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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術11巻8号

1983年08月発行

雑誌目次

病気のはなし

気管支喘息

著者: 本間日臣

ページ範囲:P.696 - P.700

気管支喘息とは
 種々の刺激に対する気管・気管支の反応性が亢進し,広汎な気道狭窄がおこる疾患である.この気道狭窄は可逆性であり,自然または治療により変化するもので,気管支炎,肺気腫,心血管病変による気道狭窄を除く.
 以上が気管支喘息の定義である.気道狭窄は,気管支に分布している気管支平滑筋の攣縮によって生じ,このとき気道が狭くなるのでヒューヒューまたはゼーゼーという喘鳴がきこえ,患者は呼吸困難を訴える.

技術講座 生化学

血中アンモニアの測定法

著者: 奥田清 ,   小林紀崇 ,   森田寛二 ,   原達雄

ページ範囲:P.713 - P.718

 血中アンモニアの由来については不明な点も多いが,次のように理解するのが妥当であろう.すなわち内因性(食餌中の蛋白,アミノ酸などから主として肝における脱アミノ反応によって生じる代謝性のもの)と外因性(腸内細菌によって生じ大部分は門脈を経て肝で処理される)の別があり,その濃度は内,外因性アンモニアの血中への流入速度(摂取蛋白量,脱アミノ反応,門脈副血行路の有無など)と流出(処理排泄)速度(血清蛋白合成,尿素合成,グルタミン合成など)の平衝関係により増減すると考えられる(図1)1).したがって臨床的には 1)重症肝障害:アンモニア処理機構の低下(尿素合成不全など),胃腸管出血によるアンモニアの腸管内生成,肝硬変にみられる肝外,肝内副血行路の発達による門脈血の大循環への直接移行 2)先天性尿素サイクル酵素欠損症 3)その他:過激な運動,ショック,アノキシアなどで増加する.特に肝疾患(肝昏睡の予知など)や先天性代謝異常のスクリーニング(尿素サイクル系酵素の欠損症)などはその意義が大きい.また肝不全における"肉中毒"が摂取蛋白量の増加によることも知られている.

血液

線溶試験2—ユーグロブリン溶解時間

著者: 松田保

ページ範囲:P.719 - P.723

血餅溶解時間
 フィブリン平板法は,線溶能の活性を一定時間で溶解するフィブリンの面積(量)であらわすのであるが,一定の条件下で生じたフィブリン塊が完全に溶解するまでの時間を測定してもよい.
 そのもっとも単純な方法は,全血凝固時間の測定に際し,ガラス試験管内で凝固した血液をそのまま37℃恒温槽中で保存し,何時溶解がおこるかを観察するもので,血餅溶解時間(whole bloodclot lysis time)と呼ばれる方法である.通常,普通のガラス試験管が用いられるが,血液とガラスとの接触によって生ずる内因性の線溶機序が結果に影響するのを避けるため,試験管の内面をシリコンで被覆する方法も行われる.このような場合,試験管中の血液をそのまま凝固させてもよいが,シリコン加工試験管では凝固時間が延長するので,血液2mlにトロンビン6単位を加えても良い.判定に要する時間はきわめて長く,24時間以内で血餅(赤血球をまき込んだフィブリン塊)が溶解すれば,プラスミンまたはプラスミノゲン・アクチベーターによる異常な線溶活性化を生じていることになる.24時間の観察で血餅が溶解しなければ陰性とする.なお,凝血塊と空気との接触面積は測定結果に影響を及ぼすとも言われ(空気との接触による内因性線溶機序(連載第1回参照)によると思われる),試験管の内径を一定にする必要がある.また,細菌による汚染は結果に影響するので,清浄なガラス器具を使用する必要がある.この方法は流血中のプラスミノゲン・アクチベーターおよびプラスミノゲンによって主に影響されると思われるが,いずれにしても,きわめて鈍感で陽性所見の得られることはまれであり,ことに線溶低下を診断する目的には適していない.

