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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術18巻9号

1990年08月発行

雑誌目次

病気のはなし

筋ジストロフィー

著者: 松永高志 ,   古川哲雄

ページ範囲:P.1156 - P.1160

サマリー
 筋ジストロフィー(PMD)は筋肉の変性・壊死を主徴とする難病である.PMDは遺伝形式などから各病型に分類されるが,代表的なものにはDuchenne型,Becker型,顔面肩甲上腕型,肢帯型,先天性筋ジストロフィーなどがある.Duchenne型はX染色体劣性遺伝で,3歳前後に発症し,多くは20歳前後までに死亡する最も重症の型で,有効な治療法はない.
 診断には血清クレアチンキナーゼなど酵素の定量,筋電図,筋CTスキャン,筋生検などが有用である.従来,PMDは原因不明とされていたが,最近Duchenne型,Becker型の遺伝子が究明され,遺伝子産物であるジストロフィンについても研究が進められている.

検査法の基礎

免疫組織化学

著者: 川井健司 ,   堤寛

ページ範囲:P.1161 - P.1167

サマリー
 細胞や組織内における抗原の局在を形態的に証明する方法として,病理検査室でルーチンとして行われつつある免疫組織化学(酵素抗体法)の基礎的な原理,手技,コツなどを中心に概説した.免疫組織化学を病理診断で活用しようとするときには,本法の方法論的な利点や欠点を十分に認識したうえで,結果を適切に評価することが必要といえる.

大腸がん集検のスクリーニング法としての便潜血テストの現状と問題点

著者: 光島徹 ,   永谷京平 ,   小久保武

ページ範囲:P.1169 - P.1173

サマリー
 4種類の免疫学的便潜血テスト(イムディア-Hem Sp,OC-ヘモディア,モノヘム,チェックメイトヘモ)の診断能力をグアヤック法であるシオノギBスライドと対比して検討した.結果は,いずれの免疫学的方法も1日法では,大腸がん集検のスクリーニング法としては進行癌の見落としが生じるなど性能不良であった.大腸がん集検が今後適正に発展し,受診者に信頼される検診になるためには,検査法の限界を正しく受診者に知らせて行うことが必須と考えられた.また大腸がん集検の精度向上のため,2日法,3日法などの便潜血テスト施行方法の工夫,さらにはより診断能力の高いスクリーニング法の開発が必要と思われた.

技術講座 生化学

ビリルビン酵素法

著者: 中山勝司

ページ範囲:P.1175 - P.1179

サマリー
 ビリルビンは肝・胆道系の病態を知るうえでなくてはならない検査項目であるが,その測定方法の主流は現在もなおジアゾ法が占めている.このジアゾ法とは測定原理を異にし,ここ数年急速に普及してきたのが,酵素法である.酵素法はビリルビンを特異的に酸化する酵素,ビリルビンオキシダーゼを用いる測定方法であり,特異性・再現性に優れ,共存物質の影響が少ないといわれている.ところが,この酵素法も直接ビリルビン測定時における酵素の反応性が,ビリルビン亜分画によって異なる,特にδビリルビンの酸化が不完全である,などの問題点が指摘されている.
 今回はこのような点をも含めて酵素法を解説してみた.

血清

サイトメガロウイルス抗体の測定法

著者: 青地寛 ,   永峰啓丞 ,   林悟 ,   押田眞知子 ,   倉田義之

ページ範囲:P.1180 - P.1184

サマリー
 サイトメガロウイルス(CMV)は,主として臓器移植後の免疫力低下時などに,初感染あるいは再感染や再活性化により間質性肺炎などの重篤な病気を引き起こすことから,重要なウイルスとして注目されている.
 CMV感染を診断する日常的な検査法としては,主として血清学的な方法が用いられている.その中で最も一般的な方法は補体結合反応であるが,近年,より高感度な,またより迅速な検査法として間接血球凝集法,免疫蛍光抗体法,酵素免疫抗体法などの方法も開発されている.筆者らの成績においても,酵秦免疫抗体法は補体結合反応と比較して感度も良好であり,客観的であるという結果を得ている.

細菌

黄色ブドウ球菌のエンテロトキシンおよびtoxic shock syndrometoxin-1の検出

著者: 五十嵐英夫

ページ範囲:P.1185 - P.1190

サマリー
 ブドウ球菌感染症の一つとして,toxic shock syndromeが提唱された.本疾病の原因は黄色ブドウ球菌の産生するTSS toxin-1やブドウ球菌エンテロトキシンであろうと考えられている.最近の研究によれば,これらの毒素は,ヒトを含めた種々の動物の生体防御系に深くかかわっており,そのことが本疾病の発症と関連しているのではないかと推測されている.今後,この方向の研究が飛躍的に発展することが期待されている.
 本稿では,臨床材料由来黄色ブドウ球菌のこれら毒素の試験法と疫学への利用について記述した.

