icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

検査と技術25巻8号

1997年07月発行

雑誌目次

病気のはなし

骨髄異形成症候群

著者: 上田孝典 ,   浦崎芳正

ページ範囲:P.614 - P.621

新しい知見
 骨髄異形成症候群は多能性造血幹細胞の異常に起因し,無効造血を特徴とする症候群であり,一部は急性白血病に移行する,近年,その無効造血はアポトーシスによることが示唆されており,また血液細胞の増殖・分化の異常に一部N-ras,fms,p53などの癌関連遺伝子の関与も明らかとなった.いまだ確立された治療法はないが,G-CSFを筆頭に各種サイトカインの応用が試みられており,また原因療法としては骨髄移植が最も良好な成績をおさめている.

技術講座 生化学

PTHとPTHrPの測定

著者: 佐藤幹二

ページ範囲:P.623 - P.629

新しい知見
 原発性副甲状腺機能亢進症(PHP)の診断には,血中のカルシウムと生物活性のあるintact PTHを測定すれば十分である.しかし,intact PTHは極めて微量にしか血中に存在しておらず,数年前までは正確に測定できなかった.したがって,やむを得ずpg/mlのオーダーで存在する半減期の長いC-末端部のフラグメントを測定していたものである.特に慢性腎不全患者ではC-末端部のPTHフラグメントは著増しており,透析患者の副甲状腺機能を容易に把握できる.しかし,腎透析中の患者の骨代謝を詳細に検討してみると,透析患者のintact PTH濃度は正常範囲(20〜65pg/ml)よりも2〜4倍ほど高値(150〜250pg/ml)が望ましいことが判明している.したがって,最近では透析医の間でもintact PTHが好んで測定されるようになってきている.
 一方,悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症の診断は,血中のカルシウム,intact PTH,それにPTHrPを測定すれば大概の場合は診断できる.しかし,悪性腫瘍細胞はPTHrP以外の骨吸収促進因子を産生して高カルシウム血症を惹起することもあるので,病歴や他の臨床検査データも考慮して,慎重に鑑別診断することが重要である.

免疫

抗Jo-1抗体検出とその意義

著者: 竹村周平

ページ範囲:P.631 - P.636

新しい知見
 抗Jo-1抗体の対応抗原がヒスチジルtRNA合成酵素であることが判明して以来,アミノアシルtRNA合成酵素を対応抗原とする複数の自己抗体が発見された.抗Jo-1抗体は皮膚筋炎・多発性筋炎の疾患標識抗体として診断基準の一項目を占める.さらに他のアミノアシルtRNA合成酵素に対する自己抗体も含めて,臨床症状との関連性が解明されてきている.抗Jo-1抗体陽性例では高頻度に間質性肺病変,特に慢性肺線維症が認められる.
 病因と関連して,アミノアシルtRNA合成酵素とある種のウイルス(エプスタイン・バーウイルス,インフルエンザウイルス,アデノウイルスなど)とのアミノ酸配列の相同性が,また骨格筋蛋白質であるミオシン,トロポミオシンとの相同性が知られており,自己抗体の産生機序,病態形成を考えるうえで興味深い.

生理

カテーテルアブレーション

著者: 土信田伸夫 ,   鈴木文男

ページ範囲:P.637 - P.643

新しい知見
 カテーテルアブレーションのエネルギー源として高周波が広く普及しているが,その焼灼面積および深達度には限りがある.組織破壊力が少ない点は利点でもあるが,心筋梗塞後の心室頻拍などは不整脈発生源が心筋深部に存在する場合も多く,治療成績が上がっていないのが実情である.このため,他のエネルギー源としてレーザーやマイクロ波などを用いた動物実験による検討も行われている.

微生物

糞便内にみられる寄生虫類似物質の鑑別法

著者: 影井昇

ページ範囲:P.645 - P.654

新しい知見
 糞便中に見いだされる人体寄生虫卵は,寄生虫学の教科書に詳しく,それによって鑑別することができるが,人体寄生虫卵類似の物質については,それがあまりにも複雑多岐にわたるため,適当な教科書などはみられないのが現状である.したがって,本稿がその解決の手がかりに少しでも役だてばと考える.さらに近年における人畜共通の寄生虫病の多発に伴い,その診断には獣医学領域の病気にも精通していなければならないし,加えて家畜以外の動物の寄生虫についても考えをめぐらす必要があることを検査に携わる者は考えておくべきであろう.

