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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術15巻7号

1987年06月発行

雑誌目次

病気のはなし

動脈硬化症

著者: 村井淳志

ページ範囲:P.782 - P.787

動脈硬化症とは
 年をとるにつれ,すべての人の動脈壁は例外なく肥厚して厚くなり,弾性を失って硬くなる.動脈硬化という名称は元来,このような一般的に認められる老化現象に対して与えられたのである.しかし動脈壁が肥厚して硬くなっても,生理的な老化現象である限り,梗塞を起こしたり出血することは少ない.ところが,動脈の内膜にアテロームを作る粥状硬化症,動脈の中膜に壊死をもたらす細動脈硬化症が合併すると,動脈の内腔を閉塞して梗塞を起こしたり,破裂して出血することになる.これらの動脈病変はしばしば患者を死亡させ臨床的にきわめて重要であるから,生理的な老化現象とは区別して動脈硬化症と呼ぶようになった.すなわち,最初に使用されたような意味ではなく,現在では動脈の疾患名として使用されている.動脈硬化症には粥状硬化症,細動脈硬化症,Monckebergの中膜硬化症の3型があるので,これらを区別して解説する.

技術講座 生化学

血中重炭酸の測定法

著者: 渭原博 ,   豊田正輝

ページ範囲:P.801 - P.805

 重炭酸塩(HCO3-)は代謝性因子として細胞や細胞外液の酸塩基平衡に重要な役割を果たしており,その血中濃度の増加した状態をアルカローシス,また減少した状態をアシドーシスと呼んでいる.すなわち,血中重炭酸濃度が正常上限値30mmol/l以上の値を示したならば代謝性アルカローシス(metabolic alkalosis),また下限値20mmol/l以下ならば代謝性アシドーシス(metabolic acidosis)の存在を疑うことができる.
 代謝性アルカローシスを呈する疾患1)には,嘔吐,原発性アルドステロン症,利尿剤・ステロイドホルモンの投与,重炭酸塩の点滴,酢酸やクエン酸塩の摂取などの病的状態が挙げられる.また,代謝性アシドーシスをきたす疾患1)には,糖尿病,飢餓,腎不全,頭部外傷,下痢などの脱水でクロールが増加した場合,血中乳酸濃度の増加,尿細管アシドーシスなどがあるが,特に重炭酸濃度の減少は生命の安全性にかかわり,10mmol/l以下の値はpanic value(死の危険)とされており,注意が必要である2)

血清

パイログロブリンとクライオグロブリンの検出法

著者: 橋本寿美子

ページ範囲:P.806 - P.810

 血清検体を37〜60℃に加温,あるいは4〜37℃に冷却したときに,ゲル化,白濁,ないしは白濁沈殿物の形成を認めることがある.このような温度に依存した変化を示す蛋白を総称して,温度依存性蛋白(thermoprotein)と呼ぶ.温度依存蛋白の出現は正常血清(または尿)では認められないので,この蛋白を認めた場合には病的蛋白として検索を進める必要がある.
 加温により変化する蛋白としてはパイログロブリン(pyroglobulin)とベンスジョンス蛋白(Bence Jones protein)がある.一方,冷却により変化する蛋白としてはクライオグロブリン(cryoglobulin),クライオフィブリノゲン(cryofiblinogen)がある.

血液

FDP測定法4—FDP組成と試薬の反応性

著者: 田原千枝子 ,   島津千里 ,   鈴木節子

ページ範囲:P.811 - P.816

 わが国で線溶亢進やDICの診断にFDP測定が行われるようになってから10年余りになり,現在は日常的な凝血学的検査項目として普及するに至った.その臨床的有用性の高いことから,当初の赤血球凝集阻止反応をはじめとして,LPIA法,酵素抗体法など現在では多くの測定法が開発され,また抗体としてはポリクローナル抗体のみならずモノクローナル抗体も使用されている.
 一方,しばしば経験することであるが,同一臨床検体を種々のFDP試薬で測定してみると成績が一致しない場合が少なくない.元来FDPは各種分解産物の混合物であり,試薬抗体の反応性を考えれば測定値が異なるのは当然であるが,FDPの成績が診断の決め手になる症例についてはこの相違が大きな問題となる.

