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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術17巻13号

1989年12月発行

雑誌目次

病気のはなし

骨肉腫

著者: 立石昭夫

ページ範囲:P.1560 - P.1565

サマリー
 骨肉腫は骨に発生する悪性腫瘍の中で最も頻度が高く,また悪性度も高い腫瘍である。かつてはその生命の予後は極めて悪く,5年生存率は15%前後であったが,近年,強力な化学療法を行うようになってしだいに改善され,50〜60%となっている.
 最近この腫瘍は二つの面で注目を浴びている.その一つは,先に述べたような化学療法の併用による予後の改善であるが,もう一つは,その手術療法である.骨肉腫に対する手術療法は,かつては四肢の切断術が唯一の方法であったが,最近では腫瘍を切除して患肢を残す,いわゆる患肢温存療法が行われている.

技術講座 生化学

HPLC用電気化学検出器による計測

著者: 渡辺秀夫

ページ範囲:P.1580 - P.1584

サマリー
 HPLC用電気化学検出器は高い選択性と感度を有し,かつ比較的簡易にHPLCシステムに組み込める検出器である.このため,電気化学検出によるHPLCは,比較的成分数が多く,かつ微量成分を測定する必要がある臨床分析分野を中心に発展してきたが,測定に当たっては留意しなければならない事項も多い.ここでは,溶離条件の設定法,検出器の保守法など電気化学検出器を使用するに当たっての留意点を中心に,簡単に記述した.

血液

α2PI・プラスミン複合体の測定

著者: 緇荘和子

ページ範囲:P.1585 - P.1588

サマリー
 α2-プラスミンインヒビター・プラスミン複合体(PIC)は,血中のプラスミノゲンの活性化,すなわち線溶系の活性化が亢進していることを示す分子マーカーである.ここでは酵素免疫測定法によるPICの測定法について紹介した.臨床応用への研究が現在行われているが,PICはDICの診断・治療などにおいて重要な分子マーカーとなりうるものと思われる.

血清

ELISAによるATL抗体の測定法

著者: 杉本英弘 ,   橋本儀一 ,   森河淨 ,   黒田満彦

ページ範囲:P.1589 - P.1593

サマリー
 酵素抗体法(enzyme linked immunosorbent assay;ELISA法)は,受身凝集法(passive agglutination;PA法)とともに,成人T細胞白血病関連抗原(adult T-cell leukemia associated antigen;ATLA)に対する抗体を検出するスクリーニングとして広く用いられている.ELISA法はATLA抗原成分を吸着したマイクロカップ内での免疫酵素反応を利用した測定法であり,約3時間で測定が終了する.本法の特長は,多数の検体の処理ができ,測定が比較的容易な操作のみであり,判定に熟練性を必要としないなど,実用的な点にある.しかし,本法で検出できるのはIgG型ATLA抗体であり,感染初期に出現するIgM型抗体が検出できない1)点に問題がある.また,自己抗体陽性検体では,非特異的に偽陽性を呈することもあるので,定性試験で陽性の検体については,特異性確認試験,さらにはウェスタンブロット法(WB法)などによる詰めが必要となる.

細菌

Enterobacteriaceaeの新しい分類と同定

著者: 山中喜代治 ,   小川祐司

ページ範囲:P.1594 - P.1600

サマリー
 微生物の分類学は,分類,命名,同定,菌株保存および系統発生の5部門で構成されている.この中で細菌の分類は,長い歴史の中でかなり整理され,1980年の"Approved Lists of Bacterial Names"の発行は新時代の幕開けとなった.また1984年には"Bergey's Manual of Systematic Bacteriology"が刊行され,さらに"International Journal of Systematic Bacteriology"では,次々に新菌種が紹介されている.
 Enterobacteriaceaeについても,多くの分類学者の意見により,1989年7月現在,28属99菌種が正式発表されている.しかし,分類学の急速な進歩とは逆に,臨床細菌検査における分離菌株の同定では,その判断に苦慮しているのも事実である.

