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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術20巻11号

1992年10月発行

雑誌目次

病気のはなし

胆石症

著者: 炭山嘉伸 ,   桜井貞夫

ページ範囲:P.856 - P.862

サマリー
 胆石症は,最近の食生活の欧米化,診断技術の進歩,人間ドックの普及によってコレステロール結石を中心として増加傾向にある.
 治療は胆石の所在・種類による臨床像の相違により異なるため,治療方針の決定には正確な診断が必要である.また有症状胆石以外に無症状胆石の処置が問題となっている.
 現在胆石症の治療法は極めて多種多様であり,各治療法の問題点を十分把握したうえで治療を行うことが重要である.この疾患の症例を具体的に呈示し,病態や症状,検査所見,治療などを解説した.

検査法の基礎

FDP分画—フィブリノゲン・フィブリン分解産物の各分画

著者: 鈴木節子

ページ範囲:P.863 - P.868

サマリー
 凝固線溶亢進状態の指標としてフィブリノゲン(Fbg)・フィブリン(Fb)分解産物を抗フィブリノゲンポリクローナル抗体により測定するFDP測定が普及しているが,近年では抗FDP分画モノクローナル抗体によりFDPのDDE,DD,D,E分画が測定可能となった.DDE,DD分画の検出は安定化フィブリンが体内でできた証拠である.従来からのFDP,FM測定とDD分画測定を組み合わせることによって凝固線溶状態をより詳細に把握することができる.

先天代謝異常症のDNA診断

著者: 成澤邦明

ページ範囲:P.869 - P.875

サマリー
 DNA診断は出生前診断をはじめとして発症前診断,保因者診断に威力を発揮し,遺伝病の予防に大きな役割を果たすものと期待される.DNA診断には病因変異を直接同定する方法とRFLPsを利用した間接的診断法がある.MCAD欠損症のように限られた病因変異で説明しうる疾患では既知の変異を検出するASO法,ASPCR法,制限酵素法などの簡便な直接的DNA診断法が用いられる.
 一方,病因変異が症例ごとに異なる疾患ではまず発端者の変異の同定が必要で,そのために直接塩基配列決定法やSSCP法や化学的切断法などが用いられている.発端者の変異同定が困難な家系やいまだ病因遺伝子が同定されていない疾患ではRFLPを利用した多型診断が有用である.

技術講座 免疫

非放射性プローブを用いたDNA検出法

著者: 内村結花

ページ範囲:P.877 - P.883

サマリー
 非放射性ラベルによるDNA検出は,その有用性が知られながら,感度の問題などから今1つ利用されることが少なかった.しかし,ここ数年でさまざまな改良が成され,今や実用段階に入ったといえる.研究室レベルではもちろん,実際の臨床検査の場でも今後利用される機会が多くなると思われる.本稿では,非放射性検出のための一般的な標識プローブの調製法および,それらを用いたハイブリダイゼーションについて述べた.また,従来のハイブリダイゼーションの概念を打ち破る“逆ブロット法”についても具体例を挙げて説明した.

輸血

不規則性抗体検査(スクリーニング法)

著者: 平野武道

ページ範囲:P.885 - P.891

サマリー
 輸血は,ABO式に始まってABO式で終わるといわれているように重要な検査であり,誤判定は,直ちに輸血後溶血性副作用として出現する.このことからどこの医療施設でも必須の検査としてRh0(D)の検査とともに実施している.しかし血液型は多種類あるにもかかわらず,輸血前にその他の血液型を検査することが少ない.この結果,頻回輸血,妊娠などによって免疫され抗体が産生されることがある.この抗体に対応する抗原を考慮せず再度輸血を実施すると遅延性の溶血性疾患,および血液型不適合妊娠の対応を遅らせることがある.これらの原因となる抗体を事前に,血液型検査と同時に抗体スクリーニングを実施し,抗体の有無を確認し対応することにより,輸血後溶血性副作用防止と血液型不適合妊娠の早期対応,緊急輸血の際に対処が容易となる.また大量輸血の際に供血者間の交差適合試験を省略化できることと,血液の不必要な準備を避けることができ,限りある人的資源の有効利用につなげることができる.

微生物

レジオネラの分離法

著者: 黒川幸徳 ,   中浜力

ページ範囲:P.893 - P.898

サマリー
 レジオネラ症は,1976年に発見された新しい呼吸器感染症であるが,現在は常に鑑別診断に挙げられる疾患として認識が高まっており,検査室でも臨床のニーズに対応する必要がある.
 本稿では,Legionella属菌の検査法を,選択分離培地の特徴やlow-pH処理法など分離培養法を中心に,蛍光抗体法,DNAプローブ法なども併せて紹介した.

