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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術16巻6号

1988年06月発行

雑誌目次

病気のはなし

ブランハメラ感染症

著者: 渡辺貴和雄 ,   中山隆英 ,   松本慶蔵

ページ範囲:P.488 - P.493

サマリー
 ブランハメラ感染症は,Branhamella catarrhalisによって起こる感染症である.本菌感染症は1980年以降,呼吸器感染症を中心に急速に増加しているが,近年,世界的にも中耳炎,髄膜炎,感染性心内膜炎などのほか臓器感染症の報告例なども増加している.本菌は,今日では口腔内常在細菌の一つとしてとらえるべきものではなく,肺炎球菌,インフルエンザ菌と同様に普遍的病原菌と考えるべきである,現在,病原性を発揮している本菌は約90%のβ-ラクタマーゼ産生率を有している.本菌は決して分離・同定の困難な細菌ではなく,また喀痰のグラム染色で容易に本菌感染症の推定ができ,かつ適切な化学療法の必要な疾患である.

技術講座 生化学

標準血清の標準値の決定法—コレステロールについて

著者: 依田淳子 ,   梅本雅夫

ページ範囲:P.507 - P.510

サマリー
 現在,血清中成分濃度の正確度の尺度として各施設では管理血清が用いられている.しかし,これらの管理血清においては正確さは保証されておらず,単に精度管理の指標にすぎない.
 ここでは,血清成分のうち,肝実質障害,甲状腺代謝異常の鑑別診断に役だち,成人病対策の一環として大きな役割をもつコレステロールについて,原理的にもっとも正確で高精度な分析方法の一つである同位体希釈質量分析法について検討したので述べることにする.

細菌

レンサ球菌の分類

著者: 江崎孝行

ページ範囲:P.511 - P.515

サマリー
 レンサ球菌の分類は今,大きく変わろうとしている.従来の溶血性と血清群を重視した検査方法では,すべてのレンサ球菌を正確に同定することはできない.したがって,レンサ球菌を同定する立場の人が新しいレンサ球菌の分類を理解し,従来からの同定方法を再検討することが期待される.

輸血

赤血球抗体検査—不規則抗体スクリーニングを中心として

著者: 加藤俊明 ,   関口定義

ページ範囲:P.516 - P.521

サマリー
 赤血球不規則抗体の検出は,輸血副作用の防止と不適合妊娠による新生児溶血性疾患の診断などに広く行われており,患者の生命と安全を守る重要な検査である.このため,各種抗体の血清学的性状と臨床学的意義を十分に熟知し,各種検査法を組み合わせながら各種抗体を検出し,同定することが重要である.
 今回,日常的に実施可能な不規則抗体スクリーニングの方法を中心に,実施上の注意点と日常的に検出される抗体の種類および反応性について記述する.

一般

尿沈渣の見かた3—血球成分

著者: 杉原千鶴子

ページ範囲:P.522 - P.527

サマリー
 尿中に排泄された赤血球,白血球はpH,比重,浸透圧など尿中の環境によって種々に形態が変化する.また赤血球は薬剤によっても,化合物と血球のもつ電荷に関係してechinocyte(うに状赤血球)になる場合,反対にstomatocyte(口状赤血球)になる場合がある.近年,特に注目されてきている糸球体出血を示唆する赤血球の形態は,コブ状の突出やねじれ形など多彩な形態を示す.一方,白血球は尿路感染症時の指標として重要であり,貧食,走化性を有するため花弁状や,時にはダイナミックに伸展した形を見ることがある.これらと尿中に混在して類似形態を示す他の成分との鑑別について述べ,最後に尿沈渣の保存について筆者の経験を付記する.