一般

尿中良性異型細胞の見かた・考えかた

著者: 西国広 ,   藤利夫

ページ範囲:P.655 - P.663

新しい知見
 尿沈渣における上皮細胞分類には形態学的分類(円形上皮・紡錘形上皮など)と組織学的分類(移行上皮・扁平上皮など)があり,以前は形態学的分類が一般化されていた.しかし,超生体染色,例えばステルンハイマー・マルビン染色やステルンハイマー染色変法の普及により詳細な形態学的観察が可能となり,(社)日本臨床衛生検査技師会より尿沈渣の標準化を目的とした「尿沈渣検査法」が出版され(1991年),これをもとに日本臨床検査標準協議会(JCCLS)より尿沈渣標準法として指針提案(GP1-P2)が出された(1995年).
 標準法を目指した上皮細胞分類における異型細胞の取り扱いについては論議中であるが,的確な報告を出すには異型細胞をできるだけ“良性異型・悪性異型”に分けて判定を考慮することが,より価値のある尿沈渣情報を臨床サイドに提供することにつながる.

日常染色法ガイダンス 結合組織の日常染色—弾性線維の染色

エラスチカ・ワンギーソン染色

著者: 高田多津男

ページ範囲:P.665 - P.667

目的
 エラスチカ・ワンギーソン染色は,組織内における各種の結合組織,特に線維性結合組織である弾性線維成分と膠原線維成分を染め分ける染色法である.数ある結合組織染色の中でも,色合いの美しさの点で群を抜いている.ピクリン酸の黄色と酸性フクシンの赤色によるコントラストが優れた診断効果を発揮する.結合組織は身体の中で臓器あるいは細胞を支持し,その保存に重大な役割を担っているので,そのバランスが崩れているような状態のとき,例えば心筋梗塞における心筋の線維化などの症例では,その染色効果は抜群である.また,血管炎における弾性線維の状態や肺線維症における弾性線維と膠原線維の状態を鏡検し診断するに当たり,有用な染色法となる.

糖質の日常染色—単純多糖類(グリコーゲン)の染色

PAS反応

著者: 宮平良満 ,   岩井宗男 ,   宮本敬子 ,   岡部英俊

ページ範囲:P.668 - P.670

目的
 PAS反応(periodic acid-Schiff reaction)は,糖質を過ヨウ素酸で酸化して生じたアルデヒド基をシッフ(Schiff)試薬で赤紫色に呈色する反応で,多糖類を証明するうえで最も代表的な染色方法である.
 多糖類は通常,組成の違いから単純多糖類(グリコーゲン)と複合多糖類(粘液,アミロイド,核酸,糖脂質,その他)に分けられるが,組織および細胞診断学的にも多糖類を検出する目的で各種の染色法が利用されており,それぞれの染色方法に応じて陽性所見を示す多糖類の種類や色調も異なる.本稿では日常染色として主にグリコーゲン検出を目的として利用されているPAS反応について留意点も含めて記す.

検査報告書の書きかた 免疫検査

抗核抗体検査報告書の作成

著者: 塚本さなえ ,   佐々木毅

ページ範囲:P.675 - P.678

抗核抗体検査とは
 抗核抗体(antinuclear antibody;ANA)とは真核細胞の核内に含まれる多数の抗原性物質に対する自己抗体群を総称したものである.核抗原としてはDNA,RNA,DNA結合蛋白,RNA結合蛋白,DNAの複製,修復を担う酵素などが判明している.通常は固定された培養細胞の核に結合する自己抗体として蛍光抗体法により検出され,fluorescein ANA(FANA)とも称される.近年,核抽出物質あるいは膠原病と関連するリコンビナント核抗原群の混合物を用いたELISAも開発されている.

