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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術16巻11号

1988年10月発行

雑誌目次

病気のはなし

感染性心内膜炎

著者: 小林芳夫

ページ範囲:P.1226 - P.1231

サマリー
 感染性心内膜炎は,現在でもなお重要な敗血症の一つである.起因菌は緑色レンサ球菌が主要菌種であることは以前と変わりないが,心臓外科手術の発達とともに表皮ブドウ球菌による本症も増加する傾向にある.
 治療の主役は抗生剤療法であるが,起因菌によっては外科的手術の適応となる症例もある.黄色ブドウ球菌による本症は経過が急激で予後不良のことが多い.

技術講座 生化学

血清ビリルビン分画法

著者: 高阪彰

ページ範囲:P.1242 - P.1246

薬と直接に反応し,アゾジピロールを生成する(直接型ビリルビン).一方,アルコールやカフェインー安息香酸ナトリウム,ダイフィリンなどの反応促進剤存在下では,Bc,BδだけでなくBuもジアゾ化試薬と反応する(総ビリルビン).ジアゾ化試薬としてはスルファニル酸と亜硝酸ナトリウムの塩酸溶液が用いられるが,最近では,用時調製を必要としない安定化ジアゾニウム塩も用いられる.また,生成されたアゾジピロール色素を高感度で安定な状態で測定するために,アルカリ性のフェーリング液を用いるJendrassik-Grof法や,Michaelsson変法が最近ではよく用いられている2,3)

病理

血球と電子顕微鏡2—血液細胞の電顕試料作製方法

著者: 山崎家春 ,   岩坂茂 ,   堤嘉隆 ,   丹下剛

ページ範囲:P.1247 - P.1252

サマリー
 血液細胞における透過型電顕試料作製過程は,基本的には走査型電顕試料や超顕微鏡試料作製方法と同様である.今回は通常行われている試料作製方法,組織化学や免疫電顕試料作製方法をできるだけ簡潔に説明したが,実際に行われている試料作製方法の各過程は,施設によっていろいろくふうがなされている.本稿では,われわれが日常行っている操作に従って,要点および注意点を図示し,通常の組織試料の操作との相違点が理解できるように配慮した.近年,血液分野において検索が増えている血小板ペルオキシダーゼ(platelet peroxidase;PPO)反応について詳しく説明した.最近考案された臨界点乾燥法や国産自動染色装置も紹介した.

生理

ペースメーカー心電図

著者: 三井利夫

ページ範囲:P.1253 - P.1258

サマリー
 ペースメーカー心電図を読むときにもっとも重要なことは,使われているペースメーカーがどのような作動機能を持っているか(機種),出力やパルス間隔をどのように設定しているか(設定条件)をあらかじめ確認することである.
 次に,心電図よりペースメーカーの作動状態が異常であると読んだときに,その異常が緊急処置を要するものか否かを判断することである.このような観点からペーシング中にみられる合併症の心電図を頻度の高いものから順に解説した.

一般

髄液蛋白分析法

著者: 小沢経子 ,   芝紀代子 ,   新井雅信

ページ範囲:P.1259 - P.1263

サマリー
 髄液中の蛋白分析を行うことは,中枢神経疾患やその他の疾患の診断の補助として,有用であることはいうまでもない.近年高感度な銀染色法の出現により,濃縮することなしに,濃度の低い髄液蛋白の分析が可能となった.本稿では日常検査で行われている電気泳動法と銀染色の組み合わせによる髄液蛋白分画法について述べた.またオリゴクロナールバンドなどの特異な蛋白バンドを同定するための免疫固定法についても述べ,髄液蛋白に特有なプレアルブミンやトランスフェリンおよびγ-グロブリン分画の臨床的意義についてふれた.

検査法の基礎理論

モノクローナル抗体の統一化と白血球分類

著者: 佐川公矯

ページ範囲:P.1232 - P.1235

サマリー
 ヒトの白血球の分化抗原の研究は,それぞれの分化抗原に対するモノクローナル抗体が作製されたことによって,飛躍的に進歩してきた.さらに,現在は,これらのモノクローナル抗体は国際的CD分類に基づいて整理・統合されつつある.45種類のCD分類されたモノクローナル抗体を概説し,その応用についても略述した.

