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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術24巻4号

1996年04月発行

雑誌目次

病気のはなし

脳腫瘍

著者: 宮尾泰慶 ,   清水恵司

ページ範囲:P.298 - P.302

新しい知見
 脳腫瘍の診断はCTやMRIなどの画像技術の進歩により飛躍的に向上したが,その治療の本幹をなす手術は,約30年前に手術顕微鏡が導入されて以来その本質はさほど変化していない.確かに髄膜腫のような良性腫瘍へのアプローチは,頭蓋底手術といったより積極的方法が採られるようになり治療成績の向上が認められたが,神経膠腫を中心とする悪性脳腫瘍の治療成績はここ15年以上変わっていない.
 一方,モノクローナル抗体を用いた病理診断から悪性度に応じた治療の選択,内視鏡を用いたより低侵襲手術,ガンマナイフを用いた放射線療法,さらには遺伝子治療など新しい試みがなされ,今後悪性神経膠腫の治療成績向上につながるものと期待される.

技術講座 生化学

HDL-コレステロール直接測定法

著者: 杉内博幸 ,   宇治義則 ,   岡部紘明

ページ範囲:P.303 - P.310

新しい知見
 血清高密度リポ蛋白-コレステロール(HDL-C)の直接測定法の開発が,この数年間,わが国において活発に行われている.本稿では直接測定法に関する最近の動向とこれらの測定方法を概説するとともに,ポリエチレングリコール(PEG)修飾酵素・硫酸化α-シクロデキストリン(α-CyD・sul)複合系を用いた直接測定法の知見を紹介する.

血液

悪性リンパ腫の新分類—いわゆるREAL分類

著者: 中村栄男 ,   谷田部恭 ,   須知泰山

ページ範囲:P.311 - P.315

新しい知見
 最近,“REAL分類”と略称される新たなリンパ腫分類が提唱された.これはリンパ系腫瘍全体を網羅し,近年著しく進歩した免疫学的,分子生物学的解析結果を積極的に取り入れることにより確立された個々の腫瘍単位をすべて亜型項目としてリストアップしたという形の分類である.
 本稿ではリンパ腫分類をめぐる諸問題を述べるとともに,REAL分類の簡単な解説を行う.

微生物

Chlamydia pneumoniaeの抗体検査

著者: 山崎勉

ページ範囲:P.317 - P.320

新しい知見
 MIF法用の抗原点置スライドが数社より試作されている.例えば米国MRL社のキットでは各クラミジア抗原に,C. pneumoniae:TW-183,C. psittaci:6BC,C. trachomatis:D/E/F/G/H/I/J/Kの8血清型の混合抗原を用いている.問題点として,各点置抗原が大きく判定しにくいこと,価格が高いこと,C. trachomatisについては多数の混合抗原を1点置で用いているため,血清型によっては見落とす可能性があることなどがある.
 また,lipopolysaccharideなどの属特異抗原に対する抗体測定をC. pneumoniae感染症の臨床診断に補助的に用いようとする試み(クラミジアAbキットMX,メダック社)や,C. pneumoniaeの98kDaあるいは43kDaなどの蛋白に注目し,より特異的な抗体測定系を構築する試みがある.

reverse transcription-polymerase chain reaction(RT-PCR)法

著者: 河野緑 ,   保科定頼 ,   町田勝彦

ページ範囲:P.321 - P.327

新しい知見
 RNA増幅法には今回のテーマであるRT-PCR法のほかに,TMA法(transcription mediatedamplification),NASBA法(nucleic acidsequence based amplification)が現在使用可能な方法である.検出感度を上げる分岐プローブ法(branched prove法)やin situハイブリダイゼーション法もRNA検査法に含まれる.RT-PCR法はDNA増幅産物とRNA増幅産物を識別する方法をこれから考える必要がある.TMA法,NASBA法は標的RNAだけを増幅する.分岐プローブ法やin situハイブリダイゼーション法もコピー数の多いRNAを標的にする限り良好な感度が期待できる.