病理

パラフィン切片におけるギムザ染色

著者: 石原力 ,   城下尚

ページ範囲:P.1191 - P.1194

サマリー
 ギムザ染色は血球やマラリア原虫の観察のための染色法として発達し,今日でも広く使用されている.この染色法を組織検査用のパラフィン切片に応用する試みは古くから行われてきたが,いまだ満足の得られる方法は少ない.成書によれば,固定法などにはツェンカー,ヘリーといった昇汞を含むものがよいとされているが1,7),水銀を含む固定液は環境汚染との絡みで廃液処理が大変であり,実用上問題が多い.また,染色時間も比較的長時間の方法も多く,ルーチン業務の中に組み込むうえで問題がある.また,染色液の中では大変きれいな状態に染色されているのにもかかわらず脱水の過程での脱色が早く,塗抹標本のような多彩な染色像とはほど遠い単調な染色標本となってしまいやすい.通常,組織標本作製に用いられる脱水用エチルアルコールは,ギムザ染色においてはまったく役に立たない.すなわち,エチルアルコールは分子量が少さく,ギムザ色素が容易に溶出してしまうため脱色が激しく,脱水用としては使用に耐えない6).また,塗抹標本のように乾燥による脱水法では,ギムザ染色の特徴的所見が保存されず観察の役に立たない.ギムザ染色においては,いかに水を抜き,封入し,標本とするかが課題といえる.

一般

尿沈渣標本の作製手技

著者: 川辺民昭

ページ範囲:P.1195 - P.1199

サマリー
 尿沈渣の標本作製手技には,検体採取,遠心操作,上清排出,染色,残渣1滴採取,カバーリングなど,鏡検までにいくつかの過程があり,それぞれに異なった方法があるが,精度のよい成績を出すためには手技の統一化が必要である.尿沈渣標本作製手技の標準法は現在のところ確立されていないが,本稿では現行の問題点を踏まえ,適切な標本作製手技について解説した.特に尿量(10 ml),残渣量(0.2ml),1滴採取量(15μl)を一定にするなど,標本作製における定量性の加味を強調した.

マスターしよう検査技術

異常ヘモグロビンの検索法

著者: 原野恵子 ,   原野昭雄 ,   櫛田由美 ,   上田智

ページ範囲:P.1203 - P.1208

はじめに
 糖尿病の血糖値コントロールの指標としてのグリコヘモグロビン(HbAIC)測定がHPLC(高速液体クロマトグラフィー)で行われるようになって,クロマトグラムのパターン異常の原因として,異常ヘモグロビン(異常Hb)が存在する例がしばしば見いだされるようになった.従来,異常Hbの検出には各種の電気泳動法(寒天,デンプン,セルロースアセテート膜など)が用いられてきたが,最近はもっぱら等電点電気泳動が主役の座を占めている.ごくわずかの等電点の違いをも明らかにするこの泳動法は,分析しようとする蛋白質自身が赤い(染色の必要がない)というHbの特徴を最大限に利用できる大変有効な方法である.異常Hbの分析は,ほとんどの検査室でなじみがないと思われるので,本稿では「異常Hbの検出法」について説明し,「異常Hbのアミノ酸置換検索法」の概略を示して,Hb分析のアウトラインを紹介する.

トピックス

インフルエンザ生ワクチンの可能性

著者: 上田重晴

ページ範囲:P.1231 - P.1232

 インフルエンザの予防にわが国では不活化ワクチンが用いられてきたが,ここ二,三年はその効果と副作用の点で種々の疑問が出され,ワクチン接種率は従来の20%以下になっている.筆者も不活化ワクチンを注射するという現行の方法が理にかなっているとは思わないので,その効果については限界があると思っている.インフルエンザのような気道粘膜の感染が直ちに発病につながるような場合には,ウイルスの進入門戸である気道粘膜での感染防御が成立するかどうかが病気の予防にとって最大のポイントになる.この点で,生ワクチンを自然感染ルートに経鼻噴霧すると,気道粘膜上に分泌型IgA抗体の産生を期待できるのと,最近明らかにされつつあるT細胞レベルでの核蛋白(NP)1),あるいは膜蛋白(M)2)認識による交差免疫の成立が期待できる点,生ワクチンには不活化ワクチンにない大きなメリットがある.
 インフルエンザ生ワクチンの開発・研究は,1960年代の初め頃から本格的に始まった.アメリカのChanockら,ソ連のSmorodintsevらが,そして日本では奥野ら3)が先鞭をつけた.有効性のメカニズムは別にして,Jenner以来ほとんどのワクチン開発は生ワクチンの研究が先行していた,インフルエンザの場合も同様であった.現在,最も研究が進んでいるのは,上記のグループよりは遅れて研究をスタートさせたMaassabらによるものである.

