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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術25巻10号

1997年09月発行

雑誌目次

病気のはなし

IgA腎症

著者: 富野康日己

ページ範囲:P.806 - P.811

新しい知見
 最近,糸球体メサンギウム細胞の表面にはIgAを結合するレセプター(Fcαレセプター)の存在することが明らかにされた.γ鎖は,α鎖と会合することで情報を細胞の内部へ伝達するうえで重要である.この系でIgA腎症の発症を考えると,Fcαレセプターに沈着するものは必ずしも免疫複合体である必要はなく,二量体もしくは多量体のIgAの結合・沈着によっても炎症は起こると考えられる.これは大変興味深い知見である.
 なお,免疫複合体疾患としてのIgA腎症には以下の特徴がある.

技術講座 生化学

血清ペプシノゲンの測定

著者: 松原康朗 ,   矢作直久 ,   一瀬雅夫 ,   三木一正

ページ範囲:P.813 - P.817

新しい知見
 ペプシノゲンの検査薬としては,RIA法検査薬(ペプシノゲンⅠ,Ⅱ・リアビーズ;ダイナボット)のみが市販されていたが,新たに酵素免疫測定法(EIA)検査薬グラオザイム〔N〕ペプシノーゲンⅠおよびグラオザイム〔N〕ペプシノーゲンⅡ(和光)が市販された.RIA法検査薬と同様,サンドイッチ法に基づいており,全自動酵素免疫測定器OLYDAS-120(オリンパス)用の専用試薬である.教室の検討では,本検査薬とRIA法検査薬の相関性は,相関係数,相関の傾きともに良好であった.

膵リパーゼ測定法

著者: 宇治義則 ,   岡部紘明

ページ範囲:P.819 - P.824

新しい知見
 特に新しい知見はないが,本酵素については膵に特異的な酵素であるにもかかわらず,歴史的に高感度,高精度の測定法の開発が遅れ,膵機能診断のマーカーとしてはあまり重要視されなかった.しかし,近年,合成基質比色法・共役酵素反応系を用いた高感度分析法が開発されてきており,自動分析装置への導入も可能であり,今後,膵疾患の補助診断法としていっそうの普及・利用が望まれる.

生理

頻度の多い異常腹部エコー

著者: 北村次男

ページ範囲:P.825 - P.830

新しい知見
 腹部エコー領域ではすでに旧聞に属するカラードプラ,最近実用化されたパワードプラ,一部の装置で搭載され始めた三次元像,さらには近日わが国でも認可が期待されている経静脈超音波造影剤の登場など,枚挙にいとまがないほどの話題で賑わっている.それぞれの研究面での報告,実際の臨床上での効用についての報告も多い.これらの新手法の中でも最古のカラードプラに関して,実際にどのように活用すべきかというコンセンサスをまとめるべく,そのシンポジウムがようやく本年8月2日の日本超音波医学会関西地方会で取り上げられたという状況である.
 これらの新手法のいずれについても,従来の白黒のいわゆる単純Bモードエコーが十分に自分のものにできてからでないと,そのよさを活用できないことはいうまでもない.

微生物

レジオネラの環境調査

著者: 古畑勝則

ページ範囲:P.833 - P.839

新しい知見
 最近,レジオネラというあまり聞き慣れない細菌の名前を聞く機会が多くなった.
 1994年8月,東京都内で発生した熱性疾患がレジオネラによるポンティアック熱であることが判明し,罹患者45名の集団発生はわが国最大のものであった.また,1996年7月,慶應義塾大学病院においてレジオネラによる院内感染で新生児3名が肺炎を起こし,そのうち女児1名が死亡するという残念な事態が報道された.さらに,同年暮れには循環式浴槽水,いわゆる24時間風呂におけるレジオネラ汚染が指摘され,大きな社会問題となった.こうした事例を機に,レジオネラに対する関心が一段と高まったことは事実である.

