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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術12巻3号

1984年03月発行

雑誌目次

病気のはなし

慢性活動性肝炎

著者: 針原重義

ページ範囲:P.208 - P.214

 肝臓は体の中で最も大きな実質臓器であり,機能面では体の化学工場としての働きをしている.すなわち,生体に必要なものを作り出し,生体に不必要になったものを分解する働きを,肝臓は行っているのである.
 慢性肝炎とは,肝臓の化学工場としての働きが長期間だらだらと障害されている状態である.つまり,慢性肝炎はなかなか治らずに遷延する肝臓の炎症である.

技術講座 生化学

アミラーゼ測定法

著者: 大川二郎

ページ範囲:P.225 - P.230

 α-アミラーゼ(α-1,4-glucan 4-glucanohydrolase;EC 3.2.1.1)はデンプンとグリコーゲンに作用する加水分解酵素であり,α1-4グルコシド結合を加水分解し,グルコースとマルトースおよび還元性デキストリンを生成する.このようにデンプンにランダムに作用するアミラーゼをendoamylaseと呼び,これはヒトと動物由来アミラーゼの特徴である.これに対して植物由来アミラーゼは,デンプンの非還元末端から順次作用してマルトースを生成するのでexoamylaseと呼ばれ,またこれをβ-アミラーゼと呼ぶ.
 臨床化学の日常検査で測定されている酵素の中でα-アミラーゼは,最も測定方法と活性表示単位の種類の多いものである.筆者らが最近行ったサーベイでも,参加32施設で11種類の測定法と活性表示単位の組み合わせがあった.

血液

異常ヘモグロビン2—日常検査(電気泳動以外)

著者: 大庭雄三 ,   宮地隆興

ページ範囲:P.231 - P.236

試料の取り扱い
 原則として新鮮な血液を用いる.同時に正常対照を採血する.筆者らは普通,次の方法によって約10g/dlのヘモグロビン溶液を調製している.トルエンの代わりに四塩化炭素を用いる人もあり,また有機溶媒はヘモグロビンを変性させるので避けるべきだと主張する人も少なくない.
 操作 1)凝固阻止血液を遠心して血漿を除き,赤血球を約5容以上の生理食塩水で3回洗う.最後の遠心後,余分の食塩水を注意深くできるだけ完全に吸引除去する.

検査法の基礎理論 なぜこうなるの?

レクチン—その組織化学への応用

著者: 渡辺信

ページ範囲:P.215 - P.218

 従来から,組織中の糖成分は,PAS,アルシアンブルー,ムチカルミンなどの染色法を用いてその性格の同定が行われていたが,それは,糖成分全体の酸性,中性などの全体的な性格を利用したものであった.
 近年,植物,特にマメに多く含まれるレクチンが,糖成分の中でも,ガラクトース,N-アセチル-ガラクトサミン,フコースといった糖残基と特異的に結合することが明らかとなり,従来の酸性多糖類,中性多糖類といった同定から一歩進んで,多糖類,さらには糖蛋白質などの複合糖質の中に含まれる特定の糖残基が,分子レベルで同定できるようになってきた.

GC%による細菌の同定

著者: 吉川昌之介

ページ範囲:P.219 - P.223

DNAの化学組成と構造
 デオキシリボ核酸(deoxyribonucleic acid;DNA)は生物のすべての遺伝情報を担い,細胞レベルではその情報発現の青写真となり,細胞分裂に際しては二つの同じ分子を作って―これを複製という―両娘細胞に分配し,遺伝させていく.その化学的基本単位はデオキシリボース1分子,リン酸1分子と4種の塩基のうちのどれか1分子から成っている.これをヌクレオチドという.4種の塩基とは図1に示すように2種のプリン塩基,アデニンとグアニン,および2種のピリミジン塩基,チミンとシトシンである.図1のようにアデニンとチミンの間には2本の水素結合,グアニンとシトシンの間には3本の水素結合が生じうる.
 1955年頃Chargaff1)は,種々のDNAを構成するこれら4種の塩基のモル組成の間に次のような関係が成り立つことを発見した.すなわち,

