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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術21巻13号

1993年12月発行

雑誌目次

病気のはなし

シェーグレン症候群

著者: 山内康平

ページ範囲:P.1050 - P.1059

サマリー
 シェーグレン症候群は眼と口腔の乾燥症状を示す非特異的慢性炎症性疾患である.唾液腺や涙腺を主とする外分泌腺全般を標的とした原因不明の自己免疫疾患とされている.涙の分泌減少による眼の症状と唾液分泌低下による口腔症状が主体であるが,関節痛や筋痛,発熱やレイノー現象など症状も多彩である.呼吸器,消化器病変を伴うことも多く,甲状腺炎,婦人科疾患,低カリウムや耐糖能低下も合併しやすい.圧倒的に女性に好発し,検査上,アルカリ尿,腎尿細管障害,血算では白血球減少,貧血,時に血小板減少,血沈の亢進,高γ-グロブリン血症,自己抗体ではリウマトイド因子や抗核抗体など多彩に陽性を示し,抗SS-A抗体や抗SS-B抗体が本症に特異性が高い.

検査法の基礎

Helicobacter pyloriの検査法

著者: 後藤陽一郎 ,   松本悠輝 ,   久保田利博 ,   藤岡利生 ,   那須勝

ページ範囲:P.1061 - P.1066

サマリー
 Helicobacter pyloriは,1983年に初めてヒトの胃粘膜から分離培養され,その後多くの研究者によりH.pyloriと胃・十二指腸疾患に関する研究が行われてきた.本菌は,極多毛性(3〜6本)の鞭毛を有するらせん状のグラム陰性桿菌である.分離培養は微好気高湿度環境下で,37℃,3〜5日と長期間必要である.そのため迅速診断法として,本菌の持つ強いウレアーゼ活性を利用するrapid urease test,14Cまたは13C尿素呼気検査法,CLOテストなどがある.また胃液中のアンモニア濃度を測定したり,ELISA法による血中抗体価は有用な補助診断法となる.
 本稿ではH.pylori感染症を診断するための種々の検査法について概説した.

MRIの基礎

著者: 小野修一 ,   山田健嗣 ,   福田寛

ページ範囲:P.1067 - P.1073

サマリー
 MRIは,水素原子核の磁場の中での性質を応用した断層画像法である.その画像における信号強度は,水素原子核密度,T1・T2緩和時間と流れなどの要素の影響を受ける.異なる組織間のコントラスト分解能が高く,水平断のみならず任意の断層面が得られ,放射線被曝のないこと,骨・歯・空気などのアーチファクトがないことなどの特徴があり,X線CTなど,その他の画像診断法と相互補完的な役割を果たすものである.

技術講座 血液

血小板放出能

著者: 尾崎由基男 ,   矢冨裕

ページ範囲:P.1075 - P.1079

サマリー
 血小板には,濃染顆粒,α顆粒などの顆粒成分があり,刺激に応じて顆粒内容を放出する.濃染顆粒には,ADP,セロトニンなどが含まれ,またα顆粒には,β-トロンボグロブリンや種々の成長因子が含まれる.これらの物質が,血小板外へ放出される程度を測定するのが血小板放出能であり,血小板凝集能測定とともに,血小板機能を評価するうえで重要な検査である.血小板機能低下が疑われる症例で,刺激による顆粒内容放出能を検討する場合,濃染顆粒内容放出を測定することが多い.種々の血栓性疾患などにおける生体内の血小板活性化を評価するには,α顆粒内容が適している.

免疫

PCRによる定量測定(競合PCR)

著者: 引地一昌 ,   青島秀幸 ,   吉田晃

ページ範囲:P.1081 - P.1085

サマリー
 PCRを用いた定量測定は,サンプル中の標的が非常に微量な場合に用いられる方法である.定量法には競合PCRが用いられるため,競合させるためのコンペティターを必要とし,複雑な検査工程になっている.臨床検査での応用はRNAのほうが多く,逆転写酵素を用いてcDNAを合成し,PCRを行う.そのため,一本鎖RNAウイルスであるC型肝炎ウイルスの定量検査について,競合PCRの実施例を中心に紹介した.また,競合PCR,RT-PCRについて,その特徴を中心に述べた.