病理

形態計測の最新の方法—新しいステレオロジーと多変量解析を中心に

著者: 千場良司 ,   古川徹 ,   高橋徹

ページ範囲:P.329 - P.336

新しい知見
 近年形態計測の分野では,ステレオロジーの新しい方法論が開発されており,これまで推定困難であった組織の3次元構造に関する精度の高い情報を得ることが可能になった.このような手法により腫瘍の悪性度や神経疾患に関する研究などの面で大きな進展がみられている.また計算機科学の進歩に伴い,膨大なデータの多変量統計解析がパソコンレベルで実行可能になり,病態の解釈や形態診断の強力な支援になることが期待されている.

生理

検査機器の接地—機能接地と保護接地

著者: 石山陽事

ページ範囲:P.337 - P.343

新しい知見
 最近,病院電気設備の安全基準JIS T 1022(1982年制定)の改定案がまとまり1996年度中にも新しい規格が制定される予定である.これによると患者を対象とする生理検査室はむろん,検体検査室,病理検査室でも保護接地設備(3Pコンセントなど)は「設けなければならない」,等電位接地は「必要に応じて設ける」となっている.従来,検体検査室では等電位設備などは病院電気設備の規格に「該当しない」となっていた.

マスターしよう検査技術

APTTとPTTの測定法

著者: 鈴木節子

ページ範囲:P.347 - P.353

はじめに
 内因系の血液凝固機能のスクリーニング検査として活性化部分トロンボプラスチン時間(activated partial thromboplastin time;APTT)が広く普及している.これは,部分トロンボプラスチン時間(partial thromboplastin time;PTT)の変法である.トロンボプラスチンとは,第X因子(F. X)に作用して活性化第X因子(F. Xa)とし,生成されたF.Xaと結合してプロトロンビンをトロンビンにする複合物であるとされている.

生体のメカニズム 神経と神経調節機構・4

神経移植

著者: 越永守道 ,   片山容一

ページ範囲:P.361 - P.365

はじめに
 脳,脊髄に損傷が加わり,いったん変性が起こると再生,修復は不可能であると古くより考えられてきた.近年になって神経活動の基本となるシナプス結合が,変性によって失われた部位に,本来シナプス結合を持たなかった別の神経細胞が神経線維を伸ばし,新たなシナプス結合を形成することが示された.しかし,このように損傷された神経回路が他の神経細胞により修復されうる現象のみでは損傷前の機能を補うことができないことも,日常の臨床ではよく経験することである.
 そこで古くから脳,脊髄損傷を神経組織の移植により補うことができて,しかもその機能を回復することが可能となればと期待されてきたが,神経系の高度に複雑な構造よりみて,神経移植は意味のある結果を得ることはできないと考えられてきた.ここ20年余りに神経移植に関する実験的研究が飛躍的に進歩し,幼弱な胎児の脳,脊髄組織であれば宿主内で生存しうるのみではなく,障害された神経回路を修復することが可能であることが示されてきた.これとともに失われた特定の神経伝達物質や神経栄養因子を補うために,これらを産生する細胞を移植し,機能改善を図る試みもなされてきている.現時点では,さまざまな制約により臨床応用には広く至っていない領域ではあるが,神経移植の研究は多くの可能性を秘めている.

検査データを考える

感染症と白血球

著者: 柏村眞 ,   染谷貴美枝

ページ範囲:P.367 - P.371

はじめに
 白血球は細菌・真菌・原虫・寄生虫・ウイルスなどの微生物の侵入から身体を守る働き(生体防御)を担った細胞群である.さらに白血球は体内に出現する悪性腫瘍を撲滅させ生体を守る働きを持つ.白血球は顆粒球(好中球・好塩基球・好酸球)と単球,リンパ球(B細胞・T細胞)から構成されている.好中球は細菌や真菌から生体を守り,好酸球は寄生虫から生体を守る.単球は組織に入り大食細胞(マクロファージ)となり,初期感染への対応に当たる.好中球と大食細胞は微生物を貪食することで生体を守る.これらによる貪食は菌種を限定することなく非特異的である.一方,リンパ球は異物の特異性を認識・記憶することができる.リンパ球のうちB細胞は抗体を作り液性免疫として,T細胞は細胞性免疫として免疫の調節や細胞障害性を担う.
 これらの白血球は微生物の種類や感染後の時期によって,それぞれの役割を担っており,また互いに緊密に協力しあって,微生物による感染から生体を守っている.