生体の物性5—光

著者: 金井寛

ページ範囲:P.1236 - P.1241

サマリー
 生体の無侵襲計測に光が広く使われようとしているが,生体の光学特性にはまだわからない点が多い.中でも,生体の不均質に起因する光散乱については,理論的な解析も実験的な解析も困難である.
 本稿では,まず生体の光学特性を概説し,次に生体の光学特性の一例として血液による光散乱,特に流れの影響について後方散乱光の角度分布の点から検討した.次に指尖の光散乱についての測定結果を示した.ここでは,紙数の関係で可視光に限って説明した.また蛍光を利用した測定やレーザーには触れなかったが,これらの今後の発展が期待されている.

ラボクイズ

〈問題〉細胞診(1)

ページ範囲:P.1266 - P.1266

9月号の解答と解説

ページ範囲:P.1267 - P.1267

マスターしよう検査技術

糞便内原虫検査法—特に赤痢アメーバについて

著者: 宮原道明 ,   真子俊博

ページ範囲:P.1269 - P.1274

 糞便内原虫類の中で特に重要なのは,法定伝染病に指定されている赤痢アメーバの検出と他との鑑別である.本虫の形態には栄養型と嚢子が見られ確実な診断は検査材料の中にこれらを検出することでなされる.しかし,これらの検出は必ずしも容易ではなく,臨床上赤痢アメーバ症の疑いがある場合には,各種の免疫学的検査法が有用である1,2)
 栄養型は糞便(下痢便,粘血便)や膿瘍物などの直接塗抹標本の中に見いだされる.固形便では栄養型が出現しないので,ホルマリン・エーテル法を用いて嚢子を集めてから鏡検する3,4)

やさしい統計のはなし・10

検査の評価

著者: 大橋靖雄

ページ範囲:P.1275 - P.1277

 今回は趣向を変えて,二つのクイズから始めたい.
 問題1 次の図は,a+b+c+d人の集団にある検査を適用した結果である."false-positive(偽陽性)"率の定義はどれか?

検査ファイル 項目

抗ENA抗体

著者: 山田巖

ページ範囲:P.1278 - P.1279

 抗ENA抗体とは生理食塩水やリン酸緩衝食塩水などの等張食塩水により,細胞核から抽出可能な可溶性核抗原(extractable nuclear antigen;ENA)に対する抗体をいう.
 1948年Hargravesらが全身性エリテマトーデス(SLE)患者でLE細胞現象を認めたが,これは抗核抗体(ANF)という自己抗体が原因となり誘発されることを発表し,1957年にはRobbinsら,Seligmanらなどにより抗DNA抗体がSLEに特異的に出現する自己抗体として報告され,さらに1972年にSharpら1)が抗ENA抗体の概念を提唱して以後は,本抗体に対する研究が免疫血清学的あるいは臨床的に注目され,今日では抗ENA抗体についての臨床的意義づけもしだいに確立されてきている.

免疫複合体

著者: 岩谷泰之

ページ範囲:P.1280 - P.1281

 生体は防御機構の一つとして,抗原を抗体,補体の結合により免疫複合体(immune complex;IC)に変形して,赤血球や白血球上のレセプター(補体レセプター,Fcレセプター)を介して肝や脾の網内系によって効率的に体液中から除去している.したがって,ICの存在は自己免疫疾患などの免疫病態にのみ起こる特殊な現象ではない.しかし,生体の免疫異常に伴い量的あるいは質的に変性をきたしたICが形成されると,循環血中に長期に存在することになり,さらに組織への沈着が起こり免疫複合体病を引き起こす原因となる.そこで,組織に沈着するICは血中を循環しているICに由来していると考えられるので,血中のIC測定は免疫複合病の解析を行うために重要となってきた.
 ICの検出,定量法は多岐にわたり50種類以上に及ぶ.いいかえれば標準的な方法がなく,また,ICの多様性を意味している.表1に血中IC測定法を示した.原理的に物理化学的方法と生物化学的方法に大別され,本稿では代表的な測定法を述べる.