生理

終夜睡眠ポリグラフィ

著者: 西原京子 ,   斉藤泰彦 ,   遠藤四郎

ページ範囲:P.724 - P.730

 ポリグラフィとは,脳波,筋電図,眼球運動,心電図などの多くの生理現象を同時に記録する手技である.これを終夜にわたって行う終夜睡眠ポリグラフィは,日本では30年程前から行われていたが,一般的ではなかった.しかしエレクトロニクスの急速な発展に支えられて,性能のよい万能型脳波計が身近にある今日,終夜睡眠ポリグラフィは各地で行われ,①睡眠-覚醒障害の鑑別,②異常脳波,ポリグラムパターンの検索,③睡眠段階分布の検索,④薬物の影響の検討,⑤生体リズムの検討などの課題1)に対して臨床,研究の場で活躍している.
 最近その手技に関しての報告が増えているが,その入力部に関する記述が極めて少ない.そこで本講座では,入力部分特に電極関係に焦点をおいて述べるとともに,ポリグラフィの一般的手技についても述べる.

細胞診

肺の細胞診

著者: 小形岳三郎 ,   遠藤勝幸

ページ範囲:P.731 - P.735

 一般に,細胞診の目的が癌の診断であるように,肺の細胞診においても主たる対象は肺癌です.最近の日本における肺癌の増加は著しく,遠からず胃癌を抜き,癌死因の第1位になると推測されています.さらに,気管支鏡下での病巣の擦過や経皮的な肺病巣の穿刺吸引といった診断技術の開発や,早期肺癌検診に喀痰細胞診検査が組み入れられつつある最近の趨勢など,肺の細胞診の重要性はますます認識されてきています.またこれまでの多数の業績により,肺癌の細胞診と組織診の一致率は80%以上になっています.このような中で,実際に標本の作製やスクリーニングに携わる臨床検査技師の役割が高く評価されてきています.
 肺の細胞診については,すでに優れた成書1〜5)がいくつか出されていますので,ここでは,肺癌を中心とした肺の細胞診の概要を述べます.

血清

EIAによるHBe抗原,HBe抗体の検出

著者: 狩野賢二

ページ範囲:P.736 - P.740

ウイルス性肝炎とe抗原e抗体
 ウイルス性肝炎は,A型肝炎ウイルス(HAV),B型肝炎ウイルス(HBV)ならびに非A非B型肝炎ウイルスによるものに分類されている.これらウイルスの感染経路や,罹患後の病態の経過などから,HBVによる肝炎が,特に輸血での感染を起こすこともあって早くから注目された.ウイルスの構造についてもHBVにおいて,より詳細に解明されている.図1に示したように,大型でHBs,HBe,およびHBcの3タイプの抗原を持つウイルスをデーン粒子という.このうちe抗原は,HBVの芯の内部に存在するとともに,流血中では遊離の形で,あるいは免疫グロブリンと結合した形で存在すると言われている.すなわちIgGと結合したものは分子量約20万の大分子となるが,遊離のものは10万内外の分子量であろうと推測され,流血中に存在するものが測定される.
 e抗原,e抗体はそれを保持する血液に感染性があり,ことにHBs抗原陽性でe抗原陽性血液が,e抗体陽性血に比べてより感染性が高いことが明らかにされている.したがってB型肝炎ウイルスの感染予防対策上,e抗原,e抗体の検索が重要となっている.e抗原の検出率は,急性肝炎よりも慢性肝炎,肝硬変症に高く,肝疾患の病態と予後を推測するのに有効な指標となる.さらに無症候性キャリアーでは,e抗原陽性例に肝炎を発症するものが多いことから,HBVの母児感染の予防上,e抗原は重要なマーカーとみなされている.

検査法の基礎理論 なぜこうなるの?

血小板の算定

著者: 塚田理康

ページ範囲:P.701 - P.705

 血小板数の算定は,血液疾患の診断や治療に欠かせない検査であるだけでなく,感染症,悪性腫瘍,産科疾患などによる消費性凝固障害の早期診断や治療効果の判定,あるいは悪性腫瘍の化学療法による骨髄抑制の早期発見にも必要な検査である.
 血小板算定法には,表に挙げた多くのものがあるが,多くの病院,検査センターで自動血球計数法が用いられるようになってきている.その理由は,多数検体が処理可能であること,測定の精密度(再現性)が良いことがあげられる.本稿ではこの自動血球計数器による血小板数算定の理論を中心に述べたいと思う.

