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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術21巻1号

1993年01月発行

雑誌目次

病気のはなし

深在性真菌症

著者: 奥平雅彦

ページ範囲:P.6 - P.12

サマリー
 カビによる感染症を真菌症という.真菌症は表在性感染症(表皮角化層,毛髪および爪の感染)と深在性真菌症の両者に大別される.深在性の大部分は内臓の真菌症である.わが国にみられる内臓真菌症の大部分は日和見真菌症と呼ばれるもので,個体の抵抗力の低下が重要な発症要因となっている.わが国における現況と問題点について紹介した.

検査法の基礎

腸管出血性大腸菌の検査法

著者: 山田文也

ページ範囲:P.13 - P.18

サマリー
 大腸菌(Escherichia coli)はヒトおよび動物の腸管内に常在し,その多くは腸管内では病原性を示さない.しかし,一部の大腸菌は腸管に感染し,下痢・腸炎の原因となる.この一群の大腸菌を一般に下痢原性大腸菌という.現在,下痢原性大腸菌は下痢の発症機序により腸管病原性大腸菌(病原血清型大腸菌),組織侵入性大腸菌,毒素原性大腸菌および腸管出血性大腸菌の4種類に分類されている.これらの下痢原性大腸菌は,その多くが病原性のない大腸菌と同じ性状を持つため,生化学的性状試験による同定は極めて困難である.したがって,下痢原性大腸菌の同定は下痢原性大腸菌の多くがある一定の血清型に属することから,O抗原(菌体抗原)とH抗原(鞭毛抗原)による血清型別および病原因子の確認によって行う必要がある.

コラーゲン(膠原線維)の型分類

著者: 畑隆一郎

ページ範囲:P.19 - P.25

サマリー
 高等動物の身体の蛋白質の30%を占めるコラーゲンは,コラーゲンヘリックスという共通の構造を持つが,その長さ,分子の形を異にする多数の分子種からなる大家族である.コラーゲンの型は現在までにI型からXVI型まで認知されており,これを構成するα鎖はおよそ30種報告されている.その分布は,細胞あるいは組織特異性を示す.細胞は分化に伴い,種々の型のコラーゲンを合成し,これはまた,ミクロの細胞環境として,細胞の集団である組織の形を決め,細胞の機能の発現を制御する.ここではコラーゲンの共通の性質,機能とともに,各型コラーゲンの特徴について述べた.

技術講座 免疫

補体系蛋白の定量

著者: 佐々木勝一 ,   山岸安子

ページ範囲:P.27 - P.35

サマリー
 補体系蛋白は20数種類あり,生体防御の重要な役割を担っており,それらを測定することにより,種々の自己免疫性疾患や補体欠損症などの診断,経過観察に役立っている.検査法には,補体系の古典的経路の活性をみる血清補体価(CH50)と第2経路(副経路)の活性をみるACH50があり,また個々の成分を蛋白量として測定する補体定量法がある.日常検査として最も用いられているのは,血清補体価(CH50)と補体蛋白のC3,C4である.近年,各種成分に対する抗体を用いた種々の測定法が開発されており,以下にこれらの代表的な測定法について,基本原理,測定上の注意点について概説する.

病理

結合織線維の染色法

著者: 大平嘉一 ,   町並隆生

ページ範囲:P.36 - P.40

サマリー
 日常の病理検査室における検査技師の主な仕事は,人体病理解剖の介助と,手術材料,解剖材料の標本作製,細胞診の標本作製とスクリーニング,電子顕微鏡による診断のための標本作製である.
 その中でごく一般的に行われている光顕レベルの組織学的検索(生検材料や剖検材料)を行ううえで,HE染色は不可欠なものであるが,組織学的診断を下すためには,そのほかの補助となる染色を必要とする場合が非常に多い.その中で最も一般的に行われるのが結合織線維の染色で,病理組織学の面でほとんど必須のものとして用いられている.
 そこでわれわれが日常行っている結合織線維の染色を,これまでに報告された原著をもとに多少の工夫を加え,手技上の注意点を概説した.