試薬

補体

著者: 吉田浩

ページ範囲:P.1282 - P.1283

[1]概略
 血清は殺菌力を有しているが,その作用は加熱非動化(56℃・30分)により失活することが古くから観察された.本因子は赤血球や細菌などと結合した抗体と反応し,溶血や溶菌を引き起こす.当初,本因子は抗体の補助作用を成すものとの考えから補体(complement)と呼ばれた.今日,補体は種々の炎症反応などで重要な役割を担っていることが知られている.
 成分:補体系は多くの成分・因子から成っており,それらの分子量,血清中濃度につき表に示した.正常血清中では不活性の状態で存在し,それには制御因子が関与している.

用語

プロゾーン

著者: 岩田進

ページ範囲:P.1284 - P.1285

[1]プロゾーン現象とは
 抗原と抗体は特異的に反応する点で特徴的である.この反応が効率よく進むためには,いくつかの条件が必要である.その一つに抗原と抗体の量的な条件がある.両者の量が極端にアンバランスの場合,本来起こるべき反応が抑制されたり,時には見かけ上まったく起こらなかったりするような現象を呈する.この現象をプロゾーン(prozone;前地帯)と呼んでいる1)

国家試験対策室

生化学

著者: 阿部喜代司

ページ範囲:P.1286 - P.1289

出題分野と出題傾向
 過去5年間の国家試験の出題傾向を見ると,もっとも高頻度で出題されているものの第一は,「生体物質」に関するもの(物質名,構造,機能)で,全問題の30%に及び,毎年一定の比率である.低分子(アミノ酸,単糖類,二糖類,脂肪酸,ヌクレオチド,コレステロールなど)と高分子(核酸,蛋白質,多糖類,脂質)に分けて知識を整理しておくとよい.第二の出題分野は「代謝」で,年々微増の傾向を示し,現在,全体の約24%を占める.解糖および糖新生系,TCAサイクル,脂質の合成と分解系,グリコーゲン合成と分解系,そして尿素サイクルとアミノ酸代謝系の基礎的なところをしっかりとおさえておきたい.第三は,酵素に関する出題で全体の約18%で,毎年ほぼ一定の比率で出題されている.反応速度論関係,酵素名と基質および補酵素,酵素の分類および分布などの出題が多い.その他,ホルモン,ビタミン,血清成分,臓器,細胞内構造物,エネルギー関連などからよく出題されている.
 次に各分野の知識をまとめるための問題を中心に,少々各論的に整理してみよう.

検査技師のための新英語講座 English for Medical Technologists・10

辞書

著者: 今井宣子 ,  

ページ範囲:P.1290 - P.1291

先輩技師:中学で英語を始めてからこれまでに辞書を10冊ぐらい使ってきましたが,そのうち2〜3冊を使いつぶし,新しい版のものに買い替えました.あなたの辞書には紙きれがたくさん挟んであるようだけれど,それは何ですか?
英文編集者:辞書の間違いや問題のあるところに目印のためにこれを貼ってあるのです.

ザ・トレーニング

ミクロショックとマクロショック

著者: 堀川宗之

ページ範囲:P.1292 - P.1295

 問題1 ミクロショックとは何か.マクロショックとの違いも述べよ.
解答と解説
 心腔内や心臓の近くに挿入されたカテーテルや電極と体表との間に漏れ電流が流れ,この電流が直接心臓を刺激して心室細動を起こすような電撃(感電ショック)を,ミクロショックという.ミクロショックは,心臓カテーテル検査の際,血圧や血流測定用に血管内にカテーテルやプローブを挿入する場合,あるいは心腔内心電図,ヒス束電位図,食道誘導心電図を記録する目的や体外式心臓ペースメーカーで電極を体内に留置する場合に起こりうる.電流が手から手といったように体表から体内に流入し別の体表から再び体外に流出する場合も,皮膚がビリビリしたり,筋肉が強縮したり,さらに強い電流では電流の一部が心臓を刺激して心室細動を誘発したり,呼吸筋麻痺,火傷を起こしたりすることがある.このように皮膚を通して電流が流入・流出して起こる電撃を,マクロショックと呼ぶ.マクロショックは病院のみならず家庭や工場などでも起こる.