アーチファクト

病理組織

著者: 前田明

ページ範囲:P.237 - P.237

写真1脳 ホルツァー染色 ×80,80
 染色法によっては,操作過程で切片を濾紙で押さえ,過剰な水分や色素液などを吸着させる場合がある.ホルツァー染色でもシュウ化カリウムの後,この操作が行われる.aはその際に濾紙の粗い面で押さえたために組織の一部が濾紙に付着し,剥離してできたもので,bは押さえる濾紙がずれて生じたものである.これらを予防するため,濾紙の平滑な面を使用することはもちろんであるが,ずれて切片を傷めないよう濾紙とスライドグラスの一端をよく押さえ,一定方向のみに圧を加えてこするようにすることが大切である.

心電図・2

著者: 鈴木恒夫

ページ範囲:P.238 - P.238

 前回に引き続き,急性アルコール中毒の患者から記録された心電図を例にとって,振戦障害に対する対策と鑑別すべき類似疾患について解説する.

マスターしよう基本操作

PAP染色法,ABC染色法

著者: 森茂郎

ページ範囲:P.239 - P.245

 PAP法,ABC法は,ともに免疫反応の組織切片への応用である免疫組織学的染色法のうちに入る手技であり,近年,病理形態学において広く用いられている.免疫組織学的手技は同定したい物質そのものを染め出すという点で従来の非特異的な染色と比べて優位な理論的根拠を持つものである.このカテゴリーに属する手技としてはPAP法,ABC法以外に従来からある酵素抗体直接法,間接法,ペルオキシダーゼ以外の酵素を用いる方法などもあるが,病理ルーチンとしてはPAP法かABC法がまず推奨される.反応が十分鋭敏で,フォルマリン固定パラフィン包埋切片の染色に応用がきくことがその理由である.PAP法とABC法の優劣はにわかに決め難いところであり,どちらを選んでも結果に大差はない.いずれにせよ,まず試み,その結果の反省をもとに次のステップに進むという態度があれば,これらの手技のマスターは決して困難なものではない.特に最近はこの両染色用のキットが発売されており,それらは良好な染色性を有すると同時に,繁雑な至適希釈度の決定の操作が不要であり,使いやすいものとなっている.手はじめにこれらのキットから慣れてゆくというのも一つの方法であろう.本稿ではフォルマリン固定切片および未固定切片にPAP法およびABC法を行うに際しての基本手技の説明を行った.本法の理論面およびいくつかのより複雑な手技などについては別の総説1)をご参照いただければ幸せである.

検査技師のためのME講座 検査機器の点検と管理の実際・1

脳波計—故障の見分け方を中心に

著者: 白井康之 ,   石山陽事

ページ範囲:P.247 - P.251

脳波計の構造
 脳の活動電位の変動を増幅して記録する装置が脳波計です.原理的には心電計と同じで,脳の活動電位は頭皮上などに装着された電極からその導出線(リード線)を通して電極箱に接続され,さらにそこから脳波計本体への信号として導かれます.脳波計の内部は,図に示すようなブロックに分けることができます.
 まず,入力部に入った脳波の信号は電極選択器で各チャンネルごとに,任意の二つの電極からのものが選ばれます.そして各チャンネルごとに,その選ばれた信号を増幅部へ導きます.増幅部では最初に前置増幅器(プレ・アンプ)によって主に二つの信号間の電位差を増幅します.前置増幅器には交流雑音などの同相雑音を除くために,差動増幅器が使われています.また一般に前置増幅器には,低域の周波数特性を決める時定数回路,それに並列したインスト回路,高域の周波数特性を決めるフィルター回路などが含まれています.前置増幅器で増幅された信号は,やはり増幅部の中の主増幅器へ導かれます.この増幅器は時定数回路のない直流結合(DC結合)になっています.主増幅器は電流増幅を行い,ペン・ガルバノメーターを駆動させるのに必要な電力を記録部に供給します.記録部では増幅部から入力された電流に応じて,ペン・ガルバノメーターのペンを振らせます.このほかに,脳波計には入力部,増幅部,記録部に必要な電力を供給する電源部があります.

