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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術13巻2号

1985年02月発行

雑誌目次

病気のはなし

花粉症

著者: 高坂知節

ページ範囲:P.126 - P.131

花粉症とは
 花粉症(pollinosis)は,気道アレルギー疾患の一つで,花粉の飛散する季節に一致し,眼と鼻の症状を主症状としてある日突然に発症する病気のことをいう.症状がちょうど風邪をひいたときと似ているので,風邪と思っている人もいるが,花粉症に罹患するためには,それ以前にある一定期間花粉にさらされて,これに感作される必要があり,花粉シーズンになると誰もが発症するわけではない.その症状の主なものは,眼のかゆみやチカチカした異物感,そして連発性のくしゃみ,鼻水,鼻づまりなどであり,そのほかにも口内のかゆみや咳,頭痛,皮膚のかゆみ,下痢・便秘などを伴うこともある.

技術講座 生化学

トリグリセリドの測定法

著者: 野間昭夫

ページ範囲:P.147 - P.152

 血清脂質にはコレステロール,中性脂肪,リン脂質および遊離脂肪酸が主として含まれ,そのほかに微量成分として脂溶性ビタミンなどが含まれる.
 中性脂肪とはグリセロールに脂肪酸が3分子結合したトリグリセリド,2分子結合したジグリセリド,1分子結合したモノグリセリドの総称である(図1).しかし,血清中では95%位はトリグリセリドであるので,中性脂肪とトリグリセリドは同じ意味に使われることが多い.

生理

生体電気現象のとらえ方1—検流計の時代

著者: 松尾正之

ページ範囲:P.153 - P.156

 心電図や脳波などを誘導することは現在では極めて容易で,当然のことのように思われるようになっている.しかし原点に返り,生体電気現象がいかにして発見され,どのような経過をたどって現在に至っているかを,計測器を中心にして顧みることにしたい.こうすることが,生体電気現象のとらえ方についての理解をより深めるうえで,意義があると考えるからである.

細菌

培養検査法1—尿

著者: 横沢光博

ページ範囲:P.157 - P.161

 臨床細菌検査室で最も多い検体は尿である.尿は尿路感染症(細菌性の腎孟腎炎,膀胱炎,尿道炎を一括した総称;図1)の診断を行ううえに極めて重要な検体である.
 尿路感染症の診断には細菌尿(常在菌によって汚染されていない尿に細菌が存在した状態)の正確な証明が極めて重要で,尿の培養によって細菌が尿1ml中に10万個以上存在したときにいちおう尿路感染症(urinary tract infection;UTI)と診断するので,尿の培養検査においては検体の採取方法と取り扱い(運搬,保存)がいちばん重要である.検体が不適当であれば,いかに優れた検査法を用いて成績を出しても全然信頼性がない.なぜなら,尿は場合によって細菌増殖の好適な液体培地であり,しかも外尿道口近位部には腎盂腎炎や膀胱炎の原因菌と同じ常在菌(表1)が存在するために,採尿方法により常在菌が混入して,病院の外来や病棟でせっかく尿を採取しても室温に放置しておくと(細菌は理論的には15分か20分で2倍に増殖する)感染菌も汚染菌も増殖して起因菌の判定ができないからである(表2).