一般

尿糖の定量法

著者: 菅原清美

ページ範囲:P.1601 - P.1606

サマリー
 尿糖定量は,内分泌疾患の一部である糖代謝異常症(糖尿病・先天性糖代謝異常症)の発見と病態把握を行ううえで,重要な検査項目となっている.尿糖定量は,血糖定量に並んで歴史の古い検査であり,現在も,尿糖のより正確な定量方法を求めて,種々開発と検討がなされている.
 本稿では,まず近年における①わが国の尿糖定量法の推移を1983年版日本医師会臨床検査精度管理調査報告書(医師会サーベイ)を資料にまとめ,②利用頻度の高い方法について,その原理と実際,および特徴などを記述し,最後に③精度管理の面から評価を加えた.

検査法の基礎理論

組織構造の数量化について—ステレオロジーの基礎と応用

著者: 千場良司 ,   高橋徹

ページ範囲:P.1567 - P.1573

サマリー
 空間中の構造の三次元的諸量をより低次元の情報から推定する理論としてステレオロジーがある.ここではステレオロジーの三つの古典的な原則を用いて,組織標本上での計測によって生体組織の単位体積中における体積,表面積,長さを定置化する方法について肝硬変,肺胞壁,大脳皮質の毛細血管をそれぞれ例として説明し,簡単な証明を与えた.また,ステレオロジーにより推定不可能な組織の構造に関する量についても言及した.

真菌検査法—特に深在性真菌症起因菌の培養法を中心に

著者: 内田勝久 ,   山口英世

ページ範囲:P.1574 - P.1579

サマリー
 近年,医療の高度化に基づくcompromised host(易感染性宿主)による日和見型感染症,中でも深在性真菌症の増加が注目されている.臨床検査室においても,真菌類の分離・同定を行う機会が多くなってきた.
 病原真菌,特に深在性真菌症の原因となるCandidaalbicans,Cryptococcus neoformans,Aspergillus fumigatusなどの真菌の培養検査を行うに際し,必要な基礎知識と検出真菌の臨床的意義,実際の分離培養に用いられる選択・鑑別培地の原理と特徴などについて記述した.

ラボクイズ

〈問題〉細胞診

ページ範囲:P.1608 - P.1608

11月号の解答と解説

ページ範囲:P.1609 - P.1609

マスターしよう検査技術

黄色ブドウ球菌のファージ型別法

著者: 井上松久 ,   大久保豊司

ページ範囲:P.1611 - P.1615

ファージ型別の背景と意義
 黄色ブドウ菌球は,そのほとんどが溶原菌である.したがって,菌をマイトマイシンCや紫外線処理することにより,そこから活性あるファージ(プロファージ)の誘発が容易にできる.溶原菌に同種,類縁のファージを外から感染させても,免疫性があるため菌は溶菌しない、この溶原性を利用し,自然界から集めたファージを純化し,その宿主域や溶菌域を詳しく調べることにより,各ファージの群分けが可能となる.この群分けされたファージを型別ファージセットとし,現在4群23種の標準型別ファージ(表1)が用いられている.これらは黄色ブドウ球菌の由来や起源が同じか否かなど,疫学調査のために利用可能である.
 なお,この型別ファージは,国際型別ファージ委員会本部から各国機関に送られており,わが国においてはわれわれの施設がそのセンターとして,各施設の要請に応じ分与を行っている.

検査技師のための新英語講座 English for Medical Technologists・24

単語を使うとき好んでする間違い(その4)

著者: 今井宣子 ,  

ページ範囲:P.1616 - P.1617

新人技師:‘various’と‘varying’のように似た単語は私には混乱します.
英文編集者:‘Various’は"Various temperatures for the cell culture were tried, and the optimum temperature for growth among these was identified."というような文章で使われています.‘Various’は‘different’という意味です.もしも,この文章を"varying temperatures"と書けば,培養中に温度を変化させたという意味になります.もちろん実験中に条件を変えることもありますが,しかし,そんなによくあることではなく,いろいろと条件を決めて,その影響をみるやりかたのほうが一般的です.
新人技節:単語はペアで覚えるのが私には楽です.もっとほかにもありませんか?

検査ファイル 項目

ガストリン

著者: 姫野誠一 ,   東本好文

ページ範囲:P.1621 - P.1623

はじめに
 ガストリンは胃酸分泌刺激を主作用とする消化管ホルモンで,主に胃幽門腺のG細胞から分泌される.血中ガストリン値の測定は萎縮性胃炎,Zollinger-Ellison症候群などの診断に極めて重要であるだけでなく,胃酸分泌との関係において外科領域の手術術式の選択にも広く応用されている.また合成ペンタガストリンは胃分泌刺激剤として胃液検査の際に利用される.