尿沈渣検査用スライドの有用性/わが国における太平洋裂頭条虫症の報告例

著者: 小泉文明 ,   宮原道明

ページ範囲:P.1232 - P.1233

 尿中有形成分の観察は,定性検査とともに各種疾患のスクリーニングに臨床応用されている.しかしながらその方法はまちまちであり,欧米では非遠沈尿を計算盤を用いて直接測定し,μl当たりの数で表現する場合が多いのに対して,わが国では遠心分離後の沈渣を鏡検し,1視野当たりの数で表現するのが一般的である.
 一方,沈渣の鏡検には多くの時間と労力が費やされるとともに,①遠心後,尿をデカントするか,あるいは沈渣が一定量となるようアスピレーターを用いて吸引するか否か,②遠心ならびに鏡検に用いる検体量,③遠心時間ならびに回転数,④染色の有無など,標本作製に際して統一された方法がない.したがって,各施設間でのデータのバラツキが予想されることから,その標準化が以前から提唱されてきた1).また遠心分離後の残渣をスライドグラス上に滴下し,カバーグラスをかける際,時に標本の厚さが不均一となり鏡検部位により有形成分の数が大幅に異なるなどの問題点も指摘されてきた.

エンドクリン,パラクリン,オートクリンコントロール

著者: 野々村祝夫 ,   松本圭史

ページ範囲:P.1233 - P.1234

 生体内の細胞相互間の機能的連絡は,主に化学的伝達物質(chemical messenger)によって営まれる.この伝達物質は,細胞から細胞へ直接伝わったり,細胞膜,細胞質あるいは核内にある受容体(レセプター)を介して伝達されたりする.このような方法で行われる細胞相互間の連絡に,エンドクリンコントロール,パラクリンコントロール,オートクリンコントロールがある.よく似た言葉であるが,微妙なニュアンスの違いがある.種々の細胞の増殖が増殖因子とのかかわりでとらえられるようになって,にわかにこれらの用語が多用されるようになった.それでは,このエンドクリンコントロール,パラクリンコントロール,オートクリンコントロールとはどういうものか,具体的に例を挙げて説明しよう.

ラボクイズ

〈問題〉病理

ページ範囲:P.1200 - P.1200

7月号の解答と解説

ページ範囲:P.1201 - P.1201

検査ファイル

〈項目〉ペプシンとペプシノーゲン

著者: 姫野誠一 ,   黒川正典

ページ範囲:P.1216 - P.1217

はじめに
 ペプシン(PP)は胃液中の胃酸存在下に蛋白分解活性が発揮される強力な消化酵素であるが,胃酸とともに消化性潰瘍発生における攻撃因子の一つとしても重要である.その前駆体であるペプシノーゲン(PG)は主に胃体部主細胞から胃内腔に分泌し,その約1%が血中に逸脱する.したがって,血中PGレベルは胃粘膜内合成量と密接に関連して胃分泌能や粘膜萎縮の程度を反映していると考えられている.

〈項目〉トロンビン・アンチトロンビンIII複合体

著者: 佐藤猛 ,   福武勝幸

ページ範囲:P.1218 - P.1219

はじめに
 トロンビン・アンチトロンビンIII複合体(TAT)とは,血液凝固過程の進行により活性化されるトロンビンと,その生理的インヒビターであるアンチトロンビンIII(AT III)とのアシル複合体である(図1).このTATは凝固反応において生成されるトロンビンの量を反映するもので,これを測定することにより凝固亢進状態を早期に知ることができると考えられている.

