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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術14巻13号

1986年12月発行

雑誌目次

病気のはなし

伝染性単核症

著者: 大谷博孝 ,   千葉省三

ページ範囲:P.1326 - P.1332

伝染性単核症とは
 伝染性単核(球)症1,2,7)(infectious mononucleosis;IM)とは,Epstein-Barrウイルス(EBV)などによる急性感染症で,発熱,全身性リンパ節腫脹,咽頭痛を3主徴とし,検査上,末梢リンパ球増加と異型リンパ球の出現およびIM型異好抗体価の上昇をきたす一過性の良性疾患である.その病因は,主としてEBV感染と考えられるものが多いが,他のウイルス,リケッチア,原虫などによる感染症でも同様の臨床症状と検査所見を呈することがあるため,現時点ではEBVに限定せず,種々の急性感染症を含めた広義の伝染性単核症症候群として扱われることが多い.

技術講座 生化学

アルブミンの定量法

著者: 芝紀代子 ,   村上恵美子

ページ範囲:P.1345 - P.1349

直接的な定量法の変遷
 アルブミンだけを特異的に定量することができるようになったのは,1953年Brackenらがメチルオレンジを用いた色素結合法を報告したことに始まる.色素結合法は,溶液のpH変化がなくても蛋白によりpH指示薬の色調が変化する.すなわち,蛋白誤差を利用してアルブミンを測定する方法である.
 メチルオレンジに始まり,以後アゾ色素のHABCA(ハブカまたはハバ),フタレイン型色素のフェノールレッド,BCG(ブロムクレゾールグリーン),BCP(ブロムクレゾールパープル)を用いる方法が相次いで報告された(表1).このうちDoumas1)らの報告したBCG改良法(1971)が急速な勢いで普及し,今日でもDoumasらの方法に基づく測定が大半を占めている.しかしながら,アルブミンに特異性が高いと評価されているBCGも実は急性相反応物質とも反応することが指摘され,より特異性が高いBCP法を採用すべきという議論もわき起こり,BCG法で定着した観があったアルブミン定量法も再び物議をかもしだしている.

細菌

Campylobacterの分離と同定

著者: 佐久一枝

ページ範囲:P.1350 - P.1354

 かつてCampylobacterはその形態がVibrioに似ているところからVibrioに属し,特に獣医学の方面でヒツジ,ウシの感染性流産や下痢症の原因菌として重要視されていた.
 1963年SebaldとVeronによってVibrio(V. )coli,V. jejuni,V. sputorum,V. bubulusが新たな属のCampylobacterに移された.ヒトの感染症としては菌血症や髄膜炎の報告があったが,1977年Skirrowによって新しい疾患としてCampylobacter腸炎が紹介されるや,各国で下痢症の原因菌として注目を集めることとなった.Campylobacterを分離するためBatzlerら(1973)は選択的濾過法を考えたが,Skirrow(1977)は抗生物質を加えた選択培地を開発した.このため菌の分離は容易になった.

血液

血小板機能検査法4—血小板放出能(β-TG,PF 4など)

著者: 木村昭郎 ,   藏本淳

ページ範囲:P.1355 - P.1358

PF 4とβ-TGについて
 血小板のα顆粒と濃染顆粒に含まれる主な成分を表1に示したが,血小板第4因子(platelet factor 4;PF4)とβ-トロンボブロブリン(β-thromboglobulin;β-TG)はいずれもα顆粒に含まれる血小板固有の蛋白質であり,血小板の活性化に伴い血小板外に放出される1〜3).PF4は分子量7,700の四つのサブユニットから成り,血小板からはプロテオグリカンとの複合体を形成して放出される.β-TGはセルロースアセテート膜による電気泳動上β-グロブリン分画にくることからその名が与えられたもので,分子量8,850の四つのサブユニットから成る.PF4はヘパリンに対する親和性が非常に強く,ヘパリン中和作用を有するが,そのほかに白血球遊走作用,抗コラゲナーゼも認められている.また内皮表面のヘパリナーゼ感受性グリコサミノグリカンにアンチトロンビンⅢが結合するのを拮抗的に阻害するといわれている.β-TGの作用は不明な点が多いが,白血球遊走作用が認められている.
 正常ヒト血小板内のPF4量は18.0±2.0μg/109血小板(mean±SEM,n=14),β-TGは17.7±1.6μg/109血小板と報告されている.PF4とβ-TGはともに血漿中の濃度は血管内での血小板放出反応のよい指標と考えられるため血栓症の診断,血栓形成準備状態の診断,血栓症の薬物治療効果の判定に利用されている.例えば,脳血栓の発作前日に上昇し,発作後しだいに低下を示す症例とか,心筋梗塞の発作時に高値をとっていたものが発作後治療経過に伴い低下し,正常値に復した症例も報告されている.

