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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術20巻12号

1992年11月発行

雑誌目次

病気のはなし

急性白血病の最近の進歩

著者: 白川茂 ,   小林透 ,   三輪啓志 ,   岡宏次

ページ範囲:P.954 - P.960

サマリー
 急性白血病の病型診断には形態学に加え,免疫学的,分子生物学的,さらに細胞遺伝学的マーカーの検索が行われるようになり,実用的なFAB分類も改訂,追加がなされ,また混合白血病のような新しい概念も提出され,診断面の進歩がみられている.一方,治療面においても,急性白血病は近年の多剤併用非交叉耐性交代併用化学療法のような強力治療により,また骨髄移植療法の進歩によって治癒可能と考えられるようになり,治癒指向性治療が専門施設で行われるようになっている.さらに分化誘導療法として活性型ビタミンA(ATRA)による急性前骨髄球性白血病の治療は特筆に値する.

検査法の基礎

糖鎖性の腫瘍マーカーの検査法

著者: 高田亜希子 ,   神奈木玲児

ページ範囲:P.961 - P.972

サマリー
 モノクローナル抗体の技術を用いて発見された癌細胞の糖鎖抗原は,腫瘍マーカーとして癌の血清診断に活発に応用されている.これらの腫瘍マーカーは,1型基幹糖鎖,2型基幹糖鎖,母核糖鎖,コア分子関連などいくつかのグループに分類され,グループごとに独特の臨床的特徴を持つ.最近これらのうち主要な糖鎖抗原が癌の転移に関与する細胞接着因子であることが判明しつつある.

病理組織における画像解析

著者: 高橋徹 ,   手塚文明

ページ範囲:P.973 - P.979

サマリー
 病理組織像・細胞像の自動診断はいまだに実現にほど遠いが,その理由について考えたい.形態診を自動化するにも,組織や細胞の形を数量化して解析を加えるにも,まず顕微鏡像をディジタル化してコンピュータに入力し,次に入力した画像から必要な対象,例えば細胞の核なら核だけを二値化画像の形で取り出して,輪郭を定義するというステップを踏む.しかし,顕微鏡像から必要な対象だけを取り出すことは現在の画像処理技術では困難であり,この点が未解決であるために形態診断の自動化が実現しないのである.しかしそれでは形態学の研究にコンピュータは無用かというとそうではない.自動診断とは別の面でコンピュータを利用できる面はいろいろあるのであって,そのような利用法について解説した.

技術講座 微生物

下痢原性大腸菌の検査法

著者: 伊藤武

ページ範囲:P.981 - P.987

サマリー
 下痢原性大腸菌は毒素原性大腸菌,組織侵入性大腸菌,病原大腸菌・血清型および腸管出血性大腸菌(ベロ細胞毒素産生性大腸菌)の4つのカテゴリーに分類される.いずれも下痢や腹痛など胃腸炎を主症状とする.海外旅行下痢症では毒素原性大腸菌による感染症が多いことから本菌を考慮した検査を実施する.
 患者糞便をDHL寒天やマッコンキー寒天あるいはSIB寒天に直接塗抹し,37℃,18〜24時間培養する.出現した大腸菌を疑う集落をTSI寒天,LIM培地,シモンズのクエン酸塩培地および普通寒天に接種し,確認試験を実施する.大腸菌と同定された菌株について,血清型別試験や毒素学的試験により下痢原性大腸菌の決定を行う.腸管出血性大腸菌O157による感染では著明な下血と感染後に続発して溶血性尿毒症性症候群を併発することがあり,重篤な症状を呈するので,早期に同定しなければならない.

病理

フリーズ・エッチング法

著者: 池内容子

ページ範囲:P.989 - P.995

サマリー
 細胞のフリーズ・エッチング法は細胞の急速凍結法と組み合わされて初めて可能となる方法である.しかもこれはレプリカ法の一種であるから,細胞を直接電子顕微鏡の電子線にさらすこともなく,もちろん,極性酸化剤による固定操作やアルコールによる脱水操作も必要ないので,最も信頼される電子顕微鏡標本作製法の1つである.簡単にこの方法を記し,他のさまざまな方法によって撮影された電子顕微鏡写真を用いてフリーズ・エッチング法を検討した.

