icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

検査と技術13巻5号

1985年05月発行

雑誌目次

病気のはなし

I型糖尿病

著者: 小坂樹徳 ,   伊藤徳治 ,   小林哲郎

ページ範囲:P.410 - P.415

I型糖尿病とはいかなる糖尿病(病型)か
 糖尿病の存在は紀元前から知られていたが,医学の進歩に伴って糖尿病に対する知識が増すにつれ,その遺伝的背景,発症前の病態生理,発症年齢,推定される成因,発症経過,発症後の代謝異常の程度,治療に対する反応性,合併症の発症と進展,予後など極めて複雑多彩な疾患であることが順次判明した.そのため,古くからそれぞれの特徴に注目し,あるいはさらにその時代の医学知識を理論的裏づけとして種々の病型分類が試みられた.すなわち,やせ型・肥満型,インスリン欠乏型・拮抗型,若年発症・成人発症,若年型・成人型などは肥満,インスリン感受性,発症年齢などに注目した分類であり,Hugh-Jones(1955)は主としてケトージス傾向の有無を重視してI型・II型に区別した.また島性・島外性,一次性(遺伝性)・二次性の分類は原因論的立場からであったが,いずれも不完全なもので大方の賛同を得るに至らなかった.
 最近十数年間における糖尿病の成因や長期にわたる疫学的・臨床的研究によって,糖尿病は不均一な疾患であることが従来にも増して強く示唆する多くの知見が集積されてきた.これらの知見を踏まえ,NIH(National Institute of Health)のNational Diabetes Data Groupは,糖尿病の原因,治療,合併症の発生,予防を含む臨床研究を計画し管理するための国際的な標準的基準として役だつことをねらって,表1のような病型分類を提案した1).この提案はその後,WHOや日本糖尿病学会の委員会でも現在のところ妥当なものとして承認された2).分類された病型はそれぞれ次のような特徴をもつ.なお表2は,I型およびII型糖尿病について明らかにされてきた特徴を臨床像,遺伝,環境と病理・病態生理に分けて簡単にまとめたものである.

技術講座 生化学

クレアチニンの測定法

著者: 大澤進

ページ範囲:P.429 - P.433

 クレアチニンは,筋収縮のエネルギー源の一つであるクレアチンリン酸の代謝終末産物である.その尿への排泄は筋の発達の程度によって定まり,時間差や日差がないことから,クレアチニン係数として各種物質の部分尿濃度から排泄総量への換算に利用されている.またクレアチニンは腎糸球体で濾過され,細尿管から再吸収も分泌もされないことから,そのクリアランス値は糸球体濾過値(GFR)とみなすことができるので,腎機能検査の一つとして広く用いられている.最近では腎移植後の経過観察としても用いられ,重要な臨床検査の一つとなっている.

血清

先天性補体異常症の見つけ方

著者: 稲井眞弥

ページ範囲:P.434 - P.438

 補体は動物の新鮮血清中に存在する20種類近い蛋白質によって構成されている反応系で,抗原抗体複合体や細菌の細胞壁など多くの物質により,古典経路(classical pathway)または第二経路(alternative pathway)を経て活性化され,細胞溶解など種々の生物活性を現わしてくる.これら蛋白質は次の3種類に大別される.
 1)従来から補体成分と呼ばれる11種類の蛋白質
 2)第二経路の反応にあずかる蛋白質
 3)補体系の活性化反応を制御する蛋白質
 補体を構成する蛋白質の先天的な欠損や機能不全を,先天性補体異常症または原発性補体異常症という.このような異常症は欠損または機能不全を認める蛋白の名称を前につけてC4欠損症,C3bインアクチベーター(C3blNAI因子)欠損症,C5機能不全症などと呼ぶ.

細菌

培養検査法3—脳脊髄液

著者: 相原雅典

ページ範囲:P.439 - P.443

 脳脊髄液(cerebrospinal fluid;以下,髄液と略す)は脳室内部の脈絡叢から分泌され,大脳槽から脳の基部までの中枢神経組織(central nervoussystem;CNS)全体を包むクモ膜下腔内を循環し,組織に栄養を補給すると同時に水力学的なクッションの役割で脳を保護し,髄膜中の主要静脈内へ再吸収される.この髄液の正常な循環が感染による炎症や腫瘍,出血などで障害されると頭蓋内圧の亢進をきたし,髄液の分泌能が刺激されて水頭症となる.
 髄膜に炎症が起こると特有の刺激症状や徴候が現われるが,同時に脳組織にも影響が及び,意識障害などが発現することも少なくない.細菌や真菌,原虫により起こされる髄膜炎は,多核白血球の浸潤が強く化膿性髄膜炎の像を呈する.感染の成立は通常,CNSの近位または遠位にある感染病巣から病原菌が血行により運ばれ,血液-脳関門を破り侵入する形が多いが,時に常在菌叢に隣接する部位の頭蓋骨骨折が原因となることもある.新生児の感染は出産時の産道による汚染が原因となることが多い.

