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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術27巻1号

1999年01月発行

雑誌目次

病気のはなし

川崎病

著者: 小牧宏一 ,   斎藤穎 ,   小沢友紀雄 ,   能登信孝

ページ範囲:P.6 - P.12

新しい知見
 川崎病は川崎(富作)博士により1967年に初めて報告1)された.後遺症としての冠動脈瘤および狭窄は,冠動脈瘤の成人における臨床例の報告がなされ2,3),内科領域における虚血性心疾患の背景因子として注目される.
 Syedら4)によれば,成人の冠動脈瘤の原因として表1に示す疾患が挙げられるが,そのうち約50%が冠動脈硬化で最も多く,次いで多いのが川崎病とされている.川崎病は乳幼児の突然死の原因の一疾患となり得るだけでなく,成人以降においてもその後遺症による冠動脈疾患により突然死を引き起こす可能性がある.

技術講座 病理

樹脂包埋標本でのFISH検索

著者: 板木紀久 ,   安達博信 ,   井藤久雄

ページ範囲:P.13 - P.18

新しい知見
 分子生物学的解析方法が病理学の分野に導入され,多種多様な研究が展開されている.対象となる材料としては,新鮮凍結標本のみならず細胞診標本やパラフィン包埋ブロックも包括される.本稿で取り上げる樹脂包埋標本を用いたfluorescence in situ hybridization(FISH法)もその1つである.

微生物

抗酸菌の染色

著者: 尾崎京子

ページ範囲:P.19 - P.25

新しい知見
 近年,世界的に結核の流行が危惧されている中で,わが国でも新規結核患者数の減少傾向の鈍化,院内感染,多剤耐性菌による感染など,新たな問題が指摘されている1).米国CDC(Centers for Disease Control)では1993年に結核菌検査実施基準に対して3つの勧告を行い,うち1つは“検体採取後24時間以内に抗酸菌塗抹検査の結果を報告する”というものである2).厚生省は1995年,結核の活動性分類を結核菌検査結果により感染危険性を重視したものへと改正している3).世界的な結核対策の中で塗抹検査の位置づけは大きい.
 抗酸菌染色はチール・ネルゼン法と蛍光法が普及しているが,最近,加温を要しない簡便なキニヨン法も用いられている.

血中エンドトキシンの測定法

著者: 二木芳人 ,   見手倉久治

ページ範囲:P.27 - P.31

新しい知見
 血中のエンドトキシンは,グラム陰性桿菌による敗血症の補助診断に有効であることが確認されている.さらに,結果が得られるまでの時間が培養検査と比べて格段に早いことが特徴として挙げられる.その有効性を利用して,エンドトキシンショックの治療手段である持続的血液濾過透析(CHDF)およびエンドトキシン血液吸着療法(PMX)などの血液浄化療法の治療効果の裏付けとして測定され,その他の生化学物質との関連性が議論されている.

免疫

癌診断における腫瘍マーカーの感度と特異度の考えかた

著者: 高木康

ページ範囲:P.33 - P.37

新しい知見
 健全な医療のための効率的な検査の利用が叫ばれて久しい.腫瘍マーカーについても,スクリーニング検査としての保険適用がはずれ,その使用・利用法が模索されている.腫瘍マーカーの臨床評価は感度と特異度,あるいは診断効率により行われるが,これらを決定するカットオフ値の設定にあたってはROC曲線が有用である.ROC曲線はまた検査間の優劣を論じる際にも用いられている.最近はこれらに加えて,陽性予測値(腫瘍マーカーが陽性であった場合に腫瘍が存在する確率)が医療現場で重要視され,有病率と関連づけることによる効率的医療が実践され始めている.

血液

白血球分類の自動分析法の現状

著者: 津田泉 ,   巽典之 ,   田窪孝行

ページ範囲:P.39 - P.44

新しい知見
 現在,白血球分類は全自動型血液分析装置で行うことができる.自動分類は正常細胞の分類能に優れており,病的細胞や異型リンパ球など異常細胞の存在の際にはその存在をメッセージで知らせてくれる.検査室はそれを参考にして標本を作製し,ギムザ染色し,顕微鏡的に分析する必要がある.また,検査室は分析装置の高性能機能を理解するとともに,そこで提示される新しい検査情報を活用することが求められる.