検査データを考える

異常ヘモグロビン—不安定ヘモグロビン溶血性疾患の検査所見

著者: 大庭雄三

ページ範囲:P.679 - P.682

はじめに
 ヘモグロビン(Hb)は2個のαサブユニットと2個のβサブユニットからなる四量体分子で,分子量約65,000,親水性に富み,赤血球内に340g/lもの高濃度に詰め込まれている.Hbの異常によって起こる病気としては,おおよそ次の6種類がある1,2)
(1)微小循環閉塞を特徴とする鎌状赤血球症(sickle cell disorder;SCD)(HbSホモ接合またはHbSと他のβ鎖異常との複合ヘテロ接合)

検査法の基礎検討のしかた 血液検査・6

凝固検査の精度管理

著者: 髙宮脩

ページ範囲:P.683 - P.687

はじめに
 凝固検査は広義には血管系検査,血小板系検査,凝固系検査および線溶系検査を含めた止血機能検査をさすが,狭義には凝固系検査をいう.本稿では日常止血機能検査として広く行われているプロトロンビン時間(PT)や活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)などの凝固系検査の精度管理を中心に述べる.

ラボクイズ

問題:呼吸機能検査

ページ範囲:P.690 - P.690

6月号の解答と解説

ページ範囲:P.691 - P.692

オピニオン

臨床検査医と病理医

著者: 関口進

ページ範囲:P.664 - P.664

 読者の皆様はよくご存じのことだが,今,臨床検査医と病理医の間で新しい関係ができつつある.臨床検査医は日本臨床病理学会の認定医であり,病理医は日本病理学会が認定している.この両専門領域は似て非なるものというべく,異なっている.すなわち,いわゆる検体検査を主とした業務を専門とする医師を臨床検査医(clinical pathologist;CP),病理検査を専門とする医師を病理医(anatomical pathologist;AP)といっている.不思議なことに,健康保険上では病理は検体検査と別のカテゴリーに含まれている.
 今起こっている新しい関係とは,このAPとCPの両方の専門を兼ね備えた医師をつくろうというわけである.大学では国公私立医大のほとんどが臨床検査医学講座,臨床病理学講座を認めているが,これはCPで,APは大学の病理学教室,病院病理部または中央検査室の一部門の中に存在する.しかし,一般病院ではAP,CPと別々に定員化して採用している施設はほとんどなく,APが常勤で病理をやりながら,検査室の運営を検査部長として任されている施設が多い.APは以前から病理標本を見て診断を下すことが“医行為”として認められ,病理診断料として保険にも収載されていた.

けんさアラカルト

乳頭分泌液CEAの測定法

著者: 西川洋子

ページ範囲:P.688 - P.689

 近年の乳癌発生率の増加に対して早期発見の必要性が高まっている.癌胎児性抗原(carcinoembryonic antigen;CEA)は臨床検査で最も多く利用されている腫瘍マーカーであるが,早期診断時の血清中CEAの測定意義は低い.一方,腫瘤を触知しない乳癌の診断は困難であるため,乳頭分泌液CEA測定が利用されている.乳癌における異常乳頭分泌の頻度は4〜8%であるが,腫瘍により産生されたCEAの大部分が乳管内に放出されるため,乳頭分泌液CEAの測定意義が高い.
 筆者の検査室ではマンモテックキット(持田製薬)とルーチン検査用のEIA自動分析装置(AIA1200,東ソー製)を一部併用して現在(1993〜1996年末)までに143例を測定したので,その経験を記す.

トピックス

ザイモグラフィーによるマトリックスメタロプロテアーゼの検出

著者: 西川陽子 ,   清水暁

ページ範囲:P.693 - P.695

はじめに
 生体内には種々の蛋白質分解酵素が存在しており,蛋白質代謝に重要な役割を果たしている.蛋白質分解酵素の検出法は数多くあり,それぞれの酵素に適した方法が使用されている.本稿では,マトリックスメタロプロテアーゼ(matrix metalloproteinase;MMP)と総称される酵素の検出に,最近よく利用されているザイモグラフィーによる蛋白分解酵素の検出法について,筆者らの腫瘍組織,細胞を用いたゼラチナーゼ(Ⅳ型コラゲナーゼ)の実験を中心に概説する.