尿円柱とその成因

著者: 今井宣子

ページ範囲:P.707 - P.711

 尿円柱とは平行する二辺を有する細長い円柱状を呈する尿中有機成分(本体は凝固した蛋白体)のことである.その形状から円柱(cylinder)と称されるが,また腎尿細管腔を鋳型として形成されることからcast(鋳型)とも称される.したがって円柱の大きさ・形状はその円柱が形成された尿細管腔のそれを意味し,円柱の成分はその円柱が形成された尿細管腔の内容と状態を示す.また尿中に円柱をみることは,尿細管腔に一時的閉塞があったことおよび尿流が再開したことの2点を示す.
 このように円柱は腎実質のみに由来し,その部位の変化を特異的に反映するため,円柱の与える情報は臨床的に極めて重要である.

学会印象記 第32回日本臨床衛生検査学会

英語による演題発表に新たな意欲が

著者: 奥山恵理子

ページ範囲:P.706 - P.706

 4月29日から5月1日までの3日間,瀬戸内の温暖な地,そして吉備文化のふるさと"岡山"で第32回臨床衛生検査学会が開催された.4月末とは思えぬ暑さがつづいた3日間で,初日はあいにく曇時々雨という天候であったが,2日目はわれわれの残念そうな顔が天まで届いたのか,からりと晴れあがり,"緑と太陽の街"というイメージにぴったりであった.岡山は地方都市特有のゆったりとした町で,それでいて近代的な美術館,ホールなど文化施設が整い,そしていたるところに緑のある美しい町である.
 笠原和恵学会長は学会初の女性会長であるが,その統率力に優れた運営に私,一女性として感銘した.その一方で,企画には女性らしいこまやかな心配りが印象的であった.例えば学会場で配布された小冊子などはプログラムはもとより,岡山・倉敷タウンガイドまでかねそなえた親切なものであった.学会参加人員は3日間で約4千人,発表演題は一般演題924題という大学会で,会場は岡山市内にメイン会場である岡山市民会館をはじめ12会場,そして郊外の岡山市総合文化体育館が展示場として設けられていた.

アーチファクト

病理組織

著者: 清野和夫

ページ範囲:P.741 - P.741

 今回は切り出し時に起こりやすいアーチファクトをテーマとして採り上げた.
 写真1 肺.H・E染色標本.×133:肺胞内に見られる灰白色の結晶状の物質は,手術用のゴム手袋に付着していたタルクの粉末が混入したものである.ディスポーザブル手袋(ポリエステル製品)を用いれば避けられる.

超音波—1.サイドローブ

著者: 遠田栄一

ページ範囲:P.742 - P.742

 超音波のアーチファクトは物理的性質に由来して発生するもので,しばしば誤診の原因となることがある.主なアーチファクトとしては,①サイドローブ(Siderove),②多重反射(Reverberation),③欠損(ultrasonic shadow),④エコーの脱落(drop out)などがある.

マスターしよう基本操作

ラジオイムノアッセイの基本手技

著者: 伊藤節子 ,   内田侊子

ページ範囲:P.743 - P.750

 ラジオイムノアッセイ(RIA)は,放射性同位元素(RI)を標識物質として抗原抗体反応の特異性を利用した微量測定法である.RIAは従来の化学的または生物学的検査法に比べて,操作が簡単で感度が高い測定法であるため,近年ホルモン,酵素,薬剤などの測定法として急速に発展してきた方法である.
 RIAは競合反応を原理とするものが大半であるが,その操作のなかで,結合型(B)と遊離型(F)の分離,B/F分離の過程がもっとも重要である.その方法には二抗体法,固相法,吸着法など種々の方法があるが,ここではトリヨードサイロニン(T3)測定を例に挙げて最近よく行われている試験管固相法の手技を説明し,また操作はやや困難だが一般的に使われているデキストラン炭末法(吸着法)について,ACTHを例として説明する.さらに,RIAの検査法では常にRIを使用するので,測定者の放射線による被曝をできるだけ少なくするため,RIの安全な取り扱いについても併せて説明する.

基礎実習講座

化学検査で用いる単位

著者: 溝口香代子

ページ範囲:P.751 - P.754

 "単位"とは広辞苑の定義によれば,"ある量を表わすとき,比較の基準となる同種の量の名"であるという.私たちは日常,検査データを扱ううえでさまざまな単位を使いわけているが,案外単位そのものについての系統的な理解に乏しいように思われる.特に最近は臨床検査の分野にもSI単位(後述)が少しずつ導入されてきており,従来の慣用単位との比較を含め解説を試みた.