〈試薬〉尿の防腐剤

著者: 宮地登三 ,   内田壱夫

ページ範囲:P.1220 - P.1221

 尿中の成分を検査するとき,まず考慮しなければならないのは,細菌による成分変化である.尿には感染症でなくとも多種類の常在菌が存在し,女性では会陰部由来の汚染菌が尿に混入する場合がある.
 尿は非常に良好な培地であり1),検査するまでに長時間放置される場合や,1日尿のように24時間以上放置される場合は,細菌から成分を保護するために防腐が必要である.しかし,現状では尿の防腐についてあまり注意されておらず,防腐剤についても性状や特徴が知られずに用いられている.

〈用語〉糖鎖抗原

著者: 神奈木玲児

ページ範囲:P.1222 - P.1224

[1]概念
 糖鎖はさまざまな抗原性をもっている.図1に示すように,細胞の表層では糖鎖は脂質に結合した形(糖脂質〔glycolipid〕と呼ぶ)か,あるいは蛋白質と結合した形(糖蛋白質〔glycoprotein〕)で存在するのが普通である.これらが細胞の糖鎖抗原(carbohydrate antigen)の重要な担い手である.糖脂質も糖蛋白質も,脂質部分かまたは蛋白質部分が細胞膜に埋め込まれており,ここから細胞の外側に向かって糖鎖が生えている.どのような糖鎖も,図2に示すように,その構造は最もコア分子に近い部分から順に,母核構造,基幹構造,修飾構造の三つの部分に分けて考えることができる.糖脂質も糖蛋白質も,糖鎖と,脂質や蛋白質のごとき糖鎖以外のものが複合してでき上がっている分子なので,合わせて複合糖鎖(glycoconjugate)とも呼ばれる.生体内には,ほかに何も結合しないで糖鎖だけの形で存在しているもの(オリゴ糖,多糖)もあるが,これらは抗原としてはむしろさほど重要でない.

検査データを考える

電解質異常

著者: 高野朋子

ページ範囲:P.1225 - P.1229

 ひと口に電解質といっても数多くの種類があるが,日常の臨床で主に測定されるのは,ナトリウム(Na),カリウム(K),クロール(Cl),無機リン(IP),カルシウム(Ca)の五者である.この中でも,特に高頻度に測定され,臨床上で重要な意味を持つのは,NaとKであろう.さらに最近では,心筋との関係からマグネシウム(Mg)が注目されており,施設によってはルーチンのセット検査の項目の中にMgが含まれる所もある.おのおのの測定方法の実際的なところは,読者諸氏のほうがよくご存じのことと思うので,本稿では,臨床家の立場から電解質測定に関して陥りやすい落とし穴について,いくつか述べることとする.なお,紙数の都合から,無機リンとカルシウムに関しては他の機会に譲りたい.

検査技師のための新英語講座・32

発表(その3)

著者: 今井宣子 ,  

ページ範囲:P.1212 - P.1213

新人技師:私,英語で学会発表をしなければなりません.人前で英語発表するのはこれが初めてです.今,その準備をしているところですが,演説そのものについてはもう準備が終わりました.英会話の先生に,私のために演説のテープを作ってもらうよう頼みました.先生は,二,三の専門用語について発音を確認するために辞書を調べました.私はそのテープを聞いて,演説の練習をしています.これから,演説の後の質問時間のために何か準備したいと思っています.演説の時間は10分で,質問の時間は5分です.私はこの5分間がとても恐ろしいのです.何を聞いてきているのか,わからなかったらどうしよう?

検査報告拝見 化学検査

東京慈恵会医科大学附属病院中央検査部

著者: 池田清子 ,   斉木良明 ,   柴崎敏昭 ,   町田勝彦

ページ範囲:P.1214 - P.1215

 従来は化学検査の一部のみであったコンピューターシステムの対象を,昭和62年に化学血清血液科の全部にまで広げた.システム化の目的の一つは伝票の種類の削減であり,種々の討論を経て現在のような報告書になった.これらの報告書について簡単に紹介する.

ザ・トレーニング

正しい蓄尿のしかた

著者: 森嶋祥之 ,   大場康寛

ページ範囲:P.1209 - P.1211

はじめに
 日常の検査材料として,血液(血清,血漿,全血),尿,髄液,胸水,腹水および分泌液などがある.中でも,尿は非侵襲的に簡単に採取ができ,しかも全身状態の情報を広く得られることから,検査材料の中では最も古くから検査に用いられている.
 検査材料の尿には,主として定性検査に用いられる1回尿(早朝尿,随時尿など)と,定量検査に用いられる蓄尿(6時間尿,24時間尿など)がある.尿から排泄される蛋白,糖などは食事,水分摂取,運動量などに左右され,またホルモン様物質は日内変動を示す.したがって,1回尿では正確に病態を把握しにくいので,検査材料として24時間蓄尿が用いられることが多い.尿の採取については,1回尿に比べ24時間蓄尿は患者の時間ならびに行動を拘束することから,正確な採取は難しい.そこで,今回は,正確な24時間蓄尿の実践に当たってのポイント1〜4)をQ & A方式で概説し,正しい蓄尿のしかたの参考に供したいと思う.