検査法の基礎理論

臨床検査における標準物質の組み立てと活用

著者: 桑克彦

ページ範囲:P.495 - P.500

サマリー
 臨床検査に用いる標準物質は日常検査法による測定値に信頼性をもたせ,臨床的に有用な値につなげていく道具である.
 標準物質には目的成分の保証値がついており,これは必ず技術的に妥当な方法によって公的の機関により実施される.そして内容について保証した文書がついている.この文書の指示に従って日常検査の測定値を維持していくと,そのデータは施設内外を問わず同じ尺度で使うことができる.このことにより初めて,臨床検査値は真に医療情報としての効果を発揮する.

生体の物性3—機械的特性

著者: 斎藤正男

ページ範囲:P.501 - P.505

サマリー
 生体の機械的性質は,いろいろな現象に関係する.外傷による組織の破壊は直接的な現象であるが,病変や加齢による性質の変化などを診断に利用することがある.また超音波画像,循環の計測,環境問題などについての種々の技術をよく理解するためには,生体の機械的性質の知識が重要である.状況によって,生体には静的な力(周波数0)から,数MHzの超音波に至るまで,広い範囲の周波数の機械力が加えられる.生体の機械的性質は,これら力の周波数によって著しく異なる.

ラボクイズ

〈問題〉細胞診

ページ範囲:P.528 - P.528

5月号の解答と解説

ページ範囲:P.529 - P.529

マスターしよう検査技術

穿刺液の一般検査

著者: 稲垣清剛

ページ範囲:P.531 - P.536

 穿刺液とは針を用いて採取された体液で,通常,胸水,腹水,心嚢水,脳脊髄液,関節液,羊水,そして嚢腫内液などをいう.これら穿刺液に対しては物理的,化学的,細胞学的な検査を行う.ここでは胸水,腹水について述べる.
 胸腔,腹腔は正常では水は貯留しておらず,例えば腹腔内では健常者はせいぜい20〜50mlしか存在していない1).一方,貯留した場合,それが濾出液か滲出液かを知ることは重要で,それぞれ非炎症か炎症や悪性腫瘍が関与している場合が多く,これらを鑑別するために数々の検査を行う.検査項目としては外観,比重,蛋白定量,リバルタ反応,ルネベルグ反応,細胞数,細胞種類,細胞診,細菌検査,ブドウ糖定量,LDHおよびアイソザイム,アミラーゼ,LAP,CEA,そしてAFPなどが主である.一般検査で行う各検査の標準化も叫ばれている中2),今回は外観,蛋白定量,リバルタ反応,細胞数算定および細胞種類について解説する.なお,採取については通常技師は行わないので,採取法に関しては省略する.

検査ファイル 項目

リポ蛋白—特に分画法を中心に

著者: 清島満

ページ範囲:P.538 - P.539

[1]リポ蛋白の分画法とその原理
 リポ蛋白はその比重,分子サイズ,電荷の差などにより数種類に分類され,その分画法もその性質の差を利用して種々の方法がある(表).この中でも,Gofmanらが確立した超遠心法がリポ蛋白分画のもっとも基本となる方法であり,これによってカイロミクロン,VLDL(超低比重リポ蛋白),IDL(中間比重リポ蛋白),LDL(低比重リポ蛋白),HDL(高比重リポ蛋白)に分類されている.しかし,この方法はその分画に多くの日数を要するため,一般の臨床検査では電気泳動法と沈殿法がよく利用されている.

尿中酵素

著者: 入江章子

ページ範囲:P.540 - P.541

[1]はじめに
 尿中には生理的および病的状態で多数の酵素が検出される.尿中酵素は血清酵素とは少し違った由来や特性を持ち,そのため種々の問題点も派生している.しかし,尿中酵素は血清酵素からは得られない情報を与えてくれることも事実で,その進展が期待される分野である.