生理

生体電気現象のとらえ方3—生体用増幅器

著者: 松尾正之

ページ範囲:P.444 - P.448

 検流計の信号電力の分解能は,その原理上,空気分子およびコイルの巻線抵抗の自由電子の熱力学的エネルギーで定まるので,最高級の高感度の直流増幅器と考えられる.しかし検流計は応答速度が遅く,電流計であるので入力抵抗が低く,かつ機械振動に対して弱い,という欠点がある.したがってEinthovenの単線検流計は,より高入力抵抗高感度かつ応答の速い真空管増幅器の出現とともに,その主役の座を明け渡すようになった.現在ではその真空管もトランジスタ,次いでICに取って替わられている.本稿では生体用増幅器(biological amplifier)の歩みについて顧みるとともに,その問題点について述べよう.

病理

迅速凍結置換樹脂包埋法を用いた酵素組織化学と免疫組織化学

著者: 山本昇

ページ範囲:P.449 - P.454

 正確な病理診断は,鮮明でかつ多くの情報を提供できる標本と,優秀な病理医との協同作業によってもたらされる.したがって病理標本作製に従事する人たちも,常により良い標本作製のための技術の導入に努める必要がある.特に近年,ヘマトキシリン・エオジン染色やアザン染色などの従来からの染色法に加えて,酵素組織化学的染色や免疫組織化学的染色が求められることが多くなってきた.しかし従来から行われているパラフィン包埋標本ではほとんどの酵素活性や抗原性が損なわれるために,新しい技術の導入が必要と考えられる.
 そこで,迅速凍結法と樹脂包理法を併用した光学顕微鏡標本の作製法と,その標本の酵素組織化学あるいは免疫組織化学への応用法を紹介する.さらに一歩進んで本法が直ちに電子顕微鏡観察にも適用できるので,その方法も併せて紹介することにする.

検査法の基礎理論 なぜこうなるの?

画像解析に基づく細胞診断の自動化

著者: 田中昇 ,   上野哲夫 ,   池田栄雄

ページ範囲:P.417 - P.422

細胞診断自動化の必要性
 種々の検査領域に自動化が大幅に導入され,検体の高速処理機能によって急速な検体増加に対応したり,精度を高めるうえにも貢献しているが,多くの自動機器は検体処理やデータを出すことを目的とした,いわばロボット的なものが多い.細胞診断の自動化は細胞の悪性,非悪性を判断する人工頭脳的(cybernetic)な機能内容をもつもので,自動化の本質をいくものと思われる.それだけにソフト・ウェア開発に難問が多い.
 細胞診断を最も必要とする領域は特に婦人科集団検診で,現在,集検,施設検診を含めて300万〜350万件といわれているが,この被検者数は30歳以上の対象女性人口の約10%程度である.老人保健法の施行に伴って,厚生省は近い将来,これを30%に引き上げることを目標としているので,約1,000万件に増加すると予想される.ところで,検査する側の細胞検査士(CT(JSC))は現在約2,000名で,このうち細胞診を本業としている者ないし多くの時間を細胞診に割いている者の実態は判明していないが,その1/5程度と推測され,也の検査領域に配置され,細胞診と無縁の業務に携わっているのが実情である.したがって現在の検査件数と細胞検査士との間でバランスがとれているので,現在件数の3倍を処理するためにはなんらかの方策が必要である.

