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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術11巻3号

1983年03月発行

雑誌目次

病気のはなし

肺気腫

著者: 杉田實

ページ範囲:P.210 - P.215

特 徴
 本論に入る前に気道の構造に触れてみたい.気道は口腔と鼻腔より始まり,気管,左右の主気管支,区域気管支と順次2分岐を繰り返し,気管よりほぼ17分岐で終末細気管支に至る.終末細気管支より末梢は図1の上段のごとく3次にわたって呼吸細気管支が分岐し,肺胞管を経て,肺胞嚢,肺胞に終わる,
 さて肺気腫とはギリシャ語で過膨脹を意味し,「終末細気管支より肺胞に至る空間の異常拡張と肺胞壁の破壊的変化を特徴とする解剖学的変化」と定義されている1).この定義から容易に理解されるように肺気腫とは病理学上の診断名であるために,臨床的には肺の形態的変化を裏付けるような情報の集約的判断によって診断せざるを得ない.この点症状や所見によって診断される気管支喘息などとは異なる.

技術講座 生化学

アミラーゼアイソザイムの測定法

著者: 大川二朗

ページ範囲:P.227 - P.232

 アミラーゼアイソエンザイムには,唾液腺型(以下S型)アミラーゼと膵型(以下P型)アミラーゼがあり,分子量・電荷ともによく類似しているので,長時間の電気泳動で血清アミラーゼのS型,P型はやっとpreγとfastγ位に分離される.発生学的にはS型アミラーゼがはやく出現し,新生児はS型アミラーゼ優位でP型アミラーゼは生後5か月で成人のレベルに近づく.また肺癌や卵巣癌でもS型アミラーゼが産生され,腫瘍産生アミラーゼと正常S型アミラーゼの差異はザイモグラムのうえでは認められていない.免疫学的方法によってはPとS型アイソザイムは識別できないが,小麦由来アミラーゼインヒビターはS型アミラーゼをより強く阻害し,またオリゴサッカライド基質に対する作用様式は二つのアイソザイムで若干異なっている.表1に二つのアイソザイムの性状を比較しまとめてみた1)
 ここでは日常検査で迅速,簡便に行える二つの方法―電気泳動法とインヒビター法―について技術的解説を行う.

血液

フィブリノゲン測定

著者: 鈴木弘文 ,   松尾純孝

ページ範囲:P.233 - P.237

 フィブリノゲンは分子量約340,000の血漿蛋白質であり,主に肝臓で産生される.そして血漿中に200〜400mg/dlという高濃度にて存在している.
 フィブリノゲンは他の血液凝固因子と比較して,その性状,構造あるいは純化に関してもっとも研究が進展している物質である.また,フィブリノゲンは血液凝固第I因子として血液凝固(止血)機構の主役をなす物質として古くから知られていたが,その止血機構は,血液凝固機構の進展により生成されたトロンビン(II a)により,フィブリノゲンのαおよびβ鎖のアルギニン・グリシン結合部が切断されフィブリンモノマーとフィブリノペプタイドA,Bに分解されるが,このフィブリンモノマーはやがて重合してフィブリンポリマーを形成する.このさい,第XIII因子とCa2+が作用して安定化フィブリンとなり血液凝固が終了するのである(図1).

検査法の基礎理論 なぜこうなるの?

便潜血反応は消化管疾患診断に必要か

著者: 渡部和彦 ,   岡本公夫 ,   宮崎博実

ページ範囲:P.216 - P.220

 便潜血反応が消化管よりの潜出血を簡便に診断可能な検査として登場して久しいが,消化管出血の有無を診断するにとどまらず,消化性潰瘍をはじめとする消化管の出血性病変のスクリーニングテストとしても応用され,今日までその有用性についていく多の検討がなされてきている.本法はヘモグロビンの有するペルオキシダーゼ作用を利用した非特異的血液検出法であるため,被検者が通常食摂取時には人以外のヘモグロビンはもとより,ヘモグロビン以外の物質にても反応が陽性となることがある.また,消化管病変よりたえず出血があると限らず,出血量が微量に過ぎたる場合には陰性に終わることがある.
 以上のごとく便潜血反応はその精度に問題が多いため,消化管特に上部消化管の出血性病変のスクリーニングテストとして一般に余り重要でないと解釈されている.ただし,近年欧米での下部消化管,特に大腸癌集検について本法を用いた良好な成績が紹介されるに及び,わが国においても便潜血反応による大腸癌スクリーニングの可能性が検討され始めるなど,本法の消化管疾患スクリーニングテストとしての価値が再評価されつつある.