機器

多点測光データの免疫比濁分析法への応用

著者: 松田貴美子

ページ範囲:P.542 - P.543

 免疫比濁法(turbidimetric immunoassay;TIA)では,まず水溶液内で,可溶性の抗原(被検物質)と対応する抗体が特異的に反応して混濁を生ずる.次いで,この混濁によって起こる透過率の減少が測光されて,被検物質の濃度が測定される.日常検査において,本法は免疫グロブリンをはじめ補体成分や各種血漿蛋白成分の測定に利用されている.しかし,測定法としては,従来の臨床化学検査の項目と異なり,検量線が直線にならないこと,また,その形状が被検物質の種類によって異なること,さらにプロゾーンや異常反応の検出と対応などの問題点が指摘されている.
 これらの問題点を解決する一つの方策として,反応過程における多点測光方式の応用1)が考えられる.すなわち,この方式により得られる測光データに,回帰分析とデータ処理システム2)を適用すると,適正な標準曲線の作成,測定範囲の拡大,プロゾーンあるいは異常反応の検出が可能になる.ここでは,TIA法による免疫グロブリン測定の事例を取り上げ,検討して得た成績を中心に解説する.

用語

人工知能

著者: 櫻井昇

ページ範囲:P.544 - P.545

 人工知能あるいはartificial intelligence(AI)という言葉は,現在,ずいぶんとポピュラーなものになってきた.医学界でも同様で,臨床診断・治療方針決定などへの利用を研究している人も多い.検査医学分野でも,病態解析,自動診断など話題は尽きない.
 以下で,《人工知能》の概念とその適応分野について解説し,その実状について理解を深めていただこうと思う.続けて,人工知能の一分野であるエキスパートシステムとして有名なMYCINについて,その誕生の歴史を述べる.このことで,医学,とりわけ検査医学が人工知能に果たした役割りの大きさが明らかとなろう.

検査技師のための新英語講座 English for Medical Technologists・6

抄録中の単語数の数えかた

著者: 今井宣子 ,  

ページ範囲:P.546 - P.547

先輩技飾:前回,私たちは題名や抄録の長さについて話をしました.日本語の場合は専用の原稿用紙があるので,論文の長さを知ることは簡単です.しかし,英語の場合は自分で単語数を数えなければなりません.例えば,相関係数r=0.887や,回帰式log y=1.13 log. x-0.59はいくつの単語に数えるのですか?
英文編集者:英語の単語の数えかたについての規則は,私は見たことがありません.私は自分で簡単な規則を作ってそれを使っています.その前後にスペースがあれば全部1個と数えるのです.equals,plus,minus,timesを表す記号などの数学演算記号の前後にはスペースが必要です.それで,r=0.887は三つに数えます.log yはlogとyの間にスペースを空けて書かれているのを教科書で見たことがあります.あなたが例に示した回帰式は,私の数えかたでいけば8個の単語となります.

トピックス

電気伝導度法による尿中塩分測定法

著者: 林貞夫

ページ範囲:P.549 - P.550

 尿中塩分濃度,特にNaCl濃度は塩分摂取量を推測するうえで非常に重要であり,高血圧症,循環器疾患,腎疾患などにおける塩分摂取のバロメーターとなる.その測定方法としては炎光光度法,電量滴定法,ISE法などがあるが,いずれも検査室での測定機器であり,患者が簡単に測定を行うことは不可能である.そこで電気伝導度から尿中の塩分濃度を測定する方法1)について紹介する.
 この装置は食事中の塩分濃度,例えばみそ汁中の塩分濃度を測定する目的で用いられているものである.筆者が検討を行ったシナール塩分濃度計(製造:メルバブ,販売:シナールメディカル)は,大きさが横71.3×縦172.3×高さ32.8mm,重量約220gの本体と直径18×長さ152mm,重量約60gのセンサープローブで構成されており非常にコンパクトで,電源も006P乾電池1個と持ち運びが自由である.測定操作は,センサープローブを試料に浸し表示が安定したところの数値を読み取るだけの簡単なものであり,試料温度が0〜50℃の範囲内で自動温度補正機能がついている.また較正方法としては,自分でNaCl水溶液を調製してチェックする方法と,プローブに記載された数値に表示値を合わせる簡易的な方法があるが,簡易的な方法で十分に使用可能である.