トピックス

アンチトロンビン製剤とその意義

著者: 青木延雄

ページ範囲:P.253 - P.254

 アンチトロンビンⅢ(antithrombin Ⅲ;AT Ⅲ)は,正常に血漿中に存在する分子量65,000の糖蛋白であり,蛋白分解酵素(セリンプロテアーゼ)阻害因子の一つである.特に,活性化された凝固因子すなわちトロンビンとⅦ,Ⅸ,Ⅹ因子の活性型(これらはいずれもセリンプロテアーゼである)の活性を阻害する.
 かつて,血漿中のトロンビン阻害活性は,その作用様式に従って,アンチトロンビンⅠ,Ⅱ,Ⅲ,Ⅳ,Ⅴ,Ⅵと分けられた.Ⅰはフィブリンのトロンビン吸着作用,Ⅱはヘパリンと協力してトロンビンを不活性化する因子(ヘパリン協同因子),Ⅲはトロンビンを時間をかけて徐々に不活性化する因子,Ⅳはプロトロンビンがトロンビンに活性化されるときに出現する抗トロンビン作用,Ⅴはフィブリン分解産物の抗トロンビン作用,Ⅵはリウマチ,膠原病などに出現する病的抗凝固因子を指したが,そのうちⅣはその存在が否定され,ⅡはⅢと同一の物質であることが判明し,結局,生理的に最も重要なのは,アンチトロンビンⅢ(ATⅢ)のみであることが現在広く認められている.したがって,Ⅲはあまり意味がなく,単にアンチトロンビンと呼ばれてもよいわけであるが,依然として習慣上Ⅲをつけて呼んでいる.

基礎実習講座

精度管理尿の作り方と使い方

著者: 岩瀬正子

ページ範囲:P.255 - P.258

 尿検査の精度管理は,多くの臨床検査の中で最も遅れているものの一つである.
 東京都内の27施設に対し,精度管理に関する調査を行ったところ,表1に示すように半分以上は精度管理を"行っていない"と答えている.その理由は,精度管理は必要とは思うのだがなんとなくやっていない,また,精度管理の方法がわからない,ということである.

標準溶血液の作り方と判定

著者: 堀越晃

ページ範囲:P.259 - P.262

 血清反応における溶血の判定は,補体結合反応や溶血反応の結果,陽性または陰性あるいは定量値として記録される.また,赤血球凝集反応の際にも溶血現象が観察される場合は記録される.
 これらの各種血清反応の結果のうち,溶血あるいは非溶血の区別をする抗ストレプトリジンO価測定では,どの単位から溶血しているかがはっきりすればよいのに対し,梅毒血清反応の緒方法の判定では,完全溶血,不完全溶血,不溶血として区別している.しかも,その中で不完全溶血を段階に応じて3',2,2',1,1',?と細かく判定して,反応の溶血度を表現している.

君はアメリカの試験にパスできるか(英和対訳)

自動化細菌検査

著者: 岡田淳

ページ範囲:P.263 - P.265

[1] A variety of microtiter panels are manufactured for MIC*1 determinations and/or bacterial identification. Which of the following panels are available from American Micro Scan?
 1.Gram-negative Combo

ザ・トレーニング

細菌検査の成績管理1—菌種名とその薬剤感受性パターンから

著者: 小栗豊子

ページ範囲:P.269 - P.271

 細菌検査成績は実に多くの因子により影響を受ける.それは検査材料採取後の保存方法や時間の経過に始まり,次のステップである検査経過の中には,成績の良否を左右するたくさんの因子が存在している.この中には検査担当者の主観が大きく影響する部分も少なくない.このような背景のもとでの成績管理は,経験者によるダブルチェックが最も確実な方法だと思うが,このような方法はすべての施設で可能であるとは限らない.
 検査担当者自身が得られた成績を見て"これはおかしい"と思い,再検できたらどうであろうか.先のダブルチェックと比べれば検査経過の部分的な管理ではあるが,精度を上げるうえでかなり役だつものと考える.

