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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術21巻9号

1993年08月発行

雑誌目次

病気のはなし

ネフローゼ症候群

著者: 頼岡徳在 ,   武政敦夫

ページ範囲:P.684 - P.690

サマリー
 ネフローゼ症候群は高度の蛋白尿(3.5g/日以上),低蛋白血症(総蛋白にて6.0g/dl以下,アルブミンにて3.0g/dl以下),高脂血症(総コレステロールにて250mg/dl以上),浮腫などの共通な臨床症状を呈する症候群である.原因疾患により一次性あるいは二次性ネフローゼ症候群に分類される.治療としては安静,食事療法に加え,薬物としては副腎皮質ステロイドを中心に投与する.

検査法の基礎

超音波画像の成り立ち[1]

著者: 大川井宏明

ページ範囲:P.691 - P.697

サマリー
 超音波ビームを走査し,各ビーム上のエコーを収集し,そのデータを2次元的に配置する.データの不足箇所は補完する.解像度はビーム幅と波連長に依存し,かつ画像上の位置により異なる.これが①超音波画像の基本的作像方法である.このことを理解し,さらに,②組織の物性,③生体内の超音波の挙動,④解剖と生理,などをできるだけ関連づけて把握するよう努めることが,さらに有用なデータを取り,画像の解読力を高めることに役立つ.

免疫測定にかかわる化学発光法

著者: 杉山正巳

ページ範囲:P.699 - P.704

サマリー
 生体成分の分析法の発達は分野にかかわらず,年々高感度化,あるいは超高感度化へと向かっている.特に抗原/抗体の定量を目的とした,いわゆる酵素免疫測定法は超高感度化への道をたどっている.化学発光あるいは生物発光を用いた酵素免疫発光測定法(CLEIA)はラジオイムノアッセイの感度をすでに追い抜いたといわれている.さらなる高感度な測定を目指して種々の発光基質,あるいは標識体の開発が行われており,これまで行われてきた比色による酵素免疫測定や環境への配慮が必要なラジオイムノアッセイに替わって酵素発光免疫測定法が広く用いられるようになるであろう.

技術講座 生化学

試薬の溶解と界面活性剤による測定干渉

著者: 下村弘治

ページ範囲:P.705 - P.711

サマリー
 臨床検査領域では,界面活性剤がよく使用されている.ここでは特に界面活性剤の検査試薬への使用と,測定法への干渉を中心に述べた.界面活性剤は,本来はその添加効果をねらったものであるが,時には予期しない測定干渉や妨害をもたらす.試薬メーカーは,企業秘密と称し,添加している界面活性剤の種類,添加濃度を明かさない.界面活性剤を使用する手助けになれば幸いである.

輸血

輸血副作用

著者: 谷脇清助 ,   原宏

ページ範囲:P.713 - P.718

サマリー
 現在,基本的に輸血は厚生省によるガイドラインに沿って行われている.しかし,今なお簡易法による検査を行い即時型の溶血性輸血副作用が起こったとの報告がみられる.その多くはABO式血液型不適合輸血による.また遅発性溶血性副作用も報告されている.一方,白血球抗体による発熱・悪寒戦慄・蕁麻疹の副作用はしばしば経験する.
 本稿では輸血副作用に関する基礎的知識と,副作用発生時の検査のポイントなどを述べた.いずれにしても輸血に関連したと考えられる副作用発生時には速やかにその情報を輸血検査室に伝え,臨床症状に基づいて原因究明の検査を行い,病院全体で安全なシステムを作り,将来の輸血事故あるいは副作用防止に役立てられるようにすべきであろう.安全への努力・投資が重要である.

生理

心電計の安全な操作技術

著者: 堀川宗之

ページ範囲:P.719 - P.724

サマリー
 心電図検査を安全に行うには医用機器の電気的安全性についてよく理解し,検査部位や方法に適合した心電計を正しく操作することが重要である.最近の心電計の入力部に用いられているフローティング方式は患者に装着される部分が100Vやアースから完全に浮いて(絶縁されて)いるので誘導コードを介して流れる漏れ電流が極めて小さい.漏れ電流の程度によりBF形とCF形に区分され,CF形を用いれば心臓に電極やカテーテルを挿入して行う検査や治療を安全に行うことができる.