ゲル濾過法による蛋白分子量の測定

著者: 冨永喜久男 ,   藤野夫美子

ページ範囲:P.221 - P.226

 生体に由来する新しい高分子物質が発見されると,まずそれが蛋白質か核酸か多糖類かを決める必要がある.蛋白質であることがわかると,次にその物質の物理化学的性質の一つとしてTiselius電気泳動法(自由界面電気泳動法)で易動度を求めたり,超遠心機を用いる沈降平衡法により分子量を求めるという手順がとられる.すなわち,超遠心法は分子量測定法としてもっとも優れている.かつて,Waldenströmがマクログロブリン血症を記載した際,新しく見いだされた蛋白を超遠心法で分析し,沈降恒数19 Sの蛋白としたことは有名な事実である.超遠心法はこの他蛋白質化学の領域で多くの重要な貢献をした.
 しかし臨床の分野,ことに編集部からの希望である"検査室で手がけることができるもの"ということになると,超遠心機は非常に高価,操作が繁雑,熟練が必要などの理由で,全く手がとどかないものとなってしまう.事実,この機械を見たことがないという読者が多いと思われる.

アーチファクト

血液

著者: 東克巳

ページ範囲:P.238 - P.238

 写真1 正常人の赤血球像である.同一人の血液でも塗抹の方法,その他の条件で赤血球像の人工的な変化がいろいろみられる.いずれも病的な変化と混同しやすいので注意したいものである.以下に日常よく遭遇する例をあげる.
 写真2 赤血球酵素異常症のとき見られる有棘赤血球と間違いやすい像である.少量の血液しかとれず,抗凝固剤のEDTA塩濃度が濃すぎる場合よくみられる.

病理組織

著者: 河又國士

ページ範囲:P.239 - P.239

 写真1 電気メス リンパ節(50倍) H・E染色.手術に際し結紮や止血鉗子などの他に,組織蛋白の熱凝固に基づく,電気メスや双極電気凝固器などは微小血管の止血に特に有効である.電気メスは迅速かつ確実に止血し,さらに組織片の切離も可能である.組織の侵襲も肉眼的には比較的少ない.
 しかし顕微鏡的には組織の変性が著明で,染色性の低下部(左),結合組織でもヘマトキシリンに好染するところも見られる(中央).さらにリンパ組織の核内構造は不明瞭で,核のヘマトキシリンによる濃密均一な染色性の変化は,電気メスの熱がリンパ節内にも波及していることを示唆している.写真全体に見られる小空泡は組織液の沸騰などに伴なう変化と考えられる.

君はアメリカの試験にパスできるか(英和対訳)

臨床化学 方法論・II

著者: 渡辺信 ,   亀野靖郎

ページ範囲:P.241 - P.244

[1] A nitroprusside test was run on a urine specimen and a magenta color*1 developed. Which amino acid has been screened?
 A.valine B.cystine C.homocystine D.tyrosine

マスターしよう基本操作

毛細血管抵抗試験

著者: 小林紀夫

ページ範囲:P.245 - P.250

 止血は血管を中心としておこる反応である.血管壁の止血における反応は,局所的なものと全身的なものとに区分される.前者は血管収縮と止血血栓形成であり,止血機序の中心をなすものである.後者は止血機構の背景をなすもので,血管運動神経やACTHなどを介する血管緊張,血管壁の栄養(蛋白,脂質,ビタミンCなど),電解質,ホルモン,血圧,血流,組織圧,血液のPO2,PCO2,pHなどが関与し,これらの諸要因が血管壁の性状を変え止血に影響を与える.血小板は止血血栓形成で中心的役割をはたしているが,血管壁の抵抗性を保つうえでも重要な働きをなしていることが知られている.この血管壁性状の障害は,臨床的には毛細管あるいは微小動脈壁の脆弱性あるいは透過性の亢進として把握されている.毛細抵抗試験はこの毛細管の脆弱性を測定する方法で,陽圧法と陰圧法がある.

基礎実習講座

検査室などにおける危険物の管理

著者: 宮崎信三

ページ範囲:P.251 - P.258

危険物とは
 一般的に危険物というと,引火性物質,爆発性物質,劇毒物または放射性物質など危険性のある物質を称している場合が多い.これらの物質はその目的に沿って消防法,高圧ガス取締法,毒物及び劇物取締法,薬事法などにより規制されています.ここでは消防法(以下法という)で定める危険物について述べます.危険物は,火災予防上の観点から法第2条第7号に「別表に掲げる発火性又は引火性物品」と規定されています.法別表(表1)をながめてみますと,危険物はその性状,危険性,消火方法などにより,第一類から第六類に分類(各類の総括的性質は表2参照)され,38の品名が指定されています.

