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脳[2]脳血管障害—血管病変および脳循環動態の非侵襲的検査
著者:
橋川一雄
,
半田伸夫
,
松本昌泰
,
西村恒彦
ページ範囲:P.703 - P.706
診断機器の進歩に伴って新しい疾患概念が生まれてきた.無症候性脳梗塞もその1つである.従来のCT検査に比較して小病巣の検出が可能なMRIを用いた脳ドッグが普及してきた.この結果,明らかな脳卒中やTIAの既往のない症例において脳虚血病変を認めることが増加してきた.また,臨床上初回脳梗塞と思われる症例においても責任病巣以外の病変を指摘されることも多い.これら無症候性脳梗塞と呼ばれる病態の成因として老化や高血圧などの細動脈硬化が指摘されているが,頭蓋内あるいは頸部の主要血管の狭窄性病変が潜在することもある.このような無症候あるいは軽症脳血管障害の精査には,非侵襲的な血管病変の検索や脳循環動態の精査が望まれる.この目的にはMRIと平行して発展してきた超音波検査,MRアンギオグラフィ(MR angiography;MRA)および脳血流single photon emissioncomputed tomography(SPECT)検査などが有効な手段である.
図1は糖尿病治療目的で当科を紹介された61歳の男性のMRIである.脳卒中の既往歴はなく,また,高次脳神経を含む神経学的所見に異常を認めなかった.眼科で右眼の循環障害を指摘されていた.MRIでT2延長領域を認め,無症候性脳梗塞と診断された.頸部超音波断層撮影を施行した結果,右内頸動脈起始部での閉塞を認め(図2),その後の血管撮影で右内頸動脈閉塞が確認された.