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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術26巻3号

1998年03月発行

雑誌目次

病気のはなし

BOOP

著者: 森憲二

ページ範囲:P.200 - P.205

新しい知見
 本来,剖検時の病変所見の多くは非可逆的な形態を示し,臨床経過上の一過性病変を示すとは限らない.気管支鏡下肺生検は可逆的な肺陰影の形態所見を不十分ながらよくとらえてきた.そのような背景で,“器質化肺炎”という病理学的所見の中には,遷延する肺炎像をはじめ,末梢気道の閉塞や胞隔炎と線維化などの多彩な所見を伴っている例のあることが,気管支鏡下肺生検を駆使して多くの臨床経過と対比されて明らかとなった.こうしてBOOPという疾患概念は,遷延する陰影と病変を示し,かつガス交換障害が強く,ときには出没する肺炎像の形態所見として器質化肺炎と閉塞性細気支炎を伴う1つの疾患として確立された.しかもステロイド剤によく反応する.BOOPもまたリポイド肺炎など類似の疾患の中で理解されている.

技術講座 血液

粒子計測法による新しい血小板凝集能測定とその意義

著者: 佐藤金夫 ,   矢冨裕 ,   尾崎由基男

ページ範囲:P.207 - P.213

新しい知見
 散乱光を用いた粒子計測法は,数個程度の血小板が集まった小さな凝集塊を検出できる高感度の血小板凝集能測定法であり,従来より汎用されている吸光度法では判定できない血小板の機能亢進状態を検知し得る新しい測定法である.
 血栓性素因や動脈硬化と密接な関係を有すると考えられる血小板機能亢進を簡便,かつ客観的に評価できる方法として期待が高まっており,不安定狭心症・心筋梗塞・糖尿病などの臨床例での検討が進められている.

一般

混濁尿の原因と対処法

著者: 田頭安徳

ページ範囲:P.215 - P.221

新しい知見
 尿外観の観察は紀元前の昔から行われ,尿を肉眼で観察することから,尿検査のことをuroscopyと呼んでいた時代がある.それから自動化の進んだ現在に至るまで,日常検査として尿の外観が観察されている現状を見ると,臨床側または検査室には欠かせない情報源の1つとして定着したと考えられる.本稿で述べる混濁尿については,革新的な技術面の進歩はないが,普段から注意深く観察する姿勢と,鑑別技術を習熟することで,価値のある情報を臨床側に提供するきっかけとなる.

日常染色法ガイダンス 多糖類の日常染色法—単純多糖類(グリコーゲン)の染色法

ベストのカルミン染色

著者: 宮平良満 ,   岩井宗男 ,   宮本敬子 ,   岡部英俊

ページ範囲:P.225 - P.227

はじめに
 グリコーゲンは肝臓や筋肉をはじめ,さまざまな組織細胞中に存在するが,各種疾患などにおいて,それを証明するため,いくつかの染色方法が利用されてきた.その中でも現在ではα-アミラーゼなどによる消化試験も含めて,PAS反応(periodic acid-Schiff reaction)が一般的な糖質の証明方法として主に活用されている.一方,古典的な方法で,最近ではあまり利用している施設は少ないものの,グリコーゲンの代表的な染色としてベスト(Best)のカルミン染色がある.

検査データを考える

バセドウ病

著者: 内村英正

ページ範囲:P.229 - P.234

はじめに
 バセドウ病についての検査データの分析に当たり重要なことは,数字として見る検査成績は測定誤差,施設間差など測定にかかわる多くの因子を含んでおり,常に批判的視点で考えるということである.また,数値から病態を読み取るためには臨床的知識は欠かすことはできない.
 本稿では,まずバセドウ(Basedow)病について臨床像を解説し,検査データに言及する.

検査の作業手順を確立しよう 微生物検査・2

ウイルス検査

著者: 中村久子 ,   望月照次 ,   中村良子

ページ範囲:P.235 - P.240

はじめに
 ウイルス感染症の診断は,患者の臨床症状や既往歴,年齢や季節,疫学的情報などから病原ウイルスを推定し検査を行う.しかし,1つの疾患群でも,病原ウイルスは数種類に及ぶ場合もあることから,ウイルスの検査法の選択は重要である.
 病原ウイルスの検査は,臨床症状などに応じて検査材料を好適部位から採取し検査に供する.ウイルスの検査は2種類に大別される.すなわち,ウイルス学的検査と血清学的検査である.

機器性能の試験法 自動分析装置の性能確認試験法・3

測光繰り返し精度

著者: 斉藤友幸 ,   桑克彦

ページ範囲:P.241 - P.244

はじめに
 前報1)に引き続き,日常検査に用いる生化学用自動分析装置の性能確認試験法のうち,測光繰り返し精度について,東芝TBA-200FRを例にして示す.

ラボクイズ

問題:呼吸機能検査

ページ範囲:P.222 - P.222

2月号の解答と解説

ページ範囲:P.223 - P.223

オピニオン

診療報酬制度の変革と臨床検査

著者: 石出信正

ページ範囲:P.206 - P.206

 現在,国の主導によって診療報酬の支払い制度が“出来高払い”から“包括支払い方式”に大きく転換しようとしている.いままでにも“包括支払い方式”は主に慢性疾患を対象にして導入されてきたが,今後は“診断群別包括支払い方式(DRG/PPS)”によって急性期を含む入院治療全般に適用され,早ければ数年以内にわが国における主要な支払い制度として実施されようとしている.筆者の病院でも,老人保健施設における診療は“包括支払い方式”であり,筆者自身,両方式の診療に日常携わっている.このような流れの中での臨床検査および技師の役割について私見を述べてみたい.
 “出来高払い”では保険適用上の制限はあるものの,原則として実施した検査に診療報酬が支払われる.一方,“包括支払い方式”では疾患ごとに決められた診療報酬が支払われ,検査にかかる費用もその枠内でまかなわれる.支払いの総額が決まっていれば,利益を確保するためには医療にかかるコストを低下させなければならない.したがって,増加し続ける国民総医療費を抑制するのに効果があると国は考えている.この方式のモデルになっている米国でDRG/PPSが総医療費抑制に効果があったかどうかは,なお意見が分かれている.いずれにせよ,“包括支払い方式”では検査のオーダーを出す医師に「その検査がいくらかかるか」が強く意識される.