細胞診

酵素抗体法の細胞診への応用

著者: 長村義之 ,   渡辺慶一

ページ範囲:P.162 - P.168

酵素抗体法の細胞診への応用
 近年,免疫組織化学は主としてパラフィン切片を中心として日常の病理診断に盛んに応用されてきており,現在,組織病理診断学において不可欠の手段となってきている.特に,腫瘍の良性悪性の鑑別,上皮性あるいは非上皮性の腫瘍の鑑別,腫瘍の組織形の確定,悪性リンパ腫,形質細胞腫の確定診断などに,その威力を発揮しているといえる.最近注目されているいわゆる中間フィラメント(intermediate filament)にはケラチン,ビメンチン,デスミン,ニューロフィラメント,グリア原線維酸性蛋白(glial fibrillary acidic protein;GFAP)などが含まれ,それぞれ組織型に特異性を持ち,腫瘍の組織型の確定に特に有用であるとされている(例えば,ケラチンは上皮性腫瘍の,デスミンは筋原性腫瘍の,GFAPはグリオーマのそれぞれ診断根拠となる).
 一方,細胞診領域においても,先に述べた組織診断における同様の診断上の問題点があり,免疫組織化学的な手法により解決することを要求されることが多い.我々はこれまでの細胞診における酵素抗体法の応用において,体腔液中の癌細胞と中皮細胞の鑑別に癌胎児性抗原(carcinoembryonic antigen;CEA)の染色が極めて有効であることを経験している(例えば,癌細胞はCEA陽性であるが,中皮細胞はCEA陰性でケラチン陽性である).また,後述するように,乳腺細胞診,婦人科細胞診,針生検細胞診などにも酵素抗体法が応用されている.

一般

尿中β2-ミクログロブリンの定量

著者: 金衡仁

ページ範囲:P.169 - P.174

測定の目的
 β2-ミクログロブリン(以下,β2-mと略す)は分子量11,800の小分子蛋白で,100個のアミノ酸残基をもつ一本のポリペプチド鎖から成り,正常人の血液,尿,髄液中に微量含まれている1).β2-mは小分子蛋白であるので腎糸球体を容易に通過し,正常では尿細管でほとんど完全に再吸収され異化されるが,尿細管疾患ではその再吸収・異化が減少し,尿中に多量出現するため,糸球体障害(急性・慢性糸球体腎炎,ネフローゼ症候群,ループス腎炎など)と尿細管障害(慢性カドミウム中毒,Fanconi症候群,骨髄腫腎,痛風腎,シスチン尿症,急性尿細管壊死,Wilson病,ガラクトセミアなど)の鑑別診断に応用されている2,3)
 さらに,血清β2-mは腎疾患において血清クレアチニン値と類似した動態を示し,相互に正の直線的相関が認められ,糸球体濾過値(GFR)の減少に伴いその血中濃度は上昇し,クレアチニン・クリアランス,イヌリン・クリアランス,PSP 15分値などと有意の相関関係が認められており,腎機能障害の程度を知る指標として臨床的に応用されている2,3)

検査法の基礎理論 なぜこうなるの?

生体計測の基礎2—生体計測用トランスデューサ

著者: 池田研二

ページ範囲:P.133 - P.138

トランスデューサとは
 生体からいろいろな情報を取り出して調べることは,生理学など基礎医学での研究のためにも,臨床医学での診断や治療のためにも極めて基本的に重要なことである.臨床検査が後者の目的を遂行するものであることは,いうまでもない.
 生体からの情報を提供するものとして,実にいろいろな形態の現象が観測される.心電図や脳波,筋電図のように,微弱な電気現象として観測されるものは,体表面に電極をはり付け,生体の起電力を導出して増幅してやればレコーダで記録紙上に波形を描くことができる.その他の現象,例えば変位,振動,圧力,流量,温度といったような現象に対しては多少工夫を要する.もし電気現象と同様にエレクトロニクスを用いて時間経過をレコーダに描記するとすれば,まず初めにこれらの物理現象を,例えば微弱な起電力の変化といった電気現象に変換してやる必要がある.ひとたび電気現象に変換してしまえば,あとは心電図などと同様な扱いで増幅したり,記録したりできるであろう.このためには測りたい種々の現象をまず電気現象に変換する部分が必要で,これをトランスデューサ(変換器)と呼んでいる.検体中の酸素や炭酸ガス濃度,pH,その他のイオンなどを測るためにも電極が利用される.これらも広い意味ではトランスデューサであるが,電極も含めた広義のトランスデューサをしぼしばセンサと呼んでいる.

