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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術20巻13号

1992年12月発行

雑誌目次

病気のはなし

ベーチェット病

著者: 田川義継

ページ範囲:P.1048 - P.1052

サマリー
 ベーチェット病は,口腔内アフタ,眼症状,外陰部潰瘍,皮膚症状を主徴とし,ほかに関節症状,神経症状,消化器症状などの症状を示す全身性の炎症性疾患である.炎症の特徴は,発症部位に強い多核白血球の浸潤を伴う血管炎が細静脈を中心にみられ,しかもその炎症が再発性で繰り返し起こることである.本病の眼症状は,特に重篤な場合が多く,失明に至る症例も少なくない.原因は不明であるが,現在レンサ球菌の役割が注目されている.治療法として,コルヒチン内服,ステロイド剤の局所投与などが行われる.難治例にはシクロスポリン投与が行われている.

検査法の基礎

間接血球凝集反応の基礎—PHA(R-PHA)の反応機序

著者: 岩田進

ページ範囲:P.1053 - P.1058

サマリー
 PHAを検査室に導入したのはTPHAに応用されたのが最初で,簡便なうえ,特異度,鋭敏度ともに優れた方法として高く評価され,現在でも多くの施設で利用されている.
 R-PHAはHBs抗体検査に利用されたのが初めてで,それまで輸血用血液すべてにHB検査を行うことは至難であったが,この方法の開発により能率と感度は飛躍的に向上した.
 PHA,R-PHAともに最近では人工担体の開発進歩により固定動物赤血球の利用は少なくなりつつあるが,トレイ表面の静電荷電と粒子の持つ電荷を利用して特徴的な反応パターンを形成させ,肉眼判定で半定量ができることは,担体が人工的なものでも同じで,その基礎理論を理解しておくことは必要である.

バイオセンサ

著者: 軽部征夫

ページ範囲:P.1059 - P.1065

サマリー
 生体分子の優れた分子識別機能を巧みに利用したバイオセンサが注目されている.これは酵素,抗体,微生物などの生体分子識別素子と電気化学デバイスや半導体デバイスなどを組み合わせて構成される.特に半導体や半導体加工技術を利用して製作した微小電極を用いるマイクロバイオセンサが開発されている.これらのマイクロバイオセンサは安価かつ大量に生産できるので,使い捨て型バイオセンサとして医療分野で広く用いられるであろう.

技術講座 微生物

抗酸菌の迅速診断—遺伝子診断

著者: 中塩哲士

ページ範囲:P.1067 - P.1073

サマリー
 ヒト型結核菌および非定型抗酸菌症の主要な起因菌Mycobacterium avium-intracellulare complexの同定・鑑別には長時間(少なくとも2〜8週間)を要する.今回,遺伝生化学的手法により短時間で正確に同定・鑑別可能な方法のうち①DNAプローブ法,②ハイブリダイゼーションプロテクションアッセイ法,③マイクロプレートハイブリダイゼーション法,④ポリメラーゼ連鎖反応法についてわかりやすく解説した.

病理

走査電顕の病理診断への応用—膀胱癌

著者: 柴田雅朗 ,   白井智之 ,   福島昭治

ページ範囲:P.1075 - P.1080

サマリー
 走査電顕的に膀胱移行上皮癌の表層細胞表面を観察すると,特徴ある形態学的変化がみられる.その中でも長短不ぞろいの切株状の微細絨毛pleomorphic microvilliの出現はとりわけ重要である.膀胱癌の組織異型度(G1〜3)にほぼ相関して,この絨毛の出現数が増加し,その形態も多様化する.このような変化は初期癌にも観察され,走査電顕を尿細胞診に簡便に応用できれば,膀胱癌の早期発見・診断が可能となりうる.

生理

心電図モニタの操作法とその管理

著者: 沼澤てるひこ

ページ範囲:P.1081 - P.1087

サマリー
 心電図モニタは医療工学技術やセンサの発達によって,より機能的で機器の精度や性能も向上してきている.その心電図モニタは有線式と無線式(テレメータ)モニタとに分けられ,それぞれ使用目的によって使い分けられている.現在,最も使われているテレメータ方式の心電図モニタの操作方法は基本的にはあまり変わらないが,若干各社それぞれ工夫を凝らした点で違っている.しかし心電図モニタ機器そのものの性能が向上すると,生体と機器との接続部に関しては医療スタッフの操作技術に負うところが大きく,特に最近のようにテレメータの普及は種々の電磁干渉による影響が問題視されている.
 この無線式テレメータの心電図モニタに関しては1989年に設けられた新しい電波法がある.これらが今後,病院内でのテレメータの受信対策や機器管理上の重要な課題となる.
 モニタとして安定した心電図波形を記録し,しかも性能の複雑化に対する誤操作を少なくするためにも機器の管理はむろん,使用者の教育および性能ばかりでなく操作性の優れた機器の購入もユーザにとってますます重要な要素である.