光電式脈波検査

著者: 棟方伸一 ,   渡辺敏

ページ範囲:P.1624 - P.1625

はじめに
 《脈波》には,頸動脈脈波,頸静脈脈波,末梢動脈脈波,心尖拍動図,および指尖容積脈波がある.指尖容積脈波の記録には種々の方式があるが,その中でも最も広く行われている光電式脈波計を用いてのそれについて,以下に述べる.

機器

ビリルビンメーター

著者: 石田浩二

ページ範囲:P.1626 - P.1627

 新生児のビリルビン測定は,核黄疸の子防と診断に重要な検査項目である,この検査は緊急性を要し,また新生児にとって採血はかなりの負担であるので,迅速性および微量化が要求される.これらの要望に沿って,近年,新生児のビリルビン測定専用装置すなわちビリルビンメーターが普及してきた.ここではその原理,種類と特徴および使用上の注意点について簡単に説明する.

用語

CosmとCH2O

著者: 安東明夫

ページ範囲:P.1628 - P.1630

はじめに
 腎は糸球体における限外濾過とこれに続く尿細管での再吸収・分泌によって最終的に尿を生成し,生体の内部環境の維持に当たっている.血清浸透圧(serumosmolality)の調節も重要なものの一つであり,正常人のそれは極端な水分摂取制限あるいは水分過剰の状態以外では,常に280〜295mOsm/kgH2Oの範囲内に保たれている.これは腎が不可避なほぼ一定量の溶質排泄を,水の負荷の多少に応じて水排泄量(尿量〉を調節することによって行っているからである.すなわち,尿の濃縮と希釈がこれであり,これらの評価がCosmとCH2Oによって行われる.

国家試験対策室

臨床検査総論

著者: 宮原洋一 ,   宮原道明

ページ範囲:P.1631 - P.1634

検査管理総論
[例題]
 新設科目の「検査管理総論」を中心に例題を作成した.正解は1個とは限らない.
I.臨床検査総論
1.採血について正しいのはどれか.
a.耳垂の最下縁部は毛細血管が多く,穿刺部位として最適である.
b.指頭採血は掌面より側面のほうが,痛みが少なくてよい.
c.新生児の採血部位によく使われるのは足底である.
d.採血用注射針の太さは,針もと接続部の色やリングの数によって見分ける.
e.うっ血帯によって上腕部の圧迫を2分以上続けると,血液組成が変化することがある.

トピックス

二次元ドプラカラーフローマッピング

著者: 山浦泰子 ,   吉川純一

ページ範囲:P.1639 - P.1640

はじめに
 二次元ドプラカラーフローマッピング(カラードプラ法)は,断層心エコー図上に,リアルタイムに血流信号を二次元表示するものである.探触子に向かう血流は赤で,遠ざかる血流は青で表示され,血流の乱れは,それぞれの色に緑を加えることにより表される.異常血流は,原則として乱流であることに加え,血流速度が速いため,装置の表示能力を超えて折り返し(aliasing)を繰り返して,モザイクパターンとして表示される.カラードプラ法は,臨床において,非侵襲的に異常血流の有無のみならず,その方向や広がりなどを短時間で明らかにできるので,有用である.しかし,本法にも,超音波の物理学的特性や,カラー血流映像作成機構による種々の問題点があり,これらを理解したうえで検査に当たる必要がある.

血中下垂体抗体

著者: 小林功

ページ範囲:P.1640 - P.1641

 最近,下垂体抗体の高感度測定法が,杉浦ら1,2)により確立されたので,自験例を含めて紹介したい.
 ある症例の血液中に下垂体抗体が検出される場合には,下垂体を場とするなんらかの自己免疫機転が生じていると推察される.1975年頃から主としてBottazoら3)一派を中心として,各種内分泌疾患の患者血中に,プロラクチン分泌細胞をはじめ,GH,LH,FSH分泌細胞に対する自己抗体が検出されること,さらにヒト下垂体凍結切片を抗原とする血中自己抗体がインスリン依存型糖尿病(IDDM)の16.6%に見いだされること,などが明らかになり,これらの病態における自己免疫の関与が示唆されるようになった.このような一連の研究成果を契機として,自己免疫性多臓器性内分泌障害(autoimmune polyendocrinopathies)という疾患概念が現在成立するに至っている.

