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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術22巻6号

1994年05月発行

雑誌目次

病気のはなし

膵炎

著者: 西野隆義 ,   神津忠彦

ページ範囲:P.386 - P.391

はじめに
 近年のアルコール摂取の増加と診断学の進歩により,膵炎と診断される患者は,わが国でも増加しつつある.膵炎は活性化された膵酵素による自己消化をその本態とし,急性膵炎と慢性膵炎に大別される.急性膵炎では,原因が解除されると炎症はしだいに消退し原則として臨床的,形態学的および機能的に正常化する.一方,慢性膵炎では炎症は一時寛解することはあっても完全には消退せず,形態学的・機能的に不可逆的変化が残存あるいは進行する.
 本稿ではまず,膵臓の構造と働きについて述べ,急性膵炎および慢性膵炎について概説する.

検査法の基礎

感染性腸炎の動向

著者: 相楽裕子

ページ範囲:P.393 - P.398

サマリー
 第二次大戦後の混乱期が終わるまで,感染性腸炎といえば細菌性赤痢などの消化器系伝染病に代表されていた.衛生環境が整備された現在,わが国ではこれらの強毒菌感染症は減少し,その存在さえ医療従事者を含めて人々の脳裏から消えてしまった感があり,日常の衛生習慣として,あるいは院内感染防止の基本としての手洗いさえなおざりにされがちである.一方,伝染病は現在でも発展途上国には蔓延しており,海外旅行や輸入食品を通してわが国を脅かしている.したがって,これらは一部の人々の間でみられる輸入感染症とばかり言えない状況になっている.
 腸管感染症の分野ではこのほか,伝染病に代わるさまざまな病原体による感染性腸炎,食中毒あるいは集団発生,抗菌薬使用に伴う下痢症,および易感染性宿主の難治性下痢症などがトピックスである1)
 腸管感染症であっても菌血症が主病変であるチフス性疾患(腸チフス,パラチフス)は本稿のタイトルから外れることになるが,関連疾患として述べた.

心電図自動診断の有用性と問題点

著者: 加藤貴雄

ページ範囲:P.399 - P.403

サマリー
 (1)心電図自動診断は,健康診断におけるスクリーニングに適している.
 (2)大量高速処理は可能であるが,解析精度は現時点では十分とはいえない.
 (3)現状のシステムは,重要疾患の見落としを避けるため診断基準を甘くしであるので,偽陽性が多くみられる.
 (4)自動診断の再現性は比較的良好であるが,計測値の微妙な差によって診断が変わることもある.
 (5)P波の認識が不十分なことに起因すると思われる誤診が少なくない.
 (6)不整脈に関しての診断精度をさらに上げるためには,新たな診断口ジックの開発も必要である.

技術講座 免疫

IgG-RF

著者: 松本文枝 ,   武部功

ページ範囲:P.405 - P.410

サマリー
 IgG-RFは,IgG分画に属するRFであり,同一分子内に抗体部分と抗原部分の両方を持ち,互いに結合しあい自己凝集体を形成する特徴を持つ.この免疫複合体がRAあるいはMRAなどの病変に大きくかかわっているとの報告が多く,IgG-RFの測定が臨床的意義のうえから重要視されている.
 IgG-RFの測定は,従来は画一された方法はなく,各施設が独自の方法で測定しているのが現状であった.しかし,近年ELISAを原理とするIgG-RF測定法がキット化されたことにより,検査室でもその測定が可能となった.
 本稿ではIgG-RF測定の意義ならびにELISAを中心とした測定方法について述べた.

生化学

ポルフィリンの検査法

著者: 近藤雅雄

ページ範囲:P.411 - P.418

サマリー
 ポルフイリンの検査は稀疾患とされている遺伝性ポルフィリン症の確定診断や鉛作業者の職業病検診に不可欠であるが,その方法はいまだに実用的でない有機溶媒抽出法が主流である.これら古典的なポルフィリン検査法はポルフィリン症診断を停滞させている原因となっているが,スクリーニングテストを目的とした簡便法はいまだに有用である.
 近年の高速液体クロマトグラフィー法(HPLC)の急速な進歩,普及によりポルフィリン検査も大きく変容した.HPLC法は臨床材料からのポルフィリン分析には最も優れた,理想的な方法であり,カラムと蛍光検出器があればHPLCの機種を問わずポルフィリン測定が可能である.ここでは,HPLCの自動分析法を中心に解説した.