トピックス

フリーラジカル

著者: 山崎昇

ページ範囲:P.1296 - P.1297

 生体内で代謝過程において反応する分子または原子中の電子は,通常2個ずつ対(pair)を成しており,互いに相手の磁気モーメントを打ち消し合うように組み合わさっている.しかしながら,生体内の化学反応系においてもしばしば,最外殻電子軌道上に不対電子(unpaired electron)を持った中間生成物,すなわちフリーラジカル(free radical)が生成することが知られている.
 最近,図1のごとくフリーラジカルと細胞傷害,特に脳虚血,心筋虚血/再灌流,放射線障害,炎症,発癌,加齢などの病態におけるフリーラジカルの作用が注目されており,フリーラジカルが引き起こす細胞傷害を防止し,治療の目的でフリーラジカル消去剤(free radical scavenger)の探求が進められている.

ポジトロンCTと局所脳循環代謝測定

著者: 上村和夫

ページ範囲:P.1297 - P.1298

 最近,X線CTやMRIなどの進歩により,臓器,特に脳の形態の変化は,あたかも解剖学の図譜に見るように写し出せるようになった.ところで脳は,生きて行くための情報の中枢をつかさどっているが,そこでは局所的にさまざまな機能分化があり,またおのおのの情報の統合がなされている.脳の疾患の中には形の変化を伴わぬ場合も少なくなく,病的情報を正確に把握するには,脳では局所の機能的・生化学的変化をとらえることが非常に重要である.
 ポジトロンCT(PET)とは,短半減期陽電子(positron)放射同位元素(RI)で標識されたトレーサーの生体内濃度分布を,CTの技術で体外から三次元的に測定し画像として表示する方法であり,X線CTなどが臓器の形態を見るのに対し,PETは生体局所の生化学的ないし生理学的現象を見るものであり,生化学的・機械的CTといえる.また,実験的方法であるautoradiographyに対して,PETはin-vivo autoradiographyとも呼ばれる.PETは現在,脳の測定にもっともよく使われており,脳組織の局所血流量や代謝量の測定,それに最近では神経伝達物質受容体のイメージングにも利用されている.

白血病への免疫療法の適用

著者: 押味和夫

ページ範囲:P.1298 - P.1298

 白血病に対しこれまでに試みられたか,今後試みられる可能性のある免疫療法を列記する.
 A.特異的免疫療法
  1)受動的免疫療法
   モノクローナル抗体,キラーT細胞
  2)能動的免疫療法
   白血病細胞
 B.非特異的免疫療法
  1)受動的免疫療法
   LAK(lymphokine-activated killer)細胞
  2)能動的免疫療法
   種々のサイトカイン(特にインターロイキン2,インターフェロン,TNF),BCG,OK-432,レンチナン,レバミソール,ベスタチン

β-ラクマターゼ阻害剤

著者: 西野武志

ページ範囲:P.1299 - P.1299

 ペニシリンやセファロスポリンなどのβ-ラクタム抗生物質に対する耐性機構としては,①細胞壁外膜の透過性,②β-ラクタマーゼに対する安定性,③ペニシリン結合蛋白質に対する親和性の三つが知られているが,臨床的に分離されるβ-ラクタム抗生物質耐性菌の多くは,β-ラクタマーゼを産生することにより耐性を獲得している.現在,臨床的に分離される分離菌の約35〜40%がβ-ラクタマーゼを産生することが報告されている.
 このβ-ラクタマーゼを最初に発見したのはAbrahamらであり,彼らは1940年にペニシリン耐性の大腸菌からペニシリンを加水分解する酵素を発見し,これをペニシリナーゼ(PCase)と名づけた.その後多くのβ-ラクタマーゼが発見され,分類されているが,三橋らはβ-ラクタマーゼをその基質特異性よりPCase,セファロスポリナーゼ(CSase),オキシイミノセファロスポリナーゼ(CXase)の3群に分類している.PCaseはペニシリン系薬剤を,CSaseはセファロスポリン系薬剤を,またCXaseはオキシム型セフェムをよく加水分解する.

