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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術17巻2号

1989年02月発行

雑誌目次

病気のはなし

全身性ループスエリテマトーデス

著者: 加藤智啓 ,   吉野谷定美

ページ範囲:P.130 - P.134

サマリー
 全身性ループスエリテマトーデス(SLE)は,若い女性に好発する多臓器障害性疾患である.非感染性の慢性炎症性疾患で,慢性関節リウマチ,進行性全身性硬化症などとともにKlempererの提唱した「膠原病」という概念に含まれるものの一つである.SLEにおいては,抗核抗体などの自己抗体の出現,免疫複合体の存在など,さまざまな免疫学的異常所見が観察され,これがいわゆる自己免疫疾患の代表的疾患といわれるゆえんである.これらの免疫学的異常が病因とどのようにかかわっているか,現在,解明が急がれているところである.

技術講座 生化学

イオン電極用標準血清によるNa,K,CI値の校正法

著者: 桑克彦

ページ範囲:P.146 - P.150

サマリー
 イオン電極法による血液中Na,K,Cl濃度測定の標準化が,標準血清の確立により日常検査レベルで可能となった.標準血清は正確さの基準となる.したがって,精密さが維持されているとき初めて評価が可能となるので,標準血清による校正手順に従って,精密さ-正確さの順に評価を行っていく.すると容易に目的に到達できる.この標準血清を使うことにより機器間差や施設間差が解消できる.

血液

自動血球計数器で表示されるヒストグラムパターンの読みかた

著者: 巽典之 ,   津田泉 ,   瀬戸口一恵 ,   木村雄二郎

ページ範囲:P.151 - P.156

サマリー
 自動血球計数器は,近年,飛躍的な発展を遂げ,多くの新しい情報をもたらしうるようになったが,その多くは,粒度分布ヒストグラムの測定によるものである.粒度分布は,白血球分類や赤血球大小不同などの従来は光顕下で観察されていた形態異常や,各種疾患のスクリーニングやフォローアップに利用することができる.さらに,粒度分布解析プログラムを付加することで,再検査の不要な正常検体と,用手法による再検査の必要な異常検体を区別し,検査の効率化・経済化を図ることが可能となる.本稿では,具体的な症例を示しながら,粒度分布の読みかたについて述べた.

病理

レクチン染色

著者: 阿部倫子

ページ範囲:P.157 - P.160

サマリー
 赤血球凝集素として見いだされたレクチンは,一定の糖構造を特異的に認識し,結合する.その特性に注目し,細胞表面の複合糖鎖の検索や細胞機能の解析に用いられ,多くの報告がなされている.最近では,標識レクチン,抗レクチン抗体など市販品も多種にわたり,染色法もいろいろ考案されている.ここでは,通常の方法で作製したパラフィン切片によるレクチン染色法を二つ挙げる.また,レクチンと糖鎖の結合を観察するうえで留意すること,組織病理学への応用について述べた.

一般

精液検査

著者: 佐藤和文

ページ範囲:P.161 - P.165

サマリー
 精液は尿道,前立腺,精嚢腺,睾丸からの分泌物が混合したもので,正常精液は乳白色で特有の臭気を発する.これを検査することは,男性不妊症の診断や経過観察に重要で,近年急速に発展している不妊治療,人工受精にも直接大きなかかわりを持っている.特に人工受精関係面での精液検査は,精子形成障害が男性不妊の最多数を占める要因であることから,検査法の進歩も目覚ましく,従来,精子数,運動率,奇形率などに限られていた精液検査に,精子運動形態の詳細な分類や精子の受精能を考慮した精子機能テストなども開発され導入されている.これらを加味して,臨床検査レベルで実施可能と思われる検査を紹介する.

検査法の基礎理論

イオンクロマトグラフィーによる血中陰イオンの分析

著者: 林浩次 ,   梅本雅夫

ページ範囲:P.135 - P.140

サマリー
 血中の陰イオンの分析は,生体内のイオンバランスなどを知るうえで,最近,重要性を増しつつある.特に,血中の微量イオンの場合,ほかに簡便かつ高感度な分析法が少ない状況にあり,イオンクロマトグラフィーが着目されつつある.陰イオンの分析法としては,イオンクロマトグラフィーのほかに,電量滴定法,比色法,イオン電極法(ISE)などがあるが,イオンクロマトグラフィーは共存成分の影響を受けにくいという特徴がある.
 ここでは,イオンクロマトグラフィーの原理と,血中の陰イオン分析をはじめとして,臨床化学分析および医薬品分析への応用について述べた.