検査法の基礎検討のしかた 臨床化学検査・4

回収試験法と干渉物質の影響試験法

著者: 飯塚儀明 ,   桑克彦

ページ範囲:P.356 - P.360

 測定試薬キットのユーザーでの基礎検討は,メーカーでの基礎特性データを実践的に確認することである.ここでは回収試験法と干渉物質の影響試験法について示す.

ラボクイズ

問題:尿沈渣

ページ範囲:P.344 - P.344

3月号の解答と解説

ページ範囲:P.345 - P.345

オピニオン

データによりいっそうの注意を

著者: 内村英正

ページ範囲:P.316 - P.316

 検査データを扱う私たちは精度管理という大変重要な責任を負わされているわけであるが,得られたデータの分析がいかに大切かという実例を示したい.
 今から35年ほど前シカゴ大学の小児科医Refetoff博士は甲状腺機能低下症あるいは甲状腺機能正常を思わせる1家系で甲状腺機能検査としてPBI(proteinbound iodine,甲状腺ホルモン濃度を示すもの)が異常に高値を示すという奇妙な成績を得た.彼はbutanol extractable iodine(BEI),131Iレジン摂取率,血清蛋白,コレステロール分析などから確かに得られたPBI,BEIなどは説明困難な高値を示していることが明らかとなり,どのような病態が考えられるか想像をめぐらして得た結論は,特に甲状腺機能低下症を強く疑わせたこの家族の2人の兄妹の甲状腺ホルモンの標的細胞のホルモン受容体に異常があって甲状腺ホルモンに反応しないのだと考えた.いわゆる甲状腺ホルモン不応症(Refetoff症候群)の最初の報告例である.当時そのような病態があるとは想像できなかった時代であり,またホルモン受容体遺伝子解析なども夢のような話であったに違いなかったと思われる.

けんさアラカルト

エバネセント波を用いた新しい免疫測定法

著者: 武井仁

ページ範囲:P.328 - P.328

 “エバネセント波?”この言葉を知っている読者は物理学,特に量子力学に興味のある方だろう.エバネセント波とは光反射の特性現象であり,この光の特性を測定系に利用した新しい免疫測定法をここに紹介する.
 免疫測定法の原理はサンドイッチ法による蛍光免疫測定(FIA)法であり,従来から用いられている測定法の1つであるが,蛍光検出の際にエバネセント波を利用しているというのが大きな特徴である.この測定系における蛍光反応は図に示す以下のような原理に基づいている1〜3)

トピックス

食物アレルギーのメカニズム

著者: 中嶋はるよ ,   上野川修一

ページ範囲:P.372 - P.373

はじめに
 われわれはいろいろな食物を摂取する.食物を摂取する重要な目的は,主にそれらを栄養分として体内に取り入れ,生命活動を維持することにある.しかし,少し視点を変えてみると,食物を摂取することは,われわれにとっては,われわれ自己を構成する成分とは異なる外界のもの(異物,抗原)を取り入れ,それらを自分の利用しやすい形へと同化する行為にほかならない.食物はわれわれにとって異物であるので,体内にはそれらを支障なく生体に取り入れるために,食物に対しても生体防御機構を発達させている.食物アレルギーは,これらの機構が有効に機能しないがゆえに起こる疾患である.そこで,本稿ではまず,食物に対する生体防御機構を述べ,さらに現在まで示された食物アレルギーのメカニズムについて概説する.