血液

尿中単核球の表面マーカー染色

著者: 宿谷賢一 ,   難波満喜 ,   中竹俊彦

ページ範囲:P.841 - P.846

新しい知見
 尿沈渣は腎および尿路系疾患のスクリーニングとして古くから施行されてきた検査方法である.成分の観察はrisk free renal biopsyなどとも呼ばれ,腎生検に匹敵する情報が得られる.腎生検は患者リスクが大きいことが問題となる.
 尿沈渣をフローサイトメトリーにより詳細に解析する検査法が検討されつつある.フローサイトメーターによる検査は血液細胞のみではなく,すでに組織・髄液・骨髄・体腔液・気管支肺胞洗浄液などにある細胞の解析に用いられている.尿沈渣への適用については,現在,好中球の殺菌能の測定やリンパ球の表面マーカーの解析が行われているが,臨床的な知見を含め,蓄積中の段階である.しかしながら,フローサイトメー夕ーがもたらす解析結果は種々の検査材料ですでに証明されており,本法による尿中細胞の解析が腎および尿路系疾患の治療効果,病態の把握に利用されることが期待される.

日常染色法ガイダンス 結合組織の日常染色—好銀線維の染色法

NF—渡辺変法

著者: 布施恒和

ページ範囲:P.851 - P.855

目的
 好銀染色は,結合組織の線維成分の主体をなす膠原線維,細網線維を染め出すのが目的である.特に細網線維は一般的に格子状線維,好銀線維と呼ばれ,脾,肝,リンパ節などの網内系に多く存在している.
 この線維の走行状態は未分化な悪性腫瘍の鑑別(上皮性か,非上皮性か),間質性肺炎,脾炎,肝炎における線維化の進行状態の把握に極めて重要であり,日常の病理検査に不可欠な染色法となっている.

中枢神経系の日常染色—ホルツァーのグリア線維染色法

ホルツァー染色

著者: 髙椋充

ページ範囲:P.856 - P.858

目的
 中枢神経系(central nervous system;CNS)になんらかの破壊が起こると,その修復は間葉系と星状膠細胞によって行われるが,CNSでは前者は乏しいので,後者による修復が重要となる.膠細胞性修復過程において膠線維は星状膠細胞によって産出され,破壊された組織を補う.正常でも年齢が進むにつれ,脳の部位によってみられるが,種々の病的機転,特に慢性疾患の場合,膠線維の増生(fibrous gliosis)が強く起こる.ホルツァー(Holzer)染色は,このような反応性に増えた星状膠細胞の突起膠線維を鮮やかに染め,病巣を明瞭に示すのが特徴である.

検査報告書の書きかた 内分泌検査・2

副腎ホルモンの検査

著者: 中井利昭

ページ範囲:P.859 - P.862

クッシング症候群
1.クッシング症候群とは
 副腎皮質からのコルチゾールの慢性的分泌過剰状態により特有な症状を呈するものをクッシング(Cushing)症候群という.
 病因的には,①下垂体ACTH(adrenocorticotropic hormone;副腎皮質刺激ホルモン)過剰によるもの,いわゆる“クッシング病”,②副腎皮質腫瘍(腺腫や癌)によるクッシング症候群,③異所性ACTH,またはCRH〔corticotropin(ACTH)-releasing hormone;副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン〕産生腫瘍,④原発性副腎過形成または異形成によるもの,に分けられる.

検査データを考える

心室内変行伝導心電図

著者: 梶田潤一郎 ,   渡辺一郎

ページ範囲:P.863 - P.865

はじめに
 心室内変行伝導とは,一般にはいつも正常QRS波(心電図の基本的知識に関しては成書1)を参照のこと)を示す人の上室性QRS波が,一過性に心室伝導異常波形を示す原因となる機能的心室内伝導障害を意味する2).心室内変行伝導は,その連結期が先行R-R間隔に比して,①短縮しているもの(短周期変行伝導),②延長しているもの(長周期変行伝導),③不変のもの,あるいは以上の混合型に分類される.
 本稿では,このうち最も多くみられる①について,特に臨床上重要な心室性期外収縮との鑑別を中心に述べる.

