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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術17巻3号

1989年03月発行

雑誌目次

病気のはなし

狭心症

著者: 信岡祐彦 ,   村山正博

ページ範囲:P.220 - P.225

サマリー
 狭心症は,心筋酸素需要と血液供給(冠血流量)との間のアンバランスによる一過性の心筋虚血によって引き起こされる.その特有な胸部症状は,狭心痛あるいは狭心発作と呼ばれ,ニトログリセリンが著効を示す.狭心症の検査法としては,心電図,運動負荷心電図,長時間心電図,心臓核医学検査などがあるが,狭心症の直接的な原因となる冠動脈病変を診断,評価するためには,冠動脈造影が必要不可欠である.狭心症の治療としては,内科的(薬物)治療,PTCA,外科的治療(冠動脈バイパス術)の三者があり,狭心症の病型や程度,冠動脈病変の状況などに応じて治療法の選択がなされる.

技術講座 生化学

高圧セルロースアセテート膜等電点電気泳動法

著者: 長裕子 ,   飯島史朗 ,   芝紀代子

ページ範囲:P.238 - P.242

サマリー
 従来,等電点電気泳動の支持体として主にアガロースやポリアクリルアミドゲルが用いられてきた.一方,取り扱いの簡単なセルロースアセテート膜(以下,セ・ア膜)は,セパラックスEFという等電点専用の膜があるにもかかわらず実用化されていなかった.そこで本稿では日常検査法として十分に使用できるよう,筆者らの開発した泳動装置を用いてセ・ア膜等電点電気泳動法の操作法について詳細に述べた.

病理

穿刺吸引細胞診

著者: 坂本穆彦 ,   古田則行 ,   平田守男

ページ範囲:P.243 - P.247

サマリー
 穿刺吸引細胞診による標本作製上,特に注意を払うべき点は,検体採取後,固定に至るまでの処置にある.通常はパパニコロウ染色を用いるので,固定までの間に検体を乾燥させないことが重要である.採取された検体は,その量や性状によって,直接固定法,穿刺針塗抹法,すり合わせ法,引きガラス法,圧挫法のいずれかの方法によりスライドグラスに塗抹される.各方法の特徴をよく理解して適用を決めることが肝要である.乾燥した検体にはギムザ染色を行う.

検査法の基礎理論

自己血輸血

著者: 髙橋孝喜 ,   十字猛夫

ページ範囲:P.227 - P.232

サマリー
 自己血輸血は,手術時など輸血が必要と予想される場合に,他者からの輸血を回避する目的で行われる.自己の血液を用いることにより,肝炎などの感染症伝播,同種免疫による反応などの輸血副作用を防ぐことができる.方法には①術前希釈法(手術直前に患者血液を採取し,電解質液などと置換する),②術中出血回収再利用法(手術野への出血血液を回収し再利用する),③自己血液貯血法(術前に血液を蓄えておく)の三つがある.実施に当たって,ⓐ細菌汚染などの危険がない血液であること,ⓑ必要量の血液が安全に患者から得られ,他家血を要しないこと,ⓒ実際に輸血する際,誤りなく患者本人の血液であることを確認すること,などが重要となる.

尿試験紙法の原理と解釈

著者: 木庭敏和

ページ範囲:P.233 - P.237

サマリー
 尿試験紙法は単項目から最高10項自を組み合わせた複合試験紙が市販されており,その簡易性と診断的有用性から尿定性検査の主流をなしている.最近では,自己管理を目的に患者自身による検査も頻繁に行われている.検査内容も従来の蛋白,糖,潜血などの基礎的項目から,食塩やアミラーゼ活性を測定できるものまで発売されており,その使用価値は高い.しかし,いうまでもないが試験紙を取り扱うに当たっては,原理を十分に理解し,定められた事項を守って実施しなければ正確な成績は期待できない.
 本稿では,代表的な尿試験紙について,原理,取り扱い上の注意,偽陽性,偽陰性などを解説する.