明日の検査技師に望む

今まで以上に医療人としての自覚を

著者: 河合忠

ページ範囲:P.1174 - P.1174

検査内容の展望
 臨床検査のプロセスは主治医の医命に始まって,その結果が医療に効率的にフィードバックされるまでの間に,分析前(preanalytical),分析(analytical)および分析後(postanalytica1)の過程に分けられる.分析前の過程に含まれるのは,被検者の準備,検体の採取,検体の処理・運搬,検体の保存などである.分析過程は,検体検査と生体検査で原理的にも,また行動パターンのうえでもかなり異なっている.検体検査は二極化が進み,中央化・自動化の方向と簡易化・即時化の方向である.後者では,無侵襲化も志向され,いよいよ生体検査との違いが必ずしも明確でなくなりっつある.分析後の過程に含まれるのは,データの表示,データから医学情報への変換および専門医による判断などである.これらのうち,データの表示法とデータの情報化については,コンピュータの普及による診療支援システムの構築によって,今後ますます日常診療に深くかかわりを持ってくると考えられる.

けんさアラカルト

時間外緊急検査

著者: 田川正和

ページ範囲:P.1168 - P.1168

 このテーマは,どこの検査部門にとってみても問題の多いテーマであると思う.しかし,時間外緊急検査という呼び名は,今後なくなるのではないだろうか.
 まず「緊急」という用語について考えてみよう.臨床検査本来のありかた,その目的を考えたとき,すべての検査が緊急であるため,今日,「緊急」という語句が使われなくなってきている.次に「時間外」について考えてみよう.病人は昼夜を問わず24時間発生しており,夜間,病人が家で我慢していたのはつい最近までのことである.「勤務時間内に病気になって病院で検査してもらえてよかった」ということはなくさなければいけない.今日では検査の重要性,必要性は誰でも知っている.時間内に必要な検査は時間外でも当然必要であり,検査室としては時間内・外と区別することなく24時間受け付けとする体制にあることが望ましいのである.

けんさ質問箱

Q 屈折計と比濁法における総蛋白測定値相違の原因について

著者: 吉田俊彦 ,   大沢進 ,  

ページ範囲:P.1237 - P.1238

 ある症例で血清総蛋白濃度を測定したところ,屈折法で3.8g/dl,比濁法で4.5g/dlとなりました.考えられる原因は何でしょうか.なお,測定には,アタゴ血清蛋白屈折計Nを使用しており,10.0mg/100ml食塩水で蛋白目盛りが7.2g/dlを示すことから屈折計には異常がないことを確認しています.測定温度は室温で26℃です.参考までに患者(骨粗鬆症,パーキンソン症候群)の過去のデータを記します.

Q small q波について

著者: 鈴木典夫 ,  

ページ範囲:P.1238 - P.1240

 異常Q波についてはよく目にしますが,small q波にも異常q波があると聞きました.small q波の正常・異常の区別および臨床的意義と疾患との関係についてお教えください.

Q 白血球数変動の原因は

著者: 折田登志子 ,  

ページ範囲:P.1240 - P.1241

 血球数算定検査において白血球数が2,800個/μlを示したため2.5時間後に再採血をして検査をしたところ,14,800個/μlでした.この変動原因として臨床的に,あるいは測定手技上で,どのようなことが考えられるでしょうか.なお,患者は80歳の男性で,敗血症,右膝関節炎で入院中です.また,残った検体で血液型を調べたり,赤血球から成績を対比したりしましたが,検体の取り違えは考えられません.

Q 「トネイン-TP II」の使用で凝集による吸光度の低下

著者: 芝紀代子 ,  

ページ範囲:P.1241 - P.1242

 尿蛋白定量試験「トネイン-TP II」を使用中,尿試料(蛋白尿)と試薬を混合すると,反応液中に凝集が認められ,吸光度が低下します.当検査室でもいろいろ検討しましたが,その原因がはっきりしません.たぶん,試薬中に含まれるSDSが凝集に関与していることが推測されます.―反応液中の凝集のできるメカニズムとSDSの影響についてお教えください.

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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