一般

尿沈渣検査の精度管理

著者: 今井宣子

ページ範囲:P.1089 - P.1094

サマリー
 精度管理には,まず検査法の統一化が先決であるが,次に必要となるのはその結果得られる検査成績の正確さと精密さのチェックである.チェック法には,内部精度管理(コントロール尿,陽性率と陰性率,関連性チェック),外部精度管理(コントロールサーベイ,スライドサーベイやフォトサーベイ,クロスチェック)がある.その他,教育と学習・研鑽も大切である.中でも,コントロール尿を用いた精度管理とクロスチェックを併用して複数施設間で共同実施する方法は,施設内変動と施設間変動の是正に効果的である.

マスターしよう検査技術

フローボリューム曲線の測定法

著者: 進藤千代彦

ページ範囲:P.1099 - P.1102

 フローボリューム曲線は,肺活量,1秒量(1秒率)の測定とともに肺機能検査の中でも最も頻用されている検査の1つといえる.呼吸生理学では肺気量(ボリューム;V),気流速度(フロー;V)および圧(プレッシャー;P)の3つのパラメーターが重要であるが,最大吸気位(total lung capacity;TLC)から最大呼気位(residual volume;RV)まで努力性呼出をさせたときの気流速度と肺気量の関係をそれぞれy軸,x軸上に記録する検査である.
 フローボリューム曲線から得られる情報は,努力に依存する最大呼出流量だけでなく,特に低肺気量位の気流量は努力に依存しないところで末梢気道病変を反映するとされ,重要視されてきた歴史的背景がある.この現象は気道のdynamic compression(気道内外圧差が気道を圧迫する)状態,すなわち気道のつぶれやすさを示す指標として大切である.また,最近の機器は努力性呼出時にフローボリューム曲線と1秒量の測定が同時に行われるように自動化されてきており,声のかけかたも比較的やさしいことも頻用される理由として挙げられる.

生体のメカニズム ホルモン・12

消化管ホルモン

著者: 林洋一 ,   松尾裕

ページ範囲:P.1103 - P.1106

はじめに
 消化管ホルモンの発見は,1902年,BaylissとStarlingによるセクレチンに始まる.当時,生体の諸機能の調節機構として神経性調節で説明されていたが,セクレチンの発見は液体性調節の存在を提唱し,内分泌(ホルモン)学の出発点となった.
 消化管ホルモンは,摂取された食物およびその消化粥の刺激により,消化管粘膜内に散在する内分泌細胞から分泌される.その作用は,血流に入り(エンドクリン)あるいは血流に入らず直接隣接する組織に働き(パラクリン),自律神経と密接な共働作用を持ち,消化管,肝,胆道および膵の内外分泌機能,運動機能や腹部内臓循環を調節し,さらに消化吸収後の代謝調節にも関与している.

検査データを考える

クレアチニンの異常

著者: 高光義博 ,   平岡敬介 ,   中川清彦 ,   中西裕治

ページ範囲:P.1107 - P.1112

はじめに
 クレアチニンは血中,尿中濃度とも日常の臨床でよく測定される検査項目であり,主に腎機能の評価のために用いられる.
 クレアチニンは筋肉内でクレアチンおよびクレアチンリン酸の非酵素的脱水反応により産生される低分子の窒素化合物であり,尿素や尿酸などと同じく代謝最終産物である.クレアチンの約98%は筋肉にあり,クレアチニンの産生量は筋肉量に比例し,食事,運動,カタボリズムの影響をあまり受けず,各個人でほぼ一定である.血中に入ったクレアチニンは腎糸球体から濾過され,尿細管で再吸収を受けることなく排泄される.尿細管での分泌も軽微で,クレアチニンの排泄は糸球体機能に依存しており,そのクリアランスは糸球体濾過値(glomerular filtration rate;GFR)に近い値となる.これらのことより血清クレアチニンの正常値は筋肉量に比例するが,異常値に最も関与するのは腎の糸球体機能といえる.それゆえ血清クレアチニン値は腎機能評価の指標として用いられ,さらに詳しい評価にはクレアチニンクリアランスが測定される.しかし,いずれの検査も疾患特異性を示すものではない.