病理

剖検介助法1—準備から胸・腹部臓器の取り出し方まで

著者: 有賀洋光

ページ範囲:P.1359 - P.1364

 病理解剖は病理医によってなされるものであるが,良い介助者なしには良い病理解剖は実践され難い.
 現在,病理解剖に関する書物は数多くあるが,病理解剖介助者の書いた解剖介助の方法についての書はないように思われる.そこで,東京都立駒込病院病理科での10年余にわたる病理解剖の経験をもとに,これから病理解剖介助を志す方々や現在解剖介助に携わっておられる方々に少しでも参考になるよう,仕事内容と手順を図を加え解説し,病理解剖介助者の役割を記す.

一般

尿比重測定法

著者: 今井宣子

ページ範囲:P.1365 - P.1368

 尿比重は尿浸透圧とともに尿中総溶質量(尿中総固体量)の指標として測定される.具体的には腎髄質機能,すなわち腎の濃縮能,希釈能を知ることを目的とする.尿中総溶質量を直接測定するには尿の水分を蒸発させ,残った固形量を秤量すればよいが,実用的でなく,これに代わって比重や浸透圧が測定される.
 尿比重測定法は表1に示したように,大別して六つの方法がある.重量法と浮秤法は,ルーチン法としては今日ほとんど用いられていない.液滴落下法と超音波法は特殊な装置に限られている.したがって,ここでは最も使用頻度の高い屈折率法と,dip and read方式による試験紙法とについて解説する.

検査法の基礎理論 なぜこうなるの?

細菌細胞の構造と機能

著者: 江田亨

ページ範囲:P.1333 - P.1338

 細菌は単細胞の生物で,光学顕微鏡上の形態の相違により球菌,桿菌およびらせん菌の三つに大別できる.またグラム染色性により,グラム陽性菌と陰性菌に二大別される.細菌細胞は原核細胞から成り(原核生物),なおかつ細胞壁(植物細胞だけに存在する)があるため真核細胞と種々の面で異なり,これが感染,免疫あるいは抗生物質感受性など医学の分野のいろいろな面に関係してくる.原核細胞(細菌細胞)と真核細胞(微生物では真菌,原虫が含まれる)の相違点を表1に示しておく.
 本稿では,細菌細胞の一般的な微細構造,組成とそれらの細胞増殖,生存における意義および感染,免疫における役割,さらには抗生物質の作用との関連など,臨床検査に必要な事項について概観してみることにしたい.

波形と細胞2—大脳皮質の機能局在

著者: 松浦雅人

ページ範囲:P.1339 - P.1344

 大脳は,正中線にある大きな溝(大脳縦裂)によって左右の大脳半球に分かれ,この二つの半球は脳梁で結びついている.大脳の表面には,多数の溝(大脳溝)とうねり(大脳回)とがあり,比較的大きな中心溝(ローランド溝)と側溝(シルビウス溝)とが目立つ.大脳は,一般にこの二つの溝を基準にして四つの部分に分けられる.すなわち,中心付近にあるローランド溝の前の部分を前頭葉,後の部分を頭頂葉,さらに後の部分を後頭葉,側面にあるシルビウス溝の下の部分を側頭葉と呼んでいる.
 大脳皮質とは,大脳溝に沿って神経細胞が集まっている厚さ約2.5mmの灰白質のことである.これは,顕微鏡でみると六つの層からできており,神経細胞の数は140億に達すると計算されている.大脳皮質の内部には,神経繊維などの集まっている白色の髄質があり,髄質に埋もれた部分にも神経細胞が集まっている辺縁皮質などがある.