アガーとアガロース

著者: 山岸安子

ページ範囲:P.259 - P.263

 臨床検査における血漿蛋白分画の臨床的有用性は大きく,その分画法も多目的に利用されている.そこに用いられている支持体にはセルロースアセテート膜,次いでアガーおよびアガロース,ポリアクリルアミドゲル,デンプンゲルなどである.
 一般的にゲルとは水を含み軟らかく弾性のある性質をいい,構成物質は三次元的な構造をもつポリマーの網目を形成し,その空間は液体が大部分を占めている.ゲルの種類によって物理的性質は異なる.ここでは,アガーおよびアガロースゲルの特性について記述する.

トピックス

同性愛男性のT細胞サブポピュレイーション

著者: 山中學

ページ範囲:P.265 - P.266

 過去2年間,米国では同性愛の男性(ゲイ)の間に,前例のないカポシ肉腫,ニューモシスチス・カリニ肺炎や他のいわゆるオポチュニステイックインフェクション(日和見感染)が発生した.これに対し,薬(ヤク)常用者にはそう多くない.これらの症例は,ニューヨーク市とカリフォルニアに集中していた.検査された19例では,全例が皮膚反応でアネルギーを示し,リンパ球のT細胞数の減少,リンパ球芽球化反応の障害がみられている.またT細胞サブセットの分布の変化もある例で報告されており,ちょうど,免疫抑制剤治療の際の副作用と類似の,後天性免疫不全の結果として,このような日和見感染やカポシ肉腫がみられるのだろうと考えられている.
 ニューヨークのSt. Luke-Roosevelt病院のKornfeldらは,もしそれが本当とすれば,重い病気にかかるおそれのある人の数は,カポシ肉腫や日和見感染にかかった症例で示された数よりもっと多いのではないかと考えて,ゲイ新聞に広告したり,ゲイの健康相談所や大学のゲイ学生協会を通じて,81名の平均年齢35歳の同性愛の健康な男性を募集し,T細胞のサブタイプの分布を調査した.対照には,平均30歳の正常な(異性愛の)男子20名を選んだ.

ザ・トレーニング 統計学

3 相関係数の求め方

著者: 太田抜徳

ページ範囲:P.271 - P.273

相関係数の意味
 対応する二つの要因に,何らかの関係が有るか否かを-1〜+1の間に数量化したものが相関係数(γ)である.
 図1は対応する要因(a,b)を平面上に散布図として表わした種々の相関図とγ値を示したが,イ,ロはaの増加に対しbは減少するという関係が見られ,これを負の相関,または逆相関と呼んでいる.ニ,ホはこれとは逆に,一方の増加に対して他方も増加するという関係が見られ,正の相関,または単に相関関係が有ると称している.ハの状態はa,bの要因に因果関係は認められず,相関関係がない,または無相関の関係と呼んでいる.

検査技師のためのME講座 検査機器の保守・管理・3

心拍出量測定の種類

著者: 荒井太紀雄

ページ範囲:P.276 - P.278

 臨床検査は一般診断の確定はもちろんのこと,検査結果においての内科的処置や外科的処置の選択の要因,そして疾患の度合いなどを定める重要なものです.心機能や循環動態の検査の一部である心拍出量測定方法にも,多種多様の検査方法があります.
 心拍出量測定方法の主なものとして次のような測定方法があります.

私たちの本棚

—赤川 次郎 著—疲れた頭にはミステリーを—三毛猫ホームズの推理

著者: 小林佐智子

ページ範囲:P.240 - P.240

 一昨年から全検査室がコンピューター一色になりました.初めは混乱,そして慣れるに従って合理的ではあるし,処理も速いし"コンピューターは良い物だ"と思えてきましたが,でもやはり非人間的なんですよネ.融通がきかない頑固物なんです.そんなカレと対決して疲れた頭には,場面の転回が速いシャレたミステリーを読むのが最高です.
 推理小説は読まないと言う人はいても,シャーロック・ホームズの名前を知らないという人は余程の変人か,さもなければエーリアンに違いないですよネ.この推理の大天才に魅せられて以来,シャーロック・ホームズと名のつくものならパロディだろうが何んでもかんでも手を出してきました.ところがその結果は惨敗.言うなれば,月とスッポン,バターとマーガリン,ミンクのコートとうさぎのシッポ,ケルダール法が窒素の測定で他の追随を許さないように,真物のシャーロック・ホームズはますますピカピカとしてきて,もうパロディ類は読むのをよそうと思っていたんです.でも長年の習慣とは恐ろしいもので,本屋さんで「三毛猫ホームズの推理」という題が目にとびこむと,もう手はお財布に伸びていました.買ってしまった以上は読まない手はない,と思って読みはじめると,ムム.これは…….

