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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術14巻6号

1986年05月発行

雑誌目次

病気のはなし

流行性髄膜炎

著者: 渡辺一功 ,   泉昭

ページ範囲:P.658 - P.661

 流行性髄膜炎(epidemic cerebrospinal meningitis,meningococcal meningitis;髄膜炎菌髄膜炎)は髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)による流行性または散発性に発生する急性化膿性髄膜炎で,時に激烈重篤な敗血症を起こすことがある.髄膜炎菌は髄膜炎,敗血症以外にも,気道,関節,心臓,心膜,眼,皮膚,尿道,子宮頸部,直腸に単独あるいは複数の病変を起こすことが知られている1)
 流行性髄膜炎は我が国では1818(大正7)年以来,法定伝染病に指定されており,図に示すごとく以前は年間1,000人以上の届出があったが,現在では年間15〜16人の届出があるのみで,まれな疾患となってきた.

技術講座 生化学

アンジオテンシン変換酵素の測定法

著者: 中村雄二

ページ範囲:P.673 - P.677

 アンジオテンシン変換酵素(angiotensin conver-ting enzyme;ACE)はレニン・アンジオテンシン系において,生物学的に非活性なアンジオテンシンⅠを活性型のアンジオテンシンⅡに変換する酵素であり,また同時にブラジキニンを不活性化する酵素として知られている(図1).約10年前から各種の疾患で血清中の本酵素活性(S-ACE)が測定され,サルコイドーシス,ゴーシャー病,肝疾患および甲状腺機能亢進症などの疾患で高値を示すことが報告されている.また近年,本酵素阻害剤が降圧剤として繁用されており,患者が本剤を内服しているか否かの確認にS-ACEの測定は臨床的に意義があると考えられる.本稿ではS-ACEの具体的測定法,測定上の問題点および他剤による干渉などにつき述べる.
 S-ACE測定法にはアンジオテンシンⅠ,合成基質あるいはこれらをアイソトープで標識したものを基質として用い,基質からの分解生成物を分光吸光測定法,蛍光測定法およびラジオアッセイにて測定する方法がある.そのうちまず代表的なS-ACEの測定法であるCushman法1)のLieberman変法2)について紹介する.本法は合成基質を用い産生される馬尿酸を分光光度計にて測定する方法であり,以下にその測定操作を述べる.

FAB分類と骨髄標本作製上の問題点2—MDSおよび骨髄標本作製上の注意点

著者: 佐藤雅志

ページ範囲:P.678 - P.682

 前回は,FAB分類のL1〜L3,M1〜M6について述べた.今回は,骨髄において赤芽球,顆粒球,巨核球の三系統の血球に成熟異常のみられるmyelodysplastic syndromes(MDS),標本作製時および鏡検時の注意的,問題点について述べる.

血清

ASPの測定法

著者: 松井正

ページ範囲:P.683 - P.686

ASP価測定
 ASP(anti-streptococcal polysaccharide)は,β溶血を示すA群溶血性レンサ球菌(溶レン菌)の菌体成分C多糖体に対して産生される抗体であり,その抗体価を測定することによって,溶レン菌感染の有無を知ることができる.
 溶レン菌感染症には,化膿性炎症性疾患としての扁桃炎・咽頭炎・肺炎・敗血症・腹膜炎・心内膜炎や猩紅熱・丹毒といった菌体外毒素によるもの,これら一次症から1〜4週後に続発的に発症してくるリウマチ熱や急性糸球体腎炎などの二次症が知られている1)

細菌

細菌の型別法5—溶血レンサ球菌A・B群

著者: 中島邦夫

ページ範囲:P.687 - P.692

 レンサ球菌属は,グラム陽性,長短の連鎖状の配列を示し,カタラーゼ陰性,多くは好気性または通性嫌気性の球菌である.
 溶血レンサ球菌は,細胞壁を構成するLancefieldの群特異多糖体抗原の種類により,沈降反応によってA〜V(IとJを除く)の20群に群別される.なお,レンサ球菌の分類にはまだ不十分な点が多く,Lancefieldの一つの群は必ずしも分類上の一つの菌種とは限らないが,A群菌,B群菌についてはStreptococcus pyogenes,Streptococcus agalactiaeと一菌種のみである.また,溶血レンサ球菌の特徴である溶血性はさまざまであるが,適切な条件下で溶血性を観察することは,菌同定に際し非常に大切なことである.

