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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術19巻1号

1991年01月発行

雑誌目次

病気のはなし

気管支喘息

著者: 佐々木憲二

ページ範囲:P.6 - P.13

サマリー
 気管支喘息は,可逆的な気道収縮とそれによる喘鳴が特徴である.その気道収縮は,気道を通じて侵入したアレルゲンが,感作によってあらかじめ作られていた抗体にとらえられ,肥満細胞の膜に作用して,気道収縮物質を放出して,迷走神経末端(咳レセプター)を刺激したり,直接作用で気道平滑筋が収縮することによる.
 このようなアレルギー反応は,体質によるが,だんだんに気道収縮性を獲得して,成年期以後に発症することもあり,繰り返す気道上皮の刺激が収縮閾値を下げるためと考えられる.その他,喘息の様々の型や未解決な問題点,検査上の注意や,治療法について論じた.

検査法の基礎

抗核抗体の検査法

著者: 長野百合子 ,   𠮷野谷定美 ,   大久保昭行

ページ範囲:P.15 - P.19

サマリー
 抗核抗体の検査は,自己免疫疾患の診断に欠かせない重要な検査である.自己免疫現象が個体の中で発生したことを告げる最も敏感な検査である.この診断的価値は,抗核抗体が臓器特異性,種特異性を示さないことに根ざしており,そのような自己抗体は個体の免疫機能の異常がないと発生しないと考えられるからである.ルーチンの検査法として最もポピュラーなものは,HEp-2細胞を使った蛍光抗体間接法であり,それにゲル内免疫沈降反応による検査法を併用して抗核抗体の検査が行われている.これらの検査法により細分化された抗核抗体の種類は,膠原病,自己免疫疾患,肝疾患等の個別の疾患に特徴的に現れることが知られている.この抗核抗体の種類と疾患の対応を知ることは,臨床家にとって大きな利益をもたらす.

画像検査法の基礎

著者: 長倉俊明

ページ範囲:P.21 - P.26

サマリー
 超音波画像診断は,今や臨床の現場においては,必須のものとなってきている.臓器の形態学的診断には,まず行うべき検査となっている.さらに,実時間で観察できる特徴をもっているので,例えば循環器の分野では,心機能評価に使われ,ドップラー効果の応用で,速度変化の情報も得ることができる.
 これだけ有効な手段ではあるが,超音波だけではフォローできない場合もあり,各種画像診断のそれぞれの特徴を生かして,組み合わせて診断すべきである.表1に一般的な画像の特徴を示した.これらの原理と特徴について簡単に解説した.

技術講座 生化学

M蛋白の検出と検査の進めかた

著者: 〆谷直人 ,   大谷英樹

ページ範囲:P.27 - P.32

サマリー
 M蛋白(単一クローン性免疫グロブリン)は,一般に日常の電気泳動法で幅の狭いバンド,あるいは尖鋭なピークとして観察される.M蛋白が疑われる場合には,次いで免疫電気泳動法によりM蛋白のクラスとタイプを決定しなければならない.M蛋白は約20種類のものが知られているが,特に診断的意義のあるM蛋白には,IgM型M蛋白とH鎖病蛋白とがあり,IgM型M蛋白がIg/dl以上の場合は原発性マクログロブリン血症を疑い,H鎖病蛋白が同定された場合はH鎖病と確定診断できる.また,単一クローン性L鎖(Bence Jones蛋白)は血中より尿中の検出率が高く,B細胞系の悪性化腫瘍(骨髄腫,原発性マクログロブリン血症など)の診断に有用である.免疫電気泳動法でM蛋白の同定が困難な場合には,immunofixation法などの特殊な方法を用いるか,あるいはM蛋白を抽出精製して分析しなければならない場合もある.

輸血

輸血用血液からの白血球除去法とその意義

著者: 大坂顯通 ,   湯浅晋治

ページ範囲:P.33 - P.36

サマリー
 血液センターから供給されている血液製剤中には多量の白血球が混入しており,輸血副作用の多くはこの混入白血球に起因すると考えられている.即時型輸血副作用である非溶血性発熱反応は,白血球をある程度除去した製剤を用いれば防ぐことが可能である.遅発性輸血副作用である同種免疫反応および移植片対宿主病(GVHD)に関しては,極めて少ないリンパ球の混入が問題となる.近年,第三世代の吸着フィルターが開発され,高率に白血球除去が可能となったが,なおバッグ内には107個程度の白血球が残存している.現在のところ,輸血後GVHDの防止には白血球除去フィルターを用いるだけでは不十分であり,放射線照射をすることが必要である.