睡眠と覚醒のしくみ

著者: 奥平進之

ページ範囲:P.141 - P.145

サマリー
 睡眠を他覚的にとらえる方法としてポリソムノグラフィー(PSG)があるが,PSGで観察された2種類の睡眠(ノンレム睡眠とレム睡眠)が,約100分のオートラディアン・リズムで繰り返され,これにサーカディアン・リズムで動かされる体液性要因による睡眠・覚醒リズムが重畳してヒトの睡眠覚醒が起こっている.そのメカニズムについて,最近のレム睡眠発現機構を中心に概説した.さらに,PSG上の変化をもたらす脳活動のしくみを説明した.

ラボクイズ

細胞診(3)

ページ範囲:P.166 - P.166

1月号の解答と解説

ページ範囲:P.167 - P.167

マスターしよう検査技術

嫌気性培養法

著者: 渡辺邦友 ,   上野一恵

ページ範囲:P.171 - P.174

 臨床材料から偏性嫌気性菌を分離するには,材料を塗抹した平板培地を嫌気性条件下で培養すること,すなわち嫌気性培養を行うことが必要である.嫌気性培養法には,嫌気性ジャーを用いる方法,嫌気性グローブボックス法,ロールチューブ法(ガス噴射法ともいう)がある.後の二つの方法が,より厳密な嫌気性条件下での培養が可能であるが,病巣から正しく採取され,正しく検査室に輸送された検査材料であれば,嫌気性ジャー法も,臨床上重要と考えられる嫌気性菌の分離においては,これらと差異はない.また,近年,ジャーの代わりに透明な袋を利用したGasPak Pouch,アネロメートなど簡易培養法のセットが市販され,非常に便利になった.

国家試験対策室

公衆衛生概論/医動物学/基礎生理学

著者: 吉岡義正 ,   宮原道明 ,   林治秀

ページ範囲:P.175 - P.179

公衆衛生概論
例題
1.次のうち正しいものに○,誤っているものに×をつけよ.
 a.PMI(PMR)は全死亡数に対する60歳以上の死亡割合である.
 b.老年人口割合は10%を超えた.
 c.悪性新生物は幼児・学童期にはほとんど発生しない.
 d.年齢階級別死亡率は年齢の上昇とともに高くなる.
 e.結核による死亡率,罹患率は老年層に高い.
 f.保健所は人口規模と地域特性によって15の型に分けられている.
 g.コホート研究は患者・対照研究に比し,期間が短く,費用・労力が少なくてすむ.
 h.喫煙による癌発生の相対危険度が3であることは,喫煙者が非喫煙者の3倍の発癌リスクを負うことを示す.
 i.精神衛生センターは精神衛生の第一線機関である.
 J.新生児死亡率が早期新生児死亡率を下回ることがある.
 k.平均余命は生存期間とともに必ず減少する.
 l.活性汚泥法は生物作用を利用した上水処理法である.
 m.母子健康手張は妊娠1か月後に交付される.
 n.BOD,COD,DOが高いことは水の汚染が高いことを示す.
 o.逆転層では大気が不安定で,煙がよく拡散する.
 p.大気中のCO2は上昇傾向にあり,温室効果の影響が心配される.
 q.イタイイタイ病はカドミウムを原因とし,新潟県阿賀野川流域で発生した.