ラボクイズ

尿沈査(1)

ページ範囲:P.248 - P.248

2月号の解答と解説

ページ範囲:P.249 - P.249

マスターしよう検査技術

呼吸機能検査—換気力学検査の測定法

著者: 菊池喜博 ,   浅野雅之 ,   木村啓二 ,   田口治 ,   三浦元彦 ,   佐藤誠

ページ範囲:P.251 - P.257

 呼吸機能検査は,各種呼吸器疾患患者の診断,病態の把握,治療効果の判定などに欠かすことのできない検査であり,近年の呼吸生理学研究の進歩に伴って多くの種類の呼吸機能検査が臨床的に使用されるに至っている.私たちの東北大学第一内科においても,外来ルチーン検査としてのスパイログラフィーおよび血液ガス検査をはじめとして,抵抗,コンプライアンス,拡散機能など,数多くの検査が施行されている.これらの検査のうち,本欄ではスパイログラフィーおよびボディープレチスモグラムを用いた換気力学検査について解説する.
 一般に呼吸機能検査は被検者に努力を強いるものが多く,手技のよしあしにより結果も影響されることがある.したがって,検者は被検者の努力をうまく引き出し,手技をうまく行わせるよう,吸気・呼気の合図とタイミングを工夫するとともに,説明もできるだけわかりやすくする必要がある.

検査ファイル 項目

hCG, hCG-β

著者: 伊藤節子 ,   竹下栄子 ,   内田侊子

ページ範囲:P.258 - P.259

 ヒト絨毛性ゴナドトロピン(human chorionicgonadotropin;hCG)は絨毛・胎盤から分泌される糖蛋白ホルモンで,α-およびβ-サブユニット(hCG-α,hCG-β)から構成されている.hCGの測定は妊娠の診断,絨毛性腫瘍の術後管理や治療効果の判定にきわめて重要である.一方,遊離hCG-βの測定は絨毛性腫瘍以外の悪性腫瘍の腫瘍病態を示すマーカーとして,近年,高い臨床的意義が認められてきている.
 現在,市販されているhCGのキットは数多くある.ここでは,汎用されているキットの測定原理の特徴を模式的に説明し,それらの特異性について述べる.

血小板第4因子(PF4)

著者: 島津千里 ,   鎌倉正英

ページ範囲:P.260 - P.261

 血小板第4因子(platelet factor 4;PF4)は,トロンビンなどの種々の刺激による血小板の活性化に伴い,β-トロンボグロブリン(β-TG),血小板由来成長因子(platelet-derived growth factor;PDGF)などとともに血小板のα顆粒(濃染顆粒)から血液中に放出される血小板特異蛋白である.分子量は約30000で,70個のアミノ酸から構成される,分子量7767のポリペプチドの四量体が,血管内皮細胞上のプロテオグリカンと結合した複合体として存在する.PF4の生理的役割は,強力にヘパリンの抗凝固活性を中和することに代表される.すなわち,血小板から放出されたPF4はヘパリンとアンチトロンビンIII(AT III)との複合体形成に際し,ヘパリンのC末端側と結合してヘパリン活性を抑制する.PF4は通常,血中に存在せず,血小板からの放出反応によって血中濃度が上昇する.したがって循環血流中のPF4の測定は,凝固亢進状態における生体内血小板活性化を直接的に反映する指標として,β-TGと併せて日常検査として広く用いられている.

機器

尿中成分測定用ドライケミストリー

著者: 塚田新一

ページ範囲:P.262 - P.263

 生体内成分の分析における固相分析法(ドライケミストリー)の開発は目覚ましく,多くの項目,機器が実用化されている.固相分析法を用いる試薬,機器は次の特長があり,緊急検査,ベッドサイド,外来などで利用されている.
 ①試薬が試験紙またはポリエステル支持体上にコーティングされており,試薬の調製が不要である.
 ②洗浄が不要であるため給・排水の設備が不要である.
 ③キャリブレーションは試薬のロット変更時および2〜3か月に一度である.
 ④24時間稼動が可能である.
 ⑤多層フィルム法では,多孔性の拡散層で高分子物質を除去することが可能である.