生理

誘発電位2—聴性誘発電位

著者: 高森晶裕 ,   山田修

ページ範囲:P.693 - P.697

聴性誘発電位の歴史
 聴性誘発電位は,脳波が発見された頃からすでに注目されていた.脳波記録時に音刺激を与えたとき生じたK-complexが,初めて発見された聴性誘発電位で,1940年代にDavisによる臨床応用が報告されている.1950年代に入ると,K-complexを手で重ね書きするようになり,誘発電位らしくなった.その後,コンピューターの導入により脳波の加算が可能となり,難聴の診断ばかりではなく,大脳機能の他覚的評価にも用いられるようになった.この脳波を加算したものを緩反応(slow vertex response;SVR)と呼んでいる.しかし,この起源はいまだはっきりせず,しかも再現性に難があり頼りない補助診断法であった.1960年代以降になって,蝸牛,聴神経,脳幹の誘発反応が次々に発見され,聴覚伝導路の末梢から少なくとも側頭葉までは,局在診断が可能になってきた.

検査法の基礎理論 なぜこうなるの?

アポ蛋白の基礎

著者: 板倉弘重

ページ範囲:P.663 - P.668

 コレステロールやトリグリセライドなどの血清脂質は,血液中では水に難溶性のため蛋白質と結合してリポ蛋白分子として存在している.このリポ蛋白分子を構成している蛋白質がアポ蛋白である.血清脂質濃度はアポ蛋白によって決まってくるのでアポ蛋白の代謝を知ることは重要であり,先天的なアポ蛋白の異常により種々の脂質代謝異常症が発生するので臨床的にも注目されている.アポ蛋白は脂質の分泌,転送,細胞内への取り込みに関係しているが,その働きはアポ蛋白の種類によって異なっている.

収縮期雑音と拡張期雑音

著者: 林輝美

ページ範囲:P.669 - P.672

 心雑音は,心周期の各時相の開始点と終了点の間に出現するか,あるいは二つ以上の時相にわたって起こる,持続の長い雑音である.心雑音のうち,その出現時相により収縮期に出現する雑音を収縮期雑音,拡張期に出現する雑音を拡張期雑音と呼ぶ.

ラボクイズ

生検材料より早期に診断されたSTD疾患

ページ範囲:P.698 - P.698

Letter from Abroad 海外で活躍する日本の検査技師

不安なパラグアイへの旅—パラグアイ厚生省プロジェクトに参加して—パラグアイ1

著者: 小栗豊子

ページ範囲:P.700 - P.701

■JICAから派遣
 昨年の暮れの1か月間,国際協力事業団(JICA)から細菌検査の専門家としてパラグアイ共和国(以下,パラグアイと記す)に派遣された,この主な仕事は,開発途上国に対して,政府ベース(国と国との約束に基づいた)の技術協力をすることであり,途上国の国造りを担う優れた人材を,その国自身の中に育成することを目的としている1).これは人と人との交流を基礎とした協力であり,相手国の研修員を受け入れて指導する一方,日本からは専門家や青年海外協力隊員を派遣して,技術協力のために必要な機器,資材の供与,関連施設建設のための資金供与などを行っている.私が派遣されたのはJICAの医療協力部からであるが,このほか農業,林業,鉱工業など種々の分野での技術協力が組織されている.
 さて,私が訪れたのはパラグアイの首都,アスンシオンである.パラグアイは南アメリカ大陸の中心部より少し南下した所にある内陸国で,周囲はブラジル,アルゼンチン,ボリビアの3国に囲まれている.この国の広さは約40万7千平方キロ,これは日本の約1.1倍の広さとのことである2).日本からはずいぶん遠く離れているが,途中でホテルに泊ることなく,直行した場合には,成田—アスンシオンの間は約32時間を要するといわれている.今までに経験した海外旅行といえば,ヨーロッパ方面がほとんどであった私は,まず無事に着くことができるだろうかとの不安でいっぱいだった.それに加え一人旅……."途中で脳貧血でも起こしたら"などとの不安もあったが,そのときは周りの人に頼るのみと度胸を決めての出発だった.

ひとくち英会話 English Conversation in Your Laboratory

Visiting a hospital laboratory (6)

著者: 𠮷野二男 ,   常田正

ページ範囲:P.702 - P.703

サトー:次は何でしょうか.
技師:化学検査室をのぞいて見ましょう.

