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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術16巻10号

1988年09月発行

雑誌目次

病気のはなし

骨髄移植

著者: 正岡徹

ページ範囲:P.1132 - P.1137

サマリー
 骨髄移植は血液疾患に対して高い完全治癒率を示す新治療法である.極度の免疫不全状態を経過し,間質性肺炎,GVHD,白血病再発など多くの合併症を発生するので,これらの合併症対策が重要である.サイトメガロウイルスや肺障害対策が近年進歩し,骨髄移植成績向上の原因となっている.コロニー刺激因子は骨髄移植後の顆粒球減少期間を有意に短縮させることを明らかにした.最近の成績では,急性骨髄性白血病の第1寛解期に骨髄移植をした場合の長期生存率は60%を超えるが,第2寛解期以降などではその成績は不良で,厳密な適応の判定が必要である.

技術講座 生化学

血糖測定における解糖阻止剤の使いかた

著者: 中島弘二

ページ範囲:P.1150 - P.1154

サマリー
 従来の血糖測定用解糖阻止剤NaFは解糖阻止が発揮されるまでに2時間かかり,平均8mg/dlのグルコース値の低下がみられる.これに対し,ここでは新しい解糖阻止法としてpH低下法とD-マンノース法について紹介した.pH低下法は24時問までほとんどグルコース低下はなく,D-マンノース・NaF併用法も同等の成績を示した.D-マンノースを単独で使用することにより,作用時間は短いが,電解質など他の生化学検査用のサンプルとしても使用でき,従来の阻止剤にはない利点がみられた.それぞれの方法の問題点,注意点についても述べた.

輸血

日臨技輸血検査標準法2—Rh式血液型判定法

著者: 冨田忠夫

ページ範囲:P.1155 - P.1159

サマリー
 輸血を行う場合,受血者,供血者ともにABO型,Rh(D)型は必ず検査し,同型の血液を準備して交差適合試験を行い,適否を確認した後,輸血が行われる.特にD抗原は,抗D血清との反応からD陽性,Du陽性,D陰性に大別され,最近はD陰性の中にDelの存在することも明らかになってきた.D抗原は輸血だけでなく,母児血液型不適合の原因にもなるが,抗D免疫グロブリン製剤の普及で,妊娠による抗D産生は減少している.Rh式血液型の中で日本人に特徴的なことは,不規則抗体"抗E"が輸血歴,妊娠歴のある人にしばしば見いだされることである.

細菌

細菌検査における精度管理

著者: 菅原和行

ページ範囲:P.1160 - P.1165

サマリー
 臨床細菌検査における精度管理では,検査成績の管理もさることながら,プロセス管理がもっとも重要である.なぜならば,各プロセスでの誤差発現を確認しながら作業を進行しないと,細菌検査では後日に誤差が発見されても同一状況下での再検査は不可能である.また,効率的なプロセス管理を実施するためには,現況の細菌検査に潜む根本的問題点を冷静に観察し,患者,検体,菌株,環境,資材および技術管理と管理内容を系統別に分類し,総合的に管理するのがよい.実際的作業としては適切な菌株数を選び,誤差発生の予測は不可能なため,可能ならば毎日実施するほうが高い成果が得られる.また,諸種の状況変化を詳細に記録する習慣が大事である.

病理

血球と電子顕微鏡1—構造と基本操作

著者: 山崎家春 ,   岩坂茂 ,   堤嘉隆 ,   丹下剛

ページ範囲:P.1166 - P.1170

サマリー
 この講座は電子顕微鏡(electron microscope;EM)を使用して初めて血液細胞の研究をしようとする人たちへの入門編を3回に分けて行う.したがって,初回は血液細胞の観察によく使われる電顕とはどんなものかを説明し,その原理と特徴などを記載する.次回は,血液細胞の一般的電顕標本作製までの過程や一部免疫電顕への応用を示す.最後に,電顕で観察,撮影した血液細胞の電顕写真を掲載し説明を加える.