生理

アーチファクトと対応法4—肺機能

著者: 横山雄一

ページ範囲:P.817 - P.821

 肺機能検査におけるアーチファクトは,心電図,脳波検査などに見られる,外部からの混入による電気的障害(交流障害,筋電図など)は少ない.むしろ人為的な原因によるものや,生体現象により発生するものが多く,それらは直接測定結果に影響を与える.
 間接的に測定値に影響を与えるものとして,測定装置から発生するものがある.最近の測定装置は,測定回路や電気回路の複雑さにより,簡単に検査室レベルでの較正などができないため,経年変化による測定精度の低下や消耗品の機能低下により発生する.また,測定装置の特性を考慮に入れて検査法を選択することも必要である.今回は,日常行っている肺機能検査で発生したアーチファクトの主な原因と,その対応について述べる.

病理

プラスチック包埋標本と組織化学

著者: 瀬野尾章

ページ範囲:P.822 - P.826

 プラスチック(樹脂)包埋法というのは,もともと電子顕微鏡(電顕)による細胞の微細構造観察のために考案されたもので,最初はアクリル系樹脂,その後スチレン,ポリエステル,エポキシ樹脂などを用いる多くの方法が開発されている.しかしながら,光学顕微鏡(光顕)標本作製のための樹脂包埋法はその歴史が浅く,近年になり本格的研究が行われているといっても過言ではない.
 樹脂包埋標本の光顕的観察は,電顕と光顕とのギャップを解消するために,樹脂包埋を施した電顕用ブロックから1〜2μmの準超薄切片を作製し,塩基性色素(トルイジンブルーなど)で単染色し,光顕的に観察したことに始まる.このような電顕ブロックから作製した光顕標本は,従来のパラフィン包埋標本に比べて組織構築,細胞内構造の保存に優れ,子細な細胞学的観察を可能にすることが判明し,パラフィン包埋に代えて樹脂包埋法の光顕への応用が試みられた.

検査法の基礎理論 なぜこうなるの?

NCCLS標準法3—嫌気性菌の薬剤感受性測定法

著者: 小栗豊子

ページ範囲:P.789 - P.794

 つい最近まで,嫌気性菌の薬剤感受性測定法は厳密には,寒天平板希釈法により測定する以外に適切な方法は存在しなかった.わが国では,好気性菌に用いているディスク法がそのまま嫌気性菌にも応用されている.しかし,この方法で得られた成績が患者の治療に反映されるものであるか否かについて,正確に答えることは難しい.嫌気性菌は好気性菌と比べると,培養方法,培地,培養時間などを異にしていることが,両細菌間の成績に疑問を抱かせる原因であろう.
 寒天平板希釈法を嫌気性菌の薬剤感受性測定法として日常検査に用いることは操作が繁雑であり,むだも多い.このため,NCCLS(臨床検査標準委員会)より,日常検査用の試案が出された.本号では嫌気性菌の薬剤感受性検査はなぜ困難なのか,また,どのような方法を用いることが許されているのか,などの点について,NCCLSの文書を中心に述べてみたい.