検査ファイル 項目

シアル酸

著者: 菅原和行

ページ範囲:P.180 - P.181

[1]代表的測定法と原理
 シアル酸(N-acetyl neuraminic acid;NANA)は,血漿中ではオロソムコイド,α1-アンチトリプシンなどの急反応性物質と呼ばれる糖蛋白質,あるいは他の多くのシアロ蛋白質の主要な構成成分として,主に糖鎖の末端に位置し,生体内には比較的多量に存在している.
 シアル酸の測定法には,化学的比色法,酵素学的測定法および機器分析法などがあり,化学的比色法としては,ジフェニラミン反応,ρ-ジメチルアミノベンツアルデヒド(Ehrlich試薬)との反応,オルシノール法,レゾルシノール法,過ヨード酸・ベンチジン法および過ヨード酸・チオバルビツール酸法などがある.また,臨床検査法として用いられている酵素的測定法には,Comb & Roseman1),Brunettiら2)が,近年では谷内ら3)がそれぞれ報告している,ノイラミニダーゼ・NANA-アルドラーゼ系を用い,生じたピルビン酸をLDH反応系で検出する方法と,ピルビン酸をピルビン酸オキシダーゼで定量する方法4),および本反応系にホモバニリン酸を加えた蛍光法などがある.

運動負荷心電図

著者: 加藤晃

ページ範囲:P.182 - P.183

 運動負荷心電図は,虚血性心疾患の診断に,また経過観察の方法として欠かすことのできない検査項目である.しかし,一部ではマスター二階段試験の検査が方法論的に簡便なため,負荷の最大原則ともいえる医師の立ち合いがなされておらず,技師ひとりで施行していることが多い.今回,実際の経験を基に運動負荷心電図の種類と検査時の注意事項,また検査中の事故や発作時における対処のための準備についても説明する.

試薬

低イオン強度溶液(LISS)

著者: 安部勝美

ページ範囲:P.184 - P.185

 低イオン強度溶液(low-ionic strength solution;LISS)は,輸血検査において,交差適合試験,不規則抗体の検出および同定検査にウシアルブミン,蛋白分解酵素(ブロメリン,フィシン,パパインなど)と同様に,赤血球凝集反応のメディウムとして用いられている.まず,LISSについて記述する前に,赤血球の凝集反応について述べておきたい.
 輸血検査で用いられる凝集反応は,簡便かつ鋭敏な方法で,赤血球などの遊離細胞膜表面に存在する抗原の検出あるいは対応する抗体の検出には欠くことのできない反応といってよい.また,近年では抗原の精製技術の進歩により純度の高い抗原が得られるようになり,血球やラテックスなどの粒子に付着させて対応する抗体を検出するなど応用範囲も拡大してきた.

用語

SLX(シアリルLex-i抗原)

著者: 大倉久直

ページ範囲:P.186 - P.187

はじめに
 SLX(シアリルLex-i抗原)とは,[-Galβ14Glc NAcβ-]の繰り返し構造を2回と末端にシアル酸[NeuNAc],側鎖にフコース[Fucα]を一つずつ持った2型糖鎖に属する糖鎖抗原である(図1).正常な胚細胞の分裂の初期から胎生のある時期まで作られている胎児性抗原stage-specific embryonic antigen(SSEA-1)や,ルイスX抗原と構造がよく似ており,シアリルSSEA-1とも呼ばれる1).箱守らの作ったマウスモノクローナル抗体(FH-6)によって認識され,肺腺癌,膵臓癌,卵巣癌などの腺癌の組織と患者の血清中に存在する新しい腫瘍マーカーである.
 最近,大塚アッセイ研究所から固相2ステップRIA法による測定試薬キットSLX「オーツカ」が発売され,健康保険も適用されて日常の臨床検査が可能となった2)

検査技師のための新英語講座 English for Medical Technologists・14

第18回IAMLT学会総会(その2)

著者: 今井宣子 ,  

ページ範囲:P.188 - P.189

先輩技師:7月18日に第18回国際医学検査学会総会のオープニング・レセプションに参加しました.
英文編集者:どこであったのですか?