検量線2—ラジオイムノアッセイの場合

著者: 伊藤節子 ,   加野象次郎

ページ範囲:P.755 - P.760

 ラジオイムノアッセイ(RIA)は抗原抗体反応の特異性を利用し,放射性アイソトープをトレーサーとすることにより,従来の他の測定法に比べて著しく感度を上げた測定法である.この測定法は1959年,BersonとYalowによってインスリン測定に初めて導入され,その後インスリン以外のホルモン測定にも応用されてきており,最近ではビタミン,薬剤の測定などにも応用されるようになっている.生体微量物質の測定法としては,今や欠くことのできないものとなっている.
 RIAの測定は現在のところ,競合反応を利用したものと非競合反応を利用したものに大別される.競合反応は一定量の抗体に対して一定量の標識抗原と非標識抗原が,抗原過剰の条件下で競合反応するものである.一方,非競合反応はサンドウィッチ法に代表されるように,抗体過剰の条件で固相化抗体と抗原を反応させた後,これに標識抗体を反応させるものであり,多価の蛋白抗原の測定に用いられている.

ザ・トレーニング 精度管理法

生化学1—添加回収試験

著者: 中甫

ページ範囲:P.761 - P.763

 添加回収試験とはrecovery testの訳語で単に回収試験ともいう.この試験は定量しようとする目的物質の濃度に対して常に同じ比率(%)で現れる誤差,すなわち比例系統誤差(proportionalsystematic error;相乗誤差ともいう)の存在の有無とその程度を推定するための試験法と考えられている.実際には,目的物質の純物質の一定濃度を被検試料に添加し,添加した試料と無添加試料を同時に測定してその差(回収量)を求め,その回収量の添加量に対する比率(recovery;回収率)を計算する.添加回収試験には純物質を秤量して試料に直接添加する方法と,純物質の濃厚溶液を試料に添加する方法があるが,臨床検査の領域では主として後者が用いられている.

君はアメリカの試験にパスできるか(英和対訳)

免疫学

著者: 金衡仁

ページ範囲:P.767 - P.771

[1]You are quantitating complement factor 3 (C3) using the kinetic (Fahey) modification of the radial immunodiffusion test.In drawing the standard curve, what values obtained for the antigen standards would you plot versus the concentrations of the standards? What type of graph paper would you use to obtain the proper quantitative relationship for determinations of the unknowns?
 A.D*1, linear graph paper
 B.D, semi-log graph paper
 C.D2, linear graph paper
 D.D2, semi-log graph paper

検査技師のためのME講座 マイコンと友だちになろう・1

マイコンABC?

著者: 熊田勝代

ページ範囲:P.773 - P.776

 マイコン(マイクロコンピューター)単独の利用の方法については,あちらこちらの広告・パンフレットなどで職場に,個人の余暇利用にと十分浸透したようだ.近年のハードウェア技術の向上により低価格化したコンピューターは,各種機器類に内蔵され処理能力を上げたり,性能をさらに上げたり,機械操作の自動化を可能にしたり,処理効率の向上に寄与している.検査室の中にも全自動分析機,半自動分析機,ディジタルデータ・アナログデータの取り扱いなどに,マイコン内蔵機器(ME)が入ってきて並びだした.そんな環境の中で,患者さんを前にしてトラブルメーカーのMEとにらめっこでは"困ったME!!""困った技師!!"になりかねません.検査のパートナー「ME」君の日常行動(稼動状況)をチェックし,話しかけに対する答え方(オペレーションに対する動き)が日々不安定であったり,検査数の多い忙しい日になるとなぜか非協力的になる(マイコンの処理能力・機能が不足しているか,操作方法の不備があるのか)のはどうしてかを,詳細な分析・対応策を基に対処方法を常に心掛けておきましょう.
 MEが突然間違いを多発しはじめたとき,突然ストライキ(故障)に入ったときに,MEと会話の術を知らないのでは悲しいでしょう.できるだけ手短かに話合えればよいのですが,どうもうまくゆかないときには,きちんとした相談員か調停員(MEメーカーの技師またはコンピューター技師)に入ってもらうことになるでしょう.このとき,あなたが適格な事情説明をしなければ,この混乱は増々長引き,大きくなってしまいます.そこでこのコーナーでは,検査室内でME機器の運用管理を円滑にするための,マイコンとの接し方を考えてみましょう.