検査データのカード管理

著者: 窪寺健 ,   長尾玲子

ページ範囲:P.695 - P.697

はじめに
 最近,ガソリンスタンドでのサービスや自動車整備サービスにICカードが利用されるようになり,カードメディアも大変身近なものになってきた.カードメディアとは主に“ICカード”や“光カード”のことであるが,本稿ではICカードを取り上げる.
 国内ではすでにICカードだけで約800万枚発行されているという.各省庁においてもいろいろな実験やプロジェクトが行われているが,特に保健医療分野におけるカードメディアの導入は(財)医療情報システム開発センターの調査1)によると,全国30数か所で実験がされている.カードに記録されている個人属性以外の情報は診療記録や検診データとなっているものが多い.診療記録が記録されているものに社会保険庁が熊本県八代市で行っているサービスがあり,“健康保険被保険者証”がICカード化されており動向が注目されている.検診データは健康管理を目的に記録され利用されている.

ずり応力惹起血小板凝集

著者: 横山健次 ,   池田康夫

ページ範囲:P.697 - P.699

はじめに
 流れに沿ったある面を考えるとき,上方の流れの速い部分は下方の遅い部分に対して流れの方向に引きずっていく力を及ぼし,一方,下方では引き離されるような力が働く.このとき速度勾配をずり速度(shear rate),ある面にかかる力をずり応力(shear stress)と呼ぶ.血管内での血液の流れは速度勾配を持つ定常流とみなされており,血液が流れる際に血球細胞はずり応力にさらされる.詳しい情報は乏しいが,正常の動脈内では数〜数十dyn/cm2のずり応力がかかるとされており,動脈硬化などにより病的に狭窄した細動脈では数百dyn/cm2のずり応力が発生すると考えられている.さらに心臓人工弁置換術後の弁輪でのleakが発生した場合には1,000dyn/cm2のずり応力が発生するとされている.血小板にこれらのずり応力がかかることにより,アゴニスト非存在下に血小板が凝集することが知られており,ずり応力惹起血小板凝集(shear stress-induced platelet aggregation;SIPA)と呼ばれ,生体内での病的動脈血栓形成と深い関連を有していると考えられ注目されている.

心不全における心筋細胞のアポトーシス

著者: 小室一成

ページ範囲:P.699 - P.701

はじめに
 絶えず収縮と弛緩を繰り返している心臓は大変ダイナミックな臓器であり,外的刺激に対して極めて迅速に反応する.心臓は高血圧などの血行力学的負荷に対して,まず機能的に,次に蛋白合成を亢進させ肥大を形成することにより,形態的に適応する1).高血圧や弁膜症患者に認められる肥大は,単位心筋あたりのストレスを軽減させるための巧妙な適応現象といえる.肥大心においては,一般に拡張能こそ障害されるものの,心臓の収縮能は正常に保たれていることが多い.しかし,血行力学的負荷が非常に高度であったり,また長期間続くと,収縮能もしだいに低下し,いわゆる典型的な心不全という病態を呈してくる.この心肥大から心不全に移行する機序については,長い間循環器領域における最も重要な問題の1つである.従来,虚血によるエネルギー源(ATP)の減少,カテコラミン受容体の減少,心筋の収縮・弛緩に重要な役割を果たしている細胞内Ca2+ハンドリングの異常などが考えられていたが,最近,心筋細胞のアポトーシスが心不全の原因になるのではないかと注目されている.