一般

関節液中の細胞の見かた

著者: 米田操 ,   山端真美

ページ範囲:P.997 - P.1002

サマリー
 関節に病変が起こると関節内に関節液が貯留するが,この関節液を調べることで関節内に起こっている病変をかなり的確に知ることができる.例えば,白血球数が2,000/mm3以上に増加していると炎症性疾患であろうといえるし,500/mm3以下であると非炎症性(変性)疾患が疑われる.好中球が結晶を貪食していると結晶誘発性関節炎,菌体を貪食していると感染性関節炎の診断がつく.
 他の各疾患の関節液においても特徴的な細胞が見つかることがある.例えば,ライター細胞,Ragocyte,LE細胞,ATL細胞などがそれである.ここでは,関節液中にみられる1つ1つの細胞の形態と臨床的意義について述べた.

マスターしよう検査技術

プロトロンビン時間の求めかた(APTTを含む)

著者: 島津千里

ページ範囲:P.1007 - P.1013

はじめに
 プロトロンビン時間(prothrombin time:PT)は外因系凝固因子の減少やこれらの阻止因子の存在により延長し,これらを総合的に検索する検査である.止血機能のスクリーニング検査あるいは肝疾患での凝固因子合成能や,クマリン系経口抗凝血薬療法時のビタミンK依存性凝固因子の減少の指標としてモニタリングに用いられる.
 活性化部分トロンボプラスチン時間(active partialthromboplastin time;APTT)は内因系凝固因子のスクリーニング,特に第VIII,IX因子の欠乏や減少で延長し血友病の検査法に用いられる.ヘパリン療法のモニターとして,また近年リン脂質依存性の凝固機構の阻害物質として注目されているループスアンチコアグラントなど,抗リン脂質抗体の検出にも用いられる.

生体のメカニズム ホルモン・11

ホルモンによる血流調節

著者: 杉本徳一郎 ,   松岡博昭

ページ範囲:P.1014 - P.1018

はじめに
 全身の血液循環は生体の機能維持に不可欠の要素であり,血流が停止してはヒトはもはや生命活動を行うことができない.この血液循環には血流を送り出すポンプの心臓と血液が送られてくるパイプの血管の2つが役割を担っているといえる.
 心臓から送り出された血液は各臓器(脳,腎,肝,消化管,骨格筋,皮膚など)に分配される.その分配のされかた,すなわち各臓器の血流は,その臓器へ枝分かれする血管の太さによって規定されているうえに,臓器内の微小血管の血管抵抗によってもさらに微細に調節される.

検査データを考える

乳腺の異常超音波像

著者: 種村正 ,   遠田栄一

ページ範囲:P.1019 - P.1023

はじめに
 近年,生活様式の欧米化に伴い乳癌の発生は増加の一途をたどっており,近い将来大腸癌とともに女性の癌死亡の第1位を占めることが予想されている.
 一般的に乳癌の診断は,触診や穿刺細胞診などの理学的所見が大きなウエートを占めているが,触知不能乳癌や微小乳癌などの早期発見のために,かつては補助的診断法であった超音波,X線検査(マンモグラフィ)などの画像診断法の役割はますます大きくなるものと思われる.特に超音波診断法は装置の改良開発や新手法(ドップラ法)の導入などにより診断精度および検出率が飛躍的に向上してきたため,乳腺疾患においては必要不可欠の検査法になりつつある.

講座 英語論文を読む・23

母体の血清マーカーを用いたダウン症候群の出生前スクリーニング

著者: 弘田明成

ページ範囲:P.1028 - P.1029

 (抄録)背景:胎児ダウン症候群の全体の約35%は,全妊娠婦の第2三ケ月期に母体の血清アルファフェトプロテインを測定することによって検出することが可能である.最近のケースコントロール調査の結果では,血清中の非結合エストリオールと絨毛ゴナドトロピンを測定することにより,この検出率を約2倍に引き上げることができることを示している.ダウン症の胎児を妊娠している母親では血中エストリオールが異常低値に,また絨毛ゴナドトロピンが異常高値になることを示唆している.
 方法:われわれは予期的に妊娠の第2三ケ月期の女性および青年女子25,207名をスクリーニングし,3つの血中マーカーをすべて測定するとともに母体年齢も含めたアルゴリズムに従い,それぞれに胎児ダウン症になる危険率を算出した.この手順に従って,1,661名(6.6%)の妊婦が最初に第2三ケ月期における胎児ダウン症の危険性が1対190以上の確率で出現すると判断し,さらにそのうちの962名(3.8%)に妊娠週数を確認した後に羊水検査による染色体分析を勧めた.妊娠週数は最終月経周期の初日を基準にして算定し,可能であるときは超音波検査で決定した.