一般

アンモニアの測定法

著者: 伏見了

ページ範囲:P.899 - P.904

サマリー
 血中アンモニアは中枢神経系に対する毒性が非常に強く,重症肝疾患時には肝性昏睡の予測などの経過観察上,血中アンモニア値の測定が必須とされている.
 拡散法,陽イオン交換樹脂法,除蛋白法,酵素法と測定法が発展し,現在はドライケミストリー(拡散法)も広く用いられている.
 各測定法に関して原理および操作法を説明し,血液試料取り扱い時の注意についても言及した.

マスターしよう検査技術

日臨技法による尿沈渣検査法

著者: 佐藤俊

ページ範囲:P.909 - P.913

はじめに
 尿沈渣検査は,尿中に含まれている有形成分(血球,上皮細胞,円柱,微生物,結晶など)を遠心力の作用で,遠心管の管底に濃縮沈殿させ,顕微鏡で観察する検査である.したがって,尿沈渣検査は古くから腎・尿路系疾患の診断,および治療に欠くことのできない検査の1つとして実施されてきた.しかし検査手技,成分の分類および記載方法については,各施設で対応がさまざまであり,検査精度向上のため,統一化が強く望まれていた.日本臨床衛生検査技師会では,1991年8月に『尿沈渣検査法』テキスト1)を発刊し,標準法を提示した.テキストの内容は尿の採尿方法に始まり,尿沈渣標本の作製法,成分の記載法,各成分の解説および96枚のカラーアトラスから成る.
 本稿では,検査室に尿が提出された以降の尿沈渣作製方法について述べることにする.

生体のメカニズム ホルモン・10

膵臓—血糖の調節

著者: 島健二

ページ範囲:P.917 - P.920

はじめに
 生体内環境の恒常性(ホメオスターシス)は生体の存続にとって重要で,この崩壊は死を意味するといっても過言ではない.したがって,多くの生体内成分の血中濃度の変動は比較的狭い範囲に限られている.血糖値は中枢神経系の重要なエネルギー源であるため,恒常性が特に厳密に保たれている生体成分の1つである.この恒常性を維持するために,生体は多くの機構を準備している.糖質の消化,吸収に関係する機構,肝臓での糖の同化,放出を規制する機構,末梢組織での糖利用をregulationする機構などがそれらである.これらの機構の働きを調節し,血糖値をあるレベルに維持するのに多くのホルモンが関与している(図1).このうち,糖の利用を促進し,肝からの糖放出を抑制することによって血糖値を低下させるホルモンはインスリンただ1つで,他のホルモンはいずれも血糖上昇性に働く.この事実を,目的論的に考えると,生体は低血糖にならないよう幾重にもガードされており,低血糖が生体の存続にとっていかに重大事であるかということを示唆している.本稿ではこれらホルモンのうち,特に膵ホルモン,インスリン,グルカゴンに的を絞って論ずることにする.

検査データを考える

血清ビリルビン

著者: 坂岸良克

ページ範囲:P.921 - P.928

はじめに
 黄疸の本態であり,肝疾患のみならず,溶血の指標ともなるビリルビンは1833年にEhrlichが尿中成分として測定を試みて以来,最も広く診断に利用されている検査項目である.
 それにもかかわらず,分析機を更新する際,その精度管理は担当の技師をひとかたならず悩ませる項目の1つである.

講座 英語論文を読む・22

ネフローゼ症候群の高脂血症に対する菜食主義者の大豆ダイエットの効果

著者: 弘田明成

ページ範囲:P.914 - P.915

 持続性の蛋白尿を伴うネフローゼ患者はアテローム性動脈硬化症を促進したり,腎疾患の悪化をさらに速く進行させたりするさまざまな脂質代謝異常を併せ持つことが多い.われわれはこれらの患者にみられる高脂血症が,食餌の操作だけで改善することができるかどうかを究明することを試みた.
 それぞれの患者を通常食で8週間の基礎コントロール期間を経た後,長期にわたって持続した高度の蛋白尿(5.9±3.4g/24時間)および高脂血症(平均コレステロール8.69±3.34mol/l)を伴う20名の未治療の慢性糸球体疾患患者に8週間にわたって菜食主義者の大豆食を摂食させた.この食事は脂肪(総カロリーの28%)と蛋白質(0.71±0.36g/kg理想体重/日)が少なく,コレステロールがなく,そして一価不飽和と多価不飽和脂肪酸(多価不飽和酸/飽和酸比2.5)および線維(40g/日)が豊富であった.この食餌療法期間後に患者には再び8週間にわたって通常の食事を8週間食べさせた(洗い出し期間).大豆食期間中血中コレステロール(総,低比重,高比重リポ蛋白),アポリポ蛋白AとBは有意に低下したが,中性脂肪濃度には変化がなかった.尿中蛋白排泄は有意に低ドした.すべての脂質分画濃度および尿蛋白の量は洗い出し期間中にもとの量に逆戻りする傾向にあった.