トピックス

通常パラフィン包埋切片での免疫組織化学

著者: 浦野順文

ページ範囲:P.777 - P.777

 パラフィン包埋切片での免疫組織化学反応は広く行われるようになり,日常の診療活動の中で欠かすことができなくなった.
 PAP(ペルオキシダーゼ・抗ペルオキシダーゼ)免疫複合体と検索しようとする抗原の抗体とを,両者に共通の抗体で結合することにより抗体検出の感度が鋭敏になったので,通常のホルマリン固定・パラフィン包埋切片で種々の検索ができるようになった.この方法の開発によって,凍結切片を用いたり,パラフィン包埋を行うにしてもアルコール固定で軟パラフィンを用いたりすることが必ずしも必要でなくなったことは,その普及に大きな役割を演じている.このペルオキシダーゼ活性で抗原が検出されるわけであるが,その検出に用いる発色剤のDAB(3,3'-diaminobenzidine tetrahydrochloride)は発癌性があるということが指摘されているので,これに代わって3-amino-9-ethylcarbazoleが用いられるが,これは有機溶媒にとけるのでキシロールで封入できない.

モノクローン抗体による癌治療

著者: 岩田進

ページ範囲:P.778 - P.778

 悪性腫瘍の治療には外科的切除,放射線照射,化学療法および免疫療法がある.免疫療法としてはBCGによる治療が有名であるが,同じ効果を期待した薬剤もBCGの他にいくつか開発されている.これら免疫剤による治療は,細胞性免疫,いわゆるT-リンパ球を活性化させ癌細胞の抑制を狙ったものである.一時注目されたインターフェロンも遺伝子工学により量産されつつあり,治験が積み重ねられるにつれて制癌剤としての評価もわかってくるものと期待されている.
 近年ハイブリドーマによるモノクローン抗体(MoAb)の研究が進み,MoAbを使った腫瘍の治療の試みが盛んになり注目されている.ハイブリドーマによるMoAbは,1975年Milstein & Köhlerにより開発され免疫学を大きく変えつつあるが,このMoAbを治療に用いる場合にいくつかの方法が考えられている.

けんさアラカルト 臨床検査技師国家試験にモノ申す

教育者をもっと試験委員に

著者: 富田仁

ページ範囲:P.764 - P.765

 最近,臨床検査教師の国家試験の問題が難しいとか,技師の問題としては不適であるとか,問題のあるものが多いとかの批判をよく耳にする.
 出題者の身になれば,問題作製に当たって,多くの人に相談するわけにもいかないし,年に2回ずつ割り当てられた科目に出題していると3年もすれば,よい問題はなくなってしまう.しかも,5問のうち1問だけが正しいように作らねばならないので,絶対的な差より相対的な差だけあるような無理をした問題も若干作らなければならないし,解答するものにとっては,たいへん難しくなる.教科書や参考書によって異なるからである.特に,いずれでもよいとかすべてなどの答が含まれていると難しくなってくる.

教育内容に見あった出題レベルを

著者: 和田浩

ページ範囲:P.765 - P.765

 臨床検査技師の受験資格が文部・厚生大臣の認める3年制以上の学校卒業者のみについて行われてきた国家試験合格率は下記のとおりである.
 昭和53年から昭和58年の春のみ6回の実績を見るとおもしろいことに,53年と55年,56年と58年と区切ると山が二つ,その頂点は702%と66.8%を示し,暗くて悲しみの谷底は40数%から50数%と平坦でないだけに風趣がある.この光景は自然現象でなく人為的であるだけに複雑である.要因は何か.出題者側と受験者側いずれに主たる責任があるのであろうか.出題者側の思わくから高低の著しい変化を与えているのであろうか.一方受験者側すなわち,教師と学生である側をおよそ隔年に両者の著しい質の変化ありと分析するにぽ相当の無理が生ずると思う.母集団で特に谷間づくりに一役かっているのは,定員の多い厚生大臣指定の私立であり,文部大臣指定校に比べ10数%くらい低いことは事実である.また4年制の免除組も平均的に低く大きな要因のひとつになっている.したがって試験問題が難しいと一概には言えないが,全科目受験組の合格率が50数%代のときは概して出題内容に好ましくないものが相当含まれていると思う.