講座 英語論文を読む・24

ヒト血清中プロインスリン測定の迅速・高感度ラジオイムノアッセイ

著者: 弘田明成

ページ範囲:P.1128 - P.1129

 ラジオイムノアッセイ法はヒト血清中プロインスリンの測定に広く用いられている.しかし,多くのRIAはプロインスリンを血清から抽出せずに定量するのに感度が十分でなかったり,あるいはまた長いインキュベーション時間を要したりする.われわれは測定感度が3.5pMであるRIAを開発し,これにより日常的にプロインスリンを48時間以内に測定することができるようになった.このことを可能にするため室温下での非平衡結合反応を利用し,さらに遊離プロインスリンと結合プロインスリンの分離にPEGを加えた第二抗体沈殿法を用いた.ヒトC-ペプチド-アガロースによって山羊抗血清の原血清から特異的な抗プロインスリン血清を吸着した.プロインスリンは25.6pMでトレーサーの50%を置換したが,ヒトインスリンやC-ペプチドは1μMの濃度においてもトレーサーを置換することができなかった.われわれはさまざまなプロインスリンの切断誘導体とこの抗体との交差反応性を検討した.B鎖-Cペプチド切断誘導体(≤50%交差反応性)はA鎖-Cペプチド切断誘導体(<5%交差反応性)よりも置換する力が強力であった.しかし,56-60部位で切断されたすべての誘導体はいずれもこの抗血清には反応しなかった.

検査ファイル

樹脂包埋切片の意義

著者: 金子伸行

ページ範囲:P.1113 - P.1113

はじめに
 通常,病理組織学的診断はパラフィン包埋切片のヘマトキシリン・エオジン(HE)染色標本の観察により行われている.しかし,時にはHE染色だけでは診断が困難な病変もあり,HE染色に加え,特殊染色(アザン染色など)や,免疫組織化学的染色,酵素組織化学反応,さらには電子顕微鏡的観察,分子病理学的検索などを行い,より診断を確実なものとする努力がなされている.
 近年,免疫組織化学は急速に進歩し,電子顕微鏡的観察にも応用され,その診断に対する意義はますます増えてきている.それに伴い,固定法のみならず包埋剤も見直されるようになり,合成樹脂の価値が再評価されつつある.そこで,包埋の目的などからみた合成樹脂による包埋の意義を考えてみたい.

尿中白血球

著者: 宿谷賢一 ,   古谷信滋 ,   中原一彦

ページ範囲:P.1114 - P.1114

はじめに
 尿中に白血球が増加する場合,腎・尿路系の炎症が推定され,重要な意義を持つ細胞の1つである.特に尿路感染症患者の尿中に出現する白血球のほとんどは好中球である.これらの好中球を詳細に観察すると細菌や酵母を貪食している.好中球の機能は,遊走能,貪食能,細胞内殺菌能に大別される.尿中では血液中と比べ,浸透圧,pH,補体成分などの諸因子が異なるため,機能を保持するには適当な環境とはいえないが,なんらかの役割を果たしている可能性が考えられる.

超音波の鏡面現象

著者: 木村邦夫

ページ範囲:P.1115 - P.1115

[1]定義 超音波の鏡面現象とは,Bモード超音波画像にみられるアーチファクトの一種であり,鏡に反射して目に入る像を虚像として見るように,1つの超音波画像内で反射体を鏡面として,その両側に実像と虚像を見る現象である.

尿比重

著者: 藤方理恵 ,   柿原良俊

ページ範囲:P.1116 - P.1116

はじめに
 尿比重は尿中に含まれる溶質の質量(濃度)を表している.溶質に含まれる粒子の数(モル数)に比例する尿浸透圧とともに腎臓の重要な機能である尿の濃縮,希釈能を知るうえで重要であるが,水および電解質代謝の異常を告げる情報としても有用である.
 尿中主要溶質成分は食塩(10〜15g/日)と尿素(15〜30g/日)であり,尿比重は主としてこの2成分により支配される.また抗利尿ホルモン(antidiuretic hormone;ADH)の分泌に影響を与える寒冷,体位,情緒などの諸因子によっても影響される1)