微生物

感受性試験のための抗菌剤の基礎知識—[2]アミノ配糖体系薬剤およびキノロン系薬剤

著者: 井上松久 ,   島内千恵子 ,   井田孝志

ページ範囲:P.419 - P.424

はじめに
 β-ラクタム剤やアミノ配糖体系薬剤などの感受性試験を行う際,その結果を左右するいくつかの要因がある.この点を考慮して検査しないと,得られた値は検査ごとに変わったりして正確な情報を得ることが難しくなる.これら検査成績のバラツキは特に薬剤耐性菌においてみられる.しかし,すべての耐性菌の感受性検査で問題となるのではなく,むしろ薬剤とその耐性機構の組み合わせによることが多い.
 前回述べたβ-ラクタム剤の場合,耐性菌は薬剤の加水分解酵素(β-ラクタマーゼ)を菌体外に放出するため,薬剤感受性を測定するときの菌数が多ければ多いほど酵素の持ち込みが多くなり結果としてMICが高くなる.またグラム陰性杆菌の産生するβ-ラクタマーゼにはその産生様式が誘導型のものがあるため,薬剤の誘導能が強いか弱いか,酵素によって薬剤が加水分解されやすいか否かによってもMICが相当変動する.さらに,検査対象となる菌株が誘導型産生から構成型産生への変異率が高い場合,得られる感受性結果は菌の変異率の影響を受ける.言い換えれば,β-ラクタム剤の感受性測定では,耐性菌の産生するβ-ラクタマーゼの培地中への持ち込み量がMICを左右する大きな原因となる.

一般

尿沈渣染色法

著者: 稲垣勇夫

ページ範囲:P.425 - P.430

サマリー
 尿沈渣の染色法には多くのものがある.用途別に分類すると,尿沈渣成分の全体の視認性を染色法によって向上させるものと,特殊な染色液でもって成分を染色して鑑別しようとするものとに分けられる.現在,有用なものとして前者にはスタンハイマー(Sternheimer)染色など,後者にはプレスコット・ブロディ(Prescott-Brodie)染色などがある,また染色法ではないが簡易偏光板装置などを用いて成分の鑑別を行うこともある.これらは尿沈渣の正確度と精度の向上に用いられるものである.

マスターしよう検査技術

無散瞳眼底写真検査

著者: 土坂寿行

ページ範囲:P.437 - P.442

 眼底写真は通常,散瞳剤を点眼して瞳孔を最大限に拡大して撮影を行う.しかし,無散瞳眼底検査は自然大の瞳孔を通して検査を行うもので,観察には赤外光を用いる.すなわち,対光反応で縮瞳をしないよう,赤外光で眼底を観察し,ピント,観察位置などの撮影条件を整えたうえで,一瞬のうちにフラッシュ光を用いて撮影を終了するものである.
 無散瞳眼底検査は散瞳に要する時間が節約でき,検査後にピントが合わない,まぶしい,といった煩わしい症状がない.また,何よりも散瞳による緑内障発作の危険がないという大きな利点を持つ.一方,眼底周辺部の撮影や蛍光眼底撮影はできないため,その用途は眼底後極部を中心としたカラー撮影に限られる.すなわち,視神経乳頭および黄斑部を中心として,動静脈交差部を含め,乳頭から出る4本の大血管を撮影することになる.

生体のメカニズム 遺伝子の異常・5

遺伝子病と遺伝する疾患

著者: 孫田信一

ページ範囲:P.443 - P.445

遺伝子病とは
 細胞の核に存在する染色体は,多数の遺伝子とそれを結合する塩基配列で構成されている.なんらかの原因で遺伝子の塩基配列に変化が生じ,遺伝子の正常な働きが失われることを突然変異という.そして,この変化した遺伝子(突然変異遺伝子という)を受け継いだために生じる疾患を遺伝子病という.
 1つの遺伝子は多数(数百〜数百万)の塩基で構成されているが,突然変異はただ1個の塩基の変異から多数の塩基配列の異常までさまざまである.これらの異常には置換,欠失,重複,組み換え,挿入など種々のタイプがある(図1).

