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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術21巻7号

1993年06月発行

雑誌目次

病気のはなし

致死性皮膚疾患

著者: 小方冬樹 ,   中川秀己

ページ範囲:P.478 - P.484

サマリー
 皮膚科領域に属する疾患の生命予後は一般的に良好であることが多いが,診断学および治療学が進歩した現在でも一部の疾患においては生命予後が不良な場合がある.ここでは,これらの皮膚疾患について分類を試みると同時に,皮膚科領域の疾患の中でも重篤,かつ予後不良となりうる疾患として,TEN型薬疹,GVHDおよび皮膚T細胞性リンパ腫を取り上げ,各々の疾患の原因,病態生理,臨床症状,検査所見および治療などについて簡単に解説を加えた.

検査法の基礎

生体内色素の染色法

著者: 呉地剛 ,   井上泰

ページ範囲:P.485 - P.491

サマリー
 生体内色素は,その由来により血色素性色素と非血色素性色素に分類される.ピリルビンは前者の,メラニンは後者の代表である.ともに褐色調を呈するが,存在部位や存在様式により通常のHE染色標本でも鑑別は可能である.しかし,正確な同定には特殊染色が必要である.病理形態学では,色素の確認と同定は極めて重要である.例えば,腫瘍細胞にビリルビンが証明されれば肝細胞癌,メラニンが確認されれば悪性黒色腫の診断が下される.本稿では,血色素の生理的な基本事項を確認し,生体内色素の染色法に言及する.

尿中酵素

著者: 芝紀代子

ページ範囲:P.493 - P.502

サマリー
 尿中酵素の由来を述べ,30種近くあるうち日常検査項目として取り入れられる酵素として,NAG,γ-GTP, ALP, AAP, LDHを取り上げ,生理的意義,測定法,正常値について述べた.NAGに関してはアイソザイム分析法にも触れた.酵素活性の表現方法,測定上の注意事項として,保存による影響,尿のpHの影響,遠心の有無について述べた.臨床的意義については糖尿病性腎症の早期発見,腎炎,腎移植,薬物による腎障害のモニタリング,膀胱癌の検出を取り上げた.

技術講座 血液

白血球数および白血球分画の精度管理

著者: 折田登志子

ページ範囲:P.503 - P.507

サマリー
 近代医療の急速な発展を背景に,血液臨床検査機器も進歩し白血球数のみならず,白血球分画までも自動化され能率化した.しかし,フロー方式やパターン認識を取り入れたいずれの血球分類装置も現在の段階では,血液中のすべての有核細胞を分類同定することはまだ不可能であり,異常細胞は鏡検で確認しなければならない.
 今回,コントロール血球やコントロール用塗抹標本を用いた測定機器の精度管理と,各患者の検査結果に対して,コンピュータシステムを活用した当施設での精度管理を中心に述べ,測定原理,正常値,臨床的意義についても触れた.

微生物

炭酸ガス培養法

著者: 大門良男

ページ範囲:P.509 - P.513

サマリー
 炭酸ガス培養は,臨床検査材料からリン菌,髄膜炎菌やブルセラ属の検出に不可欠であることから,古くからローソク培養法によって行われてきた.しかし,本法では炭酸ガス濃度が3〜5%と低く,煩雑で多数検体の処理に難があることなどから,近年では操作が簡便なガス発生キットや炭酸ガス濃度を容易に変化,監視できる炭酸ガスインキュベータによる方法が広く利用されるようになってきた.本稿においては,炭酸ガス培養法の種類とその特徴,およびその菌発育に与える影響について述べる.

生理

目で見る不整脈—[3]頻脈性不整脈

著者: 谷川直

ページ範囲:P.514 - P.522

サマリー
 頻脈性不整脈は主に上室性頻拍と心室頻拍がある.基本的には前者は心房に発生した異所性の興奮が,房室結節や副伝導路を介して速い頻度で心室に伝達したものであり,後者は心室性期外収縮の連続であるといえる.また上室性の頻脈性不整脈には心房細動や心房粗動がある.上室性頻拍は幅の狭いQRSが速い頻度で連続するものであるが,中には幅の広いQRSを有する上室性頻拍もあり,十分に鑑別することが重要である.一方,心室頻拍は幅の広いQRSが連続して出現し,PとQRSが解離していることを見つけることが必要である.

一般

腎尿細管上皮細胞の見かた

著者: 藤森勲 ,   小沢享史 ,   岡本一也

ページ範囲:P.523 - P.527

サマリー
 尿沈渣精度管理の進歩により上皮分類法は,小円形細胞,円形細胞,楕円形細胞,有尾形細胞などと呼ばれた時代から,移行上皮細胞,扁平上皮細胞,腎尿細管上皮細胞と呼ぶ組織学的分類法に変わった.組織学的分類法を行うためには,各細胞の形態的特徴を十分把握する必要がある.
 今回は腎尿細管上皮細胞の見かたについて記述した.腎尿細管上皮細胞を把握するには,①〜④の事項を習得することが必要である.
 ①腎組織との対応 ②腎尿細管上皮細胞 a)臨床的意義,b)形態的特徴 ③腎尿細管上皮細胞と鑑別を要する細胞 ④卵円形脂肪体(OFB)尿沈渣における細胞成分の組織分類,特に腎尿細管上皮細胞の同定は腎疾患との関連が強く,臨床的意義が高い.