GTPシクロヒドロラーゼIの遺伝子異常

著者: 一瀬宏 ,   永津俊治

ページ範囲:P.373 - P.374

グロブリン GTPシクロヒドロラーゼI(GTP cyclohydrolaseI,EC 3.5.4.16,GCHは,GTP+2H2O=formate+2-amino-4-hydroxy-6-(erythro-1,2,3-trihydroxypropyl)-dihydroneopterin triphosphate(D-erythro 7,8-dihydroneopterin triphosphate,NH2P3)の反応を触媒する加水分解酵素で,生理活性プテリジンのテトラヒドロビオプテリン〔(6R)-L-erythro-5,6,7,8-tetrahydrobiopterin,BH 4〕のGTPからの生合成の第一律速酵素である.

抗TNFα抗体を用いた慢性関節リウマチ(RA)の治療

著者: 佐伯行彦

ページ範囲:P.374 - P.376

 慢性関節リウマチ(rheumatoid arthritis;RA)は,代表的な全身性の慢性炎症性疾患であり,骨破壊性の多関節炎により重度の運動機能障害をきたすことを特徴とする.しかも,その高い有病率のため臨床上非常に重要な疾患である.しかしながら,その病因はまだ明らかにされておらず,そのため,これまで病因や発症機序を踏まえた根本的な治療法は確立されていない.
 最近,免疫学の進歩に伴い,RAの発症機構,病態を分子/細胞レベルで理解することが可能になってきた.つまり,RAの発症は原因となるT細胞(pathogenic T細胞)の活性化に始まる.なんらかの引き金(レトロウイルスなどの感染の関与が示唆されている)により,本来,免疫学的寛容状態にあるpathogenicT細胞が活性化される.活性化されたpathogenic T細胞は,血流に乗って,接着分子を介して,標的組織である関節組織へ遊走する.関節組織へ到達したpathogenic T細胞は,局所に存在する自己抗原により再活性化され,増殖するとともにサイトカインを産生し,エフェクター細胞(滑膜細胞,B細胞など)を活性化させる.そして,最終的には滑膜細胞の増殖による機械的な作用(パンヌス形成)や,それらの細胞から産生される種々のサイトカインにより軟骨や骨を形成する組織/細胞が傷害され,関節の破壊が生じる.

わが国で開発されたA型肝炎ワクチン

著者: 戸塚敦子 ,   森次保雄

ページ範囲:P.376 - P.378

 A型肝炎は経口感染性のウイルス肝炎である.潜伏期間は2〜4週であり,発熱と倦怠感を初発症状として発症し,1〜2か月の経過の後に回復する.回復後に血清トランスアミナーゼ値が軽度に再上昇する例があるが,短期間で正常化する.A型肝炎は慢性化しない.まれに腎障害を合併することがあり,ごくまれに劇症化する.感染の約1週後からA型肝炎ウイルス(HAV)が大便中に排泄される.ウイルス排泄は3〜5週間継続し,血液中にも微量出現する.トランスアミナーゼの上昇時にIgMクラスの抗HAV抗体が出現し,約3か月間持続する.IgM抗体に少し遅れてIgG抗体とIgA抗体が出現する.IgA抗体は1〜2年後に消失するがIgG抗体は長期間持続する.A型肝炎の確定診断はIgM抗体の検出による.
 A型肝炎は生活環境に影響されやすい疾患である.衛生環境の悪い地域は発生率が高い.上下水道などの整備により急速に減少し,周期的流行が発生するようになる.衛生状態がさらに改善されると流行がやみ,散発的発生になる.輸血後のA型肝炎は極めてまれであるが,最近,ヨーロッパにおいて第8因子製剤による感染事故が発生した.

全身性炎症反応症候群(SIRS)とサイトカイン

著者: 黒川浩 ,   奈良信雄

ページ範囲:P.378 - P.379

はじめに
 生体に侵襲が加わると,これに対する応答反応として炎症反応が惹起される.侵襲刺激には,感染症,手術,外傷,熱傷,膵炎などさまざまなものがあるが,これらの刺激に対して惹起される一連の炎症反応を,1つの症候群として包括的にとらえる概念が近年提唱された.本稿では,この症候群(全身性炎症反応症候群)の概念と,その病態におけるサイトカインの作用・役割について概説する.