検査ファイル

音響インピーダンス

著者: 田中元直

ページ範囲:P.929 - P.929

 “音響インピーダンス”は超音波診断法,特にエコーグラフィーにおいてエコー画像の良否やエコーの強弱を左右する因子としてよく知られるようになってきた言葉である.本来“インピーダンス”は,電気通信工学で交流回路を取り扱うとき,電流の通りやすさを示す「抵抗」に相当するもののことである.この考えかたを機械的振動とその伝搬を扱う音響工学の領域に取り入れ,音の伝わりやすさを表す指標としているのが“音響インピーダンス”である.その定義は,無限に広い均質媒質中を平面波として音波が伝わっていくとき,その音波の「音圧」と媒質の「体積速度(速度×面積)」との比とされており「ρc/s」で表している(ここでρは密度,cは音速,sは音波が通過している面積である).このうち「ρ・c]は単位面積音響インピーダンスと呼ばれ,これを固有音響インピーダンスあるいは特性インピーダンスとも呼んでいる.”音響インピーダンス“といわれるものは,通常この「ρ・c」を指している.この”特性インピーダンス"は,電気通信工学の領域においては,一様な導伝性のある線路を正弦波電流が一方向に流れていく場合に,その伝わりやすさは任意の点における電圧(Ve)と,そこを流れる電流(I・e)との比で決まる値として定義されている.

キャピラリー電気泳動法

著者: 今井利夫

ページ範囲:P.930 - P.930

はじめに
 従来より電気泳動法は各種生体成分の分離分析法の1つとして広範に利用されてきた.キャピラリー電気泳動法(CE)は細いチューブ内に試料を導入し,両端に電圧を印加して分析を行う方法の総称で,無担体方式と担体(ゲルなど)方式とに分けられる.また,分離モードによりゾーン電気泳動,等速電気泳動,等電点電気泳動,ゲル電気泳動および動電クロマトグラフィー(electrokinetic chromatography;EKC)に分類されている.これらのうち一般には自由溶液中でのゾーン電気泳動法を意味することが多くcapillary zoneelectrophoresis(CZE)と称される.本法の特徴は極微量の試料で直接オンカラム検出により短時間に,かつ,高分解能のデータが得られるところにある(表).

自己融解

著者: 小島勝

ページ範囲:P.931 - P.931

 自己融解(autolysis)とは死に至った細胞自身の消化酵素によって細胞自身が分解されることと定義される.全身死に伴う自己融解はpostmortem autolysisという.
 細胞の死後数分以内に胞体内のライソゾームから水解酵素が放出され活性化を受ける.活性化された水解酵素は急速に細胞内小器官や細胞膜を破壊する.このような自己消化の過程が自己融解である.

妊娠反応用検査薬

著者: 佐藤和文

ページ範囲:P.932 - P.932

 妊娠とは,婦人の子宮内膜へ卵管内で受精し発育した胚(受精卵)が着床し,絨毛が発育したものをいう.排卵後の子宮内膜は,腺上皮細胞が増加し内膜が肥厚して着床しやすい状態となっており,胚は着床すると絨毛が発達してやがて胎盤を形成する.この絨毛細胞からヒト絨毛性ゴナドトロピン(human chorionicgonadotropin;HCG)が分泌される.HCGは腎臓を通過しやすく血中も尿中もほぼ同じ濃度であり,検体採取の簡単な尿を検体とすることが多い.HCGは妊娠以外の正常人では通常検出されないホルモンなのでこれを検出することにより,妊娠を推定することができる.