生理

心機図検査法

著者: 山本誠一

ページ範囲:P.41 - P.53

サマリー
 心機図検査法とは,心臓から発生するすべての機械的振動,すなわち,聴診で得られる心音,視診・触診によってとらえられる頸静脈拍動,頸動脈拍動および心尖拍動を客観的にグラフ化したものである.心機図の臨床的意義としては,①心音図と種々の脈波を同時記録することにより,心音図の診断的価値を高めることができる ②左室収縮時間を測定することにより,左心機能の評価ができるなどが挙げられる.
 診断に有用な心機図波形を記録するためには,次のことが大切である.
 (1)心血管系の視診・触診および聴診の技術に習熟し,心疾患の病態をよく把握しておくこと.(2)記録方法や機器,器具を工夫,改良し,できるだけ全操作を簡単に,しかも短時間で完了できるようにすること.(3)マイクロホンを含めた,性能の良い記録装置を開発すること.今回は,筆者が行っている心機図の記録法および心機図の臨床的意義について解説した.

マスターしよう検査技術

微量末梢血を用いたリンパ球芽球化能測定法

著者: 田坂哲哉 ,   松島早月 ,   松崎潤 ,   中原一彦

ページ範囲:P.57 - P.62

はじめに
 リンパ球は抗原などの刺激により,細胞分裂を起こし,抗体産生,リンホカイン産生,細胞障害活性,ヘルパーあるいはサプレッサー機能などを発揮する.リンパ球芽球化能試験は,末梢リンパ球にマイトジェンや特異抗原を添加し培養することにより生ずる幼若化の程度から,免疫能の異常や特定の抗原に対する感作の有無を調べる検査である.通常は,比重遠心法により分離した単核球を血清添加培養液中で培養し,放射性物質の取り込みによりDNA合成の程度を測定する方法が用いられている.
 こうした従来の方法は,単核球を採取するために多量の血液を必要とし,また,添加血清の質的影響を受けるという問題がある1)

生体のメカニズム 脂質代謝・1

リポ蛋白の構造と機能および代謝

著者: 内藤周幸

ページ範囲:P.63 - P.68

 昔からお互いに決してなじみ合わないものを「水と油」の仲などと表現することからも明らかなように,脂質は血漿という“水”には溶けないはずである.しかし現実には血漿中の脂質(油)は血漿(水)に溶解して存在している.これには自然の優れた知恵が働いているのである.

検査データを考える

HBウイルス関連抗原抗体の検査値

著者: 熊田博光 ,   小林万利子

ページ範囲:P.69 - P.70

 現在肝炎ウイルスには,5種類の肝炎ウイルスが確認されており,A型肝炎ウイルス(hepatitis A virus;HAV),B型肝炎ウイルス(HBV),C型肝炎ウイルス(HCV),D型肝炎ウイルス(HDV),E型肝炎ウイルス(HEV)に分類されている.今回は,Blumbergらの発見されたオーストラリア抗原ともいわれるB型肝炎ウイルスマーカーについて述べる1,2)

講座 英語論文を読む・25

結腸直腸新生物のスクリーニングにおけるヘモカルトとヘモクァントの特異性と感度の比較

著者: 弘田明成

ページ範囲:P.72 - P.73

 目的:結腸直腸新生物のスクリーニング時におけるヘモカルトIIとヘモクァントの特異性と感度に関しての比較のため.
 設計:食餌性ヘムと高ペルオキシダーゼ含有食物を除外した後,被検者は平行して2つの検査を受ける横断的調査に参加した.ヘモクァントの結果は3つの異なった正常上限値(1.5,2.0,3.0mg/g便)を用いて解析した.