"解答なし"はないように

著者: 吉田陞

ページ範囲:P.766 - P.766

 日本臨床衛生検査技師会では,臨床検査技師国家試験が終わった後,会誌編集委員会を中心に毎回,試験問題の内容検討,解答作成を行っているが,その都度,適当でないと思われる問題,解答がない問題などに直面している.昨秋と今春行われた(第23〜24回)問題について検討した中から3,4例あげてみた.第23回の医動物学のなかで次のような問題があった.

検査を築いた人びと

神経細胞の染色法を開発した フランツ・ニッスル

著者: 酒井シヅ

ページ範囲:P.712 - P.712

 ニッスル染色の名前で親しんでいる神経細胞の染色法は,それが創案されてから80年以上たつ今日も,簡便で,確実な方法として賞用されている.

私たちの本棚

—江川 晴 著—捜し求める医療—看護婦物語

著者: 小野寺令造

ページ範囲:P.772 - P.772

 この作者の前作は「小児病棟」で第一回読売「女性ヒューマン・ドキュメンタリー」大賞優秀賞を受賞している.その内容にたいへん感銘を受けていたので,次の作品を待ち望んでいたところ「看護婦物語」が発表され,さっそく読んでみた.まず最初に"看護婦とは何か"というこの本の最大のテーマが問題提起され,看護婦 舞川苑子の目を通し,心を通して物語は展開していく.
 その内容はまず,患者とのトラブルから始まる.今の看護婦のやり方は,検温機運搬人兼医療機器操作人で,ただの白い服を着た人形にすぎない.患者に対して何の説明もしないで,ただ自分たちの意志を押しつける.というこの場面が,今の看護業務,ひいては現在医療の直面している現状ではないかとも思えてくる.
 日本ME学会では,12年前から医療従事者やメーカー側の人たちのME教育をいかにすべきかということを検討し,実行するためのME教育委員会を発足させている.その一つとして,医療従事者ならばこれだけは知っておいてほしいMEの知識と機器使用に伴う安全確保の対処法についての講習会を昭和54年から毎年行ってきた,さらにこれらの常識を身につけたかどうかを自己認識し,また職場でも明らかにし得るために「第2種ME技術実力検定試験」を行ってきた.全国にわたって既に数千人が講習を受け,また試験に合格しているが,ME機器の普及に比べてその輪はまだまだ小さい.

コーヒーブレイク

ボロ車は勉強になる

著者:

ページ範囲:P.771 - P.771

 自動車の運転免許をとってから,25年が経過した.その間,中古車にも多く乗り,たいていの故障は経験した積りであったが,今回はさらに新しい故障に遭遇した.
 車はスカイライン1800cc,9年目のボロ車である.ある日,オーバーヒートに気付き,それが循環冷却水の減少であることを知り,型どおり水を補充した.しかし,冷却水の減少のスピードはますます速くなり,しかも時々セルモーターが回転し難くなった.車庫に自動車を置いている時には,全く水は漏らないので,走行中,水が漏るのであろうと推定し,修理工場に出した.その工場では,水は漏っていないので,冷却水を循環させているポンプが悪いということで,ポンプを取り替え,さらにセルモーターそのものもオーバーホールしてもらった.しかし,水の減少とセルモーターが回転し難いのは全くなおらないので,再び修理工場に持参した.電池を充電してもなおらず,電池を新品ととり替えても全く直らなかった.遂に,路上でJAFを呼んだ.JAFの彼氏は,小生の言うことをじっと聞いていたが,直ちにオイルの蓋をあけて見て,蓋の裏側が白くなっているのに気付き,これは油と水が混ざっていると言い,さらに油の量を見ると異常に増えていた.これは冷却水のパイプが破れて,オイルと混合しているのだという.つまり,冷却水は走行中,オイルの方へ流れて行くので減少し,オイルに水が混ざっているので抵抗が大きくなりセルモーターが回らないのだと説明してくれた.さらに,セルモーターが回らない理由として,次のように考えるのだと言った.

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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