微生物

深在性真菌症の血清診断

著者: 前崎繁文 ,   河野茂 ,   原耕平

ページ範囲:P.37 - P.41

サマリー
 深在性真菌症の血清診断法として,次のようなものが現在行われている.①カンジダ症については,ⓐリムルステストを利用した真菌指数の測定,ⓑカンジダ抗原の検出法としての抗体感作ラテックス凝集反応を利用したCAND-TECとマンナン抗原の検出,ⓒカンジダの代謝産物の検出法としてD-アラビニトールの測定,②クリプトコックス症については,莢膜多糖類に対する抗体で感作したラテックスを用いた凝集反応として,セロダイレクト栄研クリプトテストやCRYPTO-LA TEST,③アスペルギルス症については,寒天ゲル内二元拡散法による沈降抗体の検出である.深在性真菌症の血清診断法は現在まで決定的な検査法はなく,幾つかの検査法を組み合わせ,臨床症状や菌学的検査などを総合的に判断し,診断をする必要があると考えられる.

生理

循環器領域における超音波検査の進めかた—[1] 心エコー図

著者: 増田喜一

ページ範囲:P.43 - P.48

サマリー
 なんら患者に侵襲を与えることなく,簡便に心臓の形態や動態がわかる心エコー図検査は,最近の超音波検査装置の急速な進歩も手伝い,循環器領域においてはいまやなくてはならない検査法の一つになってきた.中でも,断層心エコー図検査は心疾患の診断には不可欠であり,形態や機能診断を行う場合の代表的な方法である.ところが,心臓疾患に対する診断精度が飛躍的に向上した反面,超音波の基本的な原理,特徴などの理解不足のためにアーチファクトなどのゴーストエコーを誤って判定し,正確な診断の妨げとなる場合も少なくない.したがって,より的確な情報を得るためには,心エコー図法の基礎的な知識,操作法などをマスターしておく必要がある.

一般

尿中変形赤血球の検査法

著者: 森河淨 ,   岡田敏春 ,   黒田満彦

ページ範囲:P.49 - P.53

サマリー
 糸球体由来の血尿では,非糸球体由来のものに比べ,尿中変形赤血球の出現する割合が多いことが知られており,これを利用して,血尿の発生部を推定しようとするアプローチがある.尿中変形赤血球の判定は顕微鏡的観察によりなされてきたが,最近,より客観的に尿中赤血球の粒度分布パターンを解析することによって,血尿の由来を診断しようとする方法が試みられている.まだ若干の制約があるが,粒度分布解析による血尿の鑑別診断法は,今後期待される点が多いように思われる.

マスターしよう検査技術

抗ENA抗体の検出と同定法

著者: 長野百合子 ,   𠮷野谷定美 ,   大久保昭行

ページ範囲:P.57 - P.62

はじめに
 ENAはextractable nuclear antigensの略で,「可溶性核抗原」あるいは「抽出核抗原」といわれる.DNAやクロマチンに結合しているヒストンは酸で抽出できるのに比べ,ENAとして使われる非ヒストン蛋白質は生理食塩水やリン酸緩衝液で分離される,比較的核との結合力が弱い蛋白質と考えられる.またHMG(high-mobility group proteins)と解析されている.ポリアクリルアミドゲル電気泳動で移動度が高く,分子量が小さい蛋白質群に含まれる.等電点分析から酸性蛋白抗原nuclear acid protein antigen(NAPA)と塩基性蛋白抗原という分けかたもされる.
 抗ENA抗体は膠原病の患者に高頻度にみられる抗体である.その対応抗原のほとんどが核酸と蛋白質との複合体であることが知られ,粗抗原は組織細胞の核分画から抽出されるが,細胞質成分も含んでいると推測される.初めに抗ENA抗体検査の実際を示し,次に免疫拡散法(Ouchterlony法)と免疫ブロット法(Western blotting法)について述べたい.