検査データを考える

意識障害の脳波

著者: 山内俊雄

ページ範囲:P.447 - P.452

意識障害とは
 意識を定義するのはなかなか難しいことであるが,正常な意識状態とは次のような能力が保たれていることである.
 ①周囲で起こっているできごとに十分な注意を向けることができる(注意).

わかりやすい学会スライドの作りかた 各論・4

生理

著者: 石出信正

ページ範囲:P.434 - P.435

1.文字からの“解放”
 数年前,国際協力事業団の派遣員として中国に医学教育の近代化のお手伝いに出かけたことがある.通常の講義では日本と異なりスライドを使うことは少ない.スライド作成の設備は一応調っているが,コストが高く気楽にスライドを作るわけにはいかないようである.滞在中,たまたま博士号の資格審査に出席する機会が与えられた.発表者はスライドを用いて研究発表を行うのだが,スライドは図よりも文字が中心である.極端な発表例では,スライドの上端から下端までびっしり文字(もちろん漢字)が並び,発表者はそれを順に読み上げるのである.
 私が在米中,学会発表の予行のとき,いつものように開始後すぐに“スライドお願いします”と(もちろん英語で),始めると私のボスが,それはダメだと言う.こちらが怪訝な顔をしていると,“初めは明りをつけたままで,あなたの顔を見せ,これから何を話したいのか聴衆に語りかけなさい”と言う.

検査ファイル

selectivity index

著者: 日高寿美 ,   街稔 ,   長瀬光昌

ページ範囲:P.453 - P.453

 selectivity index(SI)はネフローゼ症候群(NS)において,蛋白尿の状態を知る目的で使用される検査値であるため,まず簡単に腎での蛋白透過性について述べ,次にSIについて述べる.

半分子型免疫グロブリン

著者: 大竹皓子

ページ範囲:P.454 - P.454

 免疫グロブリン(Ig)の基本構造は,相同の2本のH鎖と相同のL鎖がそれぞれS-S結合によって結ばれた4本鎖の構造単位をとっている.H鎖には5種類のクラスがあり,それらはIgのクラス特異性を示す.L鎖は各クラスに共通に含まれ,その抗原性からκ鎖とλ鎖に分けられる.
 IgはH鎖,L鎖ともにアミノ酸約110個から成るドメイン構造をとっている.N末端側のFabは抗原結合部位で,C末端側のFcはマクロファージや単球などのFcレセプターへの結合部位である.中間のヒンジ(蝶番)部にはH鎖間のS-S結合があり,Fabが抗原と結合するうえで重要な構造部位である.正常なIg分子は,このような基本構造を持つが,多発性骨髄腫やリンパ増殖性の疾患に出現するM蛋白に,まれに正常Igとは異なった構造のものが血中や尿中に出現することが知られている.

音響陰影

著者: 仲宗根出

ページ範囲:P.455 - P.455

 音響陰影(acoustic shadow)とは日本超音波医学会の医用超音波用語解説によると“結石やある種の腫瘤などの後方に出現する無エコー域”とされている.これを理解するには極端なたとえではあるが月食をイメージすればわかりやすい.月食は太陽と月との間に地球が割り込み太陽の光を遮るため,この陰により月の光る面が一部または全部にわたって欠けるものである(図1).ここでは地球が結石に,月の欠けた部分が無エコー域すなわち音響陰影に相当することになる.
 超音波としてもう少し詳しくみてみると,人が会話をする場合,距離が離れていくと声が聞き取りにくくなってくる.これは音が伝播の過程で減衰するためであるが,超音波も同様に生体内を透過していく過程で減衰(音響エネルギーの熱への変化や反射・散乱のためのエネルギー減少)していく.超音波診断装置ではこの減衰を装置側で深さにより感度を変化させることにより補償している.しかし,この補償は生体内での平均的な減衰を補償するものであるため,例えば減衰の大きな組織の後方では感度補償によって得られている周囲組織の超音波像に対して同程度の補償では十分な像を表示し得ず,すなわち音響陰影として認められる.言い換えれば断層上で音響陰影が認められる場合は,その手前の組織の減衰(主に反射)の程度が極めて大きいということになる.このことから,音響陰影は胆石などの診断において結石存在の診断条件の1つとして役立っている(図2).