検査ファイル

新しい好中球走化因子

著者: 向田直史

ページ範囲:P.1024 - P.1024

 白血球に対して走化活性を有する因子としては,1960年代後半から,細菌成分由来のfMet-Leu-Phe,活性化補体第5成分(C5a),ロイコトリエンB4,血小板活性化因子(platelet-activating factor)などが知られていた.しかし,これらの因子はいずれもすべての種類の白血球に対しても走化活性を持つために,炎症の種類・時期によって病巣で認められる白血球の種類が異なることを,これらの因子の存在だけで説明することは困難であった.
 ここ数年,炎症惹起性の刺激によって産生される一群の蛋白が,遺伝子工学的手法などによって発見されてきた.これらの蛋白は,コア蛋白の分子量が7〜8kdと推定されていて,ヘパリンと結合する性質を持つ1).さらに,これらの蛋白は非常によく保存された位置にシステイン残基を有することから,類似した立体構造をとると予想されている.これらの蛋白のうち,インターロイキン8(IL-8)・groは,好中球に対して走化活性を有することが明らかとなった.これらのうちではIL-8が,その生物活性および各種疾患での動態についての解析が最も進んでいる.

BTPSとSTPD

著者: 藤生美乃 ,   阿部直 ,   冨田友幸

ページ範囲:P.1025 - P.1025

 呼吸機能検査では肺活量・1秒率・酸素摂取量など気体の容積を表す指標が多い.気体の容積は温度や圧力によって変化するので,その大きさは同じ条件の下で表現した容積で比較する必要がある.BTPSやSTPDは気体の容積を表す条件を示す用語である.

パームスタンプの培地

著者: 福島みゆき ,   奥住捷子

ページ範囲:P.1026 - P.1026

[1]パームスタンプ培地のプロフィール
 パームスタンプの培地は図のような手の形をした培地である.縦20cm×横17cmの透明なプラスチックの容器に左右区別なしの手の形をした凹み部分に培地が入っている.手の掌や手背の細菌の付着状況を知るため使用され,多くは普通寒天培地や消毒薬の中和剤が入っているSCDLP(soybean-casein-digest agerwith lecithin polysorbate 80)が充填されている.マンニット食塩寒天培地,デスオキシコレート寒天培地やサブロー寒天培地もある.使用目的により培地を選ぶ.検査したい手掌や手背をしっかりと培地表面に接触させ,乾燥を防いで2日間培養する.発育した集落数を測定したり,同定したりする.MRSAの院内感染の危険が示唆され,感染防止には手洗いの重要性を啓蒙するために視覚に訴えることができる.

尿中微量アルブミンの測定

著者: 髙加國夫

ページ範囲:P.1027 - P.1027

はじめに
 糖尿病腎症の早期障害の指標として尿中に排泄されるアルブミン,α1ミクログロブリン,β2ミクログロブリンなどの低分子蛋白が臨床的パラメータとして活用されており,中でも微量(ミクロ)アルブミン測定は腎症の主病変である糸球体病変をとらえるための検査として注目されている.一般に健康人でも1日当たり約5〜30mg程度のアルブミンが尿中に排泄されており,300mgを超えるようになると臨床的に尿蛋白陽性と判定される.したがって,通常の尿蛋白検査法ではとらえがたいが,健康人よりも多く排泄されているアルブミン尿を特に微量アルブミン尿と呼んでいる.

ラボクイズ

問題/尿沈渣

ページ範囲:P.1004 - P.1004

10月号の解答と解説

ページ範囲:P.1005 - P.1005

明日の検査技師に望む

美しき流れの源をみつめよう

著者: 吉田浩

ページ範囲:P.980 - P.980

 「美しき流れのみなもと(源)をみつめて…」.King ofJipang信長がNHKテレビドラマの中で何度か語らせられている.信長のイメージが一変した人も多いだろう.なかなか良い表現である.いずれの世界にも源があり,流れがあるが,医療における美しき流れの源は,考えるまでもなく人の命である.私事になるが,内科学教室に21年間在籍し,検査部に移って早くも7年目に入るが,どっぷりとつかってしまうと美しき流れの源がだんだん遠くなってしまいそうである.大学病院という特殊な職場かもしれないが,患者に対し直接の責任を持たない(持たせられない)ことは精神的には楽である.大学病院では教育,診療,研究を行っているが,病院での最大使命は患者の命を守る診療でなければならない……が,現実はどうであろうか.臨床教室でも基礎研究に多くの時間を費さなければならないのがわが国の伝統的風潮で,それらの成果のほうがより高く評価されている.
 検査部職員の最も重要な仕事は正確なデータを出すことである.正確なデータとは被検者の体内の状態を直接示すものでなければならない.そのため,TQCの重要性が論じられてきているが,現実は,多くの問題がある.検査部では検体を受け取ったときから責任を持ち,たとえそれらが不適当な検体でもベストを尽くしているというのが現状であろう.