検査法の基礎検討のしかた 微生物検査・1

塗抹染色検査,培養検査

著者: 木下承晧

ページ範囲:P.867 - P.870

はじめに
 微生物検査での染色液や培地の導入には種々の検討を必要とする.これらの評価法については,一部で品質基準法があるが,多くは定まった評価法が確立されていないため,ルーチン検査と同時に並行して行うべきである.しかし,期間が長期になることや検査材料が入手できないことなど,十分に対応できない場合が多い.そのため,一部は基準菌株や保存菌株に負うところが多くなる.保存菌株は変異の可能性が高いため,典型的な特徴を維持した菌株を用いるべきである.検討には製造者の成績および文献を参考にしたうえで,実用性,安定性,信頼性のほか,品質管理および精度管理を加味して行う.
 基準菌株:個々の分類群の代表で,表現型,性状など命名者により詳細に記述された永久保存菌名をいう.菌株の分与は公的な菌株保存機関で誰にでも行える.保存機関にはAmerican Type Culture Collection(ATCC),National Collection of Type Cultures(NCTC),理化学研究所内系統保存施設(Japan Collection of Microorganisms;JCM)などがある.

ラボクイズ

問題:頻脈性不整脈

ページ範囲:P.848 - P.848

8月号の解答と解説

ページ範囲:P.849 - P.849

オピニオン

臨床検査技師の道—この道は,責任を果たす喜び,臨床検査発展への道

著者: 鈴木節子

ページ範囲:P.812 - P.812

 10年ひと昔といいますが,学校教育を終えて臨床検査技師として社会に踏み出す年齢は,人生のふた昔を経過した時点ということになります.私事となりますが,一般,化学,細菌と回って血液検査室に配属されて2〜3年経った技師生活10年目ごろ,指導いただいている医師から「10年仕事を続けたら,何かのまとめができるはず」といわれました.心にズキンときましたが,反面,他人事のような気もしました.平均寿命いっぱい頑張れば7つもの何かができることになります.必要に迫られ,文献を探し回ったり,先人の門を叩いたり,整理しているうちに思わぬ展開ができて,有頂天になったりしているうちに何十年かが過ぎました.見回せば,似たような環境で,こつこつと働いている仲間がたくさんいます.臨床検査技師の多くは,検査のノウハウ(道具)をたくさん身につけていますが,具体的に人の眼に触れるような形にせず,当たり前のようにその道具を駆使しています.このことが,不幸にも,良き理解者のはずの身近な職種の方々にさえ「検体検査は誰でもできる仕事である」として開放業務で事足りるような錯覚を起こさせてしまう要因になっていると思います.ただし,厳しい国家試験は行われているのですが.
 臨床検査技師は,職務として個人・団体の両面でいかに細心の注意を注いでいるか,それが検査に極めて重要であることをことごとく文章化し,普遍化し,後輩にも社会にも示す必要があると思います.

けんさアラカルト

アポE表現型の測定法

著者: 多田正人

ページ範囲:P.818 - P.818

 アポリポ蛋白E(以下,アポE)は,299個のアミノ酸から成る分子量34,200の糖蛋白で,VLDL(very low density lipoprotein;超低比重リポ蛋白)やレムナントリポ蛋白,HDL(high density lipoprotein;高比重リポ蛋白)の主要アポ蛋白成分の一部を構成し,LDL(low density lipoprotein;低比重リポ蛋白)レセプターとLDLレセプター関連蛋白を介して,血清リボ蛋白の代謝とコレステロールのホメオスターシスに重要な役割を果たしている1).主要な合成臓器は肝臓で,2番目が脳神経組織であり,肝の1/3程度を合成しているとされる.そのため,アポEは脂質代謝以外にミエリンや軸索の伸長,維持,修復への関与も考えられている.
 アポEには遺伝的多形性(polymorphism)が知られており,3つの対立遺伝子ε2,ε3,ε4によりコードされたイソ蛋白(E2,E3,E4)が存在する.E3が野生型で,E2(Arg158→Cys),E4(Cys112→Arg)はone point mutationによって生じたもので,アポEの表現型にはE2/2,E2/3,E2/4,E3/3,E3/4,E4/4の6種類がある.また,この表現型の出現頻度には人種を問わずE3/3が最多であるが,欧米人と比較するとE2,E4の保持者の頻度は日本人と中国人で低い.