血中薬物濃度の測定はなぜ必要か

著者: 田口文子 ,   宮本侃治

ページ範囲:P.139 - P.143

血中濃度をなぜ測るのか
 薬物療法の際には臨床症状や諸検査の結果からその患者に対する適剤をまず選択し,次にその薬物が十分に作用を発現し,中毒症状を示さないように適量を決めることが必要となる.しかし,考えておかなければならないのは,薬物の種類により同一の投与量でも得られる効果に差が認められるという事実のように,各患者とその病態にそれぞれの適量があるということである.適量を決めるためには,従来行われてきた臨床的経験による試行錯誤を経た適量決定よりも,体内の目的部位における薬物濃度を測定することが望ましい.しかし目的部位の濃度測定は容易でなく,そのため血中濃度を測定することにより目的部位濃度を推測し,薬物療法を行うという方法がとられている.
 近年までは測定法の開発が濃度測定の要求に伴わなかったため,必要性を認めながらも薬物濃度測定は実際には行われていなかった.現在では測定法の進歩により血中濃度測定が薬物療法に応用されるようになり,Therapeutic Drug Monitoring(TDM)という用語が用いられている.

ラボ・クイズ

外陰部膿疱・潰瘍分泌物から検出されたグラム陰性桿菌

ページ範囲:P.144 - P.144

アーチファクト

寄生虫

著者: 加島準子

ページ範囲:P.145 - P.145

 寄生虫卵の検査に際し,各虫卵の大きさ,形,色,卵殼,卵内容を相互に比較し,具体的に把握しておかなければならない.また検査法によって見え方が異なる虫卵もあるので,各検査法における形態を知っておく必要がある.
 写真1は薄層塗抹法による鉤虫卵である.無色で,虫卵の大きさから蛋白膜のとれた蛔虫卵と紛らわしいが,蛔虫卵に比べて卵殼が薄いことで区別できる.

マスターしよう基本操作

パーソナルコンピュータのディスク装置とファイル入出力の基本操作

著者: 小林悌二

ページ範囲:P.175 - P.182

 検査業務,研究上に,パーソナルコンピュータは欠かすことのできない道具として普及してきた.特にオペレーティングシステム機能の拡張によりディスク装置が便利に利用できるようになったことは,多様,多量の検査データが発生する検査部門においては,その管理,統計処理,統計解析,作表作図や業務管理などへの利用上,非常に有効なデータ,プログラム記憶装置として活用される.ディスクシート上ではカセットテープに比してはるかに高密度の記録,高速の入出力ができる.本稿ではフロッピィディスク装置の基本操作,ディスクシートでのプログラム入出力法,データファイルの作成(書き込み),読み出し法と基本操作を,簡単なプログラムを例に用いて取り上げる.
 データファイルの形式には,任意の1レコードを指定してデータ書き込み,読み出しができるランダムアクセスファイルと,読み出しが常にファイルの先頭から,しかも書き込みの順にしかできないシーケンシャルファイルとがある.ここでは便利なランダムアクセスファイルを扱う.

ザ・トレーニング

文献検索入門

著者: 青木孝雄

ページ範囲:P.183 - P.185

 最近情報の氾濫ということがよく言われます.医学分野での研究情報についても同様で,情報量の増大は著しく,8〜10年で倍増すると言われています.現存する自然科学系の雑誌は,3万種類を下らないとさえ言われています.世界的に著名なアメリカの国立医学図書館は全世界の医学出版物を収集していますが,1981年の統計では23,364種の雑誌を受け入れていますし,ここで編集している世界的な医学関係の索引誌である"INDEX MEDICUS"にはおよそ2,700種類の世界の主要な医学関係の雑誌が収録されています.一方,我が国においても,100を超える医学関係の図書館などで国内雑誌約2,500種,外国雑誌7,000種以上を毎年受け入れており,まさに医学情報は爆発的に増え続けているとさえ言えます.
 このような状況の中で,一機関で入手可能な雑誌の数は限られてきますし,まして一個人が自分の関心のあるテーマについてすべての雑誌に目を通すことは極めて困難であると言わなければなりません.当然のことながら,最小限の努力で,もれなく,系統的に自分の興味のあるテーマ(主題)について,文献を探す必要が生じるわけです.