けんさアラカルト

臨床検査技師と法改正運動

著者: 早田繁雄

ページ範囲:P.988 - P.988

 臨床検査技師とは,「厚生大臣の免許を受けて,臨床検査技師の名称を用いて,医師の指導監督の下に,微生物学的検査,血清学的検査,血液学的検査,病理学的検査,寄生虫学的検査,生化学的検査(以上検体検査6種目)並びに保健婦助産婦看護婦法の規定にかかわらず,診療(医行為)の補助として,医師の具体的な指示を受けて行う検査に必要な採血及び政令で定める生理学的検査(心電図検査,心音図検査,脳波検査,筋電図検査,基礎代謝検査,呼吸機能検査,脈波検査,超音波検査(以上8項目)を行うことを業とする者」とされている.
 ここで注目すべきことは,「検体検査が制限業務になっていない」ことである.

トピックス

タウプロテインキナーゼI(TPK I)

著者: 内田庸子 ,   石黒幸一

ページ範囲:P.1030 - P.1031

 アルツハイマー病は初老期(45〜65歳)に発病する進行性痴呆で,病理学的にはその脳内に多数の老人斑と神経原繊維変化が認められる.また,自然老化による老年痴呆も病理学的に差がないのでアルツハイマー型老年痴呆と最近は呼んでいる.この疾患の患者数は高齢者の増加とともに増え,社会的に重要な疾患である.その原因は不明で早期解明が望まれている.
 2つの病理変化は知能障害の程度と相関して出現するので,この変化を生ずる不溶性の蓄積物質の解析から病因に迫ろうという研究の流れが生じた.その1つ,神経原繊維変化は神経細胞内にpaired helicalfilament(PHF)といわれる異常な繊維が蓄積するもので,その成分としてタウ蛋白質が同定された.タウは脳に特異的な微小管付随蛋白質の一種で,正常脳では神経細胞の突起内の微小管の形成を促進したり,微小管を束ねる役割を担っている.PHFに組み込まれたタウは通常のタウより強くリン酸化されている.アルツハイマー病脳では,このタウの異常なリン酸化が“PHFの蓄積”につながり,神経細胞の変性,やがて細胞死を招くと想定すると,PHF中のタウと同じようにリン酸化されたタウを生ずるプロテインキナーゼを探索し,そのリン酸化機構を明らかにすることがアルツハイマー病の病因を解く1つの緒と考えた.

放射線抵抗性菌

著者: 北山滋

ページ範囲:P.1031 - P.1032

はじめに
 牛肉の保存期間の延長を目的として放射線照射した牛肉に残存した細菌,Deinococcus radiodurans(最初はMicrococcus属に分類された)が1956年に米国で分離された1).また同一菌種ながら別株として報告されている,D.radiodurans Sark株も病院の空気浮遊菌として採取されている.それ以外にもさまざまな試料からさまざまな放射線抵抗性菌が分離されているが,それらはいくつかの分類学上異なる種類に属しているので特定の細菌種のみが放射線に抵抗性を示すのではない(表)2).最初に分離されたD.radiodurans R1株はその後,牧草地の小川,食肉工場内あるいは獣皮からも分離されているので,この菌の生存と放射線とは特に関係づける必要はないように思われる.
 しかし,放射線に常時さらされて選択濃縮される環境でもない自然界に,このように異常ともいえる放射線抵抗性を持った細菌がなぜ存在するかは興味深い.

B型肝炎の劇症化と肝炎ウイルスの変異

著者: 小俣政男 ,   江畑稔樹

ページ範囲:P.1032 - P.1033

 日本におけるB型肝炎ウイルス(HBV)キャリアは人口の約1.5%であり,ほとんどが出生時の産道感染により起こり,数十年の経過の後に年間発生肝癌2万人の約20%の原因となる.一方,成人になってからB型肝炎ウイルスに感染した場合は急性肝炎として一過性感染で終わる場合が多いが,時に死亡率の高い劇症肝炎となる.これら病態の多様性はウイルス側よりは,宿主の応答により説明されてきた.しかしながら,ウイルス遺伝子を種々の病態で検索すると,そこにはさまざまな変化があることがわかってきた.
 従来より,HBe抗体陽性の母親から感染した児がしばしば劇症肝炎を起こしやすい,あるいはHBe抗体陽性の女性と交渉を持った男性が数人劇症肝炎になったという報告があった.HBe抗原陽性者はウイルス量も多く感染力も強いことは昔からよく知られている.しかし,ウイルス量の少ないHBe抗体陽性の患者からの感染でなぜ劇症化しやすいかは長い間不明であった.