ラボクイズ

問題/病理

ページ範囲:P.1096 - P.1096

11月号の解答と解説

ページ範囲:P.1097 - P.1097

明日の検査技師に望む

明日を担う技師諸君へ

著者: 中原一彦

ページ範囲:P.1066 - P.1066

1.臨床サービスの徹底を旨とすべし
 検査技師にとって第一の仕事は臨床検査であることは言を待たない.臨床検査を行ううえで最も基本とするべきは,臨床サービスの向上を徹底して考え,実行することだと思う.ここでいう臨床サービスとは,ともかく,臨床サイドからあがってくる種々の要望も含め,臨床側の立場に立って物事を考える姿勢のことである.臨床側の種々の要求に対して,ともすると,自分たちの仕事が増えるという理由で,あるいは繁雑なことを回避したいがために,そのような要求を頭から拒否してしまいがちになる.中には無謀な要望もあろうが,ともかく,前向きに取り組むという姿勢が大切だと思う.「明日の検査技師に望む」というテーマにもかかわらず,ずいぶん,卑近なことを言うと思われるかもしれないが,これはいつの時代になっても根底とすべき考えであると思う.要するに私の言いたいのは,プロとしての臨床検査技師に対して期待される心の持ちかたである.

けんさアラカルト

臨床化学の科学性

著者: 戸谷誠之

ページ範囲:P.1074 - P.1074

はじめに
 広辞苑によれば「科学」は「世界の一部を対象領域とする経験論的に論証できる系統的な合理的認識」とある.英語あるいはフランス語の“science”の語源はラテン語の“scire”から出ていて,物事を理解して「知る」の意味である.過日,このことについて文化功労者の長倉三郎東大名誉教授(総合研究大学院大学長)のご講演をうかがったが,先生によると日本語の「科学」は西 周の「百学連関」と福沢諭吉の「一学一科」からの「百科の学術」が語源だそうで,科学には1つの発明や発見から新たな発明や発見を生み,その結果がさらなる発見や発明を生む連鎖性があると解説された.
 一転して,身近な話になるが日本臨床化学会は1990年1月1日に新会則が発効し,新たな発展を目指し歩み始めた.昨年から本年にかけての学会,研究集会,支部例会などの機会をとらえ,この歩みかたについて,さまざまな討議が行われている.この機会に「臨床化学」の将来像を含めよく考えてみるのもよかろうと昨年(1991年)犬山で開催された同会の夏期セミナーで,冒頭のタイトルを掲げたナイトセミナーを企画担当させて頂いた.

トピックス

フローカリオタイプ

著者: 孫田信一

ページ範囲:P.1117 - P.1118

フローカリオタイプとは
 染色体は,遺伝子などを構成するDNA鎖とそれを取り巻く蛋白質との複合体である.そのサイズはその中に含まれるDNA量にほぼ比例すると考えられる.フローサイトメトリーは染色体や細胞をDNAなど特定の物質に結合する蛍光色素を用いて染色し,レーザーなどで励起させた蛍光の強さを検知してそのサイズを測定する方法である.この方法で蛍光の強さとそれに相当する染色体数との関係をヒストグラムに表したものをフローカリオタイプ(flow-kayotype)という.

FABP

著者: 小野輝夫

ページ範囲:P.1118 - P.1119

 FABPはサイトゾールに存在するfatty acid binding protein(FABPc)のことで,分子量約40kdの細胞膜にあるFABPmとは区別される.FABPcは細胞質に比較的豊富(0.2〜0.4mmol/l)に存在する低分子蛋白(分子量14〜15kd)で,長鎖脂肪酸をリガンドとしている.この蛋白は細胞種により異なった分子種が発現されており,現在,肝型(L-FABP),心筋型(H-FABP),腸型(I-FABP),脂肪細胞型(aP2),シュワン細胞型(myelin P2)などのほか,ガストロトロピン,mammary derived growth inhibitor(MDGI),I-15Pが知られる.さらにこの蛋白群はmultigene familyを形成し,その中にはレチノール,レチノール酸と結合するcellular retinol binding protein(CRBP),cellular retinoic acid binding protein(CRABP),CRBP-IIも含まれる.これらの蛋白群はmyelin P2proteinsuperfamilyと呼ばれ,同じ祖先遺伝子から進化したものと推定され,遺伝子構造は共通に4つのエクソンと3つのイントロンから成る.脂肪酸結合蛋白と呼び,キャリアー,転送蛋白などと呼ばないのは,これまで脂肪酸の転送やトランスロケーションを明確に示せなかったためである1)

p53の免疫組織化学

著者: 五十嵐久喜 ,   椙村春彦 ,   喜納勇

ページ範囲:P.1119 - P.1120

 p53は,初めマウスの細胞株(SV40のT抗原でtransformしたもの)において,T抗原と特異的に結合する蛋白質として同定された.当初癌細胞株などで発現が増加しているため,腫瘍遺伝子のようなものとして認識されていたが,後にこれが,もともとの遺伝子が突然変異を起こしていたものであり,実際の野生型のほうは,腫瘍の抑制遺伝子としての機能を持つということがわかった.その証拠の1つに,多くの腫瘍においてこの遺伝子の欠失や点突然変異が高頻度で起こっていて正常の機能を失っているという事実がある1,2)
 より直接的には突然変異の起こっている腫瘍の細胞株に野生型の遺伝子を導入するとその細胞の腫瘍原性が失われる,つまり抑制されるという実験もある.いずれにせよヒト腫瘍で変化している遺伝子の中では頻度が最も高く,その生物学的な特性は多くの研究者の注目を集めている2)