トピックス

癌の薬剤耐性機構

著者: 竹村譲 ,   小林広幸

ページ範囲:P.871 - P.874

はじめに
 1950年代に代表的な代謝拮抗性抗腫瘍剤メソトレキセートが開発されて以来,癌の化学療法は長足の進歩を遂げてきている.しかし,近年,抗癌剤の長期使用による癌細胞の薬剤耐性化の問題がクローズアップされるようになってきた.このように,抗癌剤の使用後に耐性が発現する場合を獲得薬剤耐性(acquired drug resistance)と呼び,それに対して初回治療時でも癌が薬剤に抵抗性を示す場合を自然耐性(natural drug resistance)と分けて呼んでいる.
 多剤耐性黄色ブドウ球菌(multidrug-resistant Staphylococcus anreus;MRSA)のように,癌においても1つの薬剤に耐性化すると,化学構造や作用機序のまったく異なる抗癌剤にも耐性を示す多剤耐性(multidrug resistance;MDR)現象が知られている.最近,分子レベルでの癌の薬剤耐性機序が解明されてきて,分子生物学的手法を用いた癌の薬剤耐性因子検出法が臨床検査として応用できる段階まできている.

プロテオグリカン

著者: 奈良佳治 ,   中垣茂男 ,   竹内純

ページ範囲:P.874 - P.877

はじめに
 プロテオグリカン(proteoglycan;PG)は,蛋白質(コア蛋白質)にグリコサミノグリカン(glycosaminoglycan;GAG)が共有結合した大きな糖蛋白複合体の総称である.GAGは脂質,蛋白質やペプチドを含まず,アミノ糖を含む多糖類であり,化学的にはヘキソサミン(aminosugar)とヘキスウロン酸(uronic acid)の繰り返し配列よりなる.そのネバネバした性状からムコ多糖(mucopolysaccharide)とも総称され,また硫酸基やカルボキシル基を有して高度に負に荷電しており,アルシアンブルーやトルイジンブルーなどの塩基性色素で染色されることから酸性ムコ多糖とも呼ばれてきた.ヘキソサミンにはグルコサミンとガラクトサミンが,ヘキスウロン酸にはグルクロン酸とイズロン酸があり,GAGはこれらの組み合わせと結合様式により分類され,ヒアルロン酸,コンドロイチン4硫酸,コンドロイチン6硫酸,デルマタン硫酸,ヘパラン硫酸,ヘパリン,ケラタン硫酸などが同定されている.このうち,ケラタン硫酸はグルコサミンとガラクトースの繰り返し二糖よりなる.ヒアルロン酸とヘパリンにはコア蛋白がなく,GAG鎖のみからなるとされている.

急性大動脈障害の平滑筋ミオシン重鎖による検査

著者: 鈴木亨 ,   矢崎義雄 ,   永井良三

ページ範囲:P.877 - P.878

はじめに
 急性の大動脈障害は致命的な合併症を併発する可能性があり,的確な早期診断と治療が必要である.急性の大動脈疾患としては,日常診療で遭遇する際,最も多くみるのは大動脈解離と大動脈瘤の破裂である.また,外傷の患者では外傷性大動脈破裂に,まれではあるものの,遭遇することがある.しかし,これらの急性の大動脈疾患の臨床症状は多彩であり,そのため急性の大動脈障害を疑わない場合,診断は極めて困難である.CT,MRI,血管造影,心臓超音波(特に経食道)などの画像診断法などの診断法や治療法の進歩が日進月歩である今日でも,見落とされたり,診断が遅れる症例が少なくない.
 筆者らは本課題に対し,心筋・骨格筋では発現していない平滑筋に特異的なミオシン重鎖に注目し,大動脈障害発症時に大動脈中膜の平滑筋細胞から血中に放出される平滑筋ミオシン重鎖のイムノアッセイを開発し,これを用いて迅速かつ簡便な急性の大動脈障害の血清診断法を確立した.
このような巨大分子の構成成分の大部分をGAG鎖が占めていること,優れた蛋白分解酵素インヒビターの開発が不十分であったことなどから,今から十数年前まではコア蛋白部分を無視して,糖鎖部分(GAG)の組成や合成活性に注目が集まり,生化学的・組織化学的には主としてGAGに関する研究が行われてきた.