生理

整形外科領域の超音波検査法—肩関節を中心に

著者: 白石周一

ページ範囲:P.45 - P.49

新しい知見
 超音波検査は,血管内超音波や内視鏡超音波などのアプローチの進歩,ドプラ検査やハーモニックイメージのような装置自体の進歩,そして検査対象領域の拡大により,近年さらに発展してきている.
 整形外科領域では,Graf法による先天性股関節脱臼の診断が広く普及しているが,最近の高周波数探触子の改良は,表在領域である皮膚や軟部組織の解像度を大幅に向上させ,これにより整形外科領域の中でも筋肉や腱の損傷に超音波検査が用いられる機会が多くなった.本稿で述べる肩関節も,腱の損傷の診断を主目的に超音波検査が行われている.

日常染色法ガイダンス 組織内病原体の日常染色法—抗酸菌の染色法

ファイト法

著者: 大塚俊司 ,   鈴木慶治 ,   川津邦雄

ページ範囲:P.61 - P.64

目的
 ファイト法は,癩菌など抗酸性が結核菌より弱い場合,あるいは結核菌でも病巣が陳旧化し,菌の活動性が低下している場合など,チール・ネルゼン(Ziehl-Neelsen)染色では菌体が十分に染色されにくい際にも良好な染色性を示す優れた方法である.また,本来グラム陽性を示すNocardiaは,陳旧化した病巣ではグラム陰性を示すため,グラム染色での証明が困難になるが,弱抗酸性を示すことから,グロコット染色などにより菌体を証明し,補助的に本法を行うことにより菌を同定することができる.

アミロイドの日常染色法

チオフラビンT染色

著者: 高橋保 ,   森木利昭

ページ範囲:P.65 - P.67

目的
 チオフラビンT染色はVassarとCullingによって1959年に報告された方法で,蛍光色素のチオフラビンT(thioflavine T)を用い,アミロイドを蛍光顕微鏡下に検出する方法である.染色機構は明らかにされていないが,光顕的な検出法としては最も感度が高く,特異性も比較的高い方法である.
 チオフラビンTは色素自体が蛍光物質であり,蛍光色素が光エネルギーを吸収したときに基底状態にあった電子が励起され,不安定な励起状態に遷移する.この電子がエネルギーを失い,もとの基底状態に戻るときに放出する光が蛍光である.組織内には弾性線維のように自家蛍光を発するものやアミロイド以外の組織成分ともチオフラビンTは結合することが知られており,他の染色法と対比しながら判定しなければならない.

検査データを考える

血清蛋白電気泳動のM分画

著者: 大谷慎一 ,   大谷英樹

ページ範囲:P.69 - P.74

はじめに
 M蛋白は単一クローン性免疫グロブリンとも呼ばれ,Mはmonoclonalの頭文字をとったものである.M蛋白の特徴は,均一(単一)の免疫グロブリンであるから,セルロースアセテート膜電気泳動でアルブミンと同様に幅狭いバンドあるいは尖鋭なピークを呈することである.ただ,免疫グロブリン・フラグメントなどのM蛋白では幅広いバンドとして観察されることがあるので,注意しなければならない.
 電気泳動法によってM蛋白の存在が疑われる場合には,次に免疫電気泳動法を用い,M蛋白の種類,つまり免疫グロブリンのH鎖のクラス,ならびにL鎖のタイプ(型)を決定することが大切である.