カダベリンを含まない尿中総ポリアミンの測定

著者: 眞重文子

ページ範囲:P.1641 - P.1643

ポリアミンについて
 ポリアミンは,一級または二級アミノ基を二つ以上持つ脂肪族炭化水素の総称で,生物界に広く存在する.現在,天然に見いだされているポリアミンは,18種類(誘導体は除く)に及ぶが,人体に存在するポリアミンは少なく,プトレッシン(Put),カダベリン(Cad),スペルミジン(Spd)およびスペルミン(Spm)が主たるもので,そのほかに1,2-ジアミノプロパンがごく微量に存在する.プトレッシン,スペルミジン,スペルミンはオルニチンから,カダベリンはリジンから生合成されるが,人体ではカダベリンの合成経路は見いだされていない.そのため,人体液中に見いだされるカダベリンは食事あるいは腸内細菌由来とされている.
 健常者体内でのポリアミンは,精液中に最も高濃度に含まれ,さらに骨髄,肝臓など増殖の盛んな組織にも多く含まれるが,尿中および赤血球中には少量で,血漿中にはごく微量にしか存在しない.ポリアミンの存在形態は,精液,組織および赤血球中では主に遊離型であるのに対し,尿中および血漿中では主にアセチル抱合型として存在する.

検査報告拝見 細胞診

名古屋市立大学医学部附属病院中央臨床検査部

著者: 柴田偉雄

ページ範囲:P.1618 - P.1619

1.細胞診検査報告の性格
 細胞診の検査報告は病理組織検査や骨髄像検査と同様,パターン認識に基づく病名あるいは病態診断としての性格を有する.それは,患者条件,検体採取法,検体処理,標本作製などの諸条件を十分考慮し,解剖学,組織学,微生物学,医動物学などの基礎医学や生物学の知識を背景として,病理学,臨床細胞学,臨床医学各分野の知識を活用することにより初めて可能となる高次の総合的判断に基づくものである.特に悪性腫瘍をめぐる診断では,患者の治療方針や予後を見通すうえでの決定的な情報となることも多い.
 2.細胞診検査書の様式
 当院で用いている検査書は,右頁に示すように2か所の双柱罫によって上中下の三つに区分されている.上段は患者基本情報と検体採取情報,中段は患者の臨床情報で,ともに診療科から提供される情報である.ここに記載もれや誤記など不備があると,検査事故のおそれが生ずる.下段が細胞診の報告部分で,良性・悪性をめぐる細胞判定区分と,その内容を具体的に示す細胞診断の記述部分とから成っている.

ザ・トレーニング

細菌の集落の観察法

著者: 小栗豊子

ページ範囲:P.1635 - P.1638

はじめに
 細菌の培養・同定検査において,菌種の特徴を知っておくことは,検査を能率的に行ううえで不可決である.細菌の特徴は顕微鏡検査による形態学的特徴と集落の性状,それに生化学的性状などに分けることができる.これらのうち,集落は分離培地上の特徴が特に大切である.
 細菌の集落は培地や培養温度など環境により異なることがある.また,中にはムコイド型などのように例外的な性状を示すものもあるので,集落の性状はあくまでも菌種の推定に役立てるべきであり,集落の外観だけから菌種を決定すべきではない.

明日の検査技師に望む 臨床検査医学の立場から

プロとしての自覚を!