マスターしよう検査技術

視算法による血小板測定

著者: 遠藤栄子 ,   藤本秀江

ページ範囲:P.531 - P.536

 血小板数の測定は血液疾患だけでなくあらゆる疾患におけるごく基本的な検査の1つである.現在,血小板数測定は自動血球計数機で行うのがほとんどであるが,自動血球計数機で測定できない場合がある(表).そのような場合に視算法による測定が必要かつ重要になる.
 視算法による血小板数測定には直接法と間接法があり,各々代表的な方法としてBrecher-Cronkite法とFonio法があるが,一長一短があり,場合に応じて使い分けなければならない.

生体のメカニズム 脂質代謝・6

高脂血症の診断と分類

著者: 中村冶雄

ページ範囲:P.545 - P.548

はじめに
 最近の厚生省調査研究班の日本人におけるコレステロール値の成績によれば,10年前の値に比べて,どの年代においても10〜15mg/dlの上昇をみているという.
 日本人の血清脂質の増加傾向からみて,当然高脂血症の頻度も増しており,それに伴う虚血性心臓病の増加は注目されなければならない.
 ここに新しい視野から,最近の高脂血症の診断と分類を解説し,その問題点を触れてみたい.

検査データを考える

梅毒血清反応の臨床的意義

著者: 水岡慶二

ページ範囲:P.549 - P.554

講座 英語論文を読む・30

青年男性の血中コレステロールとその後の心臓血管病変

著者: 弘田明成

ページ範囲:P.538 - P.539

 背景.中年者における血中コレステロール値の増加が心臓血管病変リスクの上昇をもたらすことはすでに明確に確に立されているが,若年男性の血中コレステロール値と将来の臨床上明らかな心臓血管病変の罹患率との間の関連性の有無を検討する機会はあまりない.
 方法.われわれは1,017名の若い男性(平均年齢22歳)を27から42年にわたって成人早期における血中コレステロール値と心臓血管疾患の危険率および総死亡率との関連性を明らかにするため前向き調査を行った.開始時の平均コレステロール値は192mg/dlであった.

検査ファイル

PCR-SSCP法

著者: 林健志

ページ範囲:P.540 - P.541

 PCR-SSCP法は,ゲノムDNAあるいはcDNA中の配列変化(突然変異あるいはDNA多型)を迅速に検出する標準的な手技である.同法の原理と方法を概説,また,研究例および同実験法の改良について述べる.

体性感覚誘発電位

著者: 尾崎勇

ページ範囲:P.542 - P.542

はじめに
 体性感覚には,温度覚,痛覚,触圧覚,関節位置覚,運動覚などが含まれる.このうち関節位置覚や運動覚を伝播する神経線維の活動は,手首や足首を電気刺激した後,脊髄近傍や頭皮上から記録される誘発反応としてとらえることができる.こうして得られた誘発反応を総称して体性感覚誘発電位(somatosensory evoked potentials;SEP)と呼ぶ.

分枝DNAプローブ法による遺伝子診断

著者: 北村聖

ページ範囲:P.543 - P.543

 近年の遺伝子工学的技術の進歩により,検査診断にもDNAやRNAを検出する診断法が数多く導入されてきている.その進歩に最も貢献した技術はPCR法であり,任意の遺伝子を対数的に増幅することができるものである.それにより,遺伝子の検出感度は飛躍的に高くなったが,一方,欠点としては定量性に乏しいことがあった.さらに,これまでの技術は多くのものがRI物質を用いたり,UVによる検出を用いたりしており,一般の検査室で行いにくい点もあった.
 最近,これらの欠点を解決した新しい方法が報告されているので紹介する.分枝DNAプローブ法あるいはクリスマスツリー法と呼ばれているもので,その特徴は,①DNA,RNAどちらも検出可能である,②高感度・高特異性のある方法である,③非RI法である,④多数検体処理が可能である,⑤ELISA法の感覚で行え,操作が比較的簡単であるなどが挙げられる.

ラボクイズ

問題:呼吸機能の評価

ページ範囲:P.528 - P.528

5月号の解答と解説

ページ範囲:P.529 - P.529

明日の検査技師に望む

臨床検査技師はいかにあるべきか—〈新人技師に与える〉

著者: 小林種一

ページ範囲:P.492 - P.492

 衛生検査技師法が制定されて35年の歳月が流れ,その間,1970年には「臨床検査技師,衛生検査技師等に関する法律」に改正され,技師教育の内容も充実発展した.またこの30年余の時期において臨床検査の機械化,自動化,コンピュータ化へと,検査技術は著しい進歩発展を遂げたのである.しかも今日なお学問技術の改良発展は間断なく続いている.
 このような状況であるから臨床検査技師はその使命,心構えをしっかりと堅持しなければならない.臨床検査技師の任務は,依頼された各種検査について,正確なデータを診療側に提出することにある.この目的貫徹のため優れた技師となるには,経験の少ない時期に真剣に仕事に取り組むことで,実に鉄は熱いうちに打たねばならない.

