査部運用上の最大の障害となっている.しかし日々検査部に依頼される大量の検体を処理し,正確なデータを迅速に報告することはわれわれの義務であり,様々の創意と工夫によりこれを克服し日常の業務を遂行している.

検査を築いた人びと

神経放射線学の父 アルツール・シュラー

著者: 酒井シヅ

ページ範囲:P.824 - P.824

 オーストリアが育て,オーストラリアを終焉の地としたアルツール・シュラーは,彼の生きた時代そのままの波乱に富んだ生涯を送ったが,神経放射線学は彼によって創始され,その基礎が確立されたのである.

コーヒーブレイク

病気のはなし

著者:

ページ範囲:P.820 - P.820

 "病気のはなし"といっても,本誌の巻頭を飾っているホンモノの病気のはなしではない,何かに凝っている状態を若い仲間は"あ!病気してるゥ"とか"うわぁ,大病気!"などと評する.そのような意味で,身の周りの"病気"に目をむけるといろいろな症状(?)に改めて気がついた.きわ立って流行の兆しを見せているのが"マイコン病"で,つい最近も我々の病院の中検ニュースに,"中堅層にきく"というタイトルで数名の技師が小文を寄せていたが,普段ほとんど交流のない人たちであったのに,全員がマイコンに関係したことを書いていたのにはびっくりさせられた.仕事の面で活用したいという人から,家庭で御主人にオモチャ(?)として買ってもらって楽しんでいる,というのまであり,現代っ子の対応の早さに感心させられた.百万円以上もの投資をしてマイコンを家に備えつけた人も検査室内に数名おり,仕事に疲れた身体と神経をマイコンとの対活でときほぐすというから驚く.検査室だけでなく,内科や精神科の医師を中心にメディカルコンピュータクラブが結成され,同好の士を求めている.
 私の見る限りでは,"病気"にかかりやすいのは男性に圧倒的に多いようである.マイコン病のように急性伝染性のものもあるが,古典的でかつ流行の衰えを感じさせないものに"プラモ病"蒐集病等がある.女性にも凝り性の人はたくさんいるがどこか常に現実的なところがあり,いわゆる"病気"という感じからは遠いいように思う.そして,どちらかというと,右脳の発達した人に"病人"が多いようにも感じられるのは,右脳発育不全を自認する私の憧れ(?)のせいであろうか.(本誌2月号の本欄に,右脳・左脳のことを書いたが,肝心の左右を間違えてしまい,早速読者から御指摘をいただいた.ここにお詫びとともに訂正させていただきます.)

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略語シリーズ

ページ範囲:P.809 - P.809

TTT thymol turbidity test;チモール混濁試験.血清膠質反応の一つで,急性肝炎特にA型肝炎において高値に出るが,IgMによく相関すると言われる.
I.Q. intelligence quotient;知能指数.

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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