4-ニトロフェノールのpKaと吸収スペクトル

著者: 山舘周恒

ページ範囲:P.423 - P.427

 4-ニトロフェノール(4-nitrophenol)の最大吸収波長(λmax)は318 nmであるが,解離して4-ニトロフェノキシドイオン(4-nitrophenoxide ion)になることによってλmaxは401nmに移動する.日常,臨床化学分析において4-ニトロフェノール誘導体を基質として酵素活性を測定する際には,この吸収スペクトルの移動する現象を利用して基質量の変化を知る.アルカリホスファターゼ活性やα-アミラーゼ活性の測定時の基質である4-ニトロフェニルリン酸(4-nitrophenylphosphate)や4-ニトロフェニルマルトオリゴサッカライド(4-nitrophenylmaltooligosaccharide)も318nm付近にλmaxがあるが,これに酵素が作用して4-ニトロフェノールが遊離し,この4-ニトロフェノールが図1のように4-ニトロフェノキシドイオンに解離した状態で存在することによって,405nm付近の波長で測定が可能となる.
 この解離する割合は,その物質のPKaと反応系のpHによって決まる.4-ニトロフェノールのPKaは約7であるから,アルカリホスファターゼ活性の測定時のようにpH10以上の反応系では,ほぼ100%解離しているものとみなすことができる.しかし,α-アミラーゼ活性測定法として近年登場した4-ニトロフェニルマルトオリゴサッカライドを基質とした方法1)では,アミラーゼの至適pHを考慮してpH7付近で反応系を組むため,4-ニトロフェノールの解離する割合が問題となる.

糞便から検出された小型の虫卵

ページ範囲:P.456 - P.456

マスターしよう基本操作

ガラス板法

著者: 松永欣也

ページ範囲:P.457 - P.463

 脂質抗原による梅毒血清反応は,たとえ多少の偽陽性反応を生ずる欠点はあっても梅毒を100%検出できるし,その抗体価の消長は臨床症状とよく一致するので治療経過の観察に有用であるなど,TP抗原での反応の普及した現在でも梅毒の診療には欠かすことはできない検査である.その中でもmicro flocculation testの一種であるVDRL(Venereal Disease Research Laboratory)slide testsは,使用する被検血清の量は少なく,操作が簡易でしかも鋭敏なため,WHOの推奨を受け,世界各国で実施されている.このVDRL法が米国CDC(Centers of Disease Control)の承認を得て,その細部を日本の事情に適するように改良されたのがガラス板法である.厳密な比較実験によってもVDRL法と同様の成績を示すことが認められている.しかし,表1にみられるように抗原の比率の一部や,使用する器具や術式の一部が異なっているし,判定の基準や表現方法,定量法の希釈のやり方も異なっているので,国際的にはこの両者は同一とは認められていない.
 このガラス板法は簡単な方法であるが,その条件はなかなか微妙であるので指示どおり忠実に実施することが望まれている.最近ではSTS 3法で総合判定することは少なく,STSはガラス板法のみ,TP反応はTPHA法のみでスクリーニングすることが多いので,VDRL法における"Manual of Tests for Syphilis"に記載されているような,陽性コントロール血清による抗原浮遊液のチェックや,判定の読みのチェックなどを参考にして,特に慎重に実施することが望まれる.

ひとくち英会話 English Conversation in Your Laboratory

I will explain about the glucose tolerance test.

著者: 𠮷野二男 ,   常田正

ページ範囲:P.464 - P.465

技師:ウィルソンさんですか.
患者:はい,そうです.

トピックス

コロニー形成阻害因子

著者: 丹下剛

ページ範囲:P.466 - P.467

 1961年,TillとMcChllochが多能性造血幹細胞(CFU-S)のアッセイ法として脾コロニー法を開発して以来,造血幹細胞の研究は飛躍的進歩を遂げたと言えよう.そして,近年はin vitroのコロニー形成法の研究を中心にして,コロニー刺激因子またはコロニー形成促進因子の検出と精製が精力的に行われてきた.
 その詳細は文献1,2)を参考にしていただくこととして,骨髄造血細胞のうち,顆粒球系,赤芽球系および巨核球系のおのおのの前駆細胞に対する刺激因子には,それぞれGM-CSF(分子量2万〜10万),エリスロポエチンとBPA(分子量3万〜4万),スロンボポエチン(分子量約4万)などがあり,正常または病的状態にある生体とか患者の血清および尿中から検出できる.あるいは培養という特殊な条件下にある生体細胞は,ヒトやマウスのいずれにおいても脾臓,リンパ節,骨髄,肺,腎,心筋,胎盤,末梢血白血球などの細胞が種々の因子を出している.その場合,培養細胞が腫瘍細胞由来であったり,トランスフォームした株化細胞であることもある.