著者: 工藤肇

ページ範囲:P.1620 - P.1620

1.考える検査技師に
 現在の医療短大の前身の弘前大学医学部附属衛生検査技師学校が発足したのが,今から22年前の1967(昭和42)年でしたが,いつも学生の皆さんには「"考える検査技師"になってください」と言い続けてまいりました."考える検査技師"というのは常に物事に疑問を持つ技師のことを指します.
 古い話ですが,ペニシリンを発見したフレミング博士は,菌を培養した培地をほったらかしておいたら,雑菌の青カビが生えて,その周りの菌の発育が抑制されているのを見つけました.普通の人なら,雑菌混入で実験は失敗といってそのシャーレを捨てるところです.毎日のルーチン検査に追われて疑問を持っ余裕がなくなるのは,大変悲しいことです.しかし雑誌『検査と技術』の<けんさ質問箱>を見て,疑問を持つ検査技師,考える検査技師がたくさんいることを知って安心しました.9月号に「透析患者の血清の色調が正常なのに,ビリルビン値が2mg/dlにもなるのはなぜですか」という北海道のKさんの質問がありました.学問の知識も大切ですが,身近に起きた疑問を一っ一つ解決していくのが一番大切なことだと思います.できれば,その疑問について自分で実験してみて謎解きをしたいものです.文献を読んだり,専門家に尋ねたり,学会に出席したりすることも大切です.成果が出たら学会に発表してみるのも,人の意見や批判を受ける意味でも大切なことです.

学園だより

天理医学技術学校

著者: 高橋浩

ページ範囲:P.1607 - P.1607

■沿革
 本校の母体は「財団法人天理よろづ相談所(別名:憩の家)」であり,憩の家開設の翌年の1967(昭和42)年4月に天理衛生検査技師学校(2年間半の夜間コース)として開校された.’69(昭和44)年4月からは昼間の2年間コースに変更された.その後,法律改正により3年制に切り換えられ,校名も’73(昭和48)年4月から天理医学技術学校と改称した.
 校舎は旧制天理中学校のもので,近頃では珍しい堂々とした木造平屋建の瓦葺きである.外観の古さに反して掃除も行き届いており,実習設備は整っている.

けんさアラカルト

臨床検査技師学校の閉校について

著者: 福島辰郎

ページ範囲:P.1566 - P.1566

 臨床検査は,医学・医療の発達により著しい発展を遂げ,いまや医療の中で欠くことのできない重要な部門となっている.そして,医療の高度化に伴って,次々と新しい技術や検査が導入され,より専門的な,そしてより効率のよい臨床検査が要求されるようになった.こうした中で,検査技師は厳しい対応を迫られているのが現状であろう.
 このような状況にあって,高度成長期の時代の要請から生まれた夜間の臨床検査技師学校のほとんどが,すでに幕を閉じた.ここに時代の大きな転換期を感ずるとともに,消えていったものに対して深い哀惜の念を覚える.

けんさ質問箱

扁平上皮と移行上皮の違いについて

著者: 田中浩平 ,   S子

ページ範囲:P.1644 - P.1645

問 本誌vol.17 no.3の「ラボ・クイズ」の解答について質問いたします.問1の解答は「③扁平上皮・扁平上皮」となっていますが,後者の扁平上皮の円形細胞について,『臨床検査アトラス1-尿沈渣』(医歯薬出版)によると,小円形上皮は扁平上皮に分類される傍基底細胞と基底細胞,または移行上皮に分類される深部型細胞,または尿細管上皮に分類される尿細管上皮細胞に分けられる,となっています.この問題の場合は,どこで扁平上皮と移行上皮の区別がなされたのでしょうか.また,小円形上皮の移行上皮,尿細管上皮との臨床的な意義の違いについてもお教えください.(茨城県・S子)
答 本誌3月号のラボ・クイズ(問題1の写真2)についてのご質問ですが,まず解説が舌足らずであったことをお詫びいたします.

尿沈渣中のヒトポリオーマウイルス感染細胞について

著者: 古市佳也 ,   T生

ページ範囲:P.1645 - P.1646

問 尿沈渣中のヒトポリオーマウイルス(human polyomavirus)感染細胞の形態的特徴をお教えください.当院では,Sternheimer-Malbin染色を日常用いていますが,本染色法でも鑑別は可能でしょうか.また,Sternheimer染色ではどのような特徴を示すのかも,お教えください.(大阪府・T生)
答 ヒトポリオーマウイルスはパポバウイルス(Papovavirus)群に属する直径約40nmの小型球形のDNAウイルスであり,1971年にヒト由来のBKウイルスとJCウイルスが相次いで分離された.BKウイルスは腎移植患者の尿管狭窄や尿細管間質性腎炎の原因に,JCウイルスは進行性多巣性白質脳症(PML)の原因にそれぞれなっている.最近の報告ではAIDS患者の脳組織からもJCウイルスが分離・同定されている.ヒトはこれらのウイルス感染を主に幼少期に受けるが,大部分は無症候性で,成人の70〜80%が抗体を有している.また体内に侵入したウイルスは免疫能の低下を契機に再活性され,尿中にウイルスおよびその感染細胞が出現するものと考えられている1)