ひとくち英会話 English Conversation in Your Laboratory

Please examine the electrolytes and nitrogenous components

著者: 𠮷野二男 ,   常田正

ページ範囲:P.186 - P.188

患者:レントゲン⑪はどこですか.
技師:床の緑色の線に沿って進み,エレベーターで2階へ上がった右側です.

基礎実習講座

反応条件の設定のしかた2—酵素的測定法

著者: 溝口香代子

ページ範囲:P.189 - P.192

 前回はワン・ステップによる最も単純な反応系として,ビウヒット反応による血清総蛋白の測定を例にとって,反応条件の設定のしかたを述べたが,今回は最近広く普及してきている酵素を試薬として用いる方法(酵素的測定法)の場合の条件設定を考えてみることにしよう.具体例として尿酸を選んでみた.

トレッドミル負荷試験法

著者: 川久保清

ページ範囲:P.193 - P.197

 運動負荷試験は虚血性心疾患診断の目的のみならず,心肺機能,身体機能を評価するためにも広く用いられている.運動負荷の様式としては図1に示す三つのものが主に用いられる.
 1)単一水準負荷:マスター2階段試験に代表されるもので,一定の負荷を一定の時間内に加えるものである.マスター法では負荷量を年齢,性,体重により調整している.

検査技師のためのME講座 自分でできる機器のチェック・2

採取容量

著者: 近藤光

ページ範囲:P.199 - P.201

 現在,臨床検査の分野では多種多様の自動分析装置が導入され,日常検査に威力を発揮している.しかし,これらの装置を一定の状態に管理するためにはいろいろな点検箇所があり,その点検の有無が事故とつながる.その事故の一つとして,ピペッター部分のピストンの摩耗,血清中の蛋白質のこびりつき,酸やアルカリによるピペッター内部の変化などにより,サンプル採取容量に相違が生じていることがある.このためサンプル採取容量の検定が必要となる.
 一方,臨床化学の分野では分子吸光係数を用いた酵素活性測定のように検体採取容量の正確度,精密度が要求される自動分析装置もある.一般に採取容量の検定法は,水,水銀などを用いる重量法1)が基本であるが,自動分析装置ではサンプルを希釈液,試薬で共洗いし排出する形式が多いため,この検定法を用いることは不可能である.そこで色素を希釈して採取容量を求める色素希釈法を使用すれば,採取容量の正確度の点検は可能となる.色素希釈法に使用する色素にはエバンスブルー2),インドシアニングリーン(ICG),フェリシアン化カリウムなどがあるが,筆者らの検討3)では廃液処理などに問題はあるもののフェリシアン化カリウムが最適であった.

トピックス

V型アレルギー反応の機序

著者: 兼岡秀俊

ページ範囲:P.202 - P.203

 感染症,膠原病,アレルギーをはじめとするさまざまな疾患の発症および臨床経過には,いろいろの様式で免疫現象が深くかかわっている.
 CoombsとGellは,免疫反応による細胞障害の型をⅠ型からⅣ型に分類したが,この分類は疾患にかかわる免疫現象を考えるうえでの基本とされてきた(図)1).すなわち,Ⅰ型は,IgE抗体に結合した抗原刺激によりヒスタミンをはじめとする化学伝達物質が遊離され,標的臓器において薬理作用を示す反応で,多くのアトピー性疾患が属する.Ⅱ型は,標的細胞に対する抗体と補体による細胞融解反応で,Rh不適合妊娠などにみられる新生児溶血性疾患が代表例である.Ⅲ型は,免疫複合体の沈着による臓器障害で,多くの自己免疫疾患にみられる.Ⅳ型は,Tリンパ球による細胞障害の型であり,ツベルクリン反応,あるいはウイルス感染細胞の除去がこの型に入ると考えられる.