ハウ・ツー・ルチーン化・2

酵素活性測定のための検量と測定温度

著者: 山舘周恒 ,   関口光夫

ページ範囲:P.190 - P.193

 当初,酸素活性は,測定法の提唱者により異なった条件で測定され,活性値の表示方法にも統一性がなく,慣用単位が用いられていた.その後,国際生化学連合酵素委員会によって,測定条件の規定と国際単位の定義がなされ1),日常の臨床化学分析においても,測定温度を除いて,この勧告に準拠した方法が用いられるようになってきた.しかし,自動分析機での活性値算出の指標となる検量係数(単位換算係数,Kファクター,ファクター)の設定は,各施設によって大きく異なっているのが現状である.
 この検量係数にかかわる主な因子は,試料容量,試薬容量,モル吸光係数であり,一般に物理化学定数と呼ばれている.この物理化学定数は,個々の自動分析機あるいはそのチャンネルによって異なることから,固有の検量係数を定めなければならない.しかし,その計測には多くの労力を要するため,広く普及しているとはいえない.そこで現在提唱されている検量係数の算出方法について整理し,ユーザーサイドで実施できる実用的な方法について,実例をもとに説明する.

ザ・トレーニング

尿沈渣の検査の進めかたと報告のしかた

著者: 長浜大輔

ページ範囲:P.194 - P.198

はじめに
 一般尿検査のうち特に尿沈渣の検査は,形態学的方法を主とするもので,鏡検者の経験に負うところが多い.その検査業務は,尿中に存在する多種多様な有機成分と無機成分を迅速かつ正確に判別し,より明確な報告様式をもって,依頼医へ情報を提供することである.これが,なかなか熟練を要する.
 この項では,日常の尿沈渣検査の中で問題提起の多い点を取り上げて,それをなるべく簡潔に解説してみよう.

トピックス

血漿グリコカリシン

著者: 久米章司 ,   尾崎由基男

ページ範囲:P.200 - P.201

 他の細胞と同様に,血小板膜には多数の糖蛋白が存在する.これらの血小板膜上の糖蛋白は,細胞外情報の受容体として働き,血小板機能と密接な関係を有している.その代表的なものの一つにglycoprotein Ib(GPIb)がある.GPIbは,α鎖とβ鎖がS-S結合で結ばれている,分子量170000(α鎖150000,β鎖23000)の糖蛋白1)である(図).
 GPIbは,血小板膜上に多数存在し(約25000個/1個血小板),血小板が内皮下組織に粘着するとき,あるいはリストセチン処理時に,von Willebrand因子の血小板受容体2)として働き,止血機構の最初の段階である血小板の内皮下組織への粘着に重要な役割を果たしている.リストセチン凝集が低下し,血管内皮下組織への血小板粘着も著減しているBernard-Soulier症候群では,このGPIbが欠如している.またGPIbは,トロンビンの受容体としても働いているが,酵素としてのトロンビンの基質としてではなく,トロンビン凝集反応を促進する作用を有すると考えられている.

PTMV

著者: 白土邦男

ページ範囲:P.201 - P.202

 PTMVとはpercutaneous transluminal mitral valvuloplastyまたはpercutaneous transvenous mitral valvuloplastyの略語で,経皮経管的(または経皮経静脈的)僧帽弁形成術(または僧帽弁裂開術)と称されるものである.Mitral balloon valvuloplastyも同義語である.
 心臓カテーテル法は心疾患の診断およびその病態の評価を目的とした検査法として知られてきたが,近年は経皮経管的冠動脈血栓融解術(PTCR),経皮経管的冠動脈形成術(PTCA)などに代表されるごとく,カテーテルを用いた治療が行われるようになった.PTMVも後者のカテーテルを用いた治療法の一つで,僧帽弁狭窄症に対して施行される弁形成術である.

センソ含有市販生薬とジゴキシン

著者: 伏見了

ページ範囲:P.202 - P.203

 わが国においては古くからセンソ(Chan su,中国産ガマBufo-bufo gargarizans Cantorの皮膚腺分泌物を乾燥固化させたもの)を含有する各種生薬が動悸,息切れなどの改善および気つけ薬として広く服用されてきた(表).
 センソの主成分1)はC17位に不飽和六員環ラクトンを有するbufadienolideであり,臨床において心疾患の治療に用いられている植物性強心ステロイドのジゴキシン(cardenolide:C17位に不飽和五員環ラクトンを有する)と化学構造が非常に類似している(図).