用語

α波

著者: 山内俊雄

ページ範囲:P.264 - P.265

 定義:α波とは脳波の中で8〜13c/sの周波数を持つ波をいう.

検査技師のための新英語講座 English for Medical Technologists・15

学会抄録集のタイトルから

著者: 今井宣子 ,  

ページ範囲:P.266 - P.267

先輩技師:これはある学会の抄録集です.英語の勉強のため,この抄録集の中からよい例をいくつか挙げてください.
 英文編集者:"An evaluation of the erythrocyte sedimentation rate(ESR)in pregnancy"というタイトルがありますが,これは2か所だけ問題があります.文頭のAnは不必要です.また,略語ESRも要りません.また,"The pathogenesis of UTI-urinary tract infection in vivo and in vitro studies of E. coli and Lactobacillae"というタイトルがあります.Theはとったほうがよく,略語UTIは不必要です,タイトルの中に句読点がありませんが,infectionの後にはコロンをいれたほうがいいでしょう.E. coliはEscherichla coliとフルネームで書かなければなりません.また必ず,動植物などのラテン語名はイタリック体で書くか,またはアンダーラインを付して書くべきです.Lactobacillus,in vivo,in vitroもイタリック体で書いたほうがいいのです.

ザ・トレーニング

地域における精度管理調査の方法

著者: 春田純吾

ページ範囲:P.268 - P.272

はじめに
 臨床検査の検査室間精度管理調査(以下,精度管理調査)については,日本医師会,日本臨床衛生検査技師会など全国的水準での精度管理調査のほかに,地域における精度管理調査の必要性もしだいに強調され,地域医師会,研究会グループによる精度管理調査の発足が多くなってきた.広域な精度管理調査は,全国的データの水準および検査方法または単位の動向はうかがえるものの,精度改善は参加施設の自主的努力を待つしかない.一方,地域精度管理調査は,主催者側と参加者のコミュニケーションを密に保つことにより指導・改善は容易かと思われる.筆者は,ここに地域における精度管理調査について,長崎県の例をもとにその方法を本誌の「トレーニング」として提示してみたい.

国家試験対策室

臨床検査総論I,II

著者: 宮原洋一

ページ範囲:P.273 - P.275

臨床検査総論I,II
例題
 臨床検査総論IとIIを通論,一般検査,関係法規の3種類に区分し(表),過去5年間の国家試験の平均出題率に沿って例題を作成した.各問題の正解は1個と限らない.

臨床病理学総論

著者: 眞下一彦

ページ範囲:P.276 - P.277

例題
1.腫瘍マーカーについて正しいのはどれか.
 a.CA 19-9は膵癌で陽性率が高い.
 b.A-フェトプロテインは転移性肝癌に特異的である.
 c.CEAは大量喫煙者や炎症性胃腸疾患でも高くなる.
 d.カルシトニンは甲状腺髄様癌の診断,手術後の経過や予後の判定に有用である.
 e.NSE(ニューロン特異エノラーゼ)は肺小細胞癌で増加する.

ハウ・ツー・ルチーン化・3

測定値の範囲と感度およびクロスコンタミ

著者: 伊藤進吾

ページ範囲:P.278 - P.280

はじめに
 自動分析機導入時の検討方法として,機器の特性,分析方法の特性(実測定系)の検討が行われている.今回はその中で後者に入る測定値の範囲と感度およびクロスコンタミの検討方法について述べる.