生理

焦点性脳波異常の発生源の三次元解析

著者: 堺雄三 ,   渡辺義明

ページ範囲:P.1171 - P.1175

サマリー
 現在,通常の脳波記録や脳波のパワースペクトルを二次元表示した頭皮上等電位分布図などでは,頭皮上脳波からその発生部位を求めることはできない.筆者は頭皮上電位分布から,発生源を三次元解析する方法を開発したが,その結果が良好であるので,本欄で紹介する.本法は,電位分布の形状を数値で表し,それを双極子の三重層理論に基づいて作成したノモグラフに当てはめ,発生源を読み取るものである.

検査法の基礎理論

超高感度高速液体クロマトグラフィー

著者: 今井一洋 ,   宇津園子

ページ範囲:P.1139 - P.1144

サマリー
 超高感度高速液体クロマトグラフィー(HPLC)とは,HPLCの分離部分による高感度化,ならびに検出部分の高感度化により達成されつつある高感度分離分析法を総称していわれているものである.
 本稿では,分離部分の高感度化と検出部分の高感度化のそれぞれについて解説した.前者は,ミクロボアカラムを用いることによる高感度化について,後者は,無蛍光物質の蛍光誘導体化による高感度検出,ならびに過シュウ酸エステル化学発光検出による高感度検出を含めて,蛍光検出法,化学発光検出法,および電気化学的検出法について詳述した.

尿培養—特に分離菌の動向とその解釈について

著者: 伊藤康久 ,   河田幸道

ページ範囲:P.1145 - P.1149

サマリー
 尿路感染症の原因菌はEscherichia coliを中心としたグラム陰性桿菌が多数を占めているが,最近は難治性尿路感染症の原因菌の多くがβ-ラクタマーゼ産生函であることからβ-ラクタマーゼに安定な抗菌剤が使用されたため,これらの薬剤の抗菌スペクトルに入らないEnterococcus faecalisなどのグラム陽性球菌や真菌が出現する頻度も高くなってきている.また医療水準の向上とともに感染防御機能の低下した患者が増加したことなどの誘因により,従来までは汚染菌と考えられていたブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌などの弱毒菌による感染症が注目されるようになってきた.

ラボクイズ

〈問題〉超音波(2)

ページ範囲:P.1176 - P.1176

8月号の解答と解説

ページ範囲:P.1177 - P.1177

マスターしよう検査技術

走査型電子顕微鏡による結石解析

著者: 鈴木悦

ページ範囲:P.1179 - P.1184

 生体の代謝,調節機構などの異常において種々の臓器に結石が生成されることがあり,これらを総称して結石症と呼んでいる.結石症は結石の構成成分によって臨床症状,合併症,治療,予後などが異なり,結石成分,結晶構造などを究明することは結石症の生成機序を解明することになり,治療上きわめて重要である.
 結石の分析は現在では,赤外線分光分析,化学的分析,ガスクロマトグラフィー,X線回析および薄切標本の光顕・偏光顕微鏡像,走査電顕像による結晶像などの結果を組み合わせて総合的に解析している.

国家試験対策室

病理学 解剖・組織学

著者: 河原栄

ページ範囲:P.1185 - P.1187

例題
 1.誤っているのはどれか.
 a.パラフィン切片は2〜4μmの厚さに薄切する.
 b.滑走式ミクロトームでは,引き角は45°,逃げ角は2〜5°がよい.
 c.固定後の凍結切片は,ゼラチンスライドあるいはポリ-L-リジン塗布スライドに貼付する.
 d.パラフィン切片のスライドグラスへの密着度を高めるために45〜50℃で一晩乾燥させる.
 e.ユング型ミクロトームは凍結切片作製のためによく用いられる.