光カテーテル血圧計

著者: 松本博志

ページ範囲:P.467 - P.468

 心臓カテーテル検査は現在でも心臓病の診断には必須の検査の一つであるが,これはカテーテル式血圧計で動静脈を経由してカテーテルを心腔内およびその近傍の血管内に挿入して血圧の直接測定を行うものであり,通常はカテーテル内腔を液体で満たし,この液柱を介して圧を外に導き,体外に接続された圧変換器のダイヤフラムの変位を電気信号に変換する構造である.このため液柱の運動とダイヤフラムのコンプライアンス,液体とカテーテル壁との粘性による抵抗などが絡み複雑な圧応答を示す.これは変動圧(脈波)の波形のひずみとなって現われ,脈波の測定では大きな問題となっていた.また,個々のカテーテルの違いや気泡の混入による応答の著しい変化や,内腔での血液の凝固による測定障害が生じる.
 これらの問題を解決するためカテーテルの先端に変換器を配置することが考えられ,超小型の半導体素子をもった先端型圧トランスジューサーも開発されたが,ここに述べるものはガラス繊維の発達と呼応して考案され1),カテーテルの中に送光用と受光用ガラスファイバを充填し,カテーテルの先端で伝播してくる光に光量変化を与える原理にもとづくもので,体内に電気を送らないことからも安全性に優れている.光ファイバを用いた圧力測定装置の構成は,光源と光伝播路の光ファイバ,先端受圧部の振動板による変位-光量変化部分,受光用ファイバからの光を電気変換する光検出器の四つの部分から成っている(図).光ファイバはクラッド型で,高屈折率の芯ガラスを低屈折率のガラスで被覆した直径数十μmの繊維である.このような単繊維を束ねて送光用ファイバと受光用ファイバの適切な配列にする.受圧部の振動板は超小型であり,この変換器では最も重要な部分である.加工ひずみを残さず,反射鏡も兼ねるように片面を研磨し鏡面に仕上げる.振動板は薄くする必要があり,計算上は1.7mmφの振動板で厚さ12μmで,8F,7F,5Fサイズのカテーテルが製作される.
 カテーテルは心腔内操作が容易であるように可擁性,弾性について十分検討されている.このカテーテルの性能は圧力レベルで0〜300mmHgにわたって直線性が良く,圧力感度は10mV/mmHg,温度ドリフト1mmHg/℃以下,周波数特性は血圧でDC〜500Hz,心音で2.OHz〜4.OkHzであるように設計されている.

血小板活性化因子

著者: 川﨑富夫 ,   上林純一

ページ範囲:P.468 - P.468

 血小板活性化因子(plateletactivating factor:PAF)は,アレルギー反応や炎症反応のメディエーター(化学的伝達物質)として,最近注目されている因子である.その本態は,非常に強力な生理活性作用を持つリン脂質である.
 PAF発見の糸口となったのは,1966年Barbaroらが血管作働性アミンの研究中,ウサギ血小板からのヒスタミン放出反応が,白血球に依存して起こることを見いだしたことである.その後,1971年Siraganianらは,この反応の主役は可溶性成分であることを明らかにした.

基礎実習講座

血液寒天培地の作り方

著者: 横山八助

ページ範囲:P.469 - P.472

 よく,細菌検査を志している学生さんから,「血液を寒天培地の中に入れるのは,栄養分としてではないのですか?」と聞かれる.そのつど「血液を培地に加えるのは,栄養または発育促進効果からよりも,むしろ培地中の菌に対する発育阻止物質の吸着の方が大きいからですよ」と説明している.であるから,なにも血液を用いなくとも,血液寒天培地と同等の発育支持力をもつ培地を作ることは可能である.例えば,果物エキス,心筋浸出液,脳浸出液,血清などがそれである.にもかかわらず,血液を寒天培地に加えるのは,その溶血性が類似菌どの鑑別点,あるいは病原菌株分離のための指標となることにほかならない(例:Haemo-Philas inflzaenzaeとH. haemolyticusの溶血性).
 では,ただ単に寒天培地に血液を加えさえすればよいかというと,そんな簡単なものではなく,基礎培地の性状や組成によって,菌の溶血性の状況が異なり,また,ある菌に対しては発育の支持力も変わってくる.一方,添加する血液の動物種によっても,基礎培地のときと同じことがいいうる.また時には,その血液を加えることによって,培地にある菌に対する発育阻止作用が逆に現われる場合がある.