検査ファイル

項目●IV型コラゲン

著者: 中野博 ,   中林仁美 ,   辻井啓之

ページ範囲:P.76 - P.77

 コラゲン(collagen)は多くは骨,軟骨,腱,皮膚,角膜などの結合組織に,一部は肝,肺,心などの臓器内結合組織に分布している.コラゲン蛋白は,構成アミノ酸のうちグリシンが1/3を,プロリン,ヒドロキシプロリンも1/10を占める特異なアミノ酸構成を持った3本のペプチド(α鎖)がラセン状により合わさった(ヘリックス)構造を持っている.またコラゲンは単一でなく,遺伝的に異なる12種のものがある.これらの12種のコラゲンはローマ数字でI型,II型,III型,IV型のように表現され,組織,臓器により異なる型のコラゲンが分布している.このうちI,III型は長く,丈夫な線維を作り,皮膚,腱,骨などに多い.一方,IV型コラゲンは基底膜に存在し,カルボキシル基末端側の球状のNC1,NC2領域,アミノ基末端の7S領域,および中間のヘリックスを作る四つの部分から構成され,コラゲン蛋白2分子のNC1部分同士の結合,4分子の7S領域が結合して図1に示すような網状の柔軟性に富む構造を持っている.組織のIV型コラゲンはプロテアーゼで分解され,血中では7S領域,NC1領域,ヘリックスを含む部分など多様な分解産物が存在すると考えられる.正常な肝臓にはIV型コラゲンは少量しか含まれないが,肝硬変では肝の類洞壁周囲の内皮細胞を中心にして基底膜が形成されることが形態学的に確認されている(図2).

項目●糞線虫

著者: 志喜屋孝伸

ページ範囲:P.78 - P.79

 糞線虫(Strongyloides stercoralis)はわが国では九州以南に浸淫しているが,その他の地域ではまれである.しかし,浸淫地の出身者がその他の地域へ移住し,そこで発症した場合には診断に苦慮することが少なくない.そのため浸淫地の出身者が消化器症状などを呈したときには,糞線虫症も念頭に置く必要がある.
 糞線虫の検出法にはこれまで下記の方法が用いられていた.

用語●乳児ボツリヌス症

著者: 井上博雄

ページ範囲:P.80 - P.81

[1]ボツリヌス菌と毒素
 ボツリヌス菌は芽胞を有するグラム陽性の偏性嫌気性桿菌であり,土壌細菌として,塵埃や食物を介して,われわれが絶えず身近に接している菌である.この菌から産生される毒素前駆体は蛋白分解酵素で分解されて活性化され,コリン作動性神経接合部に作用して,アセチルコリンの遊離を阻害する.その結果,弛緩性筋麻痺を起こし,時に呼吸不全によって死亡する.
 菌型は毒素の血清型によって8型(A,B,C1,C2,D,E,F,G)に分類される.また,蛋白分解能の有無など生物学的および生化学的性状に基づいて,1群(A型と蛋白分解性のB型,F型),2群(E型と糖分解性,蛋白非分解性のB型,F型),3群(C1型,C2型,D型),および4群(G型)に分類されている.乳児ボツリヌス症の原因菌はほとんどすべてが1群に属する.

機器●骨塩分析装置

著者: 白木正孝

ページ範囲:P.82 - P.85

[1]目的
 骨は加齢とともに減少する臓器である.骨が減少するのは骨マトリックスと骨ミネラルがともに減少するのであって,どちらか一方が偏って減少することは特殊な例を除いてない.したがって骨の減少過程は,骨ミネラルの密度を測定すれば,かなりの精度で検知しうる.骨は減少すると,支持組織としての能力を失い,微小な外力で骨折する.このような骨折が老年者に生ずると,老年者の日常生活能力を著しく障害する.したがって,加齢に伴う骨減少の程度を検知し,きたるべき骨折が予測される際には,これを予防し,治療することが重要である.
 骨塩分析装置は,この目的に沿って,骨ミネラル(骨塩)の量または密度をin vivoで測定すべく開発された機器である.ちなみに,通常の加齢現象以上に骨が減少した状態を骨粗鬆症と呼ぶが,この疾患を診断する際には,必ず骨量の多少をなんらかの手段で判定すべきであるとされている(厚生省診断基準).すなわち,将来的には骨粗鬆症の診断は骨塩分析装置により定量的に示されるべきと考えられている.