一般

日臨技「尿沈渣検査法」による円柱の見かた

著者: 佐藤俊

ページ範囲:P.1087 - P.1093

サマリー
 尿沈渣検査は腎および尿路系疾患のスクリーニング検査として古くから実施されてきた検査である.しかし検査手技や沈渣成分の分類および臨床への結果の報告方法は,各施設独自の方法で実施してきたため,各施設間での検査データのバラツキが大きく,検査方法の統一化が望まれていた.
 日本臨床衛生検査技師会では1991年8月に日臨技尿沈渣法を提示し,尿沈渣の標準化に向けて新たなスタートを切った.
この稿では円柱の形成,日臨技法の分類,記載方法および円柱の見かたについて私見を交え,日臨技法を紹介する.

マスターしよう検査技術

心電図の運動負荷試験法

著者: 沼澤てるひこ ,   石山陽事

ページ範囲:P.1097 - P.1103

はじめに
 心電図検査の運動負荷試験は,心臓になんらかの負荷を与えて,得られる心電図や種々のパラメータの変化から心肺機能を評価する方法である.
 循環器における負荷試験の種類には①運動負荷試験,②薬物負荷試験,③低酸素負荷試験,④ペーシング負荷試験などがある.①は骨格筋の収縮と弛緩による動的運動負荷(マスター二階段法,トレッドミル負荷など)と骨格筋の持続的収縮による静的運動負荷(等尺性運動負荷:ハンドグリップ負荷など)などがある.

生体のメカニズム 脂質代謝・12

食事と高脂血症

著者: 二宮一見 ,   丸浜喜亮

ページ範囲:P.1107 - P.1110

はじめに
 高脂血症は高コレステロール血症と高トリグリセリド血症に大別され,前者は冠動脈疾患の危険因子の中でも重要な因子である.高トリグリセリド血症が高度な場合,膵炎のリスクとなるが,軽度の場合,動脈硬化の危険因子であるか否かは長い間議論されてきた.しかし最近,50歳以上の女性や,高コレステロール血症を合併した場合には高トリグリセリド血症自身も動脈硬化の危険因子となりうることが示されている.また,高トリグリセリド血症を合併するインスリン抵抗性症候群1)では低HDL-コレステロール血症,高血圧,肥満を併発し,冠動脈疾患のリスクが高い.
 このような高脂血症を基盤とする病態は従来欧米を中心にみられてきたが,近年本邦において増加傾向にあり,しかもこの傾向は成人のみならず若年者においてもしばしばみられるようになってきている.この原因は,高度成長期を契機とした食習慣の変化によるとされている.しかし一方で,わが国の食事はantiatherogenicな点が国際的に注目されていることもまた事実である.食事と高脂血症に関するこれまでの欧米での疫学調査では,高コレステロール,高脂肪食がatherogenicであることが示されている一方,動脈硬化症における食事療法の効果に関する疫学調査では,抗動脈硬化食,すなわち,低コレステロール・低飽和・高不飽和脂肪食が動脈硬化症をある程度予防することが可能であることを示している.

検査データを考える

病理組織標本にみられるアーチファクト

著者: 高梨利一郎

ページ範囲:P.1111 - P.1116

はじめに
 光学顕微鏡で観察する病理組織標本は,理想的には自然のあるがままの姿を表現したものが望ましいわけであるが,他の臨床検査材料と同様に各種の標本作製過程(preparation process)を経過して組織標本となるのであるから,各段階での誤りや方法そのものから望ましくない人工産物(アーチファクト;artifact)を生ずる.この人工産物が最も少ないものが良い組織標本といえると同時に,アーチファクトの多いものは悪い組織標本である.しかし,病理組織検体の組織採取にはさまざまな制約があるうえに,固定,切り出し,脱水・パラフィン浸透,パラフィン包埋,ミクロトームによる薄切,脱パラ,染色,封入,ラベル貼りまでの全標本作製過程の各段階でアーチファクトが生ずるのである.