ラボクイズ

めまい,食欲不振,胃の不快感を訴える患者

ページ範囲:P.1370 - P.1370

正常者に認められる不整脈

ページ範囲:P.1371 - P.1371

マスターしよう基本操作

心電図のとり方

著者: 平野三千代 ,   松田琢磨 ,   中居賢司 ,   小島多喜子 ,   吉田武志 ,   小林舜二

ページ範囲:P.1373 - P.1380

 心電図検査は,不整脈,心筋傷害など心筋の機能を知るうえで,最も基本的な検査法の一つである.成人病の増加,平均年齢の高齢化と相まって,今後ますます需要は増すものと思われる.今回は心電図記録の基本的手技と,記録時に遭遇する問題点およびその処理法を中心に述べる.心電図の記録の前に,まず心電図の基本波形と生理的意義および正常値を示す(図1).

トピックス

ヒューマン・モノコンポーネントインスリン

著者: 山東博之

ページ範囲:P.1381 - P.1381

 インスリンを必要とする糖尿病患者には,ブタやウシの膵臓から抽出したブタインスリンやウシインスリンを注射していましたが,ウシやブタには限りがあります.このため,近い将来に世界中でインスリンが足りなくなるおそれが出てきました.ところが,たまたま遺伝子工学の発展によって,ヒトインスリンを人口的に製造することが可能となったのです.
 我々が生まれ,成長し,生きていくためには,さまざまな蛋白質,ホルモン,酵素を必要としますが,あらゆる細胞がその中に存在する遺伝子の指示に従って,個々の細胞に特有な蛋白質,ホルモンなどを産生します.これらの物質はアミノ酸がいくつもつながってできており,細胞の核の中の染色体に存在する遺伝子がアミノ酸の種類とその配列を決定します.ヒトインスリンは21個のアミノ酸から成るA鎖と,30個のアミノ酸から成るB鎖(30番目のアミノ酸がヒトではスレオニンであるのに対してブタではアラニン)が1個ずつS-S結合を介して組み合わさってできています.現在使われているブタインスリンのB鎖の30番目のアラニンを,人工的に酵素を用いてスレオニンと入れ替えると,ヒトインスリンが得られます.この方法では,不足する可能性があるインスリンの産生が増えるわけではありません.

インターロイキン2の測定意義

著者: 片岡茂樹

ページ範囲:P.1382 - P.1382

 インターロイキン2(IL-2)はT細胞の増殖を促進するリンホカインとして,1976年に初めて報告された.当初はT細胞増殖因子(T cell growth factor;TCGF)といった.その後,thymocyte mitogenic factor(TMF)やkiller cell helper factor(KHF)など,TCGFと同じ活性を有するリンホカインが相次いで報告され,さらにこれらは物理化学的にも同一物質であることが確認された.そこでこれらは,1979年にIL-2の名称で統一された.インターロイキンとは白血球間の相互作用を営む物質という意味である.
 IL-2産生細胞はヒトでは主にヘルパーT細胞(TH)である.また,natural killer細胞(NK)が属するlarge granular lymphocyte(LGL)もIL-2を産生する.Con A,PHAなどのマイトジェンやアロ抗原でTリンパ球を刺激培養すると,その上清にIL-2が得られる.この際,活性マクロファージかマクロファージの産生するIL-1の存在が必要である.現在は遺伝子工学的にIL-2を量産できるようになっている.

尿中白血球検出試験紙の有用性

著者: 石田美久

ページ範囲:P.1383 - P.1383

 尿中には,その疾病によって赤血球,好中球,リンパ球,腎上皮細胞,移行上皮細胞,前立腺細胞,癌細胞など,また各種の円柱が見られる.これらの細胞成分は,疾病との関係において重要な意味をもつ.例えば,腎移植後における尿中リンパ球の出現は拒絶反応を早期発見するために役だつし,あるいは肉眼的血尿(macrohematuria)で,かつ癌細胞の出現を認めた場合,その癌細胞の種類によって原発部位の推定ができる.また尿中に多数の好中球を認めたときは,他の臨床症状と合わせて腎盂腎炎や膀胱炎など尿路系炎症を診断するうえで重要な所見である.いずれも顕微鏡的所見であり,細胞の鑑別,診断には熟練と経験を必要とする.
 近年,顕微鏡を使用せず尿中の白血球(好中球)を検出するdip and read方式の試験紙が開発され,相次いで発売されている.そこで本試験紙の有用性や臨床応用について述べる.