検査を築いた人びと

元素分析法を完成した ユストゥス・リービッヒ

著者: 酒井シヅ

ページ範囲:P.224 - P.224

 化学が医学の世界で正当な地位を得て,医学の発展に大きく寄与するようになるのは,19世紀に入ってからである.特に,元素分析法を自由に活用して,有機化合物の分析,合成を可能としてから,化学の医学における重みは一段と増したのであった.有機化合物の元素分析法の原理はラボアジエが既に18世紀末に作り上げていたが,その作業に要する手間はたいへんなものであった.それをより容易にしたのがリービッヒであり,それは100年余りたった今も,同法の骨格をなしている.

私たちの本棚

法医学者の事件裏話—法医学教室の午後—西丸與一 著

著者: 二瓶一夫

ページ範囲:P.246 - P.246

 現代社会において取り沙汰される医療界の中でも,医学関係を題材にした物語は古今東西を問わず比較的多く残っており,その中でも映像化されたものは少なくない.
 既に十数年も昔になろうかと思うが,その中でも特にベンケーシーは代表的な例と思うが,これらは主として臨床医を中心としたもので,法医学関係というとずーとその数は少なくなるのではないであろうか.特に法医学に関する物語はややもすれば専門的になり,理解するのに多少の時間を要したり,あるいは興味本位になり何となくわれわれにとって興味を損なわしめるところである.しかし本書は,その点,素人にも非常にわかりやすく,時には笑いを誘うような部分もある.また,ある時には推理小説にあるようなものが現実に存在することを理解しやすく解説されており,法医学という仕事の内容について予備知識のない小生のごとき者にとって,別の世界をかいま見る良い解説書ではないかと思う.

けんさアラカルト

IAMLTとJAMLT

著者: 金山昭平

ページ範囲:P.267 - P.268

IAMLTの生長の概略
 IAMLT(International Association of Medical Laboratory Technologists;国際医学検査技師協会)の誕生は,1955年イギリスのノッキンガムでIAMLT組織の草案が検討されたことから始まり,1961年に第1回IAML学会総会が開催され現在に至っている.その主な事項は表1のごとくである.

りんりんダイヤル

睡眠とレム期の関連

著者: 大熊輝雄

ページ範囲:P.272 - P.272

 問 睡眠脳波のレム(REM)期に夢を見ていることが多いと言われていますが,両者の関連についてご解説ください.

コーヒーブレイク

梅毒血清反応に悩んでいる人

著者:

ページ範囲:P.223 - P.223

 梅毒に悩んでいる人ではなくて,血清反応に悩んでいる人がいる.その2例を示す.

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医学用語における接頭語・接尾語

著者: 富田仁

ページ範囲:P.218 - P.218

 -malacia(ギ)ギリシャ語のmalakia(軟らかいこと,softening)に由来し,malakos(軟らかい)と-ia症から成り,軟化症となる.例えば,osteomalacia(骨軟化症),encephalomalacia(脳軟化症)など.
 -magaly(ギ)-megaliaともいう.ギリシャ語のmegalo(巨大な)と-ia症とから成り,肥大症ないし巨大症(enlargement)である.例えば,splenomegaly(脾腫,巨脾症),hepatomegaly(肝腫,肝腫脹)など.

昭和58年度(第47回,第48回)二級臨床病理技術士資格認定試験 学科筆記試験 問題

著者: 日本臨床病理学会 ,   日本臨床病理同学院

ページ範囲:P.273 - P.294

細菌学(寄生虫学を含む)
1.次の文章のうち,正しいものには○印を,誤りには×印をつけよ.
 1.プロテウス属の共通な生物学的性状として,インドールピルビン酸反応陽性がある.

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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