トピックス

カルパイン

著者: 神奈木玲児

ページ範囲:P.281 - P.282

 カルパイン(calpain,EC 3.4.22.17)は,Ca2+依存性のシステイン・プロテイナーゼの総称である.研究者によってCANP(Ca2+-activated neutral protease)と呼ばれる場合もある.中性付近のpHで働くCa2+依存性の細胞内蛋白質分解酵素である.
 初めて記載されたのは古く1964年であるが,近年Ca2+イオンが細胞内の情報伝達のメディエーターとして重要であることが判明するに伴って,Ca2+で引き金が引かれる一連の反応を触媒する酵素のうちの一つとして注目されている.

インターロイキン6(IL-6)

著者: 松田正 ,   平野俊夫

ページ範囲:P.282 - P.283

 骨髄の造血系幹細胞から発生・分化したB細胞は,T細胞やマクロファージの産生する種々の液性因子の影響下,生体防御反応の担い手である抗体分子を産生するようになる1)(図1).
 このB細胞の抗体産生細胞への増殖・分化の最終分化段階に作用するT細胞由来のB細胞分化因子(BSF-2)は,その性状ならびに構造が決定されるにつれて,線維芽細胞から産生されるインターフェロンβ2,26kDa蛋白質,また単球由来の肝細胞刺激因子,ハイブリドーマ/プラズマサイトーマ増殖因子と呼ばれていた他の因子と同一分子であることが明らかになった.その結果,BSF-2は種々の細胞から産生される多機能分子としてインターロイキン6(IL-6)と呼ばれるようになった.

一過性骨髄増殖性症候群(TAM)

著者: 須田純子

ページ範囲:P.283 - P.284

 Down症候群は,21トリソミーの染色体異常を有する疾患であり,新生児期には,いったん増加した芽球様細胞が自然消退するtransient abnormal myelopoiesis(TAM)という状態がしばしば見られ,先天性白血病との異同が論議の的となってきた.特徴としては,①芽球の増加は通常一過性で,自然消退し良性である,②芽球が多数存在するにもかかわらず,貧血,好中球減少,血小板減少は通常伴わない,③骨髄中の芽球より末梢血中の芽球の占める割合のほうが大きい,④芽球は21トリソミー以外の付加的染色体異常を伴わない,などが挙げられる1).TAMの症例のうち,Down症候群としての外見上の特徴を持たないものも,染色体分析を行うとモザイクであった例が数例報告されている.また体細胞の染色体分析では正常核型を示したにもかかわらず,血液細胞は21トリソミーのモザイクを示したという報告もあり,21番目の染色体異常とTAMとの関連性を強く示唆している.
 近年,TAMの芽球様細胞において表面抗原であるグリコプロテインIIb/IIIa陽性率が高いことが知られるようになった2).また,電子顕微鏡による血小板ペルオキシダーゼ(PPO)活性陽性を示す細胞が多いことも知られるようになった2)
 グリコプロテインIIb/IIIaは,非常に幼若な巨核芽球から血小板にまで広く分布しており,巨核芽球系細胞の指標とされているが,Fraserら3)は多能性血液幹細胞の表面抗原であることを報告している.筆者も,メチルセルロース法によるクローン性培養や液体培養でTAMの芽球様細胞が多系統の血液細胞に分化する症例を報告したの.臨床的にも芽球様細胞の減少に伴い,好中球,好酸球,好塩基球の増加が見られる症例がある.また電顕細胞化学的に見ると,芽球様細胞は,赤芽球系細胞に見られるθ穎粒を持つもの,好塩基球穎粒を持つもの,巨核球のα顯粒を持つものなど,さまざまな芽球が認められる2,5)

