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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術25巻2号

1997年02月発行

雑誌目次

病気のはなし

アトピー性皮膚炎

著者: 佐々木りか子

ページ範囲:P.106 - P.111

新しい知見
 アトピー性皮膚炎の病態生理については,不明な点が数多く残されているが,現在のところ大きく分けると,アレルギー面と非アレルギー面に二分されると考えられている.ことに最近,非アレルギー面における原因として,角質のバリア機能障害に注目が集まっている.バリア機能障害とは,本来角層が持つべき皮膚の保護機能であるが,この役目を果たすには,角層の脂質量と水分量が正常域にあることが必須である.しかし,本疾患の患者は角質細胞内および角質細胞間の脂質量が低下しており,その原因として脂質合成に必要な酵素異常が指摘されている.

技術講座 生化学

フリーT3,フリーT4の測定法

著者: 内村英正

ページ範囲:P.113 - P.119

新しい知見
抗体標識法
 イムノアッセイによる遊離サイロキシンの測定法の問題点は総サイロキシンの0.03%という極めて微量であることと,検体血清中に含まれるサイロキシン結合蛋白による干渉をいかに防止するかである.
 この点に関する解決策として最近現れた測定法が抗体標識法である.原理としては競合法であり,一定量の標識抗体を固相化リガンドと検体中の遊離ホルモンが競合するシステムである.この系では固相として磁性微粒子を用いT4との競合リガンドとしてT3を用いている.T3を用いる理由は,T4に比較してTBGや抗T4抗体との結合親和性が弱いことで固相T3とTBGとの結合が避けられるが,T4との競合には影響しないことによる.

血清アミロイドAの測定法

著者: 杉田収 ,   武田宏子

ページ範囲:P.121 - P.126

新しい知見
 最近,栄研化学よりSAA測定用の汎用自動分析機用試薬(LZテスト“栄研”SAA)が開発され,臨床検査の現場での検討が進んでいる.本法の特徴はSAA専用機ではなく,通常の自動分析装置による通常の光学的測定法であることにある.
 本法はラテックス表面に結合させた抗SAA抗体と,試料のSAAとの抗原抗体反応により,抗原が架橋となってラテックス凝集塊を生する.その凝集反応を濁度として測定するものである.栄研化学より,日立7170用SAA測定マニュアルが提供されている.ほかの分析装置では東芝メディカルのTBA-80FR NEOによる山内らの報告(日本臨床検査自動化学会誌21:407,1996)がある.彼らの報告によれば,その方法での検出限界は約3μg/mlであり,SAA測定専用機との相関は,測定上限値の2,000μg/mlまで得られ,それとの相関係数は,r=0.997,回帰直線はy=-4.41+1.05xと良好である(x:LX-2500,y:TBA-80FR NEO).

微生物

消毒薬の分類と使用法

著者: 松原肇 ,   島田慈彦

ページ範囲:P.127 - P.133

新しい知見
院内感染防止対策加算
 1996年4月より,入院環境料に“院内感染防止対策加算”が算定可能となった.算定要件として,院内感染対策委員会の設置・定期的開催,感染情報レポートの作成,速乾式手洗い消毒薬の設置などがある.
 院内感染防止対策は,従来から各施設で行われてきたことであるが,診療報酬で認知されたことにより,よりいっそう推進することと思われる.このためにも,適切な消毒薬の選択と消毒方法を病院スタッフに周知徹底させていくことは重要である.

Clostridium difficile toxin Aの臨床的意義と検査法

著者: 加藤直樹 ,   加藤はる

ページ範囲:P.135 - P.141

新しい知見
 Clostridium difficileには,toxin A(エンテロトキシン)とtoxin B(サイトトキシン)の両者を産生する株があり,抗菌薬関連下痢症/腸炎あるいはさらに病状の進行した偽膜性腸炎の原因菌となる.これらの疾患は,抗菌薬を投与することにより腸内プローラを構成する多くの菌が減少あるいは死滅し,C. difficileが腸管内で異常増殖して毒素を産生することにより,発生するものと考えられる.診断には酵素抗体法により糞便内のtoxin Aを検出するか,糞便培養後,分離株の毒素産生性を検討する.この目的でpolymerase chain reactionを用いて毒素遺伝子を検出するのも便利である.