腸管免疫

著者: 嵐方之 ,   諏訪高麿 ,   今井浩三

ページ範囲:P.701 - P.703

はじめに
 胃,小腸,大腸などヒトの消化管はテニスコートの約1.5倍という広い表面積を占め,その部位は消化,吸収の場であると同時に,直接外来物質に曝されることから,細菌,ウイルス,有害物質などに対しての最初のバリアーとして機能しなければならない.その1つとして,抗原性物質に対して腸管に特殊化した免疫機構が働いている.これを全身の免疫系と区別して腸管免疫と称している.
 この腸管免疫系は全身の免疫系とある程度独立して機能している.その第1の特徴は,抗体である免疫グロブリンのアイソタイプが全身の免疫系ではIgGが主体であるのに対し,消化管では分泌型IgA(secretory IgA;SIgA)が主体となっていることである.これらのSIgAは腸管の粘膜固有層に分布する形質細胞により局所で産生・分泌されている.さらに細胞性免疫の面についてもパイエル板や孤立性リンパ濾胞,腸間膜リンパ節などの腸管付属リンパ組織(gut associated lymphoid tissue;GALT)や粘膜固有層リンパ球(lamina propria lymphocytes;LPL),さらに最近注目されている腸管上皮細胞間リンパ球(intestinal intraepithelial lymphocytes;IEL)もそれぞれ特有の機能を有していると考えられている.

G型肝炎ウイルス(HGV)

著者: 野村文夫

ページ範囲:P.704 - P.705

はじめに
 肝炎ウイルスはこれまでA型からE型までの5種類が知られ,その関連マーカーの測定により血清診断が可能となっている.しかし,臨床的にウイルスが原因と思われても,既存のマーカーが有意な結果を示さない,いわゆる非A〜E型が一部の急性肝炎や慢性肝障害において存在し,その原因ウイルスを求めて多くの研究者がしのぎを削ってきた.1994年に報告されたF型はその後の確認がなされず,1995年から1996年にかけて米国のAbbott社がGV virus C(GBV-C)を,Genelab社がHGVを新たな肝炎ウイルスとして相次いで報告した1,2).後に,両者は同一のウイルスと判明し,G型として第6の肝炎ウイルスと認められた.したがって,G型も含めて,現時点で肝炎ウイルスは表1のようにまとめられる.なお,G型肝炎ウイルスの正式の呼称はまだ決められていないが,本稿ではHGV(hepatitis G virus)と略す.

けんさ質問箱

Q 感受性試験におけるE-test

著者: 川上小夜子 ,   宮澤幸久 ,  

ページ範囲:P.671 - P.672

 最近の文献には感受性試験のE-testがよく出てきますが,その概要と日本における取り扱いについてご教示ください.

Q 検査データの保存

著者: 松戸隆之 ,  

ページ範囲:P.673 - P.674

 DVDという新しいメディアが登場しましたが,このメディアを画像データの保存に使用した場合の長所,短所をご教示ください.また,CD-ROMとDVDの違いと,今後のデータ保存に有用なのはどちらかについてもお教えください.

今月の表紙

抗核抗体検査

著者: 巽典之 ,   樋口智子

ページ範囲:P.636 - P.636

 膠原病は病態が複雑で,診断が難しい疾患の代表であり,検査法が多数あると同時に,その解釈に苦しむことが多い.発熱,皮膚症状,筋・関節・循環器・腎・呼吸器・消化器・神経・リンパ節・血液などの諸症状が不定の形で出ることが多い。γ-グロブリンが上昇するため血沈は亢進し,CRPが陽性のことが多いが,血沈亢進でCRP陰性のことも少なくない.
 膠原病を疑ったときの第一次スクリーニングとしては,自己抗体とCH50低下度を調べることになっているが,さて,その自己抗体に何を選ぶかが問題となる.日本臨床病理学会はその選択と判定に,①リウマトイド因子陽性,②LEテスト陽性,③抗DNA抗体陽性,④FANA(蛍光間接法による抗核抗体)陽性染色パターンの鑑別を推奨している.①,②は数値化されたデータが提示されるので判定は容易である.③の抗DNA抗体としては,抗dsDNAと抗ssDNA抗体の有無を調べることになるが,キットが古くなると,一本鎖DNAの対応抗原が形成され,抗ssDNA抗体値が高くなる危険性がある.さて,④抗核抗体の検査も検査室に検査依頼が多いが,その結果が活用されているかどうか,はなはだ疑わしい.臨床医にとってもspeckledやらdiffuseやらといわれてもわかりにくいというのが本音らしい.喜んでいるのは“綺麗!”と感心しながら顕微鏡をのぞき込んでいる検査室だけのようである.

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?