マスターしよう基本操作

脳波検査法2

著者: 厨川和哉

ページ範囲:P.705 - P.711

 前回にひきつづき,脳波検査手技の実際について解説する.
 脳波の賦活は臨床脳波検査の必須手技である.安静時に散発的に出現する異常波は連続長時間記録によって検出率は向上するだろうが,それでは時間と労力が大変である.そこで短時間のうちに異常波の誘発を行うことを目的として,賦活法が開発された.一方で,賦活法には脳波上の反応性を試すという側面もあり,覚醒状態の確認にも利用できるし,賦活時の異常波の変化から,より有用な診断学的情報が得られることもある1)

検査ファイル 項目

LDHアイソザイム

著者: 内山幸則

ページ範囲:P.712 - P.713

 LDH(乳酸脱水素酵素,EC1.1.1.27)は分子量約140,000で,H(B)およびM(A)の2種のサブユニットからなる4量体である.したがってアイソザイムはH4,H3M,H2M2,HM3,M4、の5分画よりなり,電気易動度の速い順に(陽極側から)Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ,Ⅳ,Ⅴ型と名づけられている.ⅠがH4,VがM4に相当する.

普通染色

著者: 西村敏治

ページ範囲:P.714 - P.715

 普通染色(Romanowsky染色)は,赤血球,白血球,血小板,異常細胞の観察など血球の形態観察に欠くことのできない基本的な染色法である.今日では種々の特殊染色が用いられ,細胞鑑別が行われるようになったが,細胞確認のためどのような特染を用いるべきか,すべては普通染色で鏡検した結果による.つまり,細胞鑑別は「普通染色に始まり,普通染色に終わる」と言っても過言ではない.したがって,核のクロマチン構造,顆粒,細胞質の色調など良好な普通染色標本も作製しなければならない.
 普通染色はロシアの原虫学者Romanowskyによって基礎が作られ,その後ドイツの原虫学者Giemsaやアメリカの病理学者Wrightらによって改良がなされ,今日広く用いられている.

脱パラフィン

著者: 河又國士

ページ範囲:P.716 - P.717

 脱パラフィン(deparaffinization)とは,包埋に用いたパラフィンを,有機溶媒(剤)であるキシレンやベンゾールで除去することである.この用語は短略して"脱パラ"ということもある.
 これは日常検査にパラフィンを用いたために起こる付帯的操作のことで,一般に染色前に行う.具体的にはパラフィン切片を作り,スライドグラスに貼付乾燥した後,上記の有機溶媒を用いてパラフィンを溶解除去し,さらにアルコールから水に切片を移す過程のうちの有機溶媒以後(包埋と逆)の操作をさす(図1).

用語

インピーダンス

著者: 池田研二

ページ範囲:P.718 - P.719

 電気回路においては,いわゆる線形受動素子(または回路)についてインピーダンスが定義される.例えば,線形受動素子の一つである抵抗Rに流れる電流Iとその両端に印加される電圧Eの間には,よく知られるとおりオームの法則,
 E=R・I……(1)
 が成り立つ.この抵抗RはインピーダンスZの特別な場合である.つまり電流Iが直流の場合には素子または回路の抵抗だけを考えればよく,それらのインピーダンスは抵抗(回路の場合には中に含まれる抵抗の合成)そのものにより表わされる.電流Iが交流の場合には,素子や回路が純粋に抵抗成分のみでできているときはこれでよいが,一般には正の実数の範囲の抵抗だけを考えていては(1)式のようなきれいな関係が成立しない.
 周波数fの交流信号とは,一般には毎秒f回の割合で同一の(電圧または電流)波形が繰り返される信号であるが,最も基本的な交流信号は,音でいえば倍音を含まない純音に相当する正弦波信号である.この周波数成分には高調波成分を含まないから,基本周波数fの成分のみである.線形受動素子(または回路)に正弦波交流電流が流れているときに,これの両端に生ずる電圧もまた正弦波状であり,逆にこのような素子や回路の両端に正弦波交流電圧を印加したときに,これに流れる電流もまた正弦波状である.

トピックス

トロンボモジュリン

著者: 吉田信彦

ページ範囲:P.721 - P.722

 トロンボモジュリンは主として血管内および細胞表面に存在し,トロンビンと複合体を形成して,血液凝固阻害因子の一つであるプロテインCの活性化を促進する物質であります.本稿ではすべて,内外の文献に基づいて現在までに知られていることを簡略化して紹介いたします.