トピックス

B型肝炎ウイルスのサブタイプとその遺伝子構造

著者: 四元茂 ,   岡本宏明

ページ範囲:P.71 - P.72

 HBV粒子(発見者にちなんでDane粒子とも呼ばれる)は直径が42nmの球形粒子で,その外側はエンベロープ(外殻),内側はコア粒子で構成されている.コア粒子内にはHBVに関する遺伝情報を担っている2本鎖DNAや,そのDNAが合成されるときに必要な酵素であるDNAポリメラーゼなどが存在している.
 B型肝炎ウイルス(HBV)に感染している人の血清中には,感染粒子であるHBV粒子と,過剰に産生されたエンベロープ成分のみで構成される小型球状粒子や管状粒子が存在している.したがってエンベロープに担われるHBs抗原の抗原性はHBV粒子表面のみならず,小型球状粒子や管状粒子の表面にも存在する.

キサンチン尿症と尿酸値

著者: 越智正昭 ,   村瀬光春

ページ範囲:P.72 - P.73

 プリン代謝系の最終段階に位置するキサンチン酸化酵素(XOD)は,ヒポキサンチンをキサンチンへ,さらにキサンチンを尿酸へと変換する.先天性キサンチン尿症はXOD活性の遺伝的障害により尿酸が著明に減少し,逆に尿酸の前駆物質であるオキシプリン(キサンチン,ヒポキサンチン)が多量に増加する疾患である.現在までにわが国の16例1)を含む50数例の報告がある.
 最初の報告は,1954年,Dentら2)でキサンチンの沈着した尿路結石症である.その後,1979年,Duranら3)はXODの低下に亜硫酸酸化酵素活性の低下を伴い痙攣,知能発達遅滞,頭痛,昏睡などの神経症状を合併したキサンチン尿症を報告した.1983年,Holmesら4)は,キサンチン尿症をDentらのXOD活性単独欠損型である古典的キサンチン尿症と,Duranらのモリブデン代謝異常との関連性が示唆される亜硫酸酸化酵素活性の低下型に分類した.50数例中ほとんどは前者で,後者はわずか5例にすぎない.

悪性リンパ腫の遺伝子診断

著者: 福原資郎

ページ範囲:P.73 - P.74

 悪性リンパ腫の腫瘍クローンにみられる染色体の構造異常は,初発変異とこれに付随する続発変異に分けられる.初発変異は疾患特異性をもつものが多く,続発変異は腫瘍の進展と増悪に関係する.悪性リンパ腫における癌関連遺伝子の関与およびその活性化の機構は,腫瘍クローンの特性を規定するこれらの染色体構造異常との関連において研究が進んできた1)
 悪性リンパ腫を含むリンパ系腫瘍は,未分化型腫瘍と分化型腫瘍に大別すると,対照的に異なる初発変異をもつ.多くの未分化型または初期分化型腫瘍は,急性リンパ性白血病(ALL)として診断される.分化型腫瘍では,多様な臨床病理診断にかかわらず,リンパ球の分化に伴って発現する機能遺伝子の座位に関連した構造異常が好発する.すなわち,B細胞側腫瘍には,免疫グロブリン(Ig)の重鎖(H)遺伝子の座位である14q32転座を高頻度に認める.T細胞側腫瘍では,T細胞受容体(TCR)遺伝子の座位である7q34-q36(TCRβ)転座や7q15(TCRγ)転座がみられ,最も分化したと考えられる成人T細胞性白血病/リンパ腫(ATLL)や末梢性T細胞リンパ腫では,14q11(TCRα-δ)転座が好発する.これらの染色体転座は,それぞれに位置するリンパ球固有の機能遺伝子と転座の対側染色体上に座位する癌関連遺伝子との結合をもたらす造腫瘍性の初発変異である.

IgE抗体の新しい検査法

著者: 山下直美 ,   森田寛

ページ範囲:P.74 - P.75

 喘息,アレルギー性鼻炎,アトピー性皮膚炎,食物アレルギーなどⅠ型アレルギーが,近年,小児,成人を問わず増加している.
 石坂らにより同定されたIgEは,Ⅰ型アレルギーの発症に主要な役割を果たしていることが知られている.IgEは,肥満細胞や好塩基球の細胞の表面に結合し,当該抗原との反応によって種々の化学伝達物質を遊離させる.よって,IgE抗体の検出は,診断また治療のうえでも重要な検査である.

