Letter from Abroad 海外で活躍する日本の検査技師
アメリカのクリニカル・ラボラトリーの闘争(その2)—アメリカ・4
著者:
寺村公
ページ範囲:P.636 - P.637
■検査件数の増加とその要因
5月号で,アメリカにおける病理学と臨床病理学の歴史を簡単に述べ,過去数年間において,臨床検査部を運営するに当たって生じたいくつかの問題点や,矛盾について言及した.これらの問題点の一つに挙げられるものとして,おのおのの患者になされた検査件数の増加があり,しかし,これらの検査は医学的な立場からみると,無駄であり,正当化されにくいものが多かった.この検査件数の増加が最も顕著に現われたのは,メディケア(medicare)を受けることができる65歳以上の患者と,メディケイド(medicaid)といって生活保護を受けている患者たちに対してであった.この両者のグループに属する患者の治療費は政府の負担となっているため無料で治療が受けられるので,患者自身,検査が増えても感謝こそすれ不満はなかったし,病院側が政府から治療費の払い戻しを受ける場合でも,何のための検査なのかという質問は,めったに政府の方からはなされなかった.
同じ頃,化学検査や血液検査が自動化するという,臨床検査にとって画期的な時代がやってきた.また,それまで複雑な特殊検査とみなされていた種々の検査が,簡単に機械でできるようになったため,ルーチン検査として取り扱われるようになった.このように,今まで検査技師にとって,神経をすりへらしていたような種々の検査がルーチン化したため,検査件数を増加させる原因の一つともなった.もう一つの要素は,インターンやレジデントが,患者に直接役に立つことには関係なくできるだけ多くの検査をし,それらの検査データを集めることが,トレーニングの重要な部分を占めるようになったことである.このような態度,習慣をその後独立した多くの医師が持ち続けていたため,検査件数が増えた要因になっている.