検査ファイル 項目

マイクロゾーム抗体

著者: 加藤亮二

ページ範囲:P.1384 - P.1385

 自己免疫性甲状腺疾患すなわち橋本病やバセドウ病では,種々の自己抗体が血中に証明されることから,抗体の検出は疾患の病態把握に欠かすことのできない検査法となっている.その代表的な検査法として,マイクロゾームテスト(最近はセロディアAME)やサイロイドテスト(最近はセロディアATG)が知られている.
 甲状腺自己抗原は上皮細胞およびコロイド成分由来に大別され,マイクロゾームは上皮細胞由来に含まれる.マイクロゾーム抗原の構成成分は,表1に示すごとく核やミトコンドリアなど大きな顆粒成分を除いた後に100,000 G・60分程度の超遠心にて得られる微小顆粒成分からなり,その内訳は細胞膜,滑面および粗面小胞体,ゴルジ小体,遊離リボゾーム,その他の細胞小器官などである.

ヘマトキシリン・エオジン染色

著者: 畠山重春

ページ範囲:P.1386 - P.1387

 ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色は,組織の特定構造を見いだそうとするものではなく,組織構造全体の把握を目的とする.本法はヘマトキシリンにより核を青紫色調に,エオジンで赤血球,結合組織成分を濃淡のある燈赤色調に染別する.
 ヘマトキシリン染色は1865年,Böhmerにより実用化されたのに端を発する.対比染色にエオジンなどが使用され,いわれるHE染色として確立したのは1880年から1890年代にかけてである.以来,約100年になるが,まだ本法に代わる一般染色法はなく,組織検査の第一歩はHE染色の習得に始まるといえる.なお,PAM(periodic acid methenamine silver:腎糸球体染色),LFB(luxol fast blue:髄鞘染色),ビクトリア青(弾性線維,HBs抗原)などの特殊染色とも重染可能である.さらに,組織像と対比しやすいとの理由から,細胞診材料にも,病理医によってはHE染色を望む場合がある(特に穿刺吸引材料).すなわち,本染色の応用域は,ますます広がっていると解することができよう.

機器

嫌気チャンバー

著者: 森伴雄

ページ範囲:P.1388 - P.1389

 嫌気性菌の発育には,栄養豊富で酸化還元電位の低い培地と嫌気環境下での培養が必要である.嫌気環境を得るために,一般的には取り扱いの容易な嫌気ジャーが普及しているが,次のような短所もある.
 1)培養操作の際に酸素に触れる.2)ジャー内が嫌気環境になるまでに若干の時間を要する.3)大量の培地の場合には多数のジャーが必要となる.

用語

超音波映像下穿刺

著者: 関根智紀

ページ範囲:P.1390 - P.1391

1.概念
 超音波映像下穿刺術とは,超音波診断装置を用いて生体内の構造を体表から深部まで断層像としてとらえながら,穿刺針を目標物に誘導し生検,X線造影,経皮的ドレナージなどを行うことをいう.
 古くは1961年にBerlyne1)によりAモード超音波ガイドの腎生検が施行されている.1972年にはHolm2),Goldberg3)の作製による手動接触走査型探触子が転移性肝癌,腎嚢胞,体腔内貯留液の穿刺に応用され,Rasmussenら4)は,この探触子を用いて肝生検におけるblind biopsyとの比較検討を行い,本法の有用性について報告した.1978年に入ると大藤ら5)によりリニア電子スキャンの探触子の中央部に穿刺溝を設けた穿刺用探触子が考案され,目標物への穿刺針の進行がリアルタイムに観察可能となり,肝・胆道・膵疾患における幅広い臨床応用が可能となった.

Letter from Abroad 海外で活躍する日本の検査技師

待兼山,N. Z. そしてスイス スイスからの手紙(1) スイス1

著者:

ページ範囲:P.1392 - P.1393

 私はヨーロッパの山国,スイスの一湖畔に建つ総合病院で細胞診をしている技師です.1980年に日本を離れて以来今日まで,ニュージーランド(N. Z.),そしてスイスと,外国でばかり働いてきました.日本で共に学んだ友,共に働いた友との交信も,私の海外での暮らしが5年,6年と積もるにつれ,途絶えがちになっていました.奇しくもそんな折に,大阪大学病院に働く私の古い友人を通して,この"スイスからの手紙"を書くことになったのです,私の友人知人に,この「手紙」で,長年の無沙汰を晴らすのも一興だし,また多くの同職者に,外国で検査業をしながら糊口を保っている私の経験見聞談を聞いていただきたくもあり,こうして筆をとりました.