腫瘍の組織学的診断と鍍銀染色

著者: 渡辺信 ,   田中路子 ,   O子

ページ範囲:P.1646 - P.1648

問 腫瘍の病理組織学的診断における鍍銀染色の意義についてお教えください.(千葉県・O子)
答 鍍銀染色で染色される線維はいわゆる細網線維であって,上皮細胞の基底側,筋細胞の周囲にみられ,リンパ節や脾臓の実質内に微細な網状ないしは格子状にみられる.家屋の柱とか梁といった,いわば組織の骨格を形成するような形で存在し,細いものから太いものまでいろいろある.その成分はトロポコラーゲンで,膠原線維と同じであるが,鍍銀染色されるといわれるごとく,銀に対する親和性が極めて強い.

ワンポイントアドバイス

異常値が出たとき・4—血液ガス

著者: 伏見了

ページ範囲:P.1565 - P.1565

 pH,Paco2およびPao2で示される血液ガス分析は呼吸という生命の基本的な生理と関係したものであり,その測定値は患者の処置,治療と密接に結びついており,分析時にミスは許されない.
 血液ガス分析における「異常値」の解釈はその時点での患者の状態と深く関係しており,やや困難な面もあるが解説する.
 血液ガス分析における「異常値」とは測定値の絶対値そのものではなく,測定値が患者の状態と離反している場合が「異常値」である.室内空気(酸素濃度は760mmHg×1/5≒150mmHg)を自発呼吸している患者動脈血のPao2が150mmHg以上を示す場合は明らかな異常値である.逆に心または肺に病変を有する人では,この場合のPao2が50mmHgでも異常値ではない.

コーヒーブレイク

魅力ある職場への脱皮

著者:

ページ範囲:P.1573 - P.1573

 若人の職業選択が変化してきている今日、特に理工系の出身者の多くがサービス産業へいくため、技術分野は人集めが困難になっているということです。例えば生物工学出身者が、銀行のディーリングルームに入り、新人でも一日三千万円までの売買をしているとかで、当人は毎日大変なスリルと興奮をもって充実しているということでした。このような現象を憂える人もおりますが、科学的なセンスを活かしていけるのであれば結構なことだとする見方も出ています。しかし、これは若人から見ての仕事の魅力があるからこそいえるのでしょう。
 それでは、医療分野はどうでしょうか。看護婦はいくら養成しても足りません。検査技師も病院からその技術が活かせる企業に流れていく傾向にあります。有能な医療従事者の確保のためには魅力ある職場が第一です。確かに表面だけをとれば、病院は忙しい、休みがとれない、汚い、あるいは危険な試料を扱う、社会的責任は重い、給料は高くない、などさまざまな点があります。これには表面を変えることも必要ですが、中味をよくすることがさらに重要でしょう。医療もサービス業としての本格的な環境作りの時代に入り、検査室も魅力ある職場への態勢作りが急務です。時代の変化、世の中の要求に即応したものを用意していくことが大切でしょう。

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読者のひろば

著者: 西山悦子 ,   有馬広海 ,   老門令子 ,   宮原克介

ページ範囲:P.1649 - P.1649

●再就職して
 昨年,幸運にも再就職することができました.現在,生理検査を担当しています.私が今までに経験してこなかった心エコー,腹部エコー検査という分野でがんばっていますが,私にとって毎日が新しいことの発見です.時には充実感にひたることができたり,また時には落ち込んだりしながら勉強しています.しんどい事が多い仕事ですが,再び検査の仕事ができて幸せです.
 毎月『検査と技術』を読むのを楽しみにしています.私は生理検査担当ですのでどうしてもそれに関した本しか読まなくなってしまいがちになりますが,『検査と技術』は一応全部目を通すことにしています.忘れていたことを思い出したり,他の部門の新しい知識を知ることができ,よい刺激になっています.

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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