白血球の三峰性粒度分布

著者: 巽典之 ,   津田泉 ,   木村雄二郎

ページ範囲:P.795 - P.799

 粒度分布(size distribution)とは,細胞の容積分布のことである.古典的血液学において赤血球の大小不同を調べるのに,プライス・ジョンズ曲線が利用されてきた.この方法は,ギムザ染色標本を用いて視野縮小器とスケールをつけた顕微鏡で赤血球直径を測定していくものであるが,手技的に面倒で,時間がかかるためあまり利用されていなかった.その後,自動血球計数器が開発され,平均赤血球容積(MCV)をもって大小不同症の指標とされてきたが,MCVはしょせん平均値であり,細胞分布の広がりを示すものではなかった.ここで登場したのが全自動型自動血球計数器である.この全自動型計数器は血球数と血球容積を各細胞ごとに精密に測定しうると同時に容積分布を描出できる.この機器の完成の陰には電子光学,流体工学,光学の技術的進歩が隠されているといっても過言ではない.
 この高度に完成された計数器は操作が簡単で,少量のサンプルで,短時間に各種データを打ち出してくれる.粒度分布曲線のほか多くの解析値もこの出力データの一部である.臨床検査室としては,この粒度分布について理解を深めると同時に,この結果を臨床医のもとに届ける努力が必要である.

ラボクイズ

同一標本内に種々の異型細胞を含む膀胱洗浄液

ページ範囲:P.827 - P.827

QRSが脱落する不整脈

ページ範囲:P.828 - P.828

マスターしよう基本操作

AACC法による標準的尿蛋白定量法

著者: 今井宣子

ページ範囲:P.829 - P.836

 現在,標準的尿蛋白定量法(基準法,実用基準法ともに)として評価の定まった方法はない.しかし,日常一般法や試験紙法などを評価・検定する際,どうしても基準とすべき測定法が必要となる.そこで,標準的測定法として,現在もっとも信頼性の高いと思われるAmerican Association for Clinical Chemistryの方法(AACC法)を紹介する.本法は1975年に同会よりselected methodとして勧告された1).測定原理が体液総蛋白の標準的測定法2)として評価の定まっているビウレット法に基づくこと,本反応における干渉物質はゲル濾過により除去されること,最終的な呈色は銅のジエチルジチオカーバメート反応によるため高感度であること,などの長所を有する.しかしブドウ糖,ビリルビン,ヘモグロビンを大量に含む検体では,これらによる正誤差を免れないなどの欠点もある3).本稿では,AACC法原法(図1)4)を筆者らが一部改変した方法5)について解説する.

検査ファイル 項目

ヒト重合アルブミンレセプター

著者: 矢倉廣

ページ範囲:P.838 - P.839

 HB肝炎ウイルス(HBV)による肝炎の発症には,単に肝細胞内にウイルスが存在するのみでは十分でない.このことは,無症候性キャリアーが存在することからみても明らかである.HBVそれ自体には肝細胞障害性は少ないものと考えられており,肝炎の発症は宿主の免疫反応が関与した結果であると考えられる.
 最近になって発見されたHBV上のヒトおよびチンパンジーのアルブミン(重合アルブミン)に対するレセプターの存在は,肝細胞膜上に存在する重合アルブミンレセプターと,「重合アルブミンを介してHBVが肝細胞に接着する」という仮説を成立させうる.

チトクローム・オキシダーゼテスト

著者: 横澤光博

ページ範囲:P.840 - P.841

 分離菌がだいたいどの菌属に分類されるのかを知るのに有用なテストの一つに,チトクローム・オキシダーゼテスト(以下,オキシダーゼテスト)がある.
 主にNeisseria属の同定と好気性・通性嫌気性グラム陰性桿菌の鑑別に用いられる.オキシダーゼテストは最初各種の菌が混合した培養の中からNeisseria属菌を拾うためにGordonとMcLead(1928)によって考案されたテストであるが,これが広範囲に応用されるようになったのは,Kovacs(1956)がPsezadomonasを腸内細菌から鑑別するために考えたテストに端を発しており,現在ではVibrio属,Campylobacter属,Aeromonas属など多種類のグラム陰性菌を同定するためにまず最初に行う重要なテストとなっている(表1).

機器

ミクロトーム

著者: 吉元真

ページ範囲:P.842 - P.843

1.目的,原理
 光学顕微鏡下で組織診断をする場合,病変部を切り出したままの厚さでは透過光線を十分に通すことができない.組織片に固定,脱水,包埋の操作を加えて一定の硬さを与えた後,組織片を染色する目的に応じて薄く切る(通常3〜5μm)操作を薄切といい,これに使用する機械をミクロトームという.
 原理は,ミクロトーム刀または組織ブロックを完全に固定し,他方をつねに同一平面上で安定した往復運動を繰り返すことにより,微調整された厚さの切片が得られる.