ひとくち英会話 English Conversation in Your Laboratory

検査技師同志の会話

著者: 𠮷野二男 ,   常田正

ページ範囲:P.1394 - P.1395

技師 A:緊急検査で来た検体No.5のデータを見ましたか.
技師 B:はい,見ました.CKが高いですね.

検査技師のためのME講座 計測器・7

マススペクトロメトリー

著者: 北野博司 ,   片山善章

ページ範囲:P.1397 - P.1400

 日常の臨床検査において私たちは,患者に由来する尿,便,血液などからさまざまな物質を見つけだしたり,また,それを定量的に測定したりする.では,いったい目的とする物質のどのような特徴や性質を,手がかりとしているのだろうか.例えば,酵素反応を利用した測定法では酵素の基質特異性を利用しているし,免疫反応を利用した測定法では抗原抗体反応の特異性を利用している.有機溶媒などを用いた抽出法では,その物質の構造に由来する極性を利用している.
 マススペクトロメトリーは,その物質のもつ化学的に,また物理学的に最も基本的な分子式や分子量に着目し,定性定量を行う分析法である.またマススペクトルからは,その物質についての構造の手がかりも得られるのである.逆に構造の明らかな物質については,そのマススペクトルを利用して10-9〜10-12gという極微量の定量分析も可能である.現在の分離分析において最も信頼性の高い方法の一つであるといわれるゆえんである.

ザ・トレーニング

膀胱腫瘍の細胞診

著者: 三井邦洋

ページ範囲:P.1401 - P.1403

乳頭状癌の細胞像
 半年後のCT(細胞検査士)資格認定試験に向けて,毎週土曜日の午後,私Aのところで勉強しているS君とのある日の会話である.この日,彼は尿細胞診の勉強をしていた.
 A どうですか,ある程度見られるようになりましたか.

けんさアラカルト

ガラス板法抗原滴下スポイト

著者: 梅澤邦男

ページ範囲:P.1364 - P.1364

 梅毒血清反応,特にガラス板法の実施は簡単であるが,抗原液の作られ方など判定に大きく影響する要素も数多くある.そんな中で,抗原の滴下量(1滴=1/60ml)も大きなポイントの一つである.現在,ディスポの注射器が数多く使われているが,私たちの検査室でも,ガラス板法を実施する時はそのディスポの注射器と注射針(22G)を使用している.しかし,そのディスポの注射器で微量の抗原滴を1滴ずつ滴下することは慣れている人でもむつかしい.使用前に何度かポンピングをし,ピストン部を押すことに最大の注意を払っていても2滴滴下してしまったり,他のホールに飛び入ったりしてしまうことがある.
 そこで私たちが工夫(組合せ)した方法について紹介する.

ハイテク医療と今後

著者: 刈間悌治

ページ範囲:P.1405 - P.1405

進む医療のハイテク化
 現代社会は,技術革新の波の中といっても過言ではありません.医療の分野にも急激にハイテク化が進行してきています.そのため,コンピュータを業務とする職種が多く出現してきて,医療業務のOA(office automation)化,FA(factory automation)化が進行してきています.特に事務部門や病歴部門には,コンピュータ利用の業務が大半を占めるようになり,医事部門では,カルテ,その他の必要物をロボットが移動させ,チェックしてしまうという試みさえ出てきています.人間は,画面を見て指でキー操作する,いわば医療のFA化利用というわけです.その他の部門も同様で,高額な検体検査機器,診断装置,画像処理,監視装置,医学教育のME(medical electronics)など,ますます利用する機会が多くなってきています.
 このほかに,医療分野でのコンピュータ利用の例としては,次のようなシステムが進みつつあります.