けんさアラカルト

認定病理医

著者: 石河利隆

ページ範囲:P.508 - P.508

 日本病理学会の認定病理医制度は1978年に発足した.日本医学会の分科会の中で,認定医・専門医制度を実施している学会の数は,1992年8月現在45学会にも及んでいるが,その中では歴史は古く,設立の順位は9番目である.5年間の移行措置の後,1983年から認定試験が実施され,1984年から資格更新制度が導入されて現在に至っている.

飲酒とアルデヒド脱水素酵素

著者: 原田勝二

ページ範囲:P.530 - P.530

 少量のアルコール摂取でも,顕著な不快症状(顔面および全身の紅潮,心拍数と呼吸数の増加,悪心,頭痛,嘔吐など)を起こす人がいる一方,多量のアルコール摂取でも平然としていられる人がいる.この原因はアルデヒド脱水素酵素(ALDH2)の多型(活性型と不活性型)に基づくことが,筆者らにより解明された.要約すると,ALDH2 mutant遺伝子をヘテロもしくはホモ接合型として持つ人はnormal遺伝子をホモ接合型で持つ人より,エタノール代謝産物であるアルデヒドを酢酸へ酸化する能力が劣り,そのため生体内に増加してきたアセトアルデヒドの強力な薬理作用により,不快症状が出現するのである.ALDH2 mutantとnormal geneとの違いは,ALDH2遺伝子を構成するDNA塩基のうちエクソン12の部分1置換が原因となり,これがアミノ酸の置換となって現れ,最終的にはペプチドの立体構造に影響を及ぼし,活性を示すものと示さないものの2型の出現につながる.活性正常型(normal)はペプチドの487番目のアミノ酸がグルタミン酸(Glu)であるが,不活性型(mutant)はリジン(Lys)に置換している.したがって,DNAではGluのGAAがAAAというLysのコドンとなっている.
 DNA解析により遺伝子の変異や欠失を検出する技法はこれまでに多くの報告がなされてきた.特にPCR法の開発により次に示すような方法がよく用いられる.

トピックス

大脳運動野磁気刺激

著者: 花島律子 ,   宇川義一

ページ範囲:P.556 - P.557

サイトカイン・インヒビター

著者: 宮坂信之

ページ範囲:P.557 - P.558

はじめに
 サイトカインは生体の恒常性の維持に必要不可欠な物質である.しかし,そのサイトカインの作用がいつまでも続いてしまっては不都合なことも起こる.そこで,生体はサイトカインの拮抗物質を常に内包している.このような物質を総称してサイトカイン・インヒビターという.
 サイトカイン・インヒビターには,種々のサイトカイン活性を非特異的に抑制するものと,当該のサイトカイン活性のみを特異的に抑制するものとに大別される(表1)1).本稿では特異的サイトカイン・インヒビターのみについて解説をしたい.

β1,4ガラクトース転移酵素の臨床的意義

著者: 飯田暢子

ページ範囲:P.558 - P.559

■酵素作用
 ヒトの場合,β1,4ガラクトース転移酵素(β1,4galactosyltransferase;β1,4GT)はUDPガラクトース(UDPGal)のみを基質として,受容体の4番炭素にガラクトースを転移させてβ1,4結合物を生成させる下記の反応を触媒する.

けんさ質問箱

Q 仰向けで心電図をとれないときは/Q 尿円柱の臨床的意義

著者: 谷川直 ,   S.T. ,   平松信 ,   M.T.

ページ範囲:P.560 - P.561

 小児で親に抱かれていないと嫌がって心電図をとれない場合があります.薬剤で眠らせて必ず仰向けにしなければならないのでしょうか.抱かれた立位での場合の電気軸や波形の変化がどういうものか教えてください.
 また,喘息などで座位で心電図をとる場合や,骨折などで横向きにならざるを得ない場合についても教えてください.

Q IgA単独欠損症

著者: 橋本寿美子 ,  

ページ範囲:P.562 - P.563

 IgG,IgM,IgD,IgEは正常で,IgAが単独で欠損している症例に会いました.先天的ではないようです.その原因,追加検査などについて教えてください.

今月の表紙

移行上皮癌

著者: 星利良 ,   都竹正文 ,   坂本穆彦

ページ範囲:P.537 - P.537

 泌尿器系悪性腫瘍のうち,尿細胞診検査において対象となる悪性腫瘍の大部分は,膀胱や上部尿路系(腎盂・尿管)由来の移行上皮癌である.
 移行上皮癌(transitional cell carcinoma)には,発育形態より乳頭状のものと非乳頭状のものに分けられる.このうち非乳頭状(non-papillary)腫瘍で上皮下への浸潤を示さない初期の段階の癌,すなわち非浸潤(non-invasive)癌を移行上皮における上皮内癌と呼んでいる.組織標本上では,移行上皮層が正常細胞層に比べ著しく肥厚し,不均衡な大型核円形腫瘍細胞に全層が置き換えられている像として認められる.

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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