一般

尿pHの測定法

著者: 藤方理恵 ,   柿原良俊 ,   中島幹夫

ページ範囲:P.725 - P.730

サマリー
 腎臓は生体における酸塩基平衡および水電解質平衡の維持に最も重要な臓器である.体液がpH約7.4の中性に保たれるのは,主に肺での炭酸ガスの排泄と,腎臓の尿細管において過剰な酸やアルカリを尿中に排泄するという調節機構が存在するからである.通常健康人尿のpHは弱酸性に保たれ,1日平均ではpH6前後である.しかし随意尿では摂取する食物の種類や運動など身体の代謝活動の結果pH4.5〜8.5と広範にわたって変動している.臨床上尿のpHが問題となるのは,①持続的に酸性尿あるいはアルカリ尿がみられる場合 ②治療を目的として尿のpHを常にコントロールする必要がある場合などで,このようなとき,尿pH測定の臨床的意義が大きい.

マスターしよう検査技術

病理標本の作りかた[2]

著者: 久光亜弥子 ,   大平嘉一 ,   町並陸生

ページ範囲:P.735 - P.740

はじめに
 薄切とはブロックからできるだけ人工的変化が加わらないように希望の厚さの標本を作り出すことである.切片が厚かったり,見たい面が出ていなかったり,キズやゴミがあったりすると後の手技をどんなにきちんと行っても良い標本は作りにくく,また組織学的検索に支障をきたしてしまう可能性もある.そのため,薄切は標本のできふできを決める最も重要な要素の1つである.
 できるだけきれいな標本を短時間でコンスタントに作り出せるようになるには,まず器具に触れてみて実際に数多く薄切を手がけることが大切である.そのとき,各ブロックのどこの何が知りたいのかということを頭に入れて,各々が工夫して最も良いという方法を見つけ出せるよう,鍛練するとよい.

生体のメカニズム 脂質代謝・8

LDLと動脈硬化—一酸化LDL説を中心として

著者: 金沢武道 ,   小野寺庚午

ページ範囲:P.741 - P.745

酸化LDLの背景
 動脈硬化の成因に関しては単にコレステロールの高値が関与していると考えられていた時期から,種々の病態が詳細に研究され,多因子的に理解されるようになった.
 動脈の部位によってはアテロームの形成が異なることから血管の形状と血流との関係が重要であるという考え,動脈硬化病巣のfoam cell化したマクロファージの周囲にはTリンパ球が集まっていることからTリンパ球の作用が重要であるとする免疫説,コレステロールを主として運搬する低比重リポ蛋白(low-density lipoprotein;LDL)のレセプターあるいはスカベンジャーレセプター異常による高コレステロール血症説や高比重リポ蛋白(high-density lipoprotein;HDL)から他のリポ蛋白へのコレステロールエステル(CE)を転送するCE転送蛋白(cholesterol ester transfer protein;CETP)の産生低下によるとする逆転送系異常説,さらには種々のサイトカインの異常代謝に基づく二次的構成細胞増殖説など動脈硬化の成因に関しては急速な進歩がみられる.

検査データを考える

QT時間の異常

著者: 相沢義房

ページ範囲:P.753 - P.755

QT時間
 QT時間は通常の速度で記録した心電図のⅡ誘導において,QRSの開始点からT波の終点までを測る.しかし測定に用いる誘導はq波を有しQTが最も長い誘導が望ましい.
 T波の終点はしばしば決定困難であるが,誘導はそこでT波の下降脚に引いた接線が基線を交わる点を求め,QRSの開始点からここまでを計測してQT時間とすることが多い(図1).