Antimicrobial Removal Device(ARD)

著者: 安達房代

ページ範囲:P.1300 - P.1301

 敗血症,菌血症の診断には血液培養が不可欠であり,臨床上問題となるのはその細菌学的診断と迅速な抗生物質の投与である.本来,血液培養は抗生物質の投与前に行うのが原則であるが,日常抗生物質投与中にもかかわらずやむをえず血液培養を実施することが多い.その際,血中からの起因菌の検出が抗生剤の影響で妨げられることが考えられ,臨床上重要な問題点となっている.そこで,血液中の抗生物質を除去することによって起因菌の検出率の向上を図り,さらに血中細菌を検出するまでの時間を短縮することを目的にして開発されたのが,Antimicrobial Removal Device(以下,ARD)である.
 ARDは,Melnick1)とWallisによって考案されて栄研化学から販売されている(価格は1バイアル2500円).ARD容器には,2種類の樹脂,アンバーライトXA D-4(重合体吸着樹脂)とC-249(陽イオン吸着樹脂)が含まれている.この樹脂の組み合わせにより検体血液から抗生剤が除去されるが,血中微生物の増殖は妨げられない.この2種の樹脂は,凝血を妨ぐためのsodium polyanethole sulfonate(SPS)を含んだ生理食塩水に浮遊させてある.ARD処理(方法は図に記す)により血液中から抗生剤が非常に効率よく除去されることはLindseyら2)の報告でも明らかにされている.ARDにより除去可能とされている抗生剤は表1に記すとおりである.

学園だより

埼玉県立衛生短期大学衛生技術学科

著者: 杉原俊明

ページ範囲:P.1264 - P.1264

■沿革および入学試験 1975(昭和50)年4月,埼玉県浦和市の荒川に近い上大久保に,県立衛生短期大学が設立され,臨床検査技師養成を目的とした衛生技術学科が,1学年40名,3年制で発足した.
 当時は,看護学科のみの併設であったが,1981(昭和56)年4月,保育学科,歯科衛生学科,専攻科(保健婦,助産婦)が増設され,学生総数680名と拡大され,今日に至っている.

けんさアラカルト

尿検査のリアルタイム処理システム

著者: 菊池春人

ページ範囲:P.1265 - P.1265

 最近,一般検査の領域でもコンピューターを用いて新しい検査システムをつくっていこうとする動きが盛んである.こういったコンピューター利用の大きな利点として,検査依頼・結果といった情報を即座にいろいろな部署に伝えることが可能であり,その情報をそれぞれの部署で利用する形に変えることができるということがある.このような長所を活用して検査システムをつくることができれば,外来患者の即時尿検査処理,つまり外来診察前,診察中に採取された尿検体の分析を即座に行い結果報告を行うことも,効率よく行うことができる.その一例として当院外来検査室で昨年5月から用いているシステムを紹介する(図参照).
 1)検査依頼:検査の依頼は診察室にあるコンピューター端末から医師によって行われ,依頼内容は病院ホストコンピューターに記録される.