学園だより

京都保健衛生専門学校臨床検査学科

著者: 田尻睦

ページ範囲:P.168 - P.168

■沿革
 京都保健衛生専門学校(校長・武田隆男,京都市上京区)は,1964(昭和39)年設立の堀川高等看護学院を母体にして第一臨床検査学科(昼間部全日制),第二臨床検査学科(夜間部定時制),第一看護学科(二年課程昼間定時制),第二看護学科(三年課程昼間定時制)の4学科を置く医療系の専門学校である(入学定員:各学科40名).そのうち臨床検査学科は,1973(昭和48)年4月に開設した夜間部を基礎に1977(昭和52)年4月に第一臨床検査学科(昼間部)を開講し,これで先に開設した第二臨床検査学科(夜間部)との二部制となって現在に至っている.
 校舎は,古都京都の街中に位置し,近辺には二条城や平安時代御所の大極殿跡もあり,自然環境に恵まれるとともに通学の便もよく,勉学には最適の地にある.学習環境を整備するために,1988(昭和63)年校舎の改築に着手した.実習施設の刷新は無論のこと,視聴覚教室,コンピューター実習室の充実など,医療の進歩に対応するために必要な設備を整え,本年3月には完成する.

けんさアラカルト

より正確な測定値を得るためのHPLC法

著者: 大澤進

ページ範囲:P.170 - P.170

 《正確度(正確さ)》の意味は,『化学大事典』によれば「測定値の分布(母平均)から測定対象の正しい値(真値)を差し強いた値をカタヨリといい,カタヨリの小さい程度を正確度(正確サ)という」とある.つまり,多重測定した結果の平均が真値に,より近い値を示すことである.これを定量法として考えると,正確さとともに精度がよいことも必要であろう.では,これらの条件を満たす定量法としては,どのような点を備える必要があるのだろう.
 ①目的成分に特異的な検出法であること
 ②妨害を受けにくいこと(目的成分の分離)
 ③感度が高いこと
 ④精度がよいこと
 などが考えられる.

けんさ質問箱

ブロメリン法,間接抗グロブリン試験法の意味

著者: 小松文夫 ,   M子

ページ範囲:P.204 - P.205

問 通常,交差適合試験では,生食法→ブロメリン法,アルブミン法→間接クームス法を実施するように提唱されていますが,それぞれの方法を行う臨床的意義は何なのでしょうか.また,この場合,間接クームス法の結果(+,-)で輸血ができる,できないの判定をしてしまいがちですが,それでよいのでしようか.もしよいのだとすると,ブロメリン法,アルブミン法の実施・判定は意味のないものに思われるのですが.(神奈川県・M子)
答 交差適合試験の意味は,輸血によって生体内で血球破壊を引き起こす可能性のあるすべての抗体をチェックすることにあるので,これらの抗体をチェックしうる方法として,もっとも感度のよい方法を行うのでなければなりません.赤血球抗体には種々の抗体があり,抗体によってはその反応の特性がかなり異なる場合があり,そのため,一つの方法で抗体をチェックしようとすることは不可能になるわけです.通常の交差適合試験は,食塩液法,酵素法(主としてブロメリン法),それに間接抗グロブリン試験法(以下,クームス法と略す)を併用して行い,それに施設によっては血清法(アルブミン法)も行っているでしょうが,これらは上記のすべての抗体をチェックするという目的で行っているわけです.このうちでもっとも感度のよい方法といえば,クームス法といえるでしょう.したがって,クームス法さえ行えば十分ではないかとの意見は当然出てきます.

内分泌RI検査における添加剤の作用

著者: 中井利昭 ,   Y子

ページ範囲:P.205 - P.205

問 内分泌のRI検査で使用する,トラジロール,インドメサシン,テオフィリンなどの添加剤,作用機序についてお教えください.(東京都・Y子)
答 ホルモンをはじめとしていくつかの検査項目では,検体採取時に特殊な薬剤を同時添加しないと壊れたり,活性が失われてしまったりするものがある.これらの注意を要する検体は,多くは外部委託検査であり,特殊薬剤を含んだ専用容器がすでに用意されている場合が多い.しかし検査技師としてはたとえ外部委託検査であっても,当然これらの特殊薬剤の作用機序を十分理解していることは必要であるので,以下これらの作用について簡略に記す.