多価不飽和脂肪酸とアレルギー

著者: 鳥居新平

ページ範囲:P.879 - P.882

■多価不飽和脂肪酸とは
 多価不飽和脂肪酸(polyunsaturated fatty acid;PUFA)とは,二重結合を2個以上持っている脂肪酸であり,必須脂肪酸といわれるリノール酸(linoleic acid;LA)とα-リノレン酸(alpha-linolenic acid;ALA)はこれに属する直鎖型の脂肪酸である.
 免疫や炎症を調節することにより,アレルギー性炎症にも関与していることが明らかにされているのはこの必須脂肪酸である.

各種体液の超微量CRP測定とその臨床病理学的意義

著者: 尾鼻康朗 ,   竹中清悟 ,   古田格

ページ範囲:P.882 - P.884

はじめに
 CRP(C-reactive protein;C反応性蛋白)は,主に炎症,腫瘍および組織破壊により血清中に出現する急性期反応性物質として日常検査に汎用されている.CRPの測定法としては,従来は毛細管内沈降法などの定性ないし半定量法が日常検査法として用いられてきたが,その後,免疫比濁法などの定量法が開発され,日常診療におけるCRPの占める役割はますます大きなものとなった.さらに近年では,超微量域のCRP測定法として,ラテックス近赤外線比濁法,enzyme immunoassay(EIA)法,enzyme-linked immunoadsorbent assay(ELISA)法,radioimmunoassay(RIA)法,およびcounting immunoassay(CIA)法などが考案された.それに伴い,従来mg/dlのレベルでしか測定できなかったCRPをng/mlの超微量レベルで測定することが可能となり,これまで不明確であった髄液,尿および穿刺液などの各種体液中の微量CRPを正確に測定することが可能となり,その臨床意義についての報告もされるようになってきた1,2)

けんさ質問箱

Q ALPのJSCC法における肝疾患と小腸性ALP(ALP-5)との関係

著者: 杉田収 ,   M.S.生

ページ範囲:P.885 - P.887

 ALPはJSCCの勧告により従来のDEA緩衝液からEAE緩衝液に変更になり,アイソザイム間の感度差がなくなりました.このため,従来は小腸由来のALPがほとんど測定されていませんでした.しかし,勧告法の採用により肝疾患で回帰式の予測値から高値側へずれる現象が出てきました.
 健常人,ドック検体によるDEA緩衝液(x)とEAE緩衝液(y)の相関回帰式はy=1.62x+41.74になりました.

Q 尿糖,尿蛋白が高値のときの尿比重検査での補正

著者: 島田勇 ,   K.F.生

ページ範囲:P.887 - P.888

 当院では尿の比重検査は屈折計法で行っています.尿糖,尿蛋白が高値のときは補正しなければなりませんが,教科書をみても具体的な補正のしかたが書かれておらず,補正ができません.簡単な補正のしかたと,尿糖,尿蛋白がどの程度の値のときに補正が必要になるのか教えてください.

今月の表紙

病原大腸菌O157

著者: 巽典之 ,   津田泉

ページ範囲:P.855 - P.855

 太陽の燦々と照りつける夏がくると,堺市で8,000人が感染した食中毒病原大腸菌O157事件を思い出す.筆者らの病院は堺市からわずか10km余りしか離れていないことや,堺市の臨床検査技師の方が筆者らの研究室で研究されておられることもあり,身近な問題であった.また,O157の診断と治療情報を本院医療情報部からインターネットに流してマスコミを騒がせたり,教室員の1人がカイワレ農園の環境調査に出向いたら,井戸水から真黄色な塩素反応がみられたとか,暫くの間はアレヤコレヤいろいろ大騒動が続いた.この辺の事情は臨床検査技師の方々なら十分見聞されているであろうが,流行期を迎えてO157感染症を再度復習していただくつもりで入院症例の提示を試みたしだいである.
 本症は,数日の潜伏期の後,発熱・腹痛・下痢,なかでもイチゴジュース様の便が排出されるのが特徴的である.その経過中に貧血,血小板減少,そして溶血によるLDHの上昇がみられる(図a).初期には静菌性抗生物質を投与するのはよいが,殺菌的抗生物質はベロ毒素の遊離を促すので適当でない,というのが大方のまとめであろう.臨床検査室として興味を持たれているのは,ベロ毒素産生菌の早期確認法と血小板数測定であろう.

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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