検査ファイル

HDL-コレステロールの測定

著者: 今村ちさ ,   和田佳子

ページ範囲:P.74 - P.74

 ヒト血清の高密度リポ蛋白(high density lipoprotein;HDL)には15〜28%のコレステロールエステル,3〜9%の遊離コレステロールが含まれている.このHDL-コレステロールの血中濃度と虚血性心疾患の発症頻度の間には負の相関が示され,その抗動脈硬化作用は末梢組織に蓄積したコレステロールを肝臓に転送し,異化する「コレステロール逆転送系」への関与に基づくと推察されている1)
 血清HDLの分画法としては,超遠心法,液体クロマトグラフィー,電気泳動法などもあるが,臨床検査では多数の検体を処理するための簡便性,迅速性を考慮して,血清検体にリポ蛋白を特異的に沈殿させる試薬を加えて分画する結合沈殿法が用いられている.沈殿試薬としては,ヘパリン硫酸-Mn2+,デキストラン硫酸-Mg2+,ヘパリン-Ca2+などがあるが,ここでは最近開発されたデキストラン硫酸-ポリエチレングリコール(PEG)-Mg2+試薬を用いた血清HDL-コレステロール測定法について概略を記す.

マイクロインジェクション法によるトランスジェニックマウスの作製

著者: 寺内久美子 ,   宮崎徹

ページ範囲:P.75 - P.75

 1980年,Gordonら1)によって,初めて外来遺伝子を染色体内に組み込んだマウス(トランスジェニックマウス)が作製されてから現在に至るまで,生体内における遺伝子発現の機構や,遺伝子産物の機能を解明するための有効な手段として,受精卵への遺伝子導入が盛んに行われてきた.特に,従来の培養細胞での形質転換との大きな違いは,あらゆる細胞に分化しうる受精卵に遺伝子導入することで,マウスの発生・分化の過程で導入遺伝子の発現と,その機能の解析が可能であり,さらにすべての体細胞,生殖細胞に導入遺伝子を持つマウスを系統的に維持できることである.本稿では,最も広く用いられているマイクロインジェクション法によるトランスジェニックマウスの作製について簡単に述べる.詳しい作製法に関しては他書を参照されたい2,3)

トレッドミル負荷試験

著者: 村松準 ,   浅見聡

ページ範囲:P.76 - P.76

[1]トレッドミル負荷試験とは
 回転するベルトの上に被験者を立たせ,被験者の意志とは無関係に,歩行運動をさせる検査法である.装置は電動式で,速度・傾斜を変化させることができる.そのため,運動レベルを一定時間ごとに少しずつ上げていく,多段階運動負荷を行うことが可能であり,被験者の運動能力に応じた負荷を加えることができる.また,運動中の心電図記録,血圧測定なども容易に行うことができる.

新しいカルニチンの測定法

著者: 安部照代 ,   有馬祥一 ,   木戸内清

ページ範囲:P.77 - P.78

はじめに
 カルニチンは分子式(cH33N+-CH2CH(OH)CH2COOHの一種のビタミンで,脂肪酸をエネルギーとして利用できるミトコンドリア内に長鎖脂肪酸をアシルカルニチンとして搬送する.
 脂肪酸+ATP+CoA→アシル-CoA+Pi+AMP

ラボクイズ

問題:食品から感染する寄生虫

ページ範囲:P.54 - P.54

92年12月号の解答と解説

ページ範囲:P.55 - P.55

明日の検査技師に望む

将来の医療と検査技師

著者: 清水喜八郎

ページ範囲:P.26 - P.26

 私は1952年に東京大学を卒業し,内科学教室に入局し,内科の勉強をしていた.
 1960年に医療の近代化という理念に基づいて,病院に中央診療施設が企画され,まず中央検査部,中央手術部が創設された.中央検査部が創設されて日の浅いときに,細菌検査室の職務を担当することをおおせつかった.これが私と中央検査部とのかかわり合いの始まりであった.その後検査室と臨床の間に立った仕事を続けてきて今日に至っている.

けんさアラカルト

骨髄バンクのシステムとその運営

著者: 高橋孝喜 ,   十字猛夫

ページ範囲:P.56 - P.56

はじめに
 待望の公的・全国的(national)骨髄バンクがスタートした.すなわち,その中核となる骨髄移植推進財団が1991年12月に発足し,日赤各血液センターでのドナーのHLA検査も毎月約1,500人の割合で進み,'92年10月末現在で14,611人を数えている.コーディネーター用のガイドラインもまとまり,移植希望患者の登録受付も'92年6月22日より開始された.実際の検索(データの場合)も進み,最終的な適合性を確認する段階にきている例もある.ヒトの主要組織適合性抗原である白血球型抗原(human leukocyte antigen;HLA)を合わせた非血縁者間骨髄移植が日常的に行われる日も近いと期待される.そのためにはドナーの得難い協力だけでなく,より多くの方々の暖かいご理解・ご援助が必要である.以下に骨髄バンクの運営について整理したい.