狭窄音感知システム

著者: 松本博志 ,   岩本健吾 ,   千葉真

ページ範囲:P.380 - P.381

はじめに
 生体が発している物理信号で外部から感知できる信号には電気信号,磁気信号,機械信号がある.これらの生体信号は生体内の機構が化学的エネルギーの供給を受けて作動することによって生じる物理量で,同時発生的である.例えば心電図は心臓の筋肉の機械的収縮弛緩に伴う電気信号であり,同時に電位変化に伴う磁場の変化が心磁図を生成する.これらの生体信号の感知は信号の特徴に合致した感知システムで容易に感知できるかどうかにによる.筋電図も筋肉の機械的動きに伴う電気信号を記録したものであるが,筋肉の動きを振動として筋音図として記録した歴史がある.現在でも筋肉の振動を機械的信号として記録する表面筋電(筋音)図がある.機械信号には筋肉の微小な機械振動信号などのほかに生体内の管腔臓器を流れる流体の振動信号がある.心音がこれに当たる.心臓,血管などの管腔臓器にあっては心臓弁,血管壁の形態異常によって中を流れる流体の流線異常が余分な振動を起こし,音響振動として感知できる.心臓弁膜症,頸動脈狭窄,大腿動脈狭窄などで異常音響振動が聴診器,触診などで容易に聴取されることはよく知られたことである.ここではわれわれが開発1,2)を進めている冠状動脈狭窄雑音の感知システムを中心に述べる.

けんさ質問箱

Q 肝腫大の評価

著者: 森田勇一 ,   遠田栄一 ,  

ページ範囲:P.383 - P.384

 超音波検査を始めてまだ間もないのですが,肝腫大の評価のしかたがよくわかりません(特に右葉のほうが).具体的な説明をお願いします.

Q CPPD結晶

著者: 石田剛 ,  

ページ範囲:P.385 - P.386

 結晶誘発性滑膜炎を引き起こすものとして知られている尿酸ナトリウムおよびピロリン酸カルシウムの鑑別診断に簡便で非常に有効な結晶検査法として鋭敏色偏光装置を用いる方法がありますが,先日整形外科の先生より「感染性関節炎を疑い緊急手術をする中には偽痛風であることが多いのではないか.CPPD結晶をしっかり検出してほしい」と言われました.そこで質問ですが,①偽痛風と感染性関節炎が共存することはありますか,②CPPD結晶とMSU結晶の違いは本に書いてあるのですが,CPPD結晶と誤りやすいその他の結晶はありますか,③検出するのにトレーニングを要しますか(鋭敏色偏光装置を取り付けないと検出度は下がりますか).

今月の表紙

細胞周期解析法

著者: 井上健 ,   巽典之

ページ範囲:P.327 - P.327

 細胞分裂周期はG0-G1-M-G2-と回転していく.その結果,染色体分裂,そして収縮輪が切れ込み細胞分裂が生ずる.この一連の過程はやはり細胞運動の表現型の1つであるとされる.臨床検査室においてこの細胞周期観察は白血病を含む各種癌や血液幹細胞の病態解析に多くの情報を与えてくれる.
 図aは赤芽球の核分裂像,すなわち細胞周期上M期のメイ・ギムザ像を例示している.細胞分裂M期像は無染色ないし染色標本観察で容易に判定できる.図bはRS(nucleolar organizer resion)でribosomal DNA(rDNA)のループ形成構造部の名称である.その関連蛋白を染色したのがこの像であり,細胞周期上S期の観察に適している.円形核を持つ赤芽球と考えられる細胞には多数の黒色銀顆粒(AgNOs)を認めるものの,右上および右下の分葉核好中球にはごく小さなもの1個認めるのみである.この顆粒はRNAポリメラーゼIによるrDNA転写活性の指標と考えられる.

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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