フローサイトメトリーとパラフィン切片

著者: 福島純一 ,   佐々木学

ページ範囲:P.456 - P.456

はじめに
 フローサイトメトリー(flow cytometry;FCM)は蛍光色素で染色した浮遊細胞にレーザー光線を照射することにより,細胞の蛍光色素量を測定し,細胞の特性を解析する手法である.FCMは細胞周期の解析,核DNA量の測定,細胞表面抗原の解析など,幅広い分野に応用されている.本稿ではパラフィン包埋材料を用いた核DNA量の測定を中心に述べる.

ラボクイズ

問題:電気泳動パターンから

ページ範囲:P.432 - P.432

4月号の解答と解説

ページ範囲:P.433 - P.433

明日の検査技師に望む

高度化する医療の実践を担う臨床検査技師

著者: 大西俊造

ページ範囲:P.392 - P.392

 高度化・専門化する今日の医療の場にあって,その一環の重要な位置を占める臨床検査技師に望むことは各人各様であろうが,技師を養成する立場にあり,また平成5年10月,四半世紀の歴史を持つ3年制の大阪大学医療技術短期大学部が廃止され,21世紀を展望した4年制の新たな大阪大学医学部保健学科設置に参画した教員の1人として,その作業を背景に考えていることの一端を述べてみたい.
 わが国では,昨今の保健・医療制度の整備と生活・環境条件の改善によって,これまで不幸な結末をもたらしてきた急性伝染病,結核などは著しく減少した一方で,癌,高血圧症,心不全などの慢性疾患が増加するとともに,肝炎,AIDSなどウイルス感染症が新たに出現するなど疾病構造が大きく変化しつつある.これらに対応する先端医療技術も著しく進歩発展し,検査,診断,治療など医療も今後さらに高度化,多様化,専門化することが確実であることは周知の事実であろう.これらの諸現象を踏まえて,“何を明日の検査技師に望むか”について順次取り上げてみたい.

けんさアラカルト

ここが変わったME機器のJIS

著者: 内藤正章

ページ範囲:P.404 - P.404

■安全性の向上
 今から15年以上前,ME機器の安全基準が検討され始めたころ,心電計(患者回路が接地)の単一故障の患者漏れ電流は実質的に5mAのヒューズで制限されていた.しかし今日,光による分離という技術により0.05mA以下になった.すなわち安全性が2ケタも高まったとみることができる.このように安全性は日々向上するものである.世界的にも安全性の考えは少しずつ変化してきて,今日,①基本安全(操作者・患者に危害を与えない)と,②有効性(意図した機能を持つ)という2面を考えるようになってきた.現在のJISやIEC 601-1はまだ前者しか規定していない.

トピックス

検査部業務量の定量化

著者: 只野壽太郎

ページ範囲:P.457 - P.458

 検査部業務量の定量化プロジェクト(通称串刺しダンゴプロジェクト)は検査部の業務の客観化を目的に佐賀医大検査部が,1993年に開発した方法である.
 このプロジェクトは全国国立大学検査部会議の要請を受け開始されたもので,1993年の会議で試案が示され,1994年度の会議に向け,鹿児島大学,山口大学,名古屋大学の各検査部の協力を得て進行中である.

わが国の喫煙防止教育研究の課題

著者: 野津有司

ページ範囲:P.458 - P.459

 青少年の喫煙防止教育研究について欧米の進展を観察すると,おおむね3相を経てきている.つまり,研究の第1相は1960年代から始められ,大規模調査による青少年の喫煙行動の実態把握に努力された.第2相は1970年代から80年代にわたり,有効な教育プログラムの開発とその普及に主眼が置かれた,そして第3相は1980年代から90年代にかけて,青少年の喫煙を促進する社会的環境要因の改善に取り組まれている.一方,わが国の青少年に対する研究の取り組みは,欧米に比べて遅れている.以下に,これら3相に沿って2,3の課題を示す.