トピックス

好中球の抗腫瘍作用

著者: 谷憲三朗

ページ範囲:P.79 - P.80

 生体において抗腫瘍作用を実際に有していると思われる免疫担当細胞には,抗体依存性細胞障害(antibody-dependent cellular cytotoxicity;ADCC)担当細胞,細胞障害性T細胞,ナチュラルキラー(naturalkiller;NK)細胞,活性化マクロファージ,リンホカイン活性化キラー(lymphokine activated killer;LAK)細胞などが一般的に挙げられている.これらに加え,最近適当な条件下において,好中球(PMNs)が抗腫瘍作用を有することが明らかになってきている1,2)
 PMNsがその機能を発揮するためには,まず血流中より,炎症などの局所へ至り,ある程度その部位にとどまる必要がある.このためにはPMNs表面上のCD11/CD18ならびに血管内皮細胞上のICAM-1,-2,ならびにELAM-1といった接着分子に加え,PMNsの走化誘導作用を有するIL-8を中心としたサイトカインが重要な役割を果たしていることが明らかになってきている.いったん,局所に至ると,PMNsは細菌や免疫複合体をFcレセプターを介し,また,C3破壊産物を補体レセプター(CR1,CR3)を介して貪食する3)

イミペネム耐性緑膿菌

著者: 辻明良

ページ範囲:P.80 - P.82

 イミペネム(imipenem)はβ-ラクタム剤のうちカルバペネム系に属する初発の抗菌剤である.本剤の抗菌力の特徴はグラム陽性菌,グラム陰性菌に幅広い抗菌スベクトルを有し,Xanthomonas maltophilia以外の菌種に強い抗菌力を示す.特に緑膿菌に対しては既存のβ-ラクタム剤の中では最も強い.市販されてすでに5年以上経過しているが,イミペネム耐性緑膿菌の出現はどのようになっているであろうか.図1は1991年に臨床分離された緑膿菌58株に対する抗緑膿菌剤の抗菌力である1),MIC50,MIC90で比較したとき,イミペネムのMIC50は1μl/ml,MIC90は2μl/mlで,同系のメロペネム(meropenem:未発売)に比べ,1段階劣るものの,他のβ-ラクタム剤(ペニシリン系,セフェム系,モノバクタム系)の中では最も強い.アミノグリコシド系のトブラマイシン(tobramycin)に比べ,MIC50は同等で,MIC90(32μg/ml)では優れている.ブレイクポイントを16μl/ml以上とするとイミベネムの耐性率は3.4%である.小栗らは1990年臨床分離緑膿菌のイミペネム耐性菌は4.6%にみられ,増加傾向にあると報告している2)

Campylobacter jejuniとギラン・バレー症候群

著者: 高橋正樹 ,   斉藤香彦

ページ範囲:P.82 - P.83

 1977年,Skirrowはヒトの新たな下痢症起因菌としてCampylobacter jeiuniの重要性を指摘した.以来,数多くの本菌による集団例,散発例が世界各国で明らかにされ,C. jejuniの腸炎起病性に対する認識は急速に高まった.一方,1980年代初頭より,本菌罹患後ある期間を経て,関節炎,ライター症候群,出血性尿毒症性症候群およびギラン・バレー症候群(Guillain-Barré syndrome;GBS)などの症状をきたす,いわゆる“後感染性疾患(postinfectional diseases)”の症例が漸次報告されるようになった.これらの中で,特にGBSを発症した症例は多く,C. jejuniとGBSとの関連性が注目されている.本稿ではその周辺にスポットを当て,最近の知見を踏まえながら概説したい.
 GBSは急性に脱力,四肢の運動麻痺,顔面神経麻痺などの,一連の神経症状を主徴とする急性多発性神経炎(acute idiopathic neuropathy)で,臨床的には神経障害の優位差により脊髄神経型,脊髄神経および脳神経型など6型に分類されている.病理学的には末梢神経系(I〜XII脳神経,脊髄神経,後根神経節,交感神経および神経節)の髄鞘破壊(脱髄)を主な病変とした,自己免疫疾患のカテゴリーに分類される疾患である1)