病理

骨髄組織検査

著者: 松谷章司

ページ範囲:P.143 - P.150

はじめに
 骨髄の組織学的検査には,①胸骨骨髄から採取される吸引骨髄,②腸骨骨髄生検の脱灰標本がある.骨髄の組織学的検索の目的は血液学的異常がある場合に診断目的で行われるほかに,すでに診断の確定している白血病や貧血などの確認や治療の評価,リンパ腫のステージング,転移腫瘍の確認と原発巣の推定,不明熱の原因検索などの目的でもなされる.組織学的検索の有利な点としては,cellularityの正確な評価,骨髄巨核球数の正確な算定,ヘモジデリン量の評価,肉芽腫(結核など)の検出と鑑別診断,骨髄間質の病変,血管病変,アミロイドなどの沈着性疾患あるいは代謝疾患,転移性病変の検出と原発巣の推定などが挙げられる.このように骨髄組織診断が幅広い全身疾患に精通している病理医によってなされることは有意義である.
 一方,組織学の不利な点としては個々の造血細胞の細胞学的な鑑別が十分できないこと,各造血細胞成分の量的な把握が容易ではないことなどが挙げられる.診断提出まで時間がかかることも,大きな欠点といわざるをえない.初診の白血病症例では病理医が報告をする時点では塗抹標本から診断がすでについていることもあるし,皮肉なことに治療がなされていることすらある.

生理

心房中隔欠損症の画像診断

著者: 田畑智継 ,   山田博胤 ,   大木崇

ページ範囲:P.151 - P.158

新しい知見
 従来の経胸壁心エコー法では,患者の体型や欠損孔の位置により,本症の診断およびその重症度を評価することが困難な場合に遭遇することがある.近年,経食道心エコー法の普及により,その診断精度の向上のみならず短絡血流動態の詳細な把握が可能となった.また,コントラスト法やカラードプラ法を併用することにより,臨床上重要である右→左短絡血流の有無が非観血的かつ容易に確認できるようになったことは意義のあることである.

検査報告書の書きかた 生化学検査・2

高脂血症診療における臨床検査の役割

著者: 岡田正彦

ページ範囲:P.174 - P.176

 わが国における死亡原因の約1/3を血管障害が占めている.その血管障害にもさまざまな病態があるが,主要な原因である高血圧,糖尿病,高脂血症は,いずれも臨床検査が診断と予防に大きな役割を果たしている.
 本稿では,まず高脂血症の治療と予防についての最近の考えかたを示し,診療の場で検査がどのように使われているのかを述べる.そして,検査報告書に求められる要件を考え,最後に高脂血症の検査に関する今後の展望についても触れてみたい.

検査データを考える

ガス交換障害

著者: 高橋識至 ,   一ノ瀬正和

ページ範囲:P.177 - P.181

はじめに
 肺の主な役割は,吸入した空気から酸素(O2)を血液中に取り込み,一方では血液中の過剰な炭酸ガス(CO2)を外気に放出することにある.このようにして取り込まれたO2は身体すべての組織に分配され,細胞内に取り込まれた後,エネルギー代謝に使われ,代謝の結果生じた炭酸ガスは細胞外に排出される.この過程をガス交換,または呼吸という.前者の肺を介する外気と血液との間のガス交換を外呼吸,後者の細胞レベルでのガス交換を内呼吸というが,本稿では外呼吸,すなわち肺のガス交換についてのみ述べる.