検査技師のためのME講座

オシロスコープとシグナルジェネレータ

著者: 石島正之

ページ範囲:P.723 - P.726

オシロスコープ
1.原理
 オシロスコープは電気信号を目に見える波形として画面に描き出す装置で,生体電気信号の波形認識や電気回路の点検などに役だつ測定器の一つである(図1).画面に当たる部分には,一般のテレビと同じようにブラウン管(CRT)を使用している.管内で電子ビームを発生させ,蛍光面に当てて発光させることにより,管面に波形を描く機構である.しかし,この電子ビームを振らす方式はテレビの電磁偏向型に対し,オシロスコープでは静電偏向型である.すなわち,テレビに見られるような磁界でビームを振るのではなく,電界で振るという大きな違いがある.電界でビームを操作する方が構造上複雑で高価になるが,ビームの位置を精度高くコントロールすることができる.
 CRTの電子ビームをコントロールするには,図2に示されるように二つの信号が必要である.一つは垂直(Y軸)方向にビームを振らすための信号,すなわち測定したい入力信号であり,他の一つは水平(X軸)方向に一定速度でビームをスキャンさせるためののこぎり波信号である.このほかに一つ重要な回路が同期回路である.この回路は基本的に,測定したい入力信号がある電圧レベルに達するとパルスを発生し,このパルスでのこぎり波の発振が始まる.この結果,ビームはCRT蛍光面の左側から右に向かって走査を開始する.これを「トリガをかける」といい,繰り返しのある入力波形が画面上で止まって見えるのはこのトリガのおかげである.

ザ・トレーニング

凝集反応における種々の因子の影響

著者: 蒲池正次

ページ範囲:P.727 - P.730

 凝集反応の歴史は,GruberおよびDurham(1896)が,コレラ菌あるいはチフス菌の浮遊液に,これらの菌で免疫した動物の血清を加えると細菌が塊を作ることを見いだし,この抗体を凝集素と名づけ,凝集反応の免疫学的反応の意義を初めて明らかにしたときに始まる.少しおくれてWidal(1896)は,チフス患者の血清にチフス菌を混ぜると凝集反応が起こることを発見した.赤血球の凝集反応はBordet(1898)が,ウサギの赤血球で免疫したモルモットの血清が補体の存在においてウサギ赤血球を溶血し,加温した血清を用いると凝集反応を起こすことを発見した.つづいてLandsteiner(1900)は,ヒトの血液型(A,B,O)を発見し,その翌年DecastelloとSturliがAB型を見つけ,加えた.
 こうして,血清学的反応の一形式である凝集反応が種々の細菌による伝染性疾患の血清学的診断法や,いろいろな実験的研究に用いられるようになった.初めに凝集反応に影響するいくつかの因子について考えてみたいと思う.

検査を築いた人びと

髄液のグロブリン反応を考案した マックス・ノンネ

著者: 深瀬泰旦

ページ範囲:P.662 - P.662

 19世紀の終わりごろには,今日では想像できない数の梅毒患者が存在した.それも,中枢神経系を侵された神経梅毒の患者が多かったのである.このような梅毒性疾患を正しく診断するために生まれたのが,ノンネとアペルトとが共同で開発した髄液のグロブリン反応である.しかし髄液のグロブリンが増加するのは,神経梅毒ばかりでなく,髄膜炎や多発性神経炎においてもみられるので,ノンネ・アペルト反応は広く髄液のグロブリン反応として採用されるに至った.
 マックス・ノンネは1861年1月13日,工場経営者の息子としてハンブルクに生まれた.「門脈血栓症の原因について」の論文で博士号を取得したノンネは,ハイデルベルク大学の内科教室でエルプの助手となって,神経系疾患の研究に力をいれた.2年後ノンネは,エルプの紹介状をもってシャルコーの指導を受けるためにパリに赴いた.シャルコーから強い印象を受けたものの,そのヒステリーについての考え方には多く疑問を抱くようになった.