腸内フローラと老化

著者: 光岡知足

ページ範囲:P.83 - P.84

腸内フローラとは
 ヒトや動物の腸内には100兆,100種に及ぶ細菌が住みついている.これを腸内細菌叢(腸内フローラ)と呼んでいる.これらの細菌の中には,その働きの面からみれば,乳酸菌のような有用菌,大腸菌やウェルシュ菌などの腐敗菌に代表される有害菌と,有用菌,有害菌のいずれともいえない菌があり,両者が一定のバランスをとって摂取された食物や消化管に分泌された生体成分を栄養素として絶えず増殖しては排泄されている.

けんさ質問箱

Q 脳脊髄液の細胞分類

著者: 稲垣清剛 ,   M.T.

ページ範囲:P.85 - P.86

 当院ではリコールの細胞分類をLyとNに分けています.またマクロファージは,それとわかればNとします.ある検体で細胞数も多く,サムソンでは判定しかねるため,沈渣に血清を1滴加えてストリッヒを作り,メイ・ギムザ染色をして血液のようにカウントしました.この値はサムソン法とはかなり違ってしまいますが,リコールの分類として報告してもよいでしょうか.また,リコール中にサムソンでも大型のLyでおかしいとわかるものが多いので,上記と同様ストリッヒにして見ると,形質球様の細胞でした.これはリコール中にも出現するのでしょうか,それとも異型リンパ球だったのでしょうか.

Q 回腸導管術後尿の沈渣

著者: 都竹正文 ,   T.I.

ページ範囲:P.86 - P.87

 泌尿器科外来検体で回腸導管術後の沈渣には,円形の封入体細胞が多くみられますが,これらを回腸円柱上皮細胞と報告しています.回腸円柱上皮細胞について組織学的に教えてください.このような尿の場合,封入体細胞と回腸円柱上皮細胞とを区別することは可能でしょうか.それともこの円形細胞は封入体細胞と報告するほうがよいのでしょうか.

Q ホルター心電図の自動解析

著者: 沼澤てるひこ ,   T.O.

ページ範囲:P.87 - P.89

 ホルター心電図はほとんど自動解析が行われ,テープを入れてボタンを押すだけで結果が得られると聞きます.そのまま結果として提出した場合,診療側に満足してもらえるものでしょうか.解析オペレータとして,それ以外の解析のしかた,注意点,ここまでは付け加えるべきだというような解析基準がありましたら教えてください.

今月の表紙

婦人科病変とヒトパピローマウイルス感染

著者: 古田則行 ,   都竹正文 ,   坂本穆彦

ページ範囲:P.71 - P.71

 分子生物学的手法(サザンブロットハイブリダイゼーション法,in situハイブリダイゼーション法,PCR法)によって,現在約70種のヒトパピローマウイルス(human papilloma virus;HPV)が確認されている.婦人科領域の病変では,HPV-6,11,16,18,31,33,35,52,56,58型などが関与していることがわかった.そのうちHPV-6,11型は外陰部に好発する尖圭コンジロームに,16型は頸部扁平上皮癌,上皮内癌に,18型は頸部腺癌に,そのほかの型では異形成に多く検出され,病変発生に,また癌化に関与していることがわかってきた.HPV感染の有無は分子生物学的手法によるHPV-DNA検出が必要不可決とされている.しかし,細胞診的にもHPV感染細胞所見を示す例では,感染所見の特異性,出現率,各所見の組み合わせによって,HPV感染の有無は十分判定可能である.
 HPV感染細胞所見として挙げられる細胞と細胞の定義,特徴を以下に述べる.

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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