紅斑熱リケッチア症

著者: 内田孝宏

ページ範囲:P.550 - P.551

 リケッチアは宿主細胞内でしか増殖できない(偏性細胞寄生性)グラム陰性細菌である.分類上リケッチア属は発疹チフス群,紅斑熱群,つつが虫病群に分けられる.
 わが国のリケッチア症にはつつが虫病が古くから知られているが,発疹チフス群の発疹チフスは終戦直後の発生以来まったくなく,発疹熱も近年では発生の報告はない.紅斑熱群のリケッチア症は,最近までわが国には知られていなかった.ロッキー山紅斑熱は南北アメリカ大陸に限られ,ボタン熱(地中海紅斑熱)は地中海沿岸やアフリカにみられ,シベリア・マダニチフスはウラル山脈東部のアジア大陸にあり,ニュージーランド・マダニチフスはオーストラリア大陸に限局している.紅斑熱の媒介節足動物(ベクター)はマダニで,またマダニの体内では病原体は卵にも入り子孫に伝わる(経卵伝播).したがって,マダニは病原体保有動物でもある.ノネズミ,リス,ウサギ,イヌが感染するが,ヒトも感染する.このほか,紅斑熱群にはイエダニをベクターとするリケッチア痘(水痘に似た症状)があり,これは極東および北アメリカ大陸東部にみられた.

メチシリン耐性ブドウ球菌におけるペニシリン結合蛋白

著者: 生方公子

ページ範囲:P.551 - P.552

 最近,大規模な病院になるほど,多くのβ-ラクタム系薬剤に耐性を示す黄色ブドウ球菌の割合が増加してきている.本菌は,メチシリンをはじめとするペニシリナーゼ耐性のペニシリンや第一世代から第三世代のセフェム系薬剤に耐性を示すが,最初の報告がメチシリン耐性という言葉を用いていたために,この種の菌はメチシリン耐性ブドウ球菌(MRSA)と呼ばれ,感性菌の場合にはメチシリン感性ブドウ球菌(MSSA)と呼んでいる.
 そもそも,MRSAはメチシリンがヒトに投与され始めた数年後にすでに分離されているが,その耐性機構については薬剤を不活化する耐性ではないという事実以外は,あいまいな点が多かった.しかしながら,1970年代の半ばになり,細菌の細胞壁合成に関して,その網目状構造をしたペプチドグリカンを合成する酵素を14C-ベンジルペニシリンを用いて検出できる手法が考えられると,その手法を用いてMRSAとMSSAとにおける違いが検索された.ちなみに,14C-ベンジルペニシリンを結合させることによって検出することから,それらの酵素はペニシリン結合蛋白(penicillin-bindingprotein)と呼ばれている.

補体の遺伝性

著者: 高橋守信

ページ範囲:P.552 - P.552

 補体は20種以上の血清蛋白と,6種以上の膜蛋白(補体レセプターや補体調節膜蛋白)から成る反応系の総称である.これら蛋白は協同して,生体防衛反応やアレルギー反応に働いている.
 補体蛋白の多くは主として肝臓で産生されている.個々の補体蛋白は別々の遺伝子によって支配されているが,補体第2成分(C2),B因子,それに補体第4成分(C4)の遺伝子は,ヒトでは第6染色体のHLA遺伝子の近くにまとまって存在している,実はC4は2種類のタイプ(C4AとC4B)から成り,普通のヒトは両方とももっている.C4AとC4Bは相接した二つの遺伝子(C4AとC4B)によって指令されている.補体第3成分は,ヒトでは第19染色体上に存在する.それ以外の補体蛋白ではどの染色体上に存在するか,というのはわかっていない.ただ興味深いのは,補体を調節する機能をもつ血清蛋白(H因子,C4結合蛋白)と膜蛋白(CR 1)の遺伝子群が,同じ染色体の近接した領域に存在していることである.