検査ファイル 項目

血中フルクトサミン

著者: 佐藤春枝 ,   石井秀和

ページ範囲:P.1188 - P.1189

 糖は蛋白質やアミノ酸などのアミノ基を有する物質と非酵素的に結合するが,この過程で,糖のカルボキシル基とアミノ基はアルミジンとなり,アマドリ転移を経て,安定したケトアミンとなる.生体内では,これらの反応の生成物はglycosylated albuminまたはglycosylated proteinとしてよく知られている.
 最近glycosylated proteinの新しい測定法として,簡便な比色定量法が報告され1,2),この方法によって測定されるグリコシル化蛋白は,その糖鎖がフルクトース構造をとることから,フルクトサミンと命名された.

結核菌の迅速培養

著者: 山根誠久

ページ範囲:P.1190 - P.1191

 抗酸菌の検出には,検鏡検査と培養検査がある.検鏡検査は迅速性に優れるものの検出感度で劣り,陽性と判定するには通常10000個/ml以上の菌濃度が必要である.他方,培養検査は最小検出感度が10〜100個/mlと優れているが,反面,迅速性には劣る.結核菌の迅速培養が今後の課題として残されており,ここでは,①検体の前処理(濃縮),②培地,③自動機器,の三つの点から迅速培養へのアプローチを紹介する.

機器

ラテックス免疫凝集反応測定装置

著者: 今野稔

ページ範囲:P.1192 - P.1193

 微量高感度測定法としては,ラジオイムノアッセイ(RIA)やエンザイムイムノアッセイ(EIA)などがあるが,ラテックス免疫凝集反応測定法はそれらに次ぐ感度を持つとともに,RIAやEIAにおいて必要な結合型,遊離型の分離操作が不必要なホモジニアスな測定系であることが特徴である.したがって,ホモジニアスEIAと同様に迅速に結果が得られ,高速で多数検体を自動測定することができる.測定対象物質はμg/dlレベルの蛋白成分が主であり,CRP,RF,ASOや腫瘍性蛋白などの測定に威力を発揮しているが,今後HB抗原などの測定が可能になればCRPなどとともに緊急検査法としてもその有用性が高まるものと期待される.

用語

上皮増殖因子(EGF)

著者: 清水信義

ページ範囲:P.1194 - P.1195

 上皮増殖因子(epidermal growth factor;EGF)は,1962年にS.Cohenによって発見され,その後発見された数多くのポリペプチド増殖因子の中で研究がもっとも進んでいる.EGFは雄のマウスの顎下腺から酸で抽出され,53個のアミノ酸から成る,分子量6025の安定な蛋白質である.ヒトの尿中に見いだされていた胃酸分泌抑制因子ウロガストロンはヒト型EGFであり,37個のアミノ酸が共通である1,2)(図1).
 EGFの生理作用としては,新生マウスの眼瞼開裂や切歯出現の促進が顕著である.この作用は上皮の増殖とケラチン化によるもので,上皮増殖因子と名づけられたゆえんでもある.EGFは表皮細胞の増殖を促進することから,胎児や新生児の発達に重要な役割を果たしていると推定され,事実,ヒツジの胎児にEGFを注入すると,気道表皮の増殖が促進され,未熟児の硝子膜症が抑制された,という報告がある.さらに,各種動物の胎児および新生児組織の増殖や分化の促進,ヒツジの発毛促進,培養系では特に外胚葉系や中胚葉系の細胞の増殖を促進する.ニワトリの肺原基の発生も促進され,タイプII肺細胞の増殖が誘導されsurfactin産生量が増大する.