講座 英語論文を読む・32

インスリン感受性と骨格筋リン脂質の脂肪酸組成の相関

著者: 弘田明成

ページ範囲:P.746 - P.747

 抄録 背景.インスリン抵抗性と高インスリン血症は肥満,インスリン非依存性糖尿病やその他の疾患の特徴である.骨格筋はインスリンの主要な作用部位であるため,インスリン感受性はインスリン作用が関与する筋細胞膜内のリン脂質の脂肪酸組成に関連している可能性がある.
 方法.われわれは2群の被検者において骨格筋のリン脂質の脂肪酸組成とインスリン感受性との間の相関を検討した.第1の実験では冠動脈手術患者の腹直筋から検体を採取した.インスリン感受性は空腹時の血清インスリン値を指標として用いた.第2の実験では13人の正常男性の外側広筋から生検検体を採取し,インスリン感受性はユーグライセミッククランプで評価した.

検査ファイル

脱灰標本の免疫組織化学

著者: 金子伸行 ,   岡輝明 ,   石田剛

ページ範囲:P.748 - P.748

はじめに
 免疫組織化学的染色の技法は,1955年,ハーバード大学のCoonsによって蛍光抗体が考案されたことに端を発し,発展してきた.パラフィン包埋されたホルマリン固定組織においても,酵素抗体法などを用いることにより,種々の抗原の局在を組織切片上で容易に知ることができるため,現在では日常の病理診断に欠くことのできない手法として定着している.
 しかし,骨組織や石灰沈着の強い材料などでは,通常脱灰操作が必要となる.一般に,脱灰操作が強酸性の溶液中で行われるため,脱灰処理された標本を用いた場合,免疫組織化学的染色の染色性が低下すると考えられているように思われる.

EBNA-1

著者: 中村良子

ページ範囲:P.749 - P.749

 Epstein Barrウイルス(EBV)関連疾患,EBVの初感染に基づく伝染性単核症(infectious mononucleosis;IM)の診断には,EBV特異抗体の測定が必須である(表).特に,EBV特異的核内抗原(EBV-associated nuclear antigen;EBNA)の抗体価測定は,初感染では陰性,後に陽性を示すため重要である1).現在のところEBNAは1〜6まで同定されている.間接蛍光抗体補体法による通常のEBNA抗体は,EBNA 1〜4を保持するRaji細胞を用いるが,この細胞のEBNA発現率は低いためヒト補体を必要とするなどの問題点がある.近年,組換えDNA技術によりEBNA 1〜6を発現する細胞を用いて,各々の抗体測定が可能となった2).初感染後の抗体出現時期は,EBNA-2抗体が出現(2〜3か月)した後遅れて出現し(6か月以降)終生持続する3〜4)(図).
 現在,EBNA-1は,市販のカピーキット(コスモ・バイオ)を用いて測定可能である5).従来のEBNA抗体測定のみでは初感染か再活性化(reactivation)かの判定ができない症例の中には,EBNA-1測定により,初感染と判定→病因決定→診断→適切な治療が可能な場合がある.

IgGサブクラス測定法

著者: 戸叶嘉明

ページ範囲:P.750 - P.750

[1]IgGサブクラスとは
 IgGはIgG1〜4の4つのサブクラスに分かれ,構造(特にS-S結合の数・形態)や性状(補体結合性など)がそれぞれ異なっている.

可溶性IL-2R

著者: 日暮芳己 ,   吉野谷定美

ページ範囲:P.751 - P.751

はじめに
 T細胞またはB細胞は活性化されると,一部の細胞表面分子の発現量が増加したり,活性化マーカーの産生と発現が誘導される1)
 ヘルパーT細胞より産生されたインターロイキン2(IL2)は,T細胞,B細胞,NK細胞,単球などを活性化し,さらにそれらの細胞膜表面にインターロイキン2受容体(膜結合型IL-2R;mIL-2R)を発現させる.

ラボクイズ

問題:細菌検査

ページ範囲:P.732 - P.732

7月号の解答と解説

ページ範囲:P.733 - P.733

明日の検査技師に望む

高品質の検査データを提供しうる技師を目指して

著者: 笠原和恵

ページ範囲:P.698 - P.698

■臨床検査発展の歴史の中に見いだされる教訓
 臨床検査はこの数十年間,検査項目の年々の増加と相まって検査の簡易化・微量化・能率化・精度化・システム化を目指し,大きな技術革新を遂げてきた.そして今,合理的追究から脱皮して,患者のニーズに応えられる高品質の検査データの提供をめぐる真剣な討議がなされている.大量処理の機器から緊急検査の対応も可能なランダムアクセス方式の導入もその顕著な現れと思う.
 あまりにも分析のスピードアップを重視したため,かえって前型式の自動分析器のほうが精度が優れていたことを,免疫比濁法の成績で経験したことがある.