トロンボスポンジン

著者: 諸井将明

ページ範囲:P.284 - P.285

 トロンボスポンジン(thrombospondin;TS)は1971年,Baenzigerらによりトロンビンの作用によって血小板より生成される蛋白として初めて同定され,thrombin sensitive protein(TSP)と命名された.TSはその後,グリコプロテインIgあるいはグリコプロテインGなどとも称されるが,これらの名称がこの蛋白の性質をよく表しているとはいえないことから,TSへと名称の統一が図られ,現在に至っている1)
 TSは分子量42万の糖蛋白で,ジスルフィド結合によって結ばれた分子量約14万の同一のポリペプチド鎖3本から成っている.TSのアミノ酸配列構造はクローン化されたcDNA構造より決定された2).これによると,TSの各サブユニットはC端側に分子量約3万,N端側に約4万のTSに固有のアミノ酸配列が存在しており,その中間に3種の繰り返し構造が連なった構造を持っている.TSにはコラーゲンなどの蛋白に対して結合活性を持っているが,TSのプロテアーゼ切断断片の活性を検討することにより,N端の分子量約3万のペプチド部分にヘパリン結合部位と血小板凝集に関与する部分が,C端の分子量約7万の部分にCa結合部位ともう一つの血小板凝集に関与する部分が,中間の部分にコラーゲン,ラミニン,フィプロネクチン,フィブリノーゲン,プラスミノーゲンなどに対する結合部位がそれぞれ存在することが推定されている.このようにTSはフィプロネクチンなどと同様にモジュール構造をとっていると考えられる.

Anaerobic threshold

著者: 伊東春樹 ,   谷口興一

ページ範囲:P.285 - P.286

 細胞内のエネルギー産生様式には,TCA回路-電子伝達系での酸素を必要とする系(有気的代謝)と,解糖系のように酸素を必要としない系(無気的代謝)とがある.運動強度(運動負荷量)を漸増させていくと,ある負荷量において有気的代謝によるエネルギー産生に無気的代謝が加わって,血中の乳酸が急に増加し始める.このときの運動強度または酸素消費量をanaerobic threshold(AT)と呼ぶ1)
 動脈血中の乳酸濃度によりATを決定する方法もあるが,観血的であるうえに測定間隔がせいぜい30秒と長く,濃度は指数関数的に上昇するので,その変移点を決定するのは難しい.しかし近年,ガス分析器の発達に伴い,呼気ガス分析を併用した心肺運動負荷試験により非観血的にATが決定できるようになり,日常臨床へ応用することが試みられている.

けんさアラカルト

外部精度管理

著者: 河野均也

ページ範囲:P.226 - P.226

 臨床検査の信頼性を高めるために実施される精度管理には,大きく分けて各施設ごとに日常検査の中で実施される内部精度管理と,外部精度管理の二つがある.このうち外部精度管理は,多数の施設を対象として同一ロットの管理用試料を配付し,その分析結果を集計処理して,参加各施設における精度管理の状況を把握しようとするものである.

学園だより

東洋公衆衛生学院臨床検査技術学科

著者: 三村邦裕

ページ範囲:P.250 - P.250

■沿革
 東洋公衆衛生学院(現学院長・福武勝博)は,1966年1月,理事長・江藤仁之により渋谷区幡ヶ谷に創設された.当初は夜間部の臨床検査技師教育を行っていたが,'71年の法改正に伴い昼間部が発足した.その後'72年には校舎を現在の地,渋谷区本町に移転させ,昼・夜間部ともそれぞれ80名の学生定員となった.'80年には診療放射線技術学科,'82年には医療管理秘書科が続いて発足し,現在の医療職種には欠かせない人材の育成を行い今日に至っている.
 夜間部は,'86年の指定規則改正の際,厚生省の指導に基づき'87年度から募集を停止した.本校が夜間部から発足したことを考えると,教職員はもとより卒業生もたいへん寂しい思いがし,感概深いものがある.