講座 英語論文を読む・36

甲状腺ホルモン不応症候群

著者: 弘田明成

ページ範囲:P.1104 - P.1105

 甲状腺ホルモン不応症候群は,体の組織が甲状腺ホルモンの作用に対して抵抗性を示す疾患である.全身型甲状腺ホルモン不応症(GRTH)は下垂体,そしてほとんどないしすべての末梢組織において抵抗性を示すのが特徴である.罹患した患者は血中甲状腺ホルモン値の上昇と,甲状腺ホルモンに比して不相応な正常ないし上昇した甲状腺刺激ホルモン(TSH)値を伴い,臨床的には甲状腺機能が正常であり,治療を必要としないのが一般的である.選択的下垂体甲状腺ホルモン不応症(PRTH)では抵抗性が下垂体のみに現れ,末梢組織では認められないことが特徴である.患者は血中甲状腺ホルモンの上昇と正常ないし上昇したTSH値を示し,臨床的には甲状腺中毒症を示す.選択的末梢性甲状腺ホルモン不応症(PerRTH)では末梢組織でのホルモン抵抗性はあるが,下垂体ではみられないのが特徴である.現在までに報告された唯一の症例では血中甲状腺ホルモンとTSH値は正常であるが,臨床的には甲状腺機能低下症を示し,甲状腺ホルモンの投与で改善がみられたと記述されている.これらの疾患はおそらく一般で認識されている以上に普遍的であろうし,しばしば誤診され,不適切に治療されているものと思われる.

検査ファイル

抗平滑筋抗体

著者: 高木章乃夫 ,   坂口孝作 ,   小出典男 ,   辻孝夫

ページ範囲:P.1117 - P.1117

はじめに
 抗平滑筋抗体(anti-smooth muscle antibody;ASMA)は臓器,種特異性を持たない自己抗体の一種であり,1965年にJohnsonらによってラット胃壁平滑筋に反応する自己抗体として報告されて以来,自己免疫性肝炎をはじめとする自己免疫疾患において高率に出現することが知られている.ASMAの対応抗原の解析が進むにつれて,対応抗原はアクチンをはじめとする細胞骨格成分であることが明らかにされ,現在では複数の細胞骨格成分に対する自己抗体とそれらの疾患特異性との関係が注目されている.

β-ラクタマーゼの新しい分類

著者: 澤井哲夫

ページ範囲:P.1118 - P.1118

[1]酵素の分類と名前
 約100年前,Buchnerがアルコール発酵酵素を酵母細胞から抽出して以来,多くの酵素が発見されてきた.新酵素の名前は研究者によりさまざまに付けられたため,同一酵素が2つ以上の名を持つなど混乱があった.1961年以来,国際生化学連合の系統的酵素命名法により明確に分類・命名されている.この分類では,酸化還元反応や加水分解反応などの酵素反応の種類により6群に大別され,さらに3段階の分類が行われる.酵素には4組の数値を持つenzyme code(EC)が付けられる.加水分解酵素(ヒドロラーゼ)に属するβ-ラクタマーゼのEC番号はEC 3.5.2.6である.また,各酵素は公式な名前である系統名が付けられ,β-ラクタム剤のβ-ラクタム環を加水分解する酵素の系統名はpenicillin amido-β-lactamhydrolaseである.β-ラクタマーゼはこの酵素の慣用名である.

ウロバブルテスト

著者: 古谷公英 ,   川畑貞美

ページ範囲:P.1119 - P.1119

はじめに
 尿道炎,膀胱炎,腎盂腎炎などの尿路感染症(urinary tract infection;UTI)の診断には,尿沈渣鏡検で白血球を確認し,さらに細菌の有無は細菌培養を行う必要がある.しかし,これらの検査には遠心機や顕微鏡が必要であり,また細菌培養では判定に時間がかかる.近年,膿尿や細菌尿の有無については操作が簡単で短時間で判定可能なTTC(triphenyltetrazolium chloride)還元試験,亜硝酸塩還元試験,白血球エステラーゼ試験などの簡易検査が開発され,用いられている.しかし,これらの簡易検査は用いる尿が多様な色調を呈することや,変性しやすいことにより,特異性や感度に問題がある.
 今回,膿尿と細菌尿を同時に確認できるカタラーゼ反応を応用した簡易測定キット,ウロバブルテスト(販売元:明治乳業)について,その概略を述べる.