ラボクイズ

問題/血清酵素活性

ページ範囲:P.906 - P.906

9月号の解答と解説

ページ範囲:P.907 - P.907

明日の検査技師に望む

technologyの研究開発に努力すべし

著者: 橋本琢磨

ページ範囲:P.876 - P.876

■理想と現実
 今年の国家試験も終わり,新たに大勢の検査技師が誕生した.例年のことだが,彼らのほとんどは病院の検査室に就職を希望する.民間検査センターへ希望していく人は少ない.その理由を尋ねるといわゆる「測り屋」にはなりたくない,「もっと勉強がしたい」というのである.しかし病院に就職した人たちが「測り屋」ではないか,というと現実はそうではない.生理機能検査室は別として,検体検査室の仕事の内容は民間検査センターとほぼ同じである.ただ民間検査センターのように役割分担がきちんとしていないで,あいまいになっているにすぎない.そのぶん「勉強ができる」はずであり,役割分担以外の多くのものを学べるはずである.しかし現実は理想どおりにいってはいない.私はこの新入部員の希望,つまり向学心をできるだけかなえてあげたいと思っている.が,現実問題として難しい.それは検査部内ローテーションを忌避したいと考える人たちがいるからである.特に中年以上の技師は自らがローテーションをするのを好まない.この年になって新しい仕事を学ぶのはいやであるという顔をしている.入部時の希望や理想はどこへいってしまったのだろう.

けんさアラカルト

病理診断と臨床診断

著者: 長谷川章雄

ページ範囲:P.884 - P.884

 診断(diagnosis)とはギリシア語のdia betweenとgnosis enquiryあるいはgnonai know,discernといった語源を持ち,広義には「他の種類とは異なった特徴の正確な認識,記述」ということであり,医学上は「特定の疾患名を付与する」といった意味になる.
 いかなる時代でも,臨床診断はあくまで外来あるいはベッドサイドでの問診と理学的所見の把握に始まる.もし,ある会社社長が「仕事中についうとうとして,目が醒めた後,しだいに思い出したい言葉が出てこなくなったのに気がついた」という内容を訴えてきたとしよう.家庭医であれば,どうも失語症らしい,言語中枢がTIA(transient ischemic attack)あるいは梗塞で障害されたのではないかととりあえず考えようし,さらに神経内科に興味を持つ医師であれば診察により麻痺の有無などを確認した後,割にすらすらしゃべるし(fluent aphasia),望んだ言葉が出てこないため語義の近い言葉を探そうとする(semantic verbal paraphasia)ので,おそらくWernicke中枢が破壊された感覚性失語症であろうと診断するかもしれない(仮説設定).まめに剖検に立ち合ってきた臨床家であれば,シルビア溝後下方の側頭葉が梗塞で軟化している病理像までイメージするかもしれない.臨床診断はあくまでもものの考えかた(Gedankengang)が重視される.

トピックス

オーダーエントリーシステム

著者: 吉原博幸

ページ範囲:P.933 - P.934

 近年,総合医療情報システムの名のもとに,旧来の医事会計システムを拡張した形での医療情報システム(オーダーエントリーシステム)が構築され,多くの施設で稼働を始めている.これらのシステムの共通点は,その出発点がすべて医事会計システムに根ざしていることである.システム導入によって,料金計算,薬剤業務などの処理時間が目に見えて改善されるため,オーダーエントリーシステムの目的が患者サービスの改善にあると短絡的に考えてしまいがちである.もちろん,患者サービスの改善が大切なことはいうまでもないが,単に待ち時間を短縮することが目的とするとすれば,なにも高価なコンピュータを使うまでもない.総合的な医療情報の蓄積を前提としたシステムが存在し,そのデータベース利用の結果として待ち時間の短縮が実現されるというのが本来の姿であろう.いずれにせよ,オーダーエントリーシステムは,医療情報システムという巨大システムの1つの切り口であり,出発点にすぎないことを銘記すべきである.
 ではオーダーエントリーシステムの目指すところは何か? それは電子カルテシステムである.電子カルテは,単に紙のカルテを電子化したものではない.また,医師だけのためにあるものでもない.もっと広く,総合医療情報システムそのものととらえるべきである.

コンタクトレンズ保存液の細菌汚染

著者: 宮尾益也

ページ範囲:P.934 - P.935

 コンタクトレンズ(CL)は結膜嚢内の常在細菌,涙液,手指の汚れ,空気中のほこり,化粧品など化学的・細菌的に汚染された環境下で使用されるが,直接角膜に接着するため,できる限り無菌的に保存しなくてはならない.
 しかし,CLの保存液は眼に刺激性の少ないことが要求され,その殺菌作用は一般的に弱い.特にブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌は広く自然環境下に存在し,低栄養性のため蒸留水,精製水において増殖が可能であり1),保存液にも多数検出されることが知られている2,3).また,最近ではAcanthamoeba4),Naegleria5)などアメーバが問題となっている.これらは細菌を餌として,生活環境が悪くなると嚢子に変化し抵抗力を増強する.