私たちの本棚

ケイコの打ち明け話—パリの空はあかね雲—岸 恵子 著

著者: 山野紀恵

ページ範囲:P.704 - P.704

 この本は,パリに住む女優岸恵子さんが書いたエッセイ集です.異国に住みながらも日本人の心を忘れずに,かえって日本に住む私達よりも日本という国を一歩下がって見つめている,そんな本だと思います.
 イヴ・シアンピ監督との出会い,別れ,映画「君の名は」,「雪国」の思い出,パリでの生活,娘との会話,など国際人らしい感覚で,ともすれば,週刊誌の話題になってしまうようなことについても,彼女らしく,堂々と,そして彼女なりの主張を持って書かれています.

けんさアラカルト

交差適合試験の現状

著者: 佐元利男

ページ範囲:P.732 - P.733

交差試験には生食法,ブロメリン法,アルブミン法,クームス法などがありますが,どの方法によっても百パーセント安全であるとはいえないことは,ご承知のことと思います.では,どこまで交差試験を実施すれば検査技師として許されるのでしょうか?
 短時間に,危険率をなるべく最小限にするのが,今後の課題であると思います.現在,臨床検査技師の資格を有しない者が,交差試験を行っている施設もあると聞いたことがあります.

りんりんダイヤル

APLに併発するDICについて

著者: 山田輝雄

ページ範囲:P.737 - P.737

問 急性前骨髄性白血病(AP-L)の際にDICの併発が起こりやすいのはなぜでしょうか.(東京 Y生)
答 APLは,胞体に独特の顆粒をもつ異型性の強い前骨髄球様細胞の増殖,それに伴う骨髄浸潤と著明な血小板の減少および激しい出血傾向を特徴としており,この出血傾向の主因が汎発性血管内凝固(DIC)によることは,すでに明らかにされている1).DICは種々の基礎疾患の上に発現する病態であるが,特にAPLの場合に併発しやすく,その発生頻度はほぼ100%と考えられる2)

コーヒーブレイク

がんの比較疫学

著者: Y.U.

ページ範囲:P.668 - P.668

 最近,胃癌が減少し,肺癌が増加しているといわれる.しかし,男女とも依然として胃癌ががんの中ではいちばん頻度が高い.東大の剖検例でみると,男では胃癌の頻度は18世紀の末から19世紀初頭には全がんのほぼ40%を占めていた,女でも,30%前後と高かった.その後は減少し,1960年以降は男では17%,女では14%前後である.
 最近の14年間のハワイのクワキニ病院の日本人の剖検例を東大のそれと比較すると,ハワイの男では肺癌と胃癌の順位が逆転している.肺癌の増加は統計学的にも有意である(ρ<0.02).女の胃癌,肺癌については東大のそれと大差がない.男女とも直腸癌の頻度は両者で差はないが,大腸(結腸,盲腸)のそれはハワイの日本人では倍増している(ρ<0.001).

ME図記号に強くなろう

21発振器

著者: 小野哲章

ページ範囲:P.686 - P.686

 ①は発振器一般の図記号である.(b)は交流電源の記号としても使われる.特にことわらない限り正弦波発振器である.補助記号を付加して発振素子による区別をすることもある.
 ②は音さ(叉)を発振素子にしたもので,精度の高い低周波発振器として使われる.

エトランゼ

覚えても使うことのない英語"Someone in."

著者: 常田正

ページ範囲:P.703 - P.703

 東京オリンピックの頃を境に日本経済は上向きになり,日本の商社員や技術者が外国にどんどん出て行くようになった頃,英語学習熱もひとしきり盛んになりました.丁度その頃「英語に強くなる本」という本がベストセラーになったりしました.トイレに入っている時にトントンと扉を叩かれたら,「はいってます.」という答を英語では何と言うか……というかなり形而上学的な問題をこの本はとりあげていました.
 "I am in."とか"I am here."なんて答えたら恥ずかしいことに"I"であることがばれてしまいます.正解は"Someone in."であるとこの本は教えています.ところが実際の所,あちらの公衆所の扉は上と下が大きく開いているのが普通です.ひどい所では顔がまる見えだったり,扉が全然なかったりします.外から見て中に人が入っていることは一目瞭然です.また家庭ではトイレの扉は使っていない時は開け放しておくのが習慣です.扉が閉っているのは誰かが入っているしるしです.したがって,閉っている扉をわざわざノックする人はいません.人が入っているのを承知で扉を叩くような無礼者がいたら口で答えるよりも,逆に内から扉を蹴返してやるのがよいのではないでしょうか.

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第30回臨床検査技師国家試験—解答速報

ページ範囲:P.736 - P.736

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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