検査技師のための新英語講座 English for Medical Technologists・9

英文タイプ

著者: 今井宣子 ,  

ページ範囲:P.1196 - P.1197

先輩技師:私は学校でタイプを習ったことがありません.タイプをするときは,いつも見よう見まねです.日本語の原稿の場合,2マス目から書き始めます.同じパラグラフ内では文章と文章の間はマス空けしませんし,句読点はすべて1マスずつとります.英文タイプの場合はどうですか?
 英文編集者:日本語の場合とずいぶん違います.まず第一に,パラグラフの書き出しは少なくとも4字分空けます.同じパラグラフ内では文章と文章の間は1字分でなく,2字分空けます.普通,ピリオド,コンマ,セミコロン,コロンのような句読点の前はスペースを空けません.コンマの後は1字分空け,セミコロンとコロンの後,そして文末のピリオドの後は2字分空けます.これらスペースの空けかたについでの規則をリストにして,タイプライターにセロテープで貼りつけておくといいですよ.行の終わりで単語を切らなけれはならないときの切りかたを知っていますか?

ザ・トレーニング

尿試験紙の評価法

著者: 細萱茂実

ページ範囲:P.1198 - P.1202

はじめに
 定性検査は定量検査に比べて操作が簡便であり,検査成績もある意味では粗野に扱われがちであるが,その臨床的有用性や利用頻度からみると,定性検査法の評価・管理の重要性は定量分析法に比べて勝るとも劣らないことといえる.しかし,定性検査の評価法については,臨床化学に代表される定量分析法の評価のような定められた方法はなく,また,それに関する検討も少ない.このことは,検査法(尿試験紙など)の管理は製造メーカーで行われているという前提のためもあると思われるが,実際は検査室の環境条件や実施者の熟練度,検体の特殊性など試験紙の性能以外の要因が成績に影響を与えることは十分考えられ,各検査室ごとまたは日々の測定ごとに検査法の評価・管理を行うことが重要である.そこで,試験紙による尿検査などのように,測定値が-,±,+で示されデータに自然な順位がある値をもつ測定法の評価法に関して,方法論の整理を行うとともに若干の考察を加えた.

やさしい統計のはなし・9

検定と信頼区間(3)

著者: 大橋靖雄

ページ範囲:P.1203 - P.1206

 前回に引き続き,検定に関する基本的な,しかし重要な事項をまとめておこう.

トピックス

血中アルギニノコハク酸合成酵素(ASS)の臨床応用—肝臓病を中心に

著者: 三浦力

ページ範囲:P.1207 - P.1208

 1955年,肝炎における血清酵素の上昇が報告されて以来,肝臓病の診断に血中GOT,GPT,LDH活性の測定は欠かせないものとなった.これらの酵素は主に肝細胞質内に存在し,肝細胞の壊死に伴い血中に逸脱することから,肝の炎症の程度を表す指標と考えられている.肝細胞内にはGOT,GPT,LDH以外にも各種酵素が存在しているが,現在利用されるに至っている酵素は少ない.この理由として測定感度の問題が挙げられるが,それだけでなく肝細胞壊死の指標としてGOT,GPTでさほど不自由していなかったことも一因であろう.確かに急性肝炎や慢性肝疾患で血中GOT,GPTが上昇し,診断および経過観察に汎用されてきた.
 しかし,これらの酵素値がほんとうに肝臓の炎症の程度や進展状態を正確に反映しているといえるだろうか.実際,臨床の現場でも血中GOT,GPTがつねに低値で落ち着いているにもかかわらず,肝硬変症,肝臓癌に進行し,予後不良の症例も少なくない.また逆に,GOT,GPTが長期間にわたり変動する症例で予後良好と思える症例も,けっこう多い.医師も患者もGOT,GPT値を参考にしながら経過を見ているといっても過言ではないが,はたしてこれでいいのか,という疑問も起こる.冒頭に述べたように,GOT,GPTが一般的に肝臓病の診断に用いられるようになってまだ30年くらいしかたっていないのである.それ以前は黄疸と検尿所見などによって肝臓病の診断がなされていたであろうから,肝疾患患者の予後にGOT,GPTの上昇,変動がどれほど悪影響を及ぼしているのかがほんとうに確認されるのは,これからである.