検査法の基礎検討のしかた 血液検査・1

総論:凝固・線溶検査の検討のポイントとルーチン化の留意点

著者: 鈴木節子

ページ範囲:P.183 - P.186

 検査法の基礎検討は,臨床検査として医療に役だたせるのを目的に行うものであるから,基本的な手順はデミング・サークル(PDCA)の原理に基づき,目的達成に向けて“P:PLAN・計画,D:DO・実施,C:CHECK・観察,A:ACTION・修正”を繰り返し行い,より目的に沿うものを構築または提言することであると考える(図).
 検討内容は目的により2つに分けられる.1つは研究機関などにおける検査方法の開発を目的とする場合で,もっぱら測定のプロセスを追求する測定方法の構築作業である.もう1つは医療機関などにおいて既存の検査方法の導入を目的とする場合であり,施設における医療活動への適用性の確認,適用方法の構築作業である.前者と後者の大きな違いは,前者では,医療へのニーズに適合することが開発条件に加味されることが望ましいが,まず測定できるようにすることを優先し,次の工程で開発されたものが医療に有効か否かを検討するサークルであり,後者は,医療で有効に役だたせるために,どう利用し,応用するかを検討するサークルである.ことに後者は,医療のニーズを理解している臨床検査技師の技能の発揮どころである.

ラボクイズ

問題:胸痛と心電図異常

ページ範囲:P.172 - P.172

1月号の解答と解説

ページ範囲:P.173 - P.173

オピニオン

検査と評価

著者: 白土邦男

ページ範囲:P.112 - P.112

 診断と治療という言葉があるように,医療の分野では両者は密接な関係にある.診断がなされた後に治療が選択されるわけであるが,その治療が適切で,病状の改善が得られることも診断の正しさを裏づける.
 診断には病名だけでなく,その重症度,病期,病因も含まれる.診断のためにはいろいろな臨床検査が行われるが,診断は病歴の聴取から始まるのが本筋である.この病歴は医師の経験と知識によってその価値がいかようにも決まる.情報豊かな病歴と内容に乏しい病歴がある.優れた病歴は値千金である.

けんさアラカルト

血中遊離型PSAの測定法

著者: 石橋みどり

ページ範囲:P.120 - P.120

 前立腺特異抗原(prostate specific antigen;PSA)は1979年,Wang MCら1)によって精漿より分離精製された糖蛋白で,前立腺上皮細胞から分泌されるセリンプロテアーゼである.前立腺上皮細胞で生成されたPSAはfree型であるが,血清中のPSAはプロテアーゼインヒビターであるα1-アンチキモトリプシン(α1-antichymotrypsin;ACT)と結合したcomplex型とPSA単独のfree型の2つの存在様式が知られており,その比率はおよそ9:1である.α2-マクログロブリン(α2-macroglobulin)との結合型も存在するが,これは免疫学的測定によって検出することはできない.PSAは前立腺疾患で血中濃度が上昇してくることから,1980年代より前立腺性酸性ホスファターゼ(PAP)とともに前立腺癌(CaP)のマーカーとして測定されるようになった.現在では最も特異性の高いCaPのマーカーとして広く利用されている.しかし,PSAは前立腺肥大症(BPH)を代表とする良性疾患でも血中濃度が上昇する.特に20ng/ml以下の濃度域ではBPHとCaPのオーバーラップが大きく,その鑑別は困難である.total PSAの単独測定よりさらにCaPの測定効率を上げるため,freeまたはcomplex PSAを測定し,totalに対する比率を求める試みが近年盛んに行われている.

トピックス

血糖自己測定

著者: 河盛隆造 ,   望月健太郎

ページ範囲:P.159 - P.160

はじめに
 糖尿病とは主に遺伝,種々の環境因子により惹起されたインスリン分泌不全,インスリン作用不全を主な病態とする疾患で,その多彩な原因が近年徐々に明らかにされつつある.しかし,日常診療の場においてはその病因の同定は必ずしも容易ではなく,臨床的な特徴によっていくつかのタイプに分けている.主に①比較的急激に高血糖を呈し,インスリン分泌がほとんどないため治療にインスリンを必要とするタイプのインスリン依存型糖尿病(insulin-dependent diabetes mellitus;IDDM),②中年に発症のピークを持ち,無症状で徐々に高血糖となることが多いインスリン非依存型糖尿病(noninsulin-dependent diabetes mellitus;NIDDM)がある.
 近年,わが国における糖尿病患者の急激な増加が問題となっている.最近の疫学調査では患者数は600万人と考えられる.このうちの99%以上がNIDDMである.NIDDMの発症には肥満,過食,運動不足といった環境因子の影響が大きく,NIDDM患者の増加は日本人の食生活,生活様式の変化がもたらした結果とも考えられる.