尿沈渣における異常細胞の見分け方と注意点

著者: 八木靖二

ページ範囲:P.473 - P.475

 日常の尿沈渣鏡検業務の段階で異常細胞を検出することは悪性細胞の早期発見にもつながり,臨床的に非常に意味深い.しかし,尿沈渣中に異常細胞が認められたからといって,それが必ずしも悪性細胞であるとは限らない.炎症や結石症などの良性病変や,放射線,治療薬剤などによる化学的・物理的影響を受けた場合にも尿中に異常細胞が出現してくることがあり,慎重に対処しなければならない.

Letter from Abroad 海外で活躍する日本の検査技師

アメリカのクリニカル・ラボラトリーの闘争(その1)—アメリカ3

著者: 寺村公

ページ範囲:P.476 - P.477

 アメリカ便り1便と2便で,アメリカのメディカル・テクノロジストの推移を簡単に述べたが,今回は,アメリカのクリニカル・ラボラトリーを理解するうえで,切っても切り離すことができない医師,特にバソロジスト(pathologist)ならびに臨床医について述べたいと思う.

ザ・トレーニング

鋭敏度と特異度の求め方

著者: 藤田清貴

ページ範囲:P.479 - P.481

 臨床検査が医学的診断に活用されるとき,その検査がどの程度,目的とする疾患をとらえるか,他の疾患を巻き込んで診断しないかを明らかにする必要がある.
 その検査法の評価には,鋭敏度(sensitivity)と特異度(specificity)がよく用いられる.鋭敏度とは,疾病に罹患している者を陽性として選別する検査法の能力をいい,これは偽陰性度(false-negative rate)の程度を示す尺度である.また,罹患していない者を陰性として選別する能力を特異度といい,これは偽陽性度(false-positive rate)の程度を示すことになる.感度高く疾患をとらえるか,特異性高く診断するかは,目的とする疾患によって異なる.

検査技師のためのME講座 エレクトロニクス入門・2

直流と交流

著者: 田頭功

ページ範囲:P.482 - P.484

 電気回路を流れる電流には直流と交流の2種類があり,直流電圧と交流電圧がそれに対になります.直流電流は一方向にのみ流れる電流ですが,交流電流はその方向を時間的に交互に変える電流です.時間的に変化していて"往きの電流の平均値"が"帰りの電流の平均値"に等しいときには,これを交流電流と呼びます.
 "正弦波電流"は規則的に電流が変化し,代数的にも表わしやすいので電気回路の基本を学ぶためには非常に役立ちます.

検査を築いた人びと

ヘモグロビンと酸素の結合を解明した フェリックス・ホッペーザイラー

著者: 深瀬泰旦

ページ範囲:P.416 - P.416

 ホッペーザイラーは牧師エルンスト・ホッペの10番目の子として,1825年12月26日にドイツのフライブルクに生まれた.フェリックスが6歳のとき母が亡くなり,父もその3年後に死亡したので,フェリックスは義兄のザイラー博士に育てられ,1864年にその養子となって姓をホッペーザイラーと改めた.
 1850年ベルリン大学の医学部を終え,その翌年,軟骨の組織学的,化学的研究についての論文を提出して学位を得た.プラーグで1年間の臨床経験を積んでから,ベルリンで開業したが,開業医生活が研究の妨げになるので,開業は性に合わないといってやめてしまった.ウィルヒョウが新しくベルリンに設立した病理学研究所の所員に採用され,化学研究室の主任として研究に従事した.1860年ベルリン大学医学部の助教授に就任し,翌年チュービンゲン大学に移って応用化学の教授になった.1872年ストラスブルク大学に初めて生理化学の教室が設けられ,ホッペーザイラーはその教授になって,終生その地位にあった.