血中濃度曲線下面積

著者: 戸塚恭一 ,   清水喜八郎

ページ範囲:P.1208 - P.1208

 血中濃度時間曲線と横軸とに囲まれた面積のことを,血中濃度曲線下面積(area under the curve;AUC)という.したがって,AUCは濃度×時間(μg/ml×hrなど)として表される.AUCは体循環に入った薬物量に比例するので,種々の製剤または投与経路での薬剤の生体利用率を比較する際に有用である.
 AUCは血中濃度を示す式が求められている場合は,その式を積分して求めることができる.また台形公式や曲線下面積の部分を切り取り重さを測る重量法などにより求められる.

Corynebacterium group JK

著者: 奥住捷子

ページ範囲:P.1209 - P.1209

 Corynebacterium group JKは,compromised hostに重症感染症を引き起こすものとして注目を浴びている.
 顆粒球減少時の白血病の患者の血液から長期間にわたり検出された多剤耐性のCorynebacteriumが,1976Handeらによって報告された1).その後,心臓外科患者の心内膜炎の原因菌として報告があり,また担癌患者の敗血症や創傷部,膿瘍などからの検出例の報告があり注目を集めた.CDC(Centers for Disease Control)での研究によりCorynebacterium groupJKとして1979年Rileyらによって発表された2).このときの試験菌株は95株で,その内訳は,血液53,尿生殖器11,髄液9,創傷4,肺病巣3,目2,腹膜2,股関節部9,その他6,不明3であった.

けんさアラカルト

尿沈渣の標準化の現状

著者: 島田勇

ページ範囲:P.1138 - P.1138

 尿沈渣とは,尿中に含まれる有形成分を遠心濃縮し,その一部で標本を作り,鏡検によって沈渣成分の種類と量を見る検査である.つまり,尿沈渣は形態学的な検査と定量的な検査の両面を持っている検査といえる.また,尿沈渣はその検査の性質から,検査室において臨床検査技師が行う場合と,各診療科において医師がみずから行う場合とがある.このように,尿沈渣はその検査の特性および検査が行われてきた背景から,他の臨床検査に比べて標準化に関しては立ち遅れているといえる.
 尿沈渣の標準化は,標本の作製,沈渣成分の分類,成績の表現に大別することができる.

学園だより

神戸常盤短期大学衛生技術科

著者: 井上真一

ページ範囲:P.1178 - P.1178

■沿革
 本短期大学(学長・光成俊彦)は,1967年4月,神戸市のほぼ中央部,高取山の山裾の現在地(神戸市長田区大谷町2-6-2)に,衛生技術科(2年制)と幼児教育科という,きわめて専門性の強い二つの学科を有する神戸常盤短期大学としてスタートした.本学科は,当時としては全国にも数少ない短期大学であり,特に近畿においては唯一の私立短期大学として大きく社会に貢献してきた.
 '74年,臨床検査技師養成学校として装いを整え,3年制の学科として新たなスタートを切った.'76年,社会的な要望にこたえるために,従来の入学定員80名を120名に増員し,もっとも多くの学生を養成する短期大学として現在に至っている.

けんさ質問箱

脳波計のハム除去スイッチについて

著者: 厨川和哉 ,   S子

ページ範囲:P.1212 - P.1213

問 よく,ハイカット・フィルタやタイムコンスタントによるそれぞれの影響は本に書かれてありますが,ハム除去スイッチによる影響のいかんは書かれていません.実は,私の勤務している病院の脳波計はいつもハム除去スイッチが入っており,ハムを入れなくても検査ができることを説明しても,上司にわかってもらえません.「ここはシールドルームでないから,入れておくように」とか,「実際は入れたほうがきれいにとれる」とかいわれますが,どうなのでしょうか.(大阪・S子)
答 脳波計に内蔵されている交流除去フィルタ(ハムフィルタ)は,記録中の脳波に混入した交流雑音を除去するために用意されています.しかし,ハムフィルタを使用すると脳波の波形に対しても影響が出ることがあるので,安易な使用は避けるべきです.もし,日常測定する脳波室でつねに交流雑音が混入する場合は,まず発生原因を確認し,除去対策を講じる必要があります.