用語

Con A

著者: 亀子光明 ,   奥村伸生 ,   山上修

ページ範囲:P.844 - P.845

 レクチン(lectin)の一種であるコンカナバリンA(concanavalin A;Con A)は,SummerとHowell1)によりナタマメ(jack bean,Canavalia ensiformis)から単離・結晶化された植物性血球凝集素である.レクチンは,一定の糖構造と特異的に結合する抗体以外の蛋白質,または糖蛋白質と定義されており,その名は「選ぶ」という意味のラテン語legereに由来している.

Letter from Abroad 海外で活躍する日本の検査技師

青年海外協力隊員として—スリランカ1

著者: 石原美子

ページ範囲:P.846 - P.847

■現地入り当日からカルチャーショックに
 私が青年海外協力隊の合格通知を受け取ったのは,1984年夏のことでした.合格通知に記された派遣予定国はスリランカ.インド洋上に浮かぶ島国,日本ではセイロン紅茶(オレンジペコ)で有名な国です.青年海外協力隊は,「開発途上地域の住民と一体になって当該地域の経済及び社会の発展に協力する」ということを目的に,日本青年が開発途上国において活動しています.現在,派遣国は32か国,その数は増えつつあります.合格後は約3か月間の訓練(語学・保健衛生など)を受け,晴れて隊員となり任国への派遣となります.
 私がスリランカへ到着したのは1985年4月,一年中でいちばん暑い時期でした.これから私たちの2年間がここで始まるのです.同期隊員は私を含め14名,そのうち5名が臨床検査技師(安食愛彦,足利アヤ子,有馬まゆみ,立岡清子の各隊員と私)です.同職種としては初めての派遣で,先輩隊員もおらず,この国の医療レベルなどの情報も得られないまま現地入りをした私たちでした.

ひとくち英会話 English Conversation in Your Laboratory

〔検査機械展示場にて(5)〕

著者: 𠮷野二男 ,   常田正

ページ範囲:P.848 - P.849

技師:試薬の補給はどこで得られますか.
説明係:当社にはあらゆる種類の試薬の在庫がございます.これらの見本は手前どもの在庫品のほんの一部です,必要な試薬はどんなものでも永続的な定期的な補給を保証いたします.

ザ・トレーニング

検査データの解離3—尿酸測定法の特異性について

著者: 佐々木禎一

ページ範囲:P.853 - P.856

 Q嬢は昨春国家試験に合格し,晴れて一人前の臨床検査技師となった新人である.病院検査部に勤務,現場では生化学検査を担当してすでに10か月経過し,本人はいちおう毎日の実際の検査業務にも慣れたと思えるようになった.したがって,仕事にもゆとりが見られるところまできたといえよう.
 しかし実際の臨床検査の仕事の中では,学生時代に習得した知識,技術だけでは不十分であり,日常体験する事例との間のギャップを身にしみて感ずることも多かったようである.彼女は時折学生時代に教えを受けたA先生を訪ね,実際の臨床検査技師としての悩みを訴えたり,遭遇した新しい経験を報告したり,ぶつかった疑問について教えを請うたりするために部屋を訪ねている.

検査技師のためのME講座 計測器・13

血液凝固測定装置(1)フィブリン析出を凝固終末点とする凝固時間測定機器

著者: 佐守友博 ,   藤巻道男

ページ範囲:P.857 - P.859

 近年の急速な血液凝固学の進歩に伴い,凝固反応自体の生化学的レベルでの解析が可能となったため,凝固反応を全体的にとらえる凝固時間の測定以外にも,各種凝固関連因子の測定,凝固過程における反応産物の測定と,血液凝固検査自体に多岐にわたる項目が加わった1).そして,ほとんどの凝固検査が現在では機器で測定でき,一概に血液凝固測定装置といっても,それぞれの検査項目に対応した装置が考案されている.今回,特にフィブリン析出を凝固の終末点として測定する凝固時間測定装置について,凝固反応を理解するための基礎的知識と併せて,その測定原理を概説する.