検査の作業手順を確立しよう 生化学検査・2

専用自動分析装置による検査—ドライケミストリー検査,血中薬物濃度測定,HPLC装置によるグリコヘモグロビンの検査などを中心に

著者: 米田孝司 ,   片山善章

ページ範囲:P.75 - P.80

はじめに
 専用自動分析装置の中でも,ドライケミストリーは試薬調製やウォーミングアップが不要で,24時間対応可能,かつ操作が容易なので,担当者でなくても操作可能な装置として緊急検査に広く利用されている.ドライケミストリーは試薬が乾燥状態で保存されており,基本的には多層分析フィルムや試験紙などがある.測定項目は生化学,薬物,免疫血清,凝固検査と幅広く,緊急検査だけでなく微量検査や日常検査,在宅検査などにも使用されている.主な装置として,セラライザー(エームス),レフロトロン(ロシュダイアグノスティクス),スポットケム(京都第一科学),ビトロス(ジョンソン&ジョンソン),富士ドライケム(富士フイルム),オープス(デイドベーリング),ストラタス(デイドベーリング)などがある.本稿では比較的項目数も多く,大型装置として15年ほど前から世界的に普及しているビトロスを中心に述べる.また,現在の高速液体クロマトグラフィー(high performance liquid chromatography;HPLC)装置はほとんどが単項目専用であり,HPLCの生化学的項目としてはポルフィリン,核酸代謝,胆汁酸,アミノ酸,糖蛋白,腫瘍,ビタミン,副腎ホンモン,薬物などがある.特に,HPLC装置としてはヘモグロビンA1c(HbA1c)測定用が取り扱いが簡便かつ測定時間が2分間と迅速なので,日常検査としてほとんどの施設で使用されている.

機器性能の試験法 自動分析装置の性能確認試験法・13

反応管残水量

著者: 今井敏明 ,   桑克彦

ページ範囲:P.81 - P.84

はじめに
 前報1)に引き続き,日常検査に用いる生化学用自動分析装置の性能確認試験法のうち,洗浄・乾燥後に反応管内に残る洗浄水の量(反応管残水量)を測定する方法について,東芝TBA-200FRを例にして示す.
 なお,反応管の残水量の試験法については確立されたものがない.本稿では暫定的に定めた方法について示す.

ラボクイズ

問題:よく見られる衛生動物[3]

ページ範囲:P.58 - P.58

98年12月号の解答と解説

ページ範囲:P.59 - P.60

オピニオン

悔いのない人生とV・S・O・P

著者: 大澤進

ページ範囲:P.26 - P.26

 会社が倒産して,タクシーの運転手をしている車に乗った.中年男性の運転手は自動車免許二種を持ち,自分は職に就けたが,元同僚は特技がないため就職にありつけないとのこと.医療における臨床検査の分野でも,今後ますます厳しい時代になることは目に見えている.ただ,検査ができる,ルーチンをそつなくできる技師が,従来と同じように職があるとは限らない.このような厳しい時代こそ,自分を伸ばすことが必要であろう.
 人生はV・S・O・Pといわれる.すなわち,20代はvitalityで,体力があり,何でも体力でこなせる.30代はspeciality,ある程度経験を積み自分の専門性を深める.40代はoriginalityで,自分であればこのように仕事をする,という独創性を高める.そして,50代はpersonalityで,人間としての人格が重要になる.このV・S・O・Pは人生の各年代でなすべきことを意味している.すなわち,自分の人生に目標を持つことを意味する.検査技師の免許を取るまでが人生の目標ではなく,免許の取得は最低限の基準を通過したことを意味するものである.

けんさアラカルト

マスター負荷試験による心事故予防

著者: 原田高光

ページ範囲:P.32 - P.32

 潜在的な虚血性心疾患の発見を目的とした検査の1つにマスター2階段運動負荷試験がある.マスター2階段試験は階段昇降という,誰にでも行いやすい運動負荷で,簡単かつ経済的で,維持費および校正が不要という利点があり,各施設で行われる頻度が高い.その反面,日常生活以上の生体負荷を加えるので,予期せぬ心事故が起こる可能性がある(本稿では心事故は急性心筋梗塞,狭心症,重篤な不整脈など急を要する心臓発作および大動脈瘤破裂とする).
 当施設の会員制人間ドックでは,マスター2階段試験をダブル負荷で行っており,1975〜1996年までの22年間で,会員数11,299名,延べ110,044名の受診者(平均年齢61歳)がおり,そのマスター2階段試験の心事故状況を調査した.