けんさ質問箱

血清分離の際の凝固促進剤の影響

著者: 赤尾昌文 ,   藤巻道男 ,   M生

ページ範囲:P.1302 - P.1303

問 ヘパリン療法のとき,何十分〜何時間とたたないと血液が完全に凝固せず,不十分な凝固状態で血清分離を行うとフィブリンの析出があるので,自動分析機で測定する場合,いつ障害が起きるか不安です.この際,トロンビンなどの凝固促進剤を添加して血清分離を行い測定してもよいのでしょうか.また,これによって影響を受ける検査項目があればお教えください. (兵庫・M生)
答 全血から血清と血餅成分に分離する操作は,検査前の作業として不可欠なものであり,しかも検体の増加の著しい現在,血清分離作業の簡略化,迅速化,省力化が必要とされ,種々の血清分離剤が利用されるようになっている.

病院はアースされているか

著者: 小野哲章 ,   S子

ページ範囲:P.1303 - P.1304

問 私は上司の一人から,「最近の病院は病院自体がアースされているから,いちいちアースしなくてもよい」といわれ,生理検査室は別として,実際にポータブルでは交流が入るとき以外アースしていません.しかし,本誌1月号のザ・トレーニング「医療機器の接地」を読み,安全対策としてのアースの役割を思い出し,不安になりました.上司のいうことはほんとうなのでしょうか.(大阪・S子)
答 結論から先に答えよう.上司はアースの役目やしくみを誤解している.アースは個々の機器ごとに,それぞれ確実にとるべきである.以下に,その理由とアースの実際を説明しよう.

ズダンブラックBは骨髄系のマーカーか

著者: 朝長万左男 ,   H生

ページ範囲:P.1304 - P.1305

問 ズダンブラックB(SBB)染色は,顆粒球系,単球系で陽性,リンパ球系で陰性とされていますが,SBB陽性の急性リンパ性白血病があると聞きました.どのように解釈したらよいのでしょうか. (秋田・H生)
答 急性白血病の病型診断は,AMLとALLの治療薬剤がかなり異なる現状からすると,依然きわめて重要な課題である.FAB分類においては,ミエロペルオキシダーゼ(MPO)とズダンブラックB(SBB)の両者がAML診断のための細胞化学的方法として採用されており,いずれかで3%以上陽性のとき,AMLとすることになっている.3%以上とするのは,ALLにおいても残存する正常骨髄芽球をMPO陽性と判定することがあり,そのための安全弁的措置である.

常在菌に関する報告書の出しかた

著者: 小栗豊子 ,   M子

ページ範囲:P.1305 - P.1306

問 私の職場では初期培養の菌量を,検体塗り始めのところのみ:+,塗り始めのところから中央まで:++,塗り終わりまで:+++と3通りに分けて結果を報告しています.髄液や胸水など本来無菌の部位から菌が生えた場合は感染症を疑いますが,痰や便など常在菌でも人により+〜+++とさまざまである場合は,どう解釈し報告するのでしょうか. (静岡・M子)
答 検査材料を分離した培地の菌量の表示のしかた,常在菌の報告のしかたについての質問ですが,いずれも検査担当者の間では異論の多いところです.次のような点について考えてみたいと思います.

学会印象記 第37回日本臨床衛生検査学会

シンポジストの大役を引き受けての参加

著者: 三浦利彦

ページ範囲:P.1268 - P.1268

 第37回日本臨床衛生検査学会は,1988年7月16,17日の両日,赤木博實氏(甲南病院)を学会長として神戸市で開催されました.例年は4月下旬から5月にかけて開催されてきましたが,今回は第18回IAMLT学会総会とのジョイントのため,7月に開催する運びとなりました.
 私はシンポジストという大役を引き受けておりましたので,いつもと違った心境で参加することになりました.指名を受けてから約1年間実験を行ってきましたが,何度か方針を変更しなければならない事態に陥りました.実験が終わったのは2週間前で,発表用のスライドができ上がったのは1週間前でした.