トピックス

レセプター病

著者: 森徹

ページ範囲:P.861 - P.862

 ホルモンなど活性物質は,細胞の特異的なレセプターに結合して,その作用を細胞に伝達する.レセプターに異常があると,物質が血中に存在しても作用が発揮されず病的状態を起こす.このような疾患をレセプター病と呼ぶ.最近の進歩によって,既知のレセプターについては遺伝子工学やモノクローナル抗体の利用によって,次々とその構造や機能の詳細が解明されている.また,レセプターの概念も広く考えられるようになり,新しい疾患や病態が注目されつつある.

検査を築いた人びと

視力検査表を考案した ヘルマン・スネレン

著者: 深瀬泰旦

ページ範囲:P.788 - P.788

 メガネをかけ,カメラをぶらさげて団体行動の好きな国民―海外でこのような一団に会えばまず日本人と思ってまちがいない,と以前からよくいわれていた.近ごろではカメラを肩にした人種は,必ずしも日本人ばかりではないようであるが,メガネのお世話になっている日本人は依然として多い.
 視力の単位は第11回国際眼科学会議(1909)において,直径が7.5mmで,太さと切れ目の幅がおのおの1.5mmであるランドルト環を使用して,これを5mの距離から見分けることができる視力を1.0とした.わが国では石原忍(本誌14巻4号)がこれに改良を加えて,日本人向けの視力表を作成した.これがわれわれになじみ深い,"コ,ナ,ル,カ,ロ,フ"と半ば暗記している,あの視力表であり,この視力検査表をはじめて考案したのが,スネレンである.

私たちの本棚

DNAの魅力に引かれて—DNA学のすすめ—躍動する生命の二重らせん—柳田 充弘 著

著者: 山田三枝子

ページ範囲:P.800 - P.800

 もう2年も前のことになりますが,"Human B lymphocyte ontogeny and related irnmunoproliferative disorders"という英文を訳してみましょうというグループが,検査室内にできました.若い人たちにとってはつい最近まで学校で英語を勉強していたわけですから,それほどたいへんなことではないでしょうが,私は英語から離れてもう16年たっておりました.辞書を片手に久しぶりに英文に出会ったことが,後になってみると私にとってDNAの魅力に引かれて行くきっかけとなりました.
 英文によると,抗体の多様性がDNAレベルで解明され,V. D. J. C領域でのDNAの再構成が行われること,そしてわずか300個の遺伝子領域の連結から180億種類の抗体が合成されることなどが述べられ,私にとっては固定的なDNAの考えかたから脱皮しなければならないものとなりました.そんなときこの『DNA学のすすめ』に出会ったのです.

けんさアラカルト

臨床検査技師教育のカリキュラム改正について2

著者: 和田浩

ページ範囲:P.850 - P.850

 臨床検査技師学校養成所指定規則および指導要領は,昭和45年に制定されて以来15年ぶりに改正された.監督官庁の改正の主旨を見ると,「近時における医学および臨床検査技術の急速な発展は医療の中に占める臨床検査の重要性を一層重要なものとした.したがって,技師教育をとりまく状況の変化を考えるとき,技師教育の観点のみでなく,医療現場において適正な検査業務を行うという立場からも,技師教育と検査業務の現状との本来あるべき姿を考えて,よりよい臨床検査技師を養成し確保する必要性が高まったので今回の改正を行った」とある.
 技師学校におけるカリキュラムは指定規則に定められていて,その実施に関連して細かいことが決められている.