けんさアラカルト

LDL-コレステロール直接法

著者: 荒木秀夫

ページ範囲:P.214 - P.214

 低比重リポ蛋白(low density lipoprotein;LDL)分画に含有されるコレステロール(cholesterol;C)は,LDL-コレステロール(LDL-C)と呼ばれ,その上昇は動脈硬化の危険因子となることが知られている.また,高脂血症の診断で従来から総Cの値が広く用いられてきたが,LDL-Cの値のほうが虚血性心疾患と高い相関が認められることが,厚生省特定疾患「原発性高脂血症」調査研究班報告書1)に報告されている.
 現在,LDL-Cの濃度はフリードワルドの計算式を用いて算出されているのが現状である.その値は空腹時の総C,高比重リポ蛋白(high density lipoprotein;HDL)-C,中性脂肪の3項目の測定値から,次の式で計算される.

トピックス

レジオネラの宿主アメーバ

著者: 八木田健司 ,   遠藤卓郎

ページ範囲:P.245 - P.247

はじめに
 1996年夏,都内大学病院で起きたレジオネラ感染の事例では,病院内の給湯系,加湿器が感染源として疑われた.日常,何気なく使っている水が感染源になる可能性があることを改めて思い知る事例であった.
 これまでの多くの感染事例からは給湯水,加湿器,シャワー,噴水,温泉,循環浴槽水,そしてビル冷却塔の循環水(冷却塔水)など,日常の生活に密着した水環境がレジオネラの感染源となることが明らかとなっている.

献血者におけるwindow period—特にHBV,HCV,HIV

著者: 野尻徳行

ページ範囲:P.248 - P.249

はじめに
 輸血によるHBV(hepatitis B virus,B型肝炎ウイルス),HCV(hepatitis C virus,C型肝炎ウイルス),HIV(human immunodeficiency virus,ヒト免疫不全ウイルス)感染を防止するために,日本赤十字社血液センターは新しいスクリーニング法の開発と導入に努めてきた.これによって輸血後B型肝炎およびC型肝炎の発生頻度は,医療機関で実施している小規模な検証的,前向き調査では確認できないところまで激減した.
 また,献血・検査履歴などの献血者情報と検体保管システムからの遡及調査(look back)によりwindowperiodの血液からの感染が推定できる.

エンテロトキシン産生Bacteroides fragilis

著者: 加藤直樹

ページ範囲:P.249 - P.251

はじめに
 Bacteroides fragilisは嫌気性のグラム陰性桿菌で,多くのヒトにおいて腸内常在菌として生息し,また好気性菌であるEscherichia coliより100〜1,000倍多い菌数で存在する腸内フローラの最優勢菌の1つとして挙げられる.通常はこのように腸内フローラとしてB. fragilisは存在し,感染症は引き起こさないが,ときになんらかの原因により腸管外に侵入し,腹腔内膿瘍,膿胸,敗血症などの感染症を引き起こす.
 一方,E. coliの仲間には種々の下痢原性毒素を産生し,下痢症を引き起こす菌病原大腸菌が存在するが,B. fragilisではエンテロトキシン(腸管毒)を産生し,下痢を引き起こす菌株は知られていなかった.しかし,1984年,米国のMyersら1)が,子ヒツジや子ウシなどの家畜の下痢症からエンテロトキシン産生性B. fragilis(enterotoxigenic B. fragilis;ETBF)を分離して以来,B. fragilisの伸間にもエンテロトキシンを産生し,下痢症を引き起こす菌株のあることがわかってきた.

けんさ質問箱

Q 尿沈渣における好酸球

著者: 稲垣清剛 ,  

ページ範囲:P.253 - P.255

尿沈渣のギムザ染色で非常に多数の好酸球が認められました.この場合,いかなることが考えられるでしょうか.末梢血の好酸球は正常です.

Q 吐物の潜血検査

著者: 大井守 ,   黒川正典 ,  

ページ範囲:P.255 - P.256

一般検査室に吐物の潜血検査の依頼として,ときどき膿盆やシーツを持ってくることがあります.その際はどのような試薬を調製して検査すればよいのでしょうか.唾や痰と一緒で,検査材料としてはあまりよくないため,何か前処理を行えばいいのでしょうか.また,ガーゼやシーツに染みたものはどうすればいいのでしょうか.

今月の表紙

膿汁(脳膿瘍)の検査

著者: 小栗豊子 ,   三澤成毅

ページ範囲:P.252 - P.252

 症例 患者は生後2か月,男児.嘔吐を主訴として小児科外来を受診,その後眼振が認められたため,脳のCTスキャン検査を行い,脳膿瘍と診断された.入院する以前に,外来で経口抗菌薬を投与されていた.
 写真1 脳の膿瘍部穿刺液.白色,粘稠性の強い膿汁で,悪臭は認められなかった.

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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