ラボクイズ

[問題]心電図

ページ範囲:P.54 - P.54

90年12月号の解答と解説

ページ範囲:P.55 - P.55

検査データを考える

高カルシウム血症—悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症の鑑別診断

著者: 本田聡 ,   長崎光一 ,   山口建

ページ範囲:P.67 - P.70

 悪性腫瘍に随伴する種々の症候のうちで高カルシウム血症はしばしば遭遇するものの一つであり,患者の予後やquality of lifeに悪影響を及ぼす.国立がんセンター病院の集計では,総入院患者の3.5%,進行癌患者に限れば約10%という高頻度で10.6mg/dl以上の高カルシウム血症が認められ,12mg/dlを超えると予後は有意に不良となった1)
 悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症は,想定される発症機序により二つの範疇に大別されている.その一つは,高カルシウム血症惹起作用を有する体液性因子が腫瘍組織から産生放出されるというもので,humoral hypercalcemia of malignancy(HHM)と呼ばれている.後述するように,この体液性因子は副甲状腺ホルモン(parathyroid hormone;PTH)と類似する生物活性をもつ物質が主体と考えられている.もう一つは,広範な骨転移浸潤部局所において骨吸収作用が亢進し,高カルシウム血症が引き起こされるlocal osteolytic hypercalcemia(LOH)である.本稿では高カルシウム血症を伴う悪性腫瘍例の7割以上を占めるといわれるHHMについて,その具体例を挙げ,診断および病態生理を理解するうえで重要と思われる検査上のポイントを述べてみたい.

生体のメカニズム・1

免疫反応にかかわる細胞

著者: 笠倉新平

ページ範囲:P.63 - P.66

Ⅰ.免疫とは
 人体に病原体が侵入したり,他人の臓器を移植したり,癌細胞が生じたりした場合,人体はそれらを自分以外の異物として認識し,それに対して反応して排除しようとする.このような反応が,いわゆる免疫反応である.免疫という言葉は,伝染病(疫)を免れることを意味しているのである.
 免疫反応は,液性免疫と細胞性免疫に分けて考えられている.液性免疫というのは,抗体が関与する免疫機序であり,抗体による細菌・ウイルスなどの中和や殺菌がその例である.これに対して,リンパ球そのものが主役を演ずるものを細胞性免疫と呼んでおり,ツベルクリン型皮内反応,臓器移植時の移植拒絶反応,抗腫瘍免疫(標的細胞傷害反応)などがこの型に属する.

講座 英語論文を読む・1

著者の手引

著者: 弘田明成

ページ範囲:P.86 - P.88

英語講座を始めるに当たって
 近年は臨床検査の分野の進歩が目覚ましく,こうした背景のもとに,検査技師にもより高度な技術やup-to-dateの知識が要求されている.そして,必然と諸外国との交流が活発となり,欧文,特に英語の文献を介して新しい知識や情報をやりとりすることが不可欠となっている.しかし,英語を苦手としている方が多いこともまた事実である.このシリーズでは,実際の研究論文の中から興味あるテーマや新しい技術を扱ったものを引用しながら英語論文に慣れてもらうとともに,専門用語の習得や読解力の向上を目指してもらうものである.
 科学論文に限らず,論文を読む前には,まずその組み立てかたを理解することが大事である.臨床検査関連の論文の中でもとりわけ高頻度に利用されている“Clinical Chemistry”には,数ページから成る‘Information for Authors’(著者の手引,投稿の指針)が投稿する人のための手引として各号に掲載されている.ここでは論文の構成,科学用語の使いかた,単位の表現などを懇切丁寧に解説している.この手引は投稿をする場合のみならず,科学論文を読む人にも,ぜひ一読してもらいたいものである.今回はこの手引の一部を引用して,論文の構成とともに英文読解の入門としたい.

明日の検査技師に望む

検査技師に対するイメージ

著者: 遠藤治郎

ページ範囲:P.20 - P.20

 一般には検査技師はどのような印象を抱かれているのだろうか.ここで医大2年生(教養課程,50名)を対象にして行ったイメージ調査の結果を示してみよう.
 イメージとは,個々の人が特定の対象や事態,概念に対して抱いている,漠然とした過去,現在にわたる経験や印象の全体のことである.図には,“医師”と“理想的な医師”,“看護婦”,“検査技師”に対して持つイメージをsemantic differential法を用いて調査しプロフィル化したものを示した.医師,看護婦,検査技師に共通して,鋭い,知的,充実した,はっきりした,現実的なイメージがある.教養課程の医大生が,医療専従者に対して持つ基本的な性質ととれよう.これは一般市民が持つイメージの反映ともいえるかもしれない.