先天性QT延長症候群

著者: 塚田孝法 ,   相原直彦

ページ範囲:P.1120 - P.1120

[1]定義
 先天性QT延長症候群とは体表面心電図上QT間隔の延長を認め,失神発作,急死をきたす遺伝性疾患である.本疾患は先天性聾唖を伴うJervell and Lange Nielsen症候群と先天性聾唖を伴わないRomano-Ward症候群とに分けられる.前者は常染色体劣性遺伝に従うためほとんどが孤発例であるのに対し,後者は常染色体優生遺伝に従うため同一家系内に複数例存在する1)

ラボクイズ

問題:細菌検査

ページ範囲:P.1094 - P.1094

11月号の解答と解説

ページ範囲:P.1095 - P.1095

明日の検査技師に望む

細胞診との出会いと軌跡

著者: 髙橋正宜

ページ範囲:P.1060 - P.1060

 臨床検査と自動化の進歩は切り離せない関係にあるが,1956年ごろ病理学では米国でかなり先駆けてテクニコンの自動包埋装置が24時間稼動し,肉眼所見も組織所見も口述で録音し,タイプ報告がなされていた.それにもかかわらず40年も経て,その機構がほとんど変わっていないのはどうしたことであろうか.私が基礎に在席したのは大学院のわずかに3年で,米国における臨床例を中心とした病理学が臨床検査の出発点となった.細胞診との出会いはそのときである.
 “癌とは基底膜を破って周囲の正常組織を破壊性に,浸潤性に進展する自律性増殖の腫瘍で,血管やリンパ管行性に転移を起こすものである”という概念をたたき込まれていた私には細胞診はまさにショックであった.組織染色でアザン・マロリーの美しさは知っていたが,パパニコロウ法のオレンジG,ライトグリーン,ビスマルクブラウンを基調とした多彩な鑑別染色と優れた透明度には魅せられずにはおられなかった.

けんさアラカルト

国際臨床化学連盟(IFCC)の活動—[2]IFCCによる標準化活動

著者: 奥田潤

ページ範囲:P.1074 - P.1074

 前号でIFCCの歴史,目的と現状について述べた.今回は標準化活動に限って述べることにする.
 IFCCは1991年10月,神戸で第5回アジア太平洋臨床化学会議が行われたおり,標準化についての第1回会議がもたれ,1992年7月19日に第2回の会議がシカゴで行われ,日本からは筑波大・桑 克彦氏が出席された.また第3回の会議はフランス・メッツ市で1992年9月15日に開催され,日本臨床検査標準協議会(Japan Committee for Clinical Laboratory Standards;JCCLS)から日立の小沢恭一氏が,日本臨床化学会からは筆者が出席した.

トピックス

水チャネル蛋白

著者: 丸茂文昭

ページ範囲:P.1121 - P.1122

 当教室の佐々木のグループがクローニングした水チャネル蛋白について示し,その意義について説明する.
 細胞膜表面は脂質でできているから,そこを水が通過する場合,なにかしら孔のようなものが空いていて,水単独あるいは主に水を通す機構が存在しないと,水は“水と油”ではじき返されて細胞膜を通ることはできないはずである.ことに腸管における水の吸収や腎における水再吸収は膨大な量の水が移動するはずだから細胞膜に“水の通路”(チャネル)がなければならないはずである.筆者らは腎臓が専門なので集合管の水チャネルに関心を持った.集合管はバソプレッシンの存在下でしか水を透過しないことが以前から知られているので,このチャネルはバソプレッシン依存性のはずである.