骨のPNET

著者: 福永真治

ページ範囲:P.1120 - P.1122

背景
 未熟神経外胚葉性腫瘍(primitive neuroectodermaltumor;PNET)は神経管周囲の胚芽細胞層を構成する未分化な細胞の形態と細胞配列を模倣する腫瘍で,元来は中枢神経性腫瘍に対して用いられた用語である.歴史的には1983年にPNET of the brain inchildren1)として提唱されたことに始まる.近年,軟部や骨など末梢性に発生した同様の腫瘍にもその用語が用いられる傾向にある2,3).骨原発のPNETについては1984年Jaffeら3)によって初めて4例が報告された.
 現在,骨PNETと小児に多い悪性骨腫瘍であるユーイング肉腫との関係,特に組織発生について議論が盛んである.従来は一般光顕,細胞質内の糖原の有無や電顕像から神経性の特徴の有無を検討することにより両者を鑑別していた.最近では神経性マーカー(神経特異性エノラーゼ,ニューロフィラメント,S-100蛋白,Leu 7など)を用いた免疫組織化学的な技法により,あるいは表現型の関連性が明らかになりつつある.

けんさ質問箱

Q Miltenberger抗体

著者: 照屋純 ,  

ページ範囲:P.1123 - P.1124

 生理食塩液法,室温相で反応するMiltenberger抗体は,文献にはMNSs系であると記載されていましたが,通常の抗体スクリーニングで検出されるのでしょうか.溶血性副作用の報告もあり,MNSs系と関連のある型抗原といわれていますが,詳細を教えてください.

Q HBs抗原サブタイプ

著者: 吉沢要 ,   清沢研道 ,  

ページ範囲:P.1124 - P.1125

 HBs抗原には,adwrやadyrなどのコンパウンドサブタイプが5〜10%みられるようですが,臨床的意義との関連はあるのでしょうか.また,サブタイプの違いにより,発症や予後にどの程度影響があるものでしょうか.

Q ホルマジン濁度数

著者: 戸田克己 ,  

ページ範囲:P.1125 - P.1126

 種々の検討を行うとき,干渉物質のチェックは必ず必要になってきますが,国際試薬から出ている「干渉チェック・Aプラス」は,ビリルビン,溶血,乳び(混濁)による影響を調べるのに最も簡便なものだと思っています.ところでこの「干渉チェック・Aプラス」で乳びの単位として使われているホルマジン濁度数という度数について,どういう経過で一般に普及してきたのかお教えください.また現在使用されている乳び,強乳びと,この濁度数との関係がわかっているならば,併せてお願いします.

Q 消化器内視鏡技師の仕事内容とその資格取得法

著者: 工藤重光 ,   平塚秀雄 ,  

ページ範囲:P.1126 - P.1127

 消化器内視鏡技師の仕事の範囲や内容,およびその資格の取得方法について詳しく教えてください.

今月の表紙

肺の小細胞癌と大細胞癌

著者: 諸(前川)傑 ,   町並陸生

ページ範囲:P.1058 - P.1058

 肺の小細胞癌の多くは肺門部に発生し,縦隔に直接浸潤して,発育が早い.組織学的には,燕麦細胞型と中間細胞型とに分けられる.リンパ球に似た小型円形ないし紡錘形細胞が肉腫様に増生する.左上の図は,燕麦細胞型の小細胞癌で,核分裂像がよくみられる.画像解析装置で,核を緑色調に変換させたものが右上の図で,腫瘍細胞核の平均面積値は36.015μm2であった.
 肺の大細胞癌は,大型の腫瘍細胞が重層扁平上皮様の構造や管腔形成などを示さないで増生するのを特徴とする.粘液形成型,粘液非形成型および巨細胞型に分けられている.左下の図は大細胞癌で,巨大な多核巨細胞や,比較的小さい癌細胞が混在して増殖している.上記と同様に,右下の図は組織学的計測のため核を緑色に変換したもので,腫瘍細胞核の平均核面積値は86.87μm2である.大細胞癌の核面積は小細胞癌のそれより約2倍以上大きいことがわかった.

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「検査と技術」第20巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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