疥癬

著者: 増澤幹男

ページ範囲:P.1033 - P.1034

1.病因と感染経路
 疥癬はヒゼンダニによる病気であるが,一般的なダニが吸血だけを目的で皮膚を刺すのと異なり,このダニは皮膚に住みつき,そこで繁殖する.したがって,極めて強い感染力がある.成ダニは約0.4mmの大きさでほぼ球形.表面に多数の刺状の突起を有し,4対の足を持っている.オス,メスの区別は第4対目の足の形態が吸着肢か,ひげ状かで見分けられる(図1)1).成ダニのメスは皮膚の角層下に寄生して,1日1ないし2個の卵を約1か月産み続けながら,角層下にトンネルを形成する(疥癬トンネル)(図2)1).卵は幼虫から前若ダニ,後若ダニを経て1〜2週間で成ダニになる.一方,オスダニはその一生のほとんどを皮膚表面で過ごし,交尾は夜間体表面上で行われるとされている.平均寿命はオスダニで1か月であるが,メスダニは数か月と長く生存する.感染経路は皮膚から皮膚が最も起こりやすいが,下着や寝具類を介しても容易に感染する.特に夏の高温多湿の時期では皮膚外での生存日数が伸びることから感染も容易である.感染しても通常2週間から1か月の潜伏期間がある.
 疫学的には1975年ごろの大流行までは約30年周期で流行した.その理由は未感染者の数が増加する時期に再び流行するためだといわれている.しかし,それ以後は慢性的な流行となっており,罹患者数も増加の一途をたどっている.当科でも年50〜100例の患者が受診する.

けんさ質問箱

Q 経腹的超音波検査法による前立腺疾患の診断

著者: 寺沢良夫 ,  

ページ範囲:P.1035 - P.1036

 腹部超音波検査で前立腺肥大をみる場合,経腹的スキャンでは斜めにスライスするため,正確な判定はできないといわれています.腹部のスクリーニング的に前立腺の肥大があるかどうかを判定する方法を教えてください.この場合,排尿前後の膀胱の尿量を比較し,排尿障害があるかどうかも判定したほうがよいでしょうか.

Q 血清酵素活性測定時の市販キットの希釈

著者: 真々田賢司 ,   大澤進 ,  

ページ範囲:P.1037 - P.1039

 血清酵素活性の測定を市販キットを用いて自動分析装置で実施しています.このときの測定条件は,キットの指示通りに行っていますが,上司から試薬代を節約するために試薬を適当に希釈して測定するようにといわれました.そこで市販キットを希釈して測定しても問題は起こらないのでしょうかお教えください.

Q 液状の生化学検査用コントロール血清

著者: 宇治義則 ,   岡部紘明 ,  

ページ範囲:P.1039 - P.1041

 最近各社から液状の生化学検査用コントロール血清が発売されていますが,従来の凍結乾燥品と比較した長所,短所を教えてください.できれば製品比較などしていただけないでしょうか.

今月の表紙

軟骨肉腫

著者: 諸(前川)傑 ,   町並陸生

ページ範囲:P.979 - P.979

 軟骨肉腫は骨肉腫に次いで多い骨原発の悪性腫瘍であり,骨肉腫に比して,その悪性度は低い.組織学的にも細胞密度が他の肉腫に比して低い.30歳以上の成人の骨盤に好発する.組織学的には,軟骨細胞の密度の増加,核の腫大,二核の細胞などがみられる.左上の図は骨端軟骨の正常な軟骨細胞で,右上の図では画像解析装置により,核面積を測定するため,核が緑色に変換されている.その核はpyknoticで,核面積の平均値は10.127μm2であった.左下の図はmyxoidな軟骨肉腫で,細胞密度はやや高く,核は腫大し,核内構造がよくわかる.二核の細胞もみられる.画像解析装置を用いて核面積を求めるため,右下の図では核が緑色に変換されている.その核面積の平均値は24.015μm2であった.軟骨肉腫の核面積の平均値は正常な軟骨細胞のそれに比し約2倍の大きさであった.

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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