臨床検査技師教育のカリキュラム改正について3

著者: 田口八郎

ページ範囲:P.851 - P.851

 昭和61年4月10日付で指定規則の一部改正が行われ,4月17日付の指導要領の全面改正に伴い,各養成所では昭和62年4月からの新教育に備えて教育課程の改正が行われたはずである.ここでは日常技師教育に携わっている者として,また養成所の中でも短期大学に属する者としての立場から,二,三の意見を述べてみたい.

りんりんダイヤル

血中尿酸濃度について

著者: 河井和夫 ,   西岡久寿樹

ページ範囲:P.863 - P.863

問 尿酸は溶解度が小さいために関節など組織に沈着し,痛風発作や腎障害を起こす,と習いましたが,日常検査で,時に30mg/dlを超える例に遭遇することがあります.このような例は癌末期患者に多いようですが,高尿酸血症の機序と,このような高い濃度にまで溶解している理由についてお教えください.一例の経時データ(表1)を記します.(東京 M子)
答 ヒトでは,尿酸が,核酸の構成成分の一つであるプリン体の終末代謝産物であるが,プリン体は,①食事中の核蛋白,②体組織由来の核蛋白,またはヌクレオチド,③新しく合成されたヌクレオチドから供給される.そして体内で合成された尿酸は3/4が腎から排泄され,残り1/4は胆汁成分とともに腸管に排泄され,腸内細菌により分解されて,炭酸ガスとアンモニアになる.

ME図記号に強くなろう

34AV機械操作記号(2)

著者: 小野哲章

ページ範囲:P.787 - P.787

 ①このボタンと「再生」のボタンを同時に押すと「録音・録画」ができる.
 ②いわゆる「オートリバース」機能を示す図記号である.左から右への逆記号を付け加えると「無限リバース」を意味する.

コーヒーブレイク

北米13日間の旅

著者: T.O.

ページ範囲:P.805 - P.805

 去る2月27日より3月11日まで臨床微生物学研修ツアーに参加した.このツアーは,米国ジョージア州アトランタで全米微生物学会が開催されたが,この学会参加を兼ね,細菌の自動検出装置を輸入販売しているA社が企画したものである.国内の24施設29名とA社の社員を含む30余名が参加した.27日夕方,成田に集合し,19時30分の飛行機で出発した.途中シアトル,セントルイスで乗り替えがあり,第1の目的地であるアトランタに着いたのは真夜中の1時過ぎであり,しかも大雨であった.空港よりバスでホテルのあるピーチトリーストリートに向かった.案内されたのはリッツ・カルトンホテルで,格調の高い落ち着いた雰囲気のところであった.壁にかけられた絵や飾り棚に置かれたランの鉢が一層の絢爛さを添えていた.このホテルには5泊,その後セントルイスで3泊,ロスアンゼルスで3泊の旅である.
 この間,A社の細菌自動検出機器や同定キットに関するシンポジウム,ワークショップ,AIDSや院内感染,DRGなどに関する講演,NCCLS法による薬剤感受性検査のディスカッション等が行われた.このほか三つの施設の検査室の見学,工場見学などで日程のほとんどが占められた.

エトランゼ

林語堂先生の教え(1)

著者: 常田正

ページ範囲:P.849 - P.849

 先日,国会図書館へ資料研究に行った折,林語堂先生のあの痛快な諷刺をもう一度読みなおしてみたいと思って探してみたところ,先生の随筆集が一冊もないのに驚いた.館員に尋ねてみたが,若い人は勿論のこと,年配の館員までが「林語堂」の名前すら知らないのでまた驚いた.
 林語堂という人はアメリカに帰化した中国人で,独特の諷刺と流麗な英文で知られた文人である.むかし日中関係の悪化していた頃文筆をふるって日本の悪口をさかんに書いていた人でもある.林先生は英語の達人なので日本の中国侵略の問題に関して日本人と大いに議論を戦かわしてやろうと手ぐすねをひいていたが,結局先生の望みはかなえられなかった.その理由を先生はたしかこのように書いておられた.

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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