マラリアのDNA診断

著者: 新井明治 ,   綿矢有佑 ,   山根明男

ページ範囲:P.1122 - P.1124

 マラリアはプラスモジウム属原虫の感染によって起こる人類最大の寄生原虫感染症で,推定感染者数2億7千万人,推定死亡者数は年間2百万人に及んでいる.わが国においても海外渡航者の増加に伴って輸入マラリア症例が増えつつあり,海外渡航歴のある発熱患者に対しては,マラリアを疑わなくてはならない.しかしながら実際の臨床現場でマラリアの診断を確実に行うことは意外に困難であり,高い特異性と検出感度を有するDNA診断法の開発に期待が寄せられている.

IgA腎症の増悪因子

著者: 竹林茂夫 ,   福崎誠

ページ範囲:P.1124 - P.1126

 成書には表に掲げるものがIgA腎症(IgAN)の増悪因子とされているが1),われわれは過去25年間の思春期に発症したIgAN 3,000余例の長期予後支配因子の検討を行って以下のことを明らかにしている2)
 IgANの予後を決定する最も大切な因子は初回生検時の糸球体の不可逆性巣状硬化病変の程度である.図1-Aに糸球体病変を5度分類し,各群に属する症例数の頻度をみると,Group 1(G. 1):50.3%,G. 2:26.7%,G. 3:11.3%,G. 4:7.7%,G. 5:4.2%となり,この率は施設により多少変動するが,IgAN生検例の半数は微少変化群である.糸球体硬化病変の増加に伴い,症例数は激減する.男女差は重症のG. 5で男性に多いが,そのほかでは性差はない.

けんさ質問箱

Q 精液中のゼリー状物質

著者: 佐藤和文 ,   寺田央巳 ,   西垣新 ,   西村満 ,   岡田久 ,   H.S.

ページ範囲:P.1127 - P.1128

 AIH(artificial insemination with husband's semen;人工受精)をパコール法で行っていますが,精液中にしばしばゼリー状の物質を認めます.その物質はいったい何なのでしょうか.放置しても均一化しませんが,精子数の算定への影響はないのでしょうか.また,処理方法についても教えてください.

Q Chlamydia trachomatis菌体(抗原)検査と抗体検査の関係

著者: 広瀬崇興 ,   M.I.

ページ範囲:P.1128 - P.1130

 C. trachomatisの検査で抗原検査(液相ハイブリダイゼーション法)をすると陰性ですが,抗体検査(IgG,IgM抗体;EIA法)をすると陽性です.どちらも同じときに採取されたものですが,患者が自覚症状を覚えて診察を受けるときには,抗原が消えて抗体となっているため,このような結果になるのでしょうか.

Q 寒冷凝集反応検査における翌々日判定結果の信憑性

著者: 本多信治 ,   N.0.

ページ範囲:P.1130 - P.1130

 寒冷凝集の判定では翌日判定が良いとされていますが,土曜日に検査依頼をされた場合,翌々日判定とせざるを得ません.この判定結果は,まったく無意味なものなのでしょうか.また,翌々日判定でも可能な操作法がありましたら教えてください.

今月の表紙

穿刺細胞診

著者: 古田則行 ,   都竹正文 ,   坂本穆彦

ページ範囲:P.1080 - P.1080

 現在,腫瘤形成性病変に対して積極的に穿刺細胞診が行われている.リンパ節,乳腺,前立腺,肝臓,肺,骨,軟部と体中のあらゆる臓器がその対象である.特に,軟部,乳腺,甲状腺における腫瘤形成性疾患の初診時検査としては重要な位置づけにあり,細胞診の結果が直接治療方針を決める情報となっている.
 今でこそ穿刺細胞診は腫瘤形成性疾患における検査の1つとして必要不可決のものとなっているが,本邦での歴史は以外に浅く,本格的に行われるようになったのは1970年代である.欧米諸国では1920年代に端を発し,1930年代では盛んになり,リンパ節,乳腺,前立腺,骨,肺がその対象となっていた.

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「検査と技術」第21巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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