私たちの本棚

光輝く太陽への挑戦—女の太陽(Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ部)—黒岩 重吾 著

著者: 古畑勝則

ページ範囲:P.1369 - P.1369

 黒岩重吾,私は彼が作る作品をたびたび手にすることがある.それは,作家としての黒岩重吾よりも人間としての彼自身に非常に興味があるからである.二,三年前,私は初めて彼の作品に触れ,それ以後読み続けているが,全く飽きがこない.どちらかといえば短編志向の私だが,彼のものだけはどんなに長編であっても容易に読破することができる.
 彼の作品には光と影を連想させる題名のものが多い.例えば,女の熱帯,女の宴,夜の挨拶,闇の航路など,書き出せばきりがない.作品の舞台は大阪,神戸など関西を中心に夜の都会が多く,株の話と女性とブランデーは必ずといってよいほど登場する.そしてこれらが彼の人生に裏付けられている点で大いに興味をそそる.

検査を築いた人びと

ミクロトームを改良して連続切片を作った ウィルヘルム・ヒス

著者: 深瀬泰旦

ページ範囲:P.1372 - P.1372

 組織の顕微鏡標本を作るためには,試料を3〜50μmの厚さの薄片に切断しなければならない.試料はふつう,凍結するか,パラフィンやセロイジンなどに包埋して,ミクロトームを使って薄片を作るわけである.正しい手続きをふんで作った標本でなければ,正しい診断を下すことはできない.在来からのミクロトームに改良の手を加えて,組織学に応用する道を開いたのが,ヒスである.
 ウィルヘルム・ヒスは,商人であり,控訴裁判所のメンバーでもあるエドゥアルト・ヒスの息子として,1831年7月9日にスイスのバーゼルで生まれた.ヒスという名を聞くと,われわれはすぐに心臓の刺激伝導系のヒス束を思い浮かべるが,これを発見したのは姓も名もまったく同じ,ヒスの息子ウィルヘルム・ヒス・ジュニアである.

りんりんダイヤル

Haemophilus aphrophilusと類縁菌の鑑別

著者: 川上由行

ページ範囲:P.1406 - P.1407

問 Haemophilus aphrophilusは血液寒天に発育するのでしょうか.また,類縁菌との鑑別・同定方法についてもお教えください.(愛知 Y生)
答 Haemophilus aphrophilusは,1940年にO. Khairat1)によって心内膜炎患者血液から分離されたのが最初で,以後,心内膜炎以外にも脳膿瘍,髄膜炎,骨髄炎,肺炎,中耳炎,腹膜炎など,各種感染症の起炎菌としての報告が散発的に続き,今日に至っている.

コーヒーブレイク

旅とゆとり

著者: M.Y.

ページ範囲:P.1354 - P.1354

 最近の旅は,昔のように道中にゆっくり時間をかけて行くということが少なくなった.確かに新幹線ができてから,在来の東海道線に乗っていない.また少し遠くへ行くときには飛行機を利用してしまう.
 徳島在任中,東京からは大阪まで夜行(今も走っている銀河など)で行き,朝のホームで顔を洗って(ホームの中央に洗面所があった)から,大阪・天保山の港から船に乗って3時間,あるいは難波から和歌山港まで行き,船に乗って2時間余り小松島港まで,そこから徳島へ汽車で行くルートが一般に用いられていた.鉄道と船でゆっくり寝て行く旅である.もう一つは朝早く東京を発つ特急に乗り,宇野から連絡船で高松へ,そこから準急(高徳線には急行,特急などはなかった)で徳島へ,これも随分と時間がかかった.

ME図記号に強くなろう

28安全図記号(3)注意記号

著者: 小野哲章

ページ範囲:P.1358 - P.1358

 ME機器使用上または設置上の注意のための図記号である.
 ①これがついたツマミやコネクタ部分は取扱い上,特に注意しなければならないので,使用前に取扱い説明書を参照しなければならない.

エトランゼ

外国旅行の添乗員さん—ゴクロウサン

著者: 常田正

ページ範囲:P.1395 - P.1395

 外国旅行の添乗員は,はたから見ていて本当にご苦労さんな仕事ですね.以下,一,二の見聞を書いてみます.
 日本の国内でならいかにも社会のうらおもてに通じているといったタイプの中年男性が,パリのデパートで記念写真をとりまくっていました.店員がとんで来て店内は撮影禁止だと注意する.男は英語も仏語も解さぬから平気のへいざ.とうとう店員はどなり出す.添乗員があわてて男を制止してその場をおさめる.

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「検査と技術」第14巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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