やさしい統計のはなし・6

2変数間の関連

著者: 大橋靖雄

ページ範囲:P.553 - P.555

 一つの対象に関して複数の測定項目が計測されているとき,二つの項目(変数あるいは変量)間の関連を調べる方法を述べよう.変数が3個以上ある場合に,それら相互の関連を調べる方法は多変量解析と呼ばれ,データの型や目的に応じてさまざまな手法が考えられている.しかし,高度な解析を適用する前に,まず1変数ごとに分布を吟味し,続いて2変数ごとに変数間の関連を調べることが,データ解析の基本である.

ザ・トレーニング

血清カルシウムの異常

著者: 大久保滋夫 ,   大久保昭行

ページ範囲:P.556 - P.559

血清カルシウムの異常
 血清カルシウムは電解質検査の中でも,重要な項目の一つです.それは血清カルシウムのうちイオン化しているカルシウム(Ca2+)の濃度の変化が細胞機能に影響して,細胞膜透過性,心拍動,神経筋の興奮性,酵素活性など,重要な生理活性の異常に結びつくからです.通常,血清カルシウムの濃度は8.6〜10.0mg/dl(4.3〜5.0mEq/l)と,きわめて狭い範囲内に保たれています.血清カルシウム値に異常が見られた場合,生理的にはイオン化カルシウム濃度が変化しているかどうかを知ることが重要です.今回は,この血清カルシウムの異常について,イオン化カルシウムを含めてトレーニングを行います.

けんさアラカルト

臨床検査技師の人間的交流について

著者: 中尾義喜

ページ範囲:P.506 - P.506

 私たち臨床検査技師は「心と体の病に苦しむ人達の速かな健康回復と社会復帰ならびに病気の予防」を目的とする,まさに「人間と社会」をテーマにする職業です.
 この医療理念を実践する手段として,各種の検査技術,検査方法や検査システムが存在するわけですが,これらに血を通わせ真に患者(国民)に役立てるためには,患者自身あるいは医師をはじめ他の医療従事者だけでなく行政,企業などあらゆる分野の人たちの見識ある声を聞く耳と機会を持つことが肝要です.これは交流そのものであり,コミュニケーションでもあります.

学園だより

新潟医療技術専門学校臨床検査技師科

著者: 池村謙吾

ページ範囲:P.530 - P.530

■沿革
 本校(校長・宮村定男)は1971年4月,厚生省指定の臨床検査技師養成校(人学定員;発足時40人,翌年から80人)として発足した.新潟工業短期大学('68年開学)および新潟薬科大学('77年開学)とともに,学校法人新潟技術学園('67年設立)に所属している.
 本校は開校から16年と歴史は比較的浅い.しかし,教職員をはじめとする関係者の努力が実って,今日では教育内容はきわめて充実した.また,設備,機器類は指定基準を大幅に上回るほどに整備され,専任教員も発足当初の4人から16人にまで増員されるなど着実に発展を続けている.

けんさ質問箱

創傷治癒におけるXIII因子の役割

著者: 小池克昌 ,   池松正次郎 ,   S生

ページ範囲:P.560 - P.560

問 創傷治癒におけるXIII因子の役割についてお教えください.またXIII因子低下の疾患特異性についてもご教示ください.(島根・S生)
答 XIII因子は活性化されると,血液凝固反応の最終段階で生じた可溶性フィブリンをさらに物理的,化学的に強固な凝血塊とするために,ブイブリン分子間にイソペプチド結合から成る分子間架橋(crosslink)を形成させる役割を負っている.この反応はXIII因子のトランスグルタミナーゼ活性によるもので,その作用はフィブリン間の結合だけではなく,コラーゲン,細胞膜表面や血漿に存在するフィブロネクチン,α2-プラスミン・インヒビターなども基質としてイソペプチド結合を形成することが知られている.