けんさ質問箱

交差適合試験の非特異的反応

著者: 小松文夫 ,   T子

ページ範囲:P.287 - P.288

問 輸血の際の交差適合試験において,遠心直後では血球の崩れかたがややおかしい気がしたので,1時間ほど置いて見たところ,粗くなっていました.結果が(+)に出たのが食塩水法の主試験と対照のみでしたので,患者側に何か原因があるのでしょうか.夏ですから寒冷凝集反応も考えられず,鏡見しても連銭形成も認められません.また,輸血の可否についてもお教えください.(岩手県・T子)
答 交差適合試験において,主試験と自己対照とが凝集陽性を示した場合,原則として以下の三つのことをまず考えます.

脳血管障害時の心電図12誘導におけるST-Tの変化

著者: 樫田光夫 ,   A生

ページ範囲:P.288 - P.289

問 心電図の12誘導検査において,クモ膜下出血時におけるST-Tの変化と心疾患に関連のあるST-Tの変化の見分けかたについてお教えください.また,クモ膜下出血時のST-Tの低下は心筋の虚血を示すものでしょうか.(愛知県・A生)
答 クモ膜下出血をはじめとする脳血管障害時には,しばしば心筋梗塞と鑑別が困難な心電図所見を呈することがある.その心電図所見の特徴,頻度,鑑別診断,成因につき以下に概説する.

EF寒天培地に発育するEnterococcus属

著者: 久保勢津子 ,   M生

ページ範囲:P.290 - P.291

問 EF寒天培地(日水)に発育するEnterococcus属には,何菌種あるのでしょうか.茶色はE. faecalis,黄色はE. faeciumとされていますが,他の菌種が発育するとどのような色調を示すのでしょうか.(岩手県・M生)
答 ご質問のEF寒天培地ですが,一般の臨床細菌の検査室で使用されている場合は少ないかと思われます.そこで,簡単にこの培地の使用目的と原理について述べます.

尿中の還元性物質

著者: 森下芳孝 ,   A生

ページ範囲:P.291 - P.292

問 尿沈渣赤血球陽性,潜血反応陰性,アスコルビン酸陽性の尿にアスコルビン酸オキシダーゼを加えると,アスコルビン酸は陰性化するのに潜血反応は陽性化しない現象を経験しました.潜血反応を阻害する還元性物質はほとんどがアスコルビン酸と考えられていますが,アスコルビン酸以外には何が考えられるのでしょうか.また,それを消去するにはどうすればよいのでしょうか.(群馬県・A生)
答 本例は尿沈渣赤血球(+),潜血反応(-),アスコルビン酸(+)の患者尿について,アスコルビン酸オキシダーゼ(AODと略す)を用いてアスコルビン酸を陰性化したが,依然,潜血反応は(-)のままであり,両測定法間の測定結果が異なる,という例である.

ワンポイントアドバイス

採血のコツ—(2)採血器具,採血部位の選択

著者: 末久悦次

ページ範囲:P.225 - P.225

 注射器は,現在ディスポーザブルがその使用の利点上,広く使用されており,採血に際しては,採血量に応じた容量のものを使用する.採血針は,普通21G×11/2以下のものを使用するのが望ましく,細い注射針での採血は採血時間が長くかかったりして血液を凝固させることになる.
 また,針先が鋭くカットされていないものを使用すると穿刺の際,ことにおとしよりに見受けられるような血管が蛇行している場合には,なかなか血管内に針が入らないことがあり,針先の鋭くとがったもののほうが採血は容易であり,患者の痛みも少ない.

コーヒーブレイク

料理三昧

著者:

ページ範囲:P.237 - P.237

 北国の冬は厳しい。それだけに雪が融け、春の陽を浴びて枯草の中から芽を出すツクシやフキノトウを摘む喜びはたとえようもない。寒さの中で培われた料理のいくつかを紹介してみたい。

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昭和63年度第57回,第58回 二級臨床病理技術士資格認定試験 学科筆記試験—問題と解答

著者: 日本臨床病理学会 ,   日本臨床病理同学院

ページ範囲:P.293 - P.325

細菌学
 1.偏性嫌気性菌の培養に用いられない培地はどれか.

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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