正常血清でα1分画が消失するのは

著者: 橋本寿美子 ,   M子

ページ範囲:P.1213 - P.1214

問 血清蛋白分画の検査で,病的な患者血清でもないのにα1分画が消失します(1シート20検体中の15検体).セルロースアセテート膜は常光のセパラックスを,測定にはDensitron20Mを使っています.この原因は何でしょうか.(大阪・M子)
答 正常血清をセルロースアセテート膜(以下,セ・ア膜)を用いて電気泳動したとき,α1分画の消失ないし著減が見られた場合は,次の二つの原因が考えられます.①電気泳動用緩衝液を長期間使用した場合,アルブミンとα1分画の分離が悪くなり,α1分画が見られなくなることがある.②染色液による染色性の違い.使用する色素の種類により染色性にかなりの違いが見られ,α1分画が著減することがある.

一検体からの同一菌種・複数菌株分離の場合

著者: 菅野治重 ,   S生

ページ範囲:P.1214 - P.1215

問 一検体から,同一菌種でコロニーの外観や感受性が異なる複数の株が分離された場合の取り扱いと,臨床への報告の方法についてご教示下さい.(岩手・S生)
答 一検体よりコロニーの外観の異なる同一菌種が複数分離された場合,下記の二つの理由が考えられる.

コーヒーブレイク

チグムチョソノコンブハンニダ

著者:

ページ範囲:P.1159 - P.1159

 チグムチョソノコンブハンニダ。今、朝鮮語を勉強している。始めてからもう三年になるが、なかなか難しく、思うように上達しない。
 なぜ朝鮮語を勉強しようという気になったかというと、理由は簡単である。とにかく、英独仏以外の語学がやりたかったのである。できたら、中国語か朝鮮語かロシア語のうちどれかをものにしたかった。あるときたまたま朝鮮語をネイティブとする友人と知り合い、それがきっかけで朝鮮語を勉強することになった。

ワンポイントアドバイス

マイクロタイター法のポイント

著者: 岩田進

ページ範囲:P.1165 - P.1165

 最近では免疫血清検査法は抗原,特に腫瘍マーカーを中心とした生体中の微量成分測定が盛んである.しかも自動化という華やかな面をもっているし「腫瘍」などといういかにも最先端のことをやっているような気分にもなるゆえか,もてはやされている.したがって抗体検査はこのところ影が薄い.時代の流れで仕方もないが,でも免疫検査はこの抗体検出にそのルーツがあることを忘れないでほしいなあ.今でもそれなりの役目を果たしている.その抗体検査だが,主役な何といってもマイクロタイター法である.微量,簡単,都合のよいとき判定,おまけに高価な自動分析機などなくてもりっぱに結果は出せると自慢したいが,半定量で施設間誤差も大きいし,プレートの材質だって差があり,それが結果にも影響する.おまけにプレートの洗いかたによっちゃ変な出かたもする,とまあ弱味もあるわけよ.そこでこのマイクロタイター法で少しでもよい結果を出すためのポイントを一つ.
 マイクロプレートの材質や判定の"目"は仕方ないとしても,洗いかたが悪いと長い間には血清蛋白がプレート面に吸着し感作血球の落ちが悪くなり,本来の陰性像が偽陽性像または陽性像になってしまう.そこでこの洗いかたであるが,まずゴムホースにジョウロの先をつけたものを蛇口につけ,これで判定後のプレートをよーく水洗いする.それから洗剤につけるわけだが,洗剤につけるとき,よく水切りすることがコツである.プレートの孔に水が入ったまま洗剤液に浸すと,洗剤液が孔に入りにくくなり,洗浄効果が上がらず検査結果に影響することになってしまう.洗剤は特にどれでなければというものではないが,できれば蛋白分解酵素が入っているもの,泡ぎれのよいものが望ましい.もちろん最後の水洗いはよーくするよう努めたい.

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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