けんさアラカルト

検査技師の生涯教育

著者: 早田繁雄

ページ範囲:P.712 - P.712

 「検査技師の生涯教育」について考える前に「生涯教育とは何か」について触れておきたい.
 1965年に開催されたユネスコの「成人教育推進国際委員会」で,ポール・ラングラン(Paul Lengrandフランス)は,永続的教育(生涯教育)の原理を「人間は,人生の各段階にふさわしい学習の機会に恵まれており,学習の機会は学校教育だけでなく社会のあらゆる場にあり,これらの学習の統合のためには,人間や人生に関する考え方を解放していくことである」とした.

トピックス

赤血球の賦活化

著者: 柴雅之

ページ範囲:P.757 - P.758

 赤血球は保存によりその機能は急速に低下する.特に赤血球の酸素運搬能や輸血後生存率は,赤血球の代謝活性と密接な関係があり,解糖系の代謝中間体である2,3-ジホスホグリセリン酸(2,3-DPG)やアデノシン三リン酸(ATP)を測定することで,その機能を推測できる1).赤血球製剤は通常4〜6℃で保存されるが,保存とともにATPが低下すると,赤血球形態も円盤型から有棘型,さらに球型へと変形する.このような形態変化をきたした赤血球は脾の単球・マクロファージ系に認識され,循環系から排除される.2,3-DPGはヘモグロビンの酸素親和性調節の面から重要な中間体である.2,3-DPGが保存により低下すると,ヘモグロビンは酸素を放しにくくなり,酸素運搬能は低下する.しかし,輸血された赤血球が血管内を循環していると,赤血球にとっての環境が回復することで,再び赤血球はATPや2,3-DPGを産生し,有効に機能する.
 現在の濃厚赤血球(CRC)は保存21日で80〜85%の生存率を有しているが,2,3-DPGは維持できないため酸素運搬能は低下している.また,最近赤血球保存液としてMAP液が導入された2).MAP液により濃厚赤血球中に残存するリンパ球,血漿などの輸血副作用の原因物質が減少し,より安全なMAP加濃厚赤血球(RC-MAP)となった.

自己末梢血幹細胞移植

著者: 髙松泰 ,   原田実根

ページ範囲:P.758 - P.759

 抗白血病剤の多剤併用や新しい抗白血病剤の開発,支持療法の進歩により急性白血病の寛解到達率は80%にも達しているが,その大半は再発し,長期寛解生存の可能性は依然として20〜30%である.抗白血病剤の投与量を増すことにより抗白血病効果を高めることが期待できるが,同時に治療による骨髄抑制も強くなり,dose escalationには限界がある.このような骨髄抑制に対して,あらかじめ保存しておいた自己の造血幹細胞を移植し造血回復を図ることにより,従来の治療量を超える超大量化学療法/放射線照射が可能となり,これによって抗白血病効果の増強および治療成績の向上が期待できる.近年,急性白血病や悪性リンパ腫などの血液悪性疾患に対し,骨髄もしくは末梢血中の造血幹細胞を凍結保存し,骨髄致死的な化学療法/放射線療法後に解凍,輸注する自家骨髄移植(autologous bone marrow transplantation;ABMT)や自己末梢血幹細胞移植(autologous blood stem cell transplantation;ABSCT)が試みられている.
 造血幹細胞は,骨髄中のみならず末梢血中にも存在するが,その頻度は正常人では骨髄の約100分の1である.しかし,末梢血中の造血幹細胞数は化学療法後の造血回復期に一過性に増加する.