化学物質過敏症に対する検査

著者: 難波龍人

ページ範囲:P.160 - P.163

 微量の化学物質に過敏に反応し,多彩な症状を呈する化学物質過敏症という疾患がある.最近,複数のマスコミが取り上げたため,にわかに脚光を浴びているが,本邦では5年ほど前に紹介されたばかりである.しかし,欧米では20年ほど前より1つの疾患概念として扱われてきており,現在ではテレビドラマや映画の中で登場人物たちが自然に会話の中で触れるぐらいに化学物質過敏症は一般の中にも定着している1,2)
 化学物質過敏症は,少量の物質に対して過敏に反応するという点ではアレルギー性疾患に共通するところがあり,また物質が蓄積し慢性的な症状を呈する点では中毒性疾患とも相通ずる.両疾患群の特徴を兼ね備えた疾患といえる.原因物質は,われわれの通常の日常生活で出会うほとんどの物質がなりうる.床下にまいた白蟻駆除剤や蚊取り線香,防ダニグッズなどの殺虫剤,建築材料などに含まれる有機溶剤や可塑剤,接着剤,その他,芳香剤,漂白剤,洗剤,食品添加物,タバコ煙,化粧品など挙げていくときりがない.さらに食物,ダニ,花粉,動物の毛などといったアレルゲンとして働く物質も,化学物質過敏症の原因物質となりうる(表1).

高尿酸血症の基準値

著者: 中島弘 ,   松澤佑次

ページ範囲:P.163 - P.165

■高尿酸血症
 最近,食生活が欧米化し,高脂肪・高カロリー食とアルコール消費の増加が目立つ.これに伴い,若年から中高年の広い年齢層にわたって高脂血症,肥満,糖尿病(耐糖能障害)が増加している.これらの疾患群は,いわゆる成人病に属するが,発症年齢の若年化や食事・運動の影響まで考えると“ライフスタイル病”と呼ぶのが適切かもしれない.
 さて,このような病態はまた血清尿酸値を上昇させることが知られ,いわゆる“無症候性高尿酸血症”を示す患者数もまた増加している1).他方,高尿酸血症と痛風は同義語のように扱われる傾向にあるが,表1に示すように,他の疾患や病態から二次的に発生する高尿酸血症も多い2)

臨床検査におけるメタアナリシス

著者: 西信雄

ページ範囲:P.165 - P.167

はじめに
 メタアナリシスとは,“超越した”という意味のギリシャ語の接頭辞“meta”を用いた造語で,もとの分析を超越した分析,さしずめ“超”分析法といったものである.単なる統計学的手法と考えられがちだが,ある課題に関する過去の研究を系統的に収集し,それらの質的評価,数量的合成を行う研究手法である1,2)
 臨床検査の分野でも応用されてきているが3),そこでも統計学的に診断の精度を推定するだけではなく,もとの研究の患者や検査の特性,あるいは研究手法がその推定値に対していかに影響しているかを明らかにし,今後の研究の方向性を示してこそ意義がある4)

ペニシリン耐性肺炎球菌の病原性

著者: 玉田貞雄 ,   渡邉信介

ページ範囲:P.167 - P.170

 肺炎球菌はグラム陽性球菌に属する菌で,人に対し肺炎,上気道感染症などの呼吸器感染,中耳炎などの耳鼻科感染や髄膜炎を起こす臨床上重要な菌である.また以前より耐性化が問題とされていた同じグラム陽性球菌であるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)が,悪性腫瘍や化学療法により免疫機能の低下した宿主や基礎疾患を有する宿主に限り主に病院内感染として発症するのに対し,肺炎球菌では免疫機能が正常な人に対しても病院外感染として発症させる強い病原性を有する.またMRSAでは,MRSA感染症そのもので死亡することはバンコマイシンなどが使用可能な現在ではまれであり,基礎疾患の悪化や,合併症などがその予後を左右する重要な因子である.他方,肺炎球菌では基礎疾患に関係なく,肺炎球菌感染症自体で死亡する劇症感染症もまれでなく,その病原性は極めて高い.
 近年,種々の病原菌の薬剤に対する感受性の低下および耐性が話題となっているが,薬剤の菌に対する感受性は,一般に培地上でその菌の発育を阻止できる最小の抗菌薬濃度,すなわち最小発育阻止濃度(minimal inhibitory concentration;MIC)によって評価され,耐性の基準は病原性,薬剤の特性に応じて薬剤ごとに決められている.