アミリン(IAPP)

著者: 三家登喜夫

ページ範囲:P.459 - P.461

 糖尿病は,血糖降下作用を有するホルモンであるインスリンの作用不足により生じる“持続する高血糖”を主徴とする疾患である.その中でも95%以上を占めるインスリン非依存性糖尿病(NIDDM)は,インスリン分泌の異常(低下)とインスリン感受性の低下とを合わせ持った病態を有している.このNIDDMの組織学的特徴の1つに膵ラ島のアミロイド沈着が以前から指摘されていた.このアミロイド沈着は,報告により異なるがNIDDM患者の80%以上に認められている.また,膵β細胞の腫瘍であるインスリノーマ患者(約50%)や,程度や頻度はかなり低いが非糖尿病の高齢者にも認められている.アミロイドとは,βシート構造(ジグザグ構造)を有するペプチドが幾重にも折り重なって沈着したものであるが,このアミロイドを構成しているペプチドがアミロイド線維蛋白質である.現在までに表1に示す数種類の線維蛋白質がそれぞれの疾患と関連して同定されている1).NIDDMに関しては,膵ラ島アミロイド沈着の量が少ないことに加えアミロイドが不溶性であるため,その生化学的な分析が困難であった.1987年になりヒトの膵ラ島に沈着しているアミロイドからその線維蛋白が分離・同定され,膵ラ島アミロイド蛋白(islet amyloid polypeptide;IAPP)2)またはアミリン3)と名付けられた.

転写因子

著者: 大屋敷純子 ,   外山圭助

ページ範囲:P.461 - P.462

■転写因子とは
 転写過程はDNAの遺伝情報を蛋白に変換する基本的な第一歩であると同時に遺伝子発現調節の要となる部分であるが,この転写過程は特殊なDNA配列によってコントロールされている.そしてこのDNA配列が転写因子と総称される蛋白に結合することによって,遺伝子発現を調節し細胞増殖や細胞分化を制御する.

けんさ質問箱

Q CO2濃度の酵素的測定法

著者: 桑克彦 ,   M.H.

ページ範囲:P.464 - P.465

 CO2濃度の測定は当院ではベックマン社のシンクロンエリーゼ,コダック社のドライケム700で行っています.最近,酵素的測定法があるということです.どのような方法で,またどんなメリットがあるのでしょうか.参考にすべき文献なども併せて教えてください.

Q リポ蛋白組成

著者: 安部彰 ,   前田悟司 ,   K.K.

ページ範囲:P.465 - P.467

 血清リポ蛋白の組成につきまして,文献によりPLとTGが異なっているものがありました.文献値としての一般的な値と,できましたら実験値について測定方法も含めてご教示ください.

今月の表紙

滑膜肉腫の細胞診

著者: 古田則行 ,   都竹正文 ,   坂本穆彦

ページ範囲:P.436 - P.436

 滑膜肉腫は主に関節近傍に発生し,関節滑膜組織に模倣した組織所見を呈する悪性腫瘍である.腫瘍は四肢の大関節付近に好発することが多く,関節腔内に発生することはまれである.したがって,滑液嚢や腱鞘を侵すことが多い.臨床的には他の肉腫と比較すると腫瘍の存在に気づいてから初回治療までの期間が長いことが特徴である.本腫瘍は,比較的容易に穿刺細胞診が行えることが多いため,軟部腫瘍の術前診断の1つとして施行される機会が増えてきた.
 病理組織学的には滑膜の形態を模倣した二相性(biphasic pattern)をとるのが特徴である.1つは上皮様細胞(滑膜細胞類似の上皮様,偽腺管構造を示す細胞)と,もう1つは線維肉腫様の紡錘形細胞の2種類の混在である.一方,二相性発育のはっきりしない単相型(monophasic type)がある.腫瘍細胞は紡錘形の単一細胞で,しばしば血管外皮腫様構造(hemangiopericytoma-like pattern)を示す.

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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