けんさアラカルト

検査過誤にご用心1—検査過誤の実態

著者: 石橋みどり

ページ範囲:P.267 - P.268

 臨床検査の分析データに対する精度管理は,各施設でX-R管理をはじめ,様々な管理法が用いられ,また,最近ではコンピュータの導入により,システマティックな管理が行われて,その成果をあげている.しかし,個々の検査データが,"真のデータ"つまり検査時点の患者の生体状況を正しく反映したものとなるには,分析機から打ち出された値に対する精度管理だけでは不十分で,患者の採血段階から,最終的に返却された報告書が,その患者のカルテに貼られるまでの総合的な精度管理が行われなければならないのではないだろうか.
 検査過誤――その発生は偶発的で,かつ,しばしば緻密な系統的データ管理のワクから漏れてしまうやっかい者であるが,それゆえに,ときとして患者の治療処置行為に直接影響を及ぼす事故になりかねない.

パラフィン包埋大型切片作製時の留意点について

著者: 前田明

ページ範囲:P.269 - P.269

 疾患により病変分布やその広がりを見るため,あるいは展示などを目的として,ときに大型切片の作製を要請される場合がある.大型切片の薄切においては,とりわけメスが良く切れることが重要であるが,替刃メスの普及によりメス幅に収まる組織の大きさであれば,テトランダー型の大型ミクロトームによらなくとも通常使用されているユング型ミクロトームでも容易に薄切ができるようになった.大型切片作製の機会はそれ程多いとは思われないが,その際次のような点に留意すればよいと思われる.
 1組織は脱水から包埋までの過程で収縮にともない歪みが生ずる.組織片が大きくなればその度合いも激しくなりやすく,薄切に際し,最大組織面を得ることが困難となるので,切り出しは厚め(7〜10mm)にするとよい.さらに脱水から包埋までに使用する容器もゆったりしたものを使用する.

検査を築いた人びと

血液型を発見した カール・ランドシュタイナー

著者: 酒井シヅ

ページ範囲:P.270 - P.270

 免疫反応を応用してヒトの血液に個体差のあることを発見したランドシュタイナーは,さらにいくつもの免疫学上の法則を見つけ,免疫化学の父と呼ばれる.

りんりんダイヤル

ホールピペットの正しい使い方は

著者: 荒木仁子

ページ範囲:P.274 - P.275

問 学校では,自然落下後,吹き出しまたは手で暖めて吐出のいずれでもよいが,必ずいつも同じ方法で行うようにと習いましたが,職場の先輩から5ml以上は手で暖めて吐出それ以下の容量のものは吹き出し,と指導されました.正しい扱い方をお教えください.

コーヒーブレイク

ヨゴすまい,グラ染 床や手や衣服

著者:

ページ範囲:P.244 - P.244

 仕事柄,手指はいつも美しく保っていたいと思っている.といっても爪をとがらせるほど伸ばして,マニキュアを塗るというような美しさではなく,ごく自然な清潔で健康的な美である.
 ふだんは素手で載せガラスを持ち,学生には見せたくないような不器用な手技で行っても手を汚さないで済むのであるが,今日は特に汚したくないという日に限って手指まで染色してしまう.手指の腹の部分ならば脱色剤でぬぐえばよいのであるが,爪と皮膚の間に入った場合にはまったく始末が悪い.爪の回りに青や赤のスジをつけた手を2,3日さらしていなければならない.先日もコワゴワ染色していると,ピペットの液をサッと標本にかけた途端に,紫の液は点状に飛び散り,右手はたちまち大小の斑点だらけになってしまった.原因はピベットの先端に空気が入っていたのを知らずに,勢いよく液を出したため飛散したのである.渋々,塩酸アルコールで斑点を拭うと,いつもならすぐに色素は落ちるはずなのにどうも斑点が消えにくい.

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略語シリーズ

ページ範囲:P.278 - P.278

DNCB dinitrochlorobenzene reaction;DNCB反応.これを皮内注射して細胞免疫の有無を検する.
GVB gelatin veronal buffer;ゼラチン・ベロナール緩衝液.血清学でよく用いる.

昭和57年度(第45回,第46回)二級臨床病理技術士資格認定試験 学科筆記試験 問題

著者: 日本臨床病理学会 ,   日本臨床病理同学院

ページ範囲:P.279 - P.301

細菌学(寄生虫学を含む)
1.次の文章のうち,正しいものには○印を,誤りには×印をつけよ.
 1.サルモネラのうち,Vi抗原をもつものはチフス菌のみである.

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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