スパゲッティ症候群

著者: 小川雄之亮

ページ範囲:P.935 - P.936

 1979年,“The spaghetti syndrome.A new clinicalentity”という表題の論文がCesaranoとPiergeorgeによってCritical Care Medicine誌上に報告された1).この論文の主旨は,救命救急センターの重症患者の多数の動脈ラインや静脈ラインを,1本の人工呼吸器用蛇管でカバーしてひとまとめにする工夫を示したものであるが,患者に装着されているあまりにも多くのチューブやカテーテル,さらにはコードの類があたかもフォークですくったスパゲッティのように見えるところから,このような表題がつけられたのである.
 以来チューブやカテーテル,コードの類が多数装着されてあたかも管のジャングルのような状態を「スパゲッティ症候群;spaghetti syndrome」と呼ぶようになった2).したがって本症候群は従来からの疾患概念とは異なったものである.この状態はできるだけ多くの生体情報を得たい重症患者を扱う施設,すなわち救命救急センターや集中治療施設(intensive care unit;ICU)でよくみられるが,最近特に,非侵襲的に生体情報を連続モニターすることが多くなってきた新生児集中治療施設(neonatal intensive care unit;NICU)で本症候群の頻度が高く,かつ重症化が進みつつあり注目されている.

血小板の細胞内ナトリウムイオン濃度

著者: 松野一彦 ,   小林邦彦 ,   対馬千秋

ページ範囲:P.936 - P.938

はじめに
 生体内のナトリウム(Na)は,約97%が細胞外液中に存在し,水分の保持,浸透圧や酸・塩基平衡の調節に必須な陽イオンである.これに対して細胞内のナトリウムイオン(Na)は,細胞外に比べおよそ1/4から1/6の低い濃度に保たれており,この細胞内外の濃度勾配が栄養分の取り込みやCa2+など他のイオンの制御に関係し,細胞機能の発現に重要な役割を果たしていると考えられている.したがって血清Naの測定とともに細胞内のNa濃度測定も細胞機能の重要な情報を与えてくれるはずである.しかしながら,これまで簡便な細胞内Naの測定法がなかったため,その意義については十分理解されてはいない.現在までに用いられている細胞内Naの測定法は,細胞を破壊して炎光光度法や原子吸光法などで測定する方法や,NMR法を用いるものである.前者は遊離のNaではなく総Naを測定するもので,刺激による濃度の変化を経時的にとらえることが困難であり,後者は測定に特殊な装置を必要とし,大量の試料を必要とするなどの欠点を持っていた.

けんさ質問箱

Q 嫌気性菌の薬剤感受性試験

著者: 渡辺邦友 ,  

ページ範囲:P.940 - P.941

 嫌気性菌の薬剤感受性試験はどんな方法がよいのでしょうか.またディスク法での感受性試験は信頼性があるのでしょうか.そして嫌気性菌の感受性試験は実施する必要があるのでしょうか.

Q アメーバ類の栄養型鑑別法

著者: 大友弘士 ,  

ページ範囲:P.941 - P.942

 生の標本でアメーバ類(大腸,赤痢,歯肉,二核,小形,ヨードなど)の栄養型を鑑別する方法がありましたらお教えください.

Q Rh変種(Du

著者: 重田勝義 ,  

ページ範囲:P.942 - P.944

 われわれの施設では,Rh式血液型で非凝集のとき,確認試験としてクームス法を行っております.クームス法を実施する場合,抗D血清はIgGタイプのものを使用するのがいいと聞いていますが,どのような理由からでしょうか.試みに,IgGタイプのものと同時に使って比較してみたところ,有意差はないように思いました.

Q ダブルスティックテープ法

著者: 阿部美知子 ,  

ページ範囲:P.944 - P.945

 ダブルスティックテープ法による真菌検査の方法をお教えください.

今月の表紙

ホジキン病と非ホジキン悪性リンパ腫

著者: 諸(前川)傑 ,   町並陸生

ページ範囲:P.868 - P.868

 ホジキン病は悪性リンパ腫の1つであり,組織学的に,この疾患に特有なReed-Sternberg細胞が出現し,背景のリンパ球に異型がないことが特徴である.写真左上は,ホジキン病のリンパ節で,2核のReed-Sternberg細胞と小型のリンパ球が認められる.ここにみられるリンパ球の核面積の平均値を画像解析装置を用いて求めるため,核を緑色に変換したものが写真右上で,その値は11.058μm2であった.写真左下は非ホジキン悪性リンパ腫大細胞型の組織像で,核にくびれを有する腫瘍性の大型のリンパ球が認められる.写真右下では,画像解析装置を用いて核面積を求めるため,核が緑色に変換されている.この大細胞型悪性リンパ腫の核面積の平均値は25.909μm2で,ホジキン病にみられるリンパ球の約2倍の大きさであった.

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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