熱ショック蛋白

著者: 田村保明 ,   佐藤昇志

ページ範囲:P.759 - P.760

■熱ショック蛋白とは
 細胞が熱ショックを受けると,それに反応してある一群の蛋白の合成が誘導される.この蛋白群が熱ショック蛋白(heat shock protein;hsp)である.hspは熱ショック以外にも種々の物理化学的ストレス,例えば低酸素状態,低グルコース状態,重金属イオン,合成アミノ酸,フリーラジカルあるいはTNFなどの細胞障害性のサイトカインなどで誘導されることからストレス蛋白とも呼ばれている.また最近ではウイルス感染や細胞の癌化に伴って強く誘導されることが知られるようになった.hspは大腸菌からヒトに至るすべての生物において認められ,蛋白の一次構造に高い相同性を有し,系統発生の過程で高度に保存された蛋白である1)

三重鎖DNAとその応用

著者: 西川直子 ,   木山亮一

ページ範囲:P.760 - P.762

 三重鎖DNAは二本鎖のDNAにもう1本のヌクレオチド鎖が水素結合したその名のとおりの構造をしている(図1)1).三重鎖DNAという言葉が一般的に聞き慣れないため新しい感じがするが,その歴史は意外に古い.初めて報告されたのは,ワトソンとクリックが二重らせん構造を発見したわずか4年後の1957年のことである.しかし,しばらくは構造についての研究が主になされており,最近になってこの三重鎖DNAは癌やエイズまたはその他の遺伝病の治療や検出に利用できる可能性が示されたため,特に注目されるようになった.
 三重鎖DNAは,二重鎖DNAのようにゲノム全体にあてはまる構造ではなく,一部分のホモプリン・ホモピリミジン(またはそれに近い)配列と呼ばれる一方の鎖にプリン塩基(GまたはA),他方の鎖に相補的なピリミジン塩基(TまたはC)が並んだ特殊な配列で形成される.三重鎖はここに3本目の鎖,ホモプリンまたはホモピリミジンの配列が結合して形成される.またこの塩基の組み合わせもさまざまで,例えば図1-bに示したT・AT(3本目の鎖・もとの二重鎖DNA)やC・GCのほかにG・GC,G・TA,A・ATなどが報告されている.

けんさ質問箱

Q 右胸心の心電図検査/Q 超音波検査における膵の高エコーレベルの評価

著者: 谷川直 ,   T.I. ,   寺沢良夫 ,   広田むつ子 ,   森久恵 ,   八島香代 ,   T.Y.

ページ範囲:P.763 - P.765

 心電図を検査中,右胸心と思われる患者に出会いました.波形は完全右脚ブロックのパターンを示しましたが,ブロックされているのは右脚なのでしょうか,それとも右胸心ですから左脚なのでしょうか.

Q 百日咳抗体(細菌凝集反応)

著者: 加藤達夫 ,   H.N.

ページ範囲:P.765 - P.766

 百日咳は東浜株(ワクチン株)より,山口株(流行株)の抗体価が高ければ感染しているといわれますが,はっきり区別ができるのでしょうか.また,ワクチンの種類によっても抗体価に違いがあるのでしょうか.結果のみかたについてもお教えください.

今月の表紙

甲状腺乳頭癌

著者: 星利良 ,   都竹正文 ,   坂本穆彦

ページ範囲:P.731 - P.731

 細胞診における甲状腺癌の診断は他臓器の癌と比較すると,一般的な悪性細胞の判定基準に当てはまらない細胞異型の乏しいものが多い.しかし,その“細胞の出現態度と核所見”は良性疾患と異なる特徴があり,この特徴像を把握することが診断につながる.
 甲状腺癌の組織型は,乳頭癌(papillary carcinoma),濾胞癌(follicular carcinoma),未分化癌(undifferentiated carcinoma),髄様癌(medullary carcinoma),特殊型に大別されるが,そのうち乳頭癌は,甲状腺癌の約90%を占めるといわれ,特に日本では諸外国に比較して乳頭癌の占める割合が高く,日本人の生活環境や体質と深く結びついた腫瘍の1つといえる.女性に好発し,若年から老年まで各年齢層に発生するが50歳前後にピークを見る.リンパ行性に頸部リンパ節に転移することが多いが,その予後は一般に良好であり,10年生存率は約80%である.

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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