ワンポイントアドバイス

細菌検査の機械化について

著者: 菅野治重

ページ範囲:P.1231 - P.1231

 自動化がもっとも遅れていたと思われる細菌検査の分野でも,最近は機械化の動きが激しくなってきた.現在の細菌検査は,塗抹検査,分離培養,同定検査,感受性検査の四つの検査から成り,現在,機械,試薬製造メーカーがもっとも熱心なのは同定検査の機械化である.細菌検査の機械化で個人的にもっとも期待する点は,治療に必要で十分な情報を迅速に臨床側に提供することである.考えてみると主治医として検査に要求することは,まず患者の疾患が感染症か否かであり,感染症であれば,細菌性,ウイルス性,真菌性等の病原微生物のおおまかな分類である.現在の強力で広域性の抗菌剤の使用を前提とすれば,細菌性と判明するだけで治療はかなり確実に行える現状にあり,同定はむしろ確認の意味が強い検査になっている.また機械化により検査精度が向上するという意見もあるが,検査の方法が異なり,現在は各検査室の同定レベルも大きく異なるため,同定精度の単純な比較はできない.実際,従来より熱心に同定検査を行ってきた検査室ほど機械化には消極的なように見える.むしろ検査技師の交代が頻繁な検査室や,新人の技師の多い検査室が,同定精度維持のため機械化に積極的なようだ.このようにおのおのの検査室の事情により機械化の必要性が異なる点を認識する必要がある.時代の流れとして機械化は避けられない以上,むしろこの際に従来の細菌検査の流れを変えるような総合的なシステムの開発が期待される.それは感染症の治療を最優先させ,治療に必要な情報を迅速に臨床側へ返すことに徹した検査法の開発である.特に同定検査は治療を前提とした迅速化のために,抗菌剤側から適応菌種を臨床的に分類してもよい時機にきていると思われる.

コーヒーブレイク

日本の医学および医療

著者:

ページ範囲:P.1246 - P.1246

 ロンドンに行くたびに、イギリスでは自然発生的に病院ができて、それが自然に医科大学となったということを実感として感じとることができる。フレミングがペニシリンを発見したセントメアリー病院医学校、サマセットモームが学んだセントトーマス病院医学校、ホジキン病のホジキンのいたガイズ病院医学校、血液循環を発見したウィリアム・ハーベーで有名なセントバーソロミュー病院医学校など、ロンドン大学医学部に属する医学校にはそれぞれ病院の名がついている。このような事実はいかにも自然な感じがして、イギリスは医学の上でも先進国であるという重みが感じられる。
 振り返ってわが国の医学を考えてみると、その後進性が明らかである。日本は最初イギリス医学を取り入れる予定であったが、相良知安らの考えによりドイツ医学を取り入れたため、日本の医科大学は御上により無理矢理にドイツ流に作られたと考えられる。そのやり方は大学を作ってから病院を作るというやり方であったと思われる。それは大学付属病院が長い間、権威の象徴とされてきたことからも、うかがい知ることができる。最近、日本でも数は少ないが、大学の付属ではない立派な病院や研究所ができて、これらが日本の医学の指導的立場に立つようになってきたことは、西洋医学に目ざめてから百年以上たった成果であると思われる。一方、国立大学では公務員の定員削減政策のため、削減されてはならない定員までが削減されている。このような状況では、国立大学医学部および病院は今後ますます衰退し、現代医学および医療の進歩からとり残されることが危惧される。そろそろ日本でも、われわれ国民に根ざした独自の医学および医療が自然発生的に生まれてきてもよいのではあるまいか。

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読者のひろば

著者: 佐藤義一 ,   橋本さち子

ページ範囲:P.1307 - P.1307

●簡易脳解剖装置作製の試み
 はじめに
 1988年4月までの過去14年間における当院での解剖総数1416例のうち,脳のみの解剖は254例で,全体の約18%を占めている(最低年で11%,最高年で29%).
 ところで,われわれはこれまで,脳のみの解剖も全身解剖と同様の方法で行ってきたが,脱衣と着衣,剖検終了後の清掃などのために結局全身解剖とほとんど変わらぬほどの時間を要していた.そこで,遺体は無論,解剖室をも不必要に汚すことなくより短時間のうちに脳のみの解剖を終える目的で,次のような簡単な脳解剖装置を考察し,50例ほどに使用してきたが,予想以上の効果を上げることができたので報告する.

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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