けんさアラカルト

体格と心電図

著者: 池田こずえ

ページ範囲:P.14 - P.14

 心電図は,心臓の電気的活動を反映するものであるが,心臓の電気現象の変化,すなわち心臓起電力の変化のほかに,心臓と心電図電極との位置的関係の変化や,心臓を取りまく肺・筋肉・皮下脂肪・皮膚の電気伝導性の変化も影響する.したがって,体格の変化は,心電図に影響を及ぼすことがしばしばある.一般的にいってQRS平均電気軸は,やせ型の人では垂直位になり,肥満型の人では水平位になる傾向がある.また,年老いた女性などにしばしばみられるが,亀背などで,胸郭の前後径が増大している場合には,QRS電気軸は,前額面に対してほぼ垂直となってしまい,肢誘導では低電位差となるのに対し,胸部誘導での電位は正常範囲であることがある.これは,胸郭の変化による「見かけの低電位差心電図」と考えられる.
 また,慢性肺気腫などで肺の過膨張のため横隔膜が下方へ偏位している場合は,それに伴って心臓の位置も下方へ偏位し,胸壁上の電位分布も下方へずれている.したがって,通常の胸部誘導V1〜V6の位置ではR波は減高し,S波は深くなっている.この場合に,電極の位置を1〜2肋間下につけると,R波は高くなり,正常とほぼ変わらない大きさになる(図).この場合,横隔膜低位による「見かけのR波減高」と考えられる.

けんさ質問箱

Q Vibrio choleraeの報告の要領

著者: 松原義雄 ,   M.S.

ページ範囲:P.89 - P.90

 Vibrio choleraeが疑われる場合,臨床医への報告のしかた,および保健所への届け出についてお教えください.—例えば,V. cholerae group,V. cholerae O1,V. cholerae non O1,その他の名称をどうするのでしょうか.また届け出は検査何日目に行うのでしょうか.

Q 凝固検査の検査値の解釈について

著者: 新徳隆子 ,   北村聖 ,   M.Y.

ページ範囲:P.90 - P.91

 肝硬変の末期で膵癌を伴った患者(78歳,女性)の血液凝固検査を行ったところ,①プロトロンビン時間46.5秒,②ヘパプラスチンテスト5%以下,③Dダイマー500〜2,000mg/ml,④フィブリノゲン300mg/dlとなりました.①〜③は異常と思われるのに対し,④は正常値と思われます.①と④は同じ肝臓で作られる凝固因子なのに,どうしてこのような違い(正常と異常)が出てくるのでしょうか.また①〜④のデータをどう解釈したらよいかもお教えください.

Q 一般検査での脳脊髄液中細胞の表記について

著者: 稲垣清剛 ,   K.I.

ページ範囲:P.91 - P.93

 脳脊髄液の検査で当検査室では細胞数はフックス-ローゼンタール計算盤を使って全区画をカウントして/3μlで結果を出し(染色はサムソン液),細胞種類は単核と多核に分けて記入しています,また,30個/3μl以上細胞数があった場合は,トミー製の細胞集積器で1,000rpm・3分間の遠心処理をし,メイ-ギムザ染色後に単核と多核の比を記入しています.一般的には,単核はリンパ球,多核は好中球のことが多いのですが,検体によっては好酸球,単球,好塩基球,組織球,形質細胞,上皮細胞,腫瘍細胞など多様な細胞を見る場合があります.現在,私たちは,単核・多核の比で出した値のほかに,組織球(あり),好酸球(+)などの注意書きを加えていますが,血液,細胞診の知識の乏しい一般検査室としてどの程度まで伝票に記入したらよいのか迷っています.ご教示ください.

Q クレアチニン酵素法の特異性と正確さについて

著者: 真々田賢司 ,   大澤進 ,   S.N.

ページ範囲:P.93 - P.94

 血中クレアチニンの測定は,Jaffé法に代わり,特異性が高いとされる酵素法が普及してきています.しかし,酵素法とJaffé法の解離する検体もあります.そこで,酵素法の特異性と正確さについて,またHPLCなどによる酵素法を評価する方法についてお教えください.

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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