髄液中タウ蛋白—アルツハイマー病診断の試み

著者: 石井一弘 ,   森啓

ページ範囲:P.170 - P.171

はじめに
 痴呆をきたす疾患の大部分は,脳血管性痴呆とアルツハイマー病(アルツハイマー型老年痴呆も含む)の2つで占められている.近年,脳血管性痴呆は血圧管理や治療の進歩により,ある程度予防可能となってきたが,アルツハイマー病(Alzheimer disease;AD)はいまだに原因が明らかでなく,したがって治療ならびに予防法も確立されていない.また,ADを客観的にしかも確実に診断できる生化学的マーカーはいまだ存在しない.その生前診断は臨床診断基準に従い,コンピュータ断層撮影(CT),核磁気共鳴画像(MRI)やポジトロン断層撮影(PET)などの画像所見を組み合わせて総合的に診断しているのが実状である.さらに痴呆を伴う他の変性疾患との鑑別が困難な場合も多く,剖検脳において,ADの病理学的所見である異常蓄積物の老人斑(球状のしみ)や神経原線維変化(糸くず状),神経細胞数の減少などが確認されて,最終的にADと診断される.最近,ADの臨床的診断マーカーとなりうる酵素抗体法(enzyme linked immunosorbent assay;ELISA)のサンドイッチ法による髄液中タウ蛋白定量法が確立され,ADの補助診断として注目されている.

けんさ質問箱

Q ヘリコバクター・ピロリの血清診断

著者: 久保田利博 ,   藤岡利生 ,  

ページ範囲:P.187 - P.188

 現在,ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pyroli;Hp)の血清診断キットはいずれもHpに対するIgG抗体を測定していますが,IgA抗体またはIgMと併用して測定するほうが特異性および治療効果の判定の面から有用性が高いように思われますが,あまり意味はないのでしょうか.また,唾液からのHp抗体検出法についてもご教示ください.

Q 純聴力検査の実施方法と正常値

著者: 大久保仁

ページ範囲:P.188 - P.189

 聴力検査の正しい方法をご教示ください.現在,ストレプトマイシン投与中の患者に毎日聴力検査を実施していますが,完全な防音室がないため,遮断カップを付けてマスキングを実施しています.年齢による正常値,評価法などについてもお教えください.

今月の表紙

髄外造血

著者: 巽典之 ,   鎌田貴子

ページ範囲:P.141 - P.141

 昨夏,恒例の東南アジア地区への調査研究に出かけた.調査隊での話題は「バナナに種がある?」かどうかであった.もちろん私は種がないほうに賭けた.あるほうに賭けた連中は大変な努力をした後,ニコニコしながら小振りの2種のバナナをぶら下げて帰ってきた.食べてみるとうまくもない果肉に種がぎっしり.2つのバナナの種は色と形がずいぶんと違っていたのもまた不思議.
 さて,今回はいささかどぎつい写真とおしかりを受けそうだが,わが国ではほとんど見ることのできない“髄外造血の典型例”であって,タイ国でのサラセミア症患者から集めた貴重な症例ばかりである.図aは男児の巨大肝脾腫であり,肝臓と脾臓での造血が亢進した結果である.図bは下方から出ている手が重症貧血のもので,うっ血・心不全・頻回輸血の結果,太鼓のバチ状変形と皮膚の色素沈着をきたしたものであり,上方から突き出ている正常対照と比較するとその状況がよく把握できる.図cはαサラセミアhydrops faetalis新生児の解剖像であり,うっ血変色した腸管上に結節状に腸管造血巣が観察される.図dは同じ新生児の頭蓋骨X線像であり,頭頂部に毛が立ったような骨変化が観察できる.異常造血により,骨形成障害が生じた結果である.

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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