R-R間隔の意義

著者: 武者春樹 ,   H子

ページ範囲:P.561 - P.561

問 心電図のR-R間隔について,正常値,また値の高値の臨床的意義をお教えください.(鳥取・H子)
答 心電図R-R間隔は,心拍数の測定や不整脈の診断に用いられており,また心電図R-R間隔変動測定は,自律神経,特に副交感神経機能の指標として近年用いられるようになってきました.本文では,心電図R-R間隔変動測定による自律神経機能に関して述べることにします.

尿白血球試験紙法の偽陽性

著者: 末廣雅也 ,   N子

ページ範囲:P.562 - P.563

問 尿白血球試験紙法の偽陰性反応の原因についてはいくつかの報告があるようですが,偽陽性反応については報告が見当たりません.偽陽性反応の原因で,明らかにされたものがあればお教えください.(愛知・N子)
答 急性慢性腎盂腎炎,膀胱炎などの尿路感染症で白血球尿(膿尿)が認められる.その起源は感染病巣に遊走してきた好中球である.

コーヒーブレイク

ひとすじの道

著者:

ページ範囲:P.500 - P.500

 臨床検査の生みの親である樫田良精先生が亡くなられて早や2年が過ぎた。今年二月十六日のご命日に、先生を追悼する文集『ひとすじの道』が先生の教え子らの編集によって刊行された。
 樫田先生は臨床検査医学の発展に寄与されたばかりでなく、内科学とくに心電図学、医用生体工学(ME学)、医療情報学、健診医学などの広い分野にわたるパイオニアとして活躍された。このため、本書の執筆者は臨床検査技師、医師、看護婦のほか多くの工学者から構成され、直接、間接に先生の薫陶を受けた方々百二十余名の寄稿から成る。その中で、先生は"几帳面な先生"、"真面目な正論家"、"温和な先生"、"革新と細心の人"、"責任感の強い人"、そして"貴族"などと先生のお人柄がそのまま表現されている。

ワンポイントアドバイス

百聞は一見にしかず

著者: 今井宣子

ページ範囲:P.505 - P.505

 ある日,内科外来で診察中の医師から電話がかかってきた.患者が便から虫が出てきたと言って,今ここに持って来ているが,何だかわからないというのである.しかも,某市立病院からの紹介患者とのこと.そこでもわからなかったための転院だという.
 話を聞けば,直径3〜4mm,長さ2〜3cmの線虫で,白くて動いていると言うのである.どうやらこれは蟯虫でも回虫でもなさそうである.受話器を握りしめながら,必死でほかに何かあったかなと考えてみたが,該当するものは思い浮かばない.たぶん何かコンタミだろうと想像しながら,とにかくすぐ持ってきてくださいと言って電話を切った.

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読者のひろば

著者: 坂井一彦 ,   加藤良子

ページ範囲:P.565 - P.565

 最近の画像診断の進歩は目をみはるものがある.化学,血液検査と同様に,ほとんどの診療科目で画像診断がなされ,今や画像診断の黄金期ではなかろうか.その一つに,超音波診断法が挙げられ,もう一つにはX線CTが挙げられよう.
 この両者は完成の域に達しつつある.超音波診断装置は非侵襲的画像診断であるばかりでなく軟部組織に有用であり,リアルタイムであるというすぐれた長所がある.ただ,この画像は実質臓器そのものを表しているのではない.作られたものだということに気をつけなければならない.前にも述べたように画像診断は,今日までは,すごいすごい,ともてはやされてきたが,今後は当然のこととして位置づけられてくるはずである.これは当然われわれ検査技師にとっては,たいへんなことであり,解剖工学的な基礎と,そして臨床医学の知識を今以上に知ることが必要なことではないかと思われる.大学,短大,専門学校を卒業してこの職に就くとすぐに,このような進歩によってやらなければならないことがますます増えていると,40歳に近い私は思う,今日このごろである.

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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