ヘパリン入り血液でのNa,K,Clの測定

著者: 米田孝司 ,   片山善章 ,   S生

ページ範囲:P.206 - P.207

問 緊急検査の血液ガス分析を行うヘパリン入り血液を遠心分離した上清で,Na,Kをついでに測定してほしいという医師の依頼に,私は軽はずみに「はい」と答え,データを返しました.後で,血清でまたこれらの電解質の測定を依頼され偶然にも近い値だったのでよかったものの,問題はなかったのでしょうか.(京都府・S生)
答 ご質問のように血液ガス検体の残りで電解質を依頼してくるケースは比較的多く,特に小児患者に多いと思われる.この場合の問題点として次のことが考えられる.

生理検査中の患者の心停止のとき

著者: 江部充 ,   A生

ページ範囲:P.207 - P.208

問 私は生理検査を担当していますが,過去に2回,心電図と心エコー検査中に患者さんの心停止を経験しました.至急,医師や看護婦を呼びましたが,これが私一人でいる時間が長びいていたらと,今考えるとゾッとします.このような場合,検査技師としてどのように対応するのがいちばんよいのでしょうか.(大阪府・A生)
答 臨床検査技師・衛生検査技師等に関する法律(昭和33・4・23,法76)の第2条に臨床検査技師の業務遂行に当たって「医師の指導監督の下に」行うことが明記されている.この条文は検査技師に対して検査を8項目に限定するとともに,医療行為に対して一つの歯止めを課したものである.したがって,法的には臨床検査技師には自分の判断による患者への治療行為は許されていない.しかし「医師の指導監督」という表現はきわめて抽象的であり,具体的内容がはっきりとしていない.日常業務の中で質問のような緊急事態に遭遇した場合,検査技師にとっては重大な問題となる.

コーヒーブレイク

人材発掘のノウハウ

著者:

ページ範囲:P.165 - P.165

 これは企業の研究部門でのことであるが、創造性のある人材をいかに見つけ出し、また、どのように技術者能力の育成を図るかという内容の報告が出されている。それによるとまず若い時期に決まるものとしての基礎スキル(技能)があり、これは例えば記憶力、認識力、数値能力、空間認知能力(図面を見て立体を相像する力)、手先の器用さなどであって、これらは教育不可能であるので採用時に判定すべきものとしている。これに対し教育が可能であるのは表現力、文章力、語学力などであり、これらはまとめて総合スキルとしての内容を持つという。ところが、いかに教育訓練をしても、このうち直観力、表現力、文章力、評価力などは、論理力の弱い人には育ちにくいとしている。
 これらはいずれも技術系の大学を出た人に対して考慮される共通の内容を持っており、将来の有能な人材確保のための一つのメジャーとして活用されているという。

ワンポイントアドバイス

採血のコツ—(1)患者への応対

著者: 末久悦次

ページ範囲:P.198 - P.198

 採血行為は,ただ血液を採取するという一点についてのみ考えられがちであるが,患者との応対から採取した血液の分注までの一連の操作であることを念頭に置かなければならない.
 痛みを伴う採血操作により患者が不安感を抱くことは避けられないことであるが,その不安は採血者側の患者との応対により多少なりとも軽減させることができる.このことは,付添いの患者の家族,乳幼児の親などについても事前に十分に理解を得て採血することが肝要であり,しいては採血行為を容易にするものである.

ニュース

第1回臨床工学技士国家試験の合格発表—2760名の臨床工学技士が誕生!

ページ範囲:P.209 - P.209

 1988年4月に施行された臨床工学技士法に基づき同年11月6日に第1回臨床工学技士国家試験が国立札幌病院(札幌),日本工学院専門学校(東京),大阪工業大学(大阪),第一薬科大学(福岡)の4か所で行われたが,その合格者および結果がさる12月9日,厚生省健康政策局医事課から発表された.それによると,受験者数3791名に対し合格者数は2760名(合格率70.4%)であった.今回の受験者は全員が臨床工学技士法附則第3条に基づく受験資格の特例による者であった.
 なお,臨床工学技士国家試験は臨床工学技士法第12条に基づき,試験の実施に関する事務を(財)医療機器センター(〒101東京都千代田区神田2-19-13 お茶の水・木村ビル(電話)03-255-9361)が行った.

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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