Panic values(Critical values)

著者: 松田信義

ページ範囲:P.203 - P.204

 緊急異常値(panic valuesあるいはcritical values)という語は,読者に耳新しいかもしれないが,その由来は古く,既に1972年にLundberg教授によって提唱されている.これは,危篤状態の患者の(病因)診断,治療による救命をサポートするねらいをもって命名された検査診断用語である.
 同教授の論文1)によれば,身寄りのない昏睡状態の患者に対し,緊急検査で血糖値6mg/dlという極端な異常値が報告された.しかし,そのとき,主治医はこの異常値に気づかなかった(糖液静注によって救命されたのに!).不幸にして翌日になってこの極異常値が気づかれ,直ちに最善の処置がとられたが既に手遅れで,患者の意識は戻らず死亡した.

インターロイキン

著者: 崎谷満

ページ範囲:P.204 - P.205

 生体の免疫機構をつかさどる細胞群はサイトカイン(リンフォカイン,モノカインなどを含めて)と総称される活性物質によって相互に調節されており,インターロイキン2(IL-2)以外にもインターロイキン1,3(IL-1,IL-3),B細胞増殖因子(BCGF),B細胞分化因子(BCDF),またγインターフェロン(IFN-γ)がよく知られている.
 1)IL-1:IL-1はマクロファージから産生されるモノカインであり,主な作用は抗原刺激を受けたヘルパーT(TH)細胞からのⅡ-2産生の促進であり,そのほかT細胞には胸腺細胞の増殖促進,Eロゼット形成の安定化,B細胞には細胞表面免疫グロブリン,Ia抗原,補体レセプターの増強の作用がある.IL-1は免疫系以外にも多岐に作用し,内因性発熱因子,線維芽細胞増殖,関節滑液細胞(synovial cell)からのコラゲナーゼ,プロスタグランディンの産生,肝細胞からの血清アミロイドAおよびP刺激因子の産生がIL-1に帰せられている.

検査を築いた人びと

フォリンとのコンビで生化学的測定法を開発した ウー・シェン

著者: 深瀬泰旦

ページ範囲:P.132 - P.132

 昨年12月号で紹介したオットー・フォリンとのコンビで,総クレアチニン,尿酸,尿素,血糖などの測定法にその名がみえるウーは,若いときからアメリカで名声を博していた中国の生化学者,栄養学者である.フォリンとウーは,生化学の分野では一対としてよく耳にする名前である.
 ウー・シェン(呉憲)は1893年11月24日,中国福建省の福州で生まれた.6歳のときから家庭教師について中国の古典を学び始め,のちアメリカに渡って,1911年にマサチューセッツ工科大学の造船学科に入学した.初めての夏季休暇をニューイングランドの農場で過ごしているとき,T.H.ハクスリーの『生命の物理学的基礎』を読んで,生物学の新しい天地に魅惑されて,専攻を化学と生物学に変更してしまった.次いでハーバード大学に移り,フォリンのもとで生化学の研究に従事した.

けんさアラカルト

新しいグラム染色を世に出すまで

著者: 西岡光夫

ページ範囲:P.146 - P.146

1.グラム染色法から新染色法へ
 細菌の形態,配列および染色性の相違によりある程度の菌種名が推測でき,細菌検査領域では欠かすことのできないグラム染色は,Christian Gramにより考案された.その後,種々改良法が発表されたが,ヨウ素液による媒染およびアルコールでの脱色操作はすべての方法で一致する.グラム染色法の問題点は,ここに集中し,良好な染色性を得るには技術を必要とする.
 新しいグラム染色法は,上記問題点を解決し,さらに種々の点において今までの方法よりも優秀な成績を示した.詳細な内容については『衛生検査』31巻6号の943〜948頁を参照していただきたい.今回は,発表までの経過を話してみよう.