私たちの本棚

価値観大逆転時代を見通す—「INSのことがわかる本」 —前野 和久 著 INS社会の読み方—前野 和久 著

著者: 藤野雅弘

ページ範囲:P.428 - P.428

 VAN(付加価値通信網),双方向CATV(有線テレビ),キャプテンシステム(ビデオテックス),通信衛星など,INSやニューメディア関連の記事や報道がない日はない,というぐらい,今や世の中"INS狂時代"の到来に沸き返っています.この二冊の本は,そんな来たるべきINS社会を,産業構造の変化や社会生活のありかたは言うに及ばず,人々の意識,価値観に至るまで,多角的に"INS時代"を見通しています.
 ところで,INSという言葉はよく耳にするが,その内容までは,という人がけっこう多いようです.そこで,少し簡単な紹介をしておきます.INSとは,電電公社(NTT)が作った和製英語Information Network Systemの頭文字をとったもので,日本語訳としては,「高度情報通信システム」といいます.具体的には,現在,電話などで使っている銅製ケーブルを高速で広帯域の伝送が可能な光ファイバーケーブルに取り替え,ディジタル伝送方式に切り換えて,現在別々になっている電話,データ通信,ファクシミリなどの回線網を統合化し,文字や画像なども伝送(やりとり)できる一大電気通信網を建設する計画です.つまり,今の「話し」「聞く」という電話から,「書き」「読み」かつ「見られる」ような脱電話社会の実現をめざしています.NTTでは,西暦2000年を完成の目標と掲げていますから,あと15年もすれば,INS時代は幕あけします.

けんさアラカルト

院内における細菌検査室の役割

著者: 重光昌信 ,   伊藤千秋 ,   野神道栄

ページ範囲:P.478 - P.478

 一般に,臨床検査部門の細菌検査室では,臨床材料からの細菌培養・同定,感受性試験が中心で,それに伴う培地の作製・滅菌・消毒などが日常業務となっている.その一部は,市販の生培地や同定のキットの使用により,徐々に省力化されつつある.特に,多数検体を扱う施設では,機械化が進み,従来の細菌検査室とはかなり様相が変わってきているようである.同時に,しばしば変化する細菌の分類や,新しい菌種の報告に対応するために,知識・技術の習得に追われる毎日である.
 以上のような日常業務のほかに,もう一つの重要な役割が細菌検査室にはある.当院では,5年前の開院と同時に,「院内感染対策委員会」が設置され,検査部からは細菌検査担当者が,その一員として加わっている.この委員会が中心になっている院内感染対策のための検査業務は,かなりの量である.開院前から始めた病棟,手術室などの落下細菌および滅菌水の検査と,給食・売店・食堂・産科病棟職員の検便は,毎月1回続けている.そのほかに,滅菌ガーゼやケーパインなどの抜き打ち検査も必要に応じて行っている.また看護部門において,消毒・滅菌に対する関心が深く,思わぬ質問や検討依頼が持ち込まれる.

りんりんダイヤル

サブカルチャーの間隔

著者: 安達桂子

ページ範囲:P.487 - P.487

 問 血液培養のサブカルチャーは,どのくらいの間隔で行ったらよいのでしょうか.

コーヒーブレイク

春の終楽章(フイナーレ)

著者:

ページ範囲:P.415 - P.415

土佐みずき 山茉莫も咲きて 黄をきそう   秋櫻子
 ついこの間まで庭のミズキやサンシュユ,ミツマタが黄色のヴェールに身を包み,春のプレリュードを奏でていた.それがあっという間に,薄紅のワビスケ,真紅のクサボケ,紅紫色のカイドウなど,あでやかな色彩の百花に衣替えしてしまった.春の草木の動きはまさにフーガの演奏会である.

ME図記号に強くなろう

10整流機能・ダイオード

著者: 小野哲章

ページ範囲:P.433 - P.433

 ①は交流を直流に変換する機能,すなわち整流機能を表わす図記号である.三角形の矢印は正三角形で,矢印方向に直流が流れることを意味している.整流機能を持った素子一般を示す図記号としても用いる.
 ②は特に半導体素子としてのダイオードを示す図記号であるが,混乱のおそれがない場合は円は省略してもよいことになっており,一般的には省略される.また,(b)に示すように三角形を墨で塗りつぶしたものが正式であるが,これを塗りつぶさないものもよく使われる.

エトランゼ

"専門英語"とは何ぞや(2)

著者: 常田正

ページ範囲:P.475 - P.475

[2]昔NHKの英会話講師もしておられた英語の達人のM先生は,学生が「どうしたら英語がうまくなりすか」,「英語はどうやって勉強したらよいのですか」,「どうしたら先生のように英語がぺらぺらになれるのですか」という質問を発すると,「君は将来何になりたいのか」と反問しました.学生が科学者になりたいと答えれば「英語で科学を勉強しなさい」,法律家になりたいと言えば「英語で法律を勉強しなさい」,医者になりたいと言えば「英語で医学を勉強しなさい」と答えるのが決まり文句でした.英語は学ぶべき対象ではなく,何かを学ぶための道貝であるというのが,M先生のお考えでした.

--------------------

第28回臨床検査技師国家試験問題解答と速報

ページ範囲:P.485 - P.485

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?