今日の時代と医療経済

著者: 小河一夫

ページ範囲:P.206 - P.207

 前号でみたように,いま社会保障のかなりドラスティックな変革が進められようとしている.「増税なき財政再建」をめざした,①医療費適正化,②老健法と新健保法の施行,③医療法と年金法の改定,などである.
 これらに関連して,声高に"人生八十年型高齢化社会の危機"が語られ,そこからいささか短絡的に"中福祉,中負担,自立・自助と互助"の必要性が説かれている.しかし,国家財政の赤字や経済不況については,まず各原因に応じてしかるべき対策が立てられねばならないであろう.そして,医療,福祉については,その前途が厳しいものであればあるだけに,いっそう慎重な検討と真に有効な対策が望まれる.ただし,何よりも,先進工業国における飽くことなき経済成長の追求は,一面の繁栄とともに,相応の矛盾を激化させていることを見過ごすことはできない.資源の枯渇,非可逆的汚染,果てしない緊張と軍備拡張,後進国との格差拡大,部分的人口急増と飢餓など,人類全体の存続を脅かしかねない深刻な情況がある.

私たちの本棚

花への"あくがれ"—「花に逢う」上田 三四二 著 「夏の草木」宇都宮 貞子 著

著者: 大坂時子

ページ範囲:P.198 - P.198

さまよひくれば 秋草の
ひとつ残りて 咲きにけり
おもかげみえて なつかしく
手折ればくるし 花散りぬ
 佐藤春夫の吐息のような相聞歌.手折れば散るはかない風情のその花の名は?色は白,あるいは紫でしょうか.

りんりんダイヤル

日常的に行う交差適合試験と手順

著者: 冨田忠夫

ページ範囲:P.209 - P.209

 問 交差適合試験にはいろいろな方法がありますが,忙しくて全部はやれません.日常行う方法としては,どの方法で,どのような手順で行うのが最もよいのでしょうか.

エトランゼ

アルカポネを知っていますか

著者: 常田正

ページ範囲:P.131 - P.131

 アル・カポネは言うまでもなく,禁酒法時代にシカゴの暗黒街を支配したアメリカのギャングの大親分です.日本で言えば清水の次郎長のように有名な人物で,ギャング映画でお馴染みでもあります.ところが,アメリカ人が「君はアル・カポネを知っていますか」と尋ねると,大抵の日本人は「知りません.聞いたこともありません」と答えるそうです.
 なぜだか,おわかりですか.‘Al Capone’をアメリカの人は英語式に読みます.すると[ǽl kepoun]となります.しかも[l]の発音は日本人の耳には聞き取りにくいので,「アカポン」と聞こえてしまうのです.そこで大抵の人は,「ソンナヒト,シーラナイ」と答えるのです.

ME図記号に強くなろう

8電子管(2) 特殊管

著者: 小野哲章

ページ範囲:P.152 - P.152

 特殊な電子管の電極および管球を示す図記号である.
 ①冷陰極:真空管のヒータのような熱による電子の放出ではなく,プラスの電界に引っ張られて電子を放出する形式の陰極.熱せられていないので冷陰極という.

コーヒーブレイク

「老害」の認識

著者:

ページ範囲:P.197 - P.197

 老年人口が1960年頃より増加し,老齢化社会になってきている.
 年をとれば,体力だけでなく知力,判断力も衰えることは,誰もが知っている.体力の限界はスポーツの種類によって異なる.水泳などは選手寿命は短く,球技のそれは比較的長い.ラグビーやサッカーのような球が大きいものよりも,野球,ゴルフと球が小さくなる方が,選手寿命は長くなる.しかし,これも人により差がある.

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医学用語における接頭語・接尾語

著者: 富田仁

ページ範囲:P.156 - P.156

 spondylo-(ギ)脊椎,脊柱の意.ギリシャ語spondylusは脊椎.例えば,spondylosis(脊椎症),spondylitis(脊椎炎),spondylomalacia(脊椎軟化症).
 tracheo-(ギ)気管の意.ラテン語tracheaは気管.例えば,tracheotomy(気管切開術),tracheoscopy(気管鏡法).

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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