トピックス

テレパソロジー(遠隔病理診断)—実用化と問題点

著者: 澤井高志 ,   渡辺みか ,   宇月美和

ページ範囲:P.85 - P.88

■テレパソロジーとは
 テレパソロジー(遠隔病理診断)とは,遠隔地を結んで伝送された肉眼像,顕微鏡像を見て病理診断を行うことであり,通常は病理機能のない施設と病理医の常駐する施設とを結んで行われている.テレパソロジーは,最近では遠隔放射線診断や在宅診療の監視モニターシステムと並んで,遠隔医療を構成する1つの分野として扱われている(図1).
 現在,わが国では約20施設において,試験的要素も含めてテレパソロジーが行われているが1),世界的にみると,アメリカのメイヨークリニックが遠隔地の病院と結んで行っているほか,ヨーロッパではノルウェーが首都のオスロと北極圏にある病院を結び,ドイツやスイスでは山岳地の病院と都会の病院を結んで行われており2),これらは,いずれも地理的条件による制約の環境の中で,マルチメディア機器を利用しつつ発達したものである.

ホモシステイン代謝と動脈硬化との関係

著者: 渡辺毅

ページ範囲:P.88 - P.90

はじめに
 ホモシステイン(homocysteine)は,必須アミノ酸のメチオニンの中間代謝産物であり,メチオニンに再メチル化する酵素であるメチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(methylenetetrahydrofolatereductase;MTHFR)(再メチル化サイクル)と,ホモシステインをシスタチオニンへ変換するシステイン合成の律速酵素であるシスタチオニンβ-合成酵素によって代謝される(イオウ転移経路).再メチル化サイクルはビタミンB12と葉酸,シスタチオニンβ-合成酵素はビタミンB6によって活性化される(図1).一方,高ホモシステイン血症は動脈硬化危険因子として,従来からの糖尿病,高脂血症,高血圧などとは独立した危険因子として最近注目され,研究されている.
 本稿では,ホモシステイン代謝の動脈硬化発症・進展における意義,細胞での作用機構について最近の知見を概説する.

剖検室設計の理念

著者: 江石義信

ページ範囲:P.90 - P.93

はじめに
 剖検者の解剖業務に伴う感染体への暴露危険度は,空気感染および血液感染の両経路において,通常とは比較にならないほど高いものであるが,解剖業務そのものの性格からして,これまではある程度の危険性は致しかたのないものとして放置されてきた.
 他方,解剖に伴って生じる大量の体液および血液などの廃液は,簡単な消毒操作の後,通常の排水経路に合流しており,また解剖室と外部環境とは通常の開閉式ドアにより空間的に仕切られているのみで,特殊な感染症患者の解剖の際に生ずる環境への汚染危険度は計り知れないものがある.

HIV-RNA検査と新しいプライマー

著者: 渡邊正治 ,   菅野治重

ページ範囲:P.93 - P.95

はじめに
 後天性免疫不全症候群(acquired immune deficiency syndrome;AIDS)は原因不明の細胞性免疫不全症として1981年に報告され,現在はヒト免疫不全ウィルス(human immunodeficiency virus;HIV)と呼ばれる新種のレトロウイルスが原因であることが明らかとなった.
 HIVはHIV-1と遺伝子構成のやや異なるHIV-2の2型に大別される.HIV-1は日本をはじめ全世界中で流行し,特定の遺伝子領域の塩基配列の異なるAからIまでのサブタイプ(グループM)と,このグループMとは大きく異なる塩基配列を持つサブタイプOに分けられる.一方,HIV-2は現在のところ,主に西アフリカ地域に限局し,HIV-2にもAからEのサブタイプが知られている.

けんさ質問箱

Q SAAとその他の炎症マーカーとの関係

著者: 山田俊幸 ,   K.S.

ページ範囲:P.96 - P.97

 最近,炎症の指標としてはCRPやシアル酸に比べ,SAAの測定が有用性が高いことが報告されています.しかし,現在はCRPによる炎症の診断が主流だと思います.果たしてSAAは炎症マーカーとして主流になれるのでしょうか.また,CRPとSAAを併用して測定する意義はあるのでしょうか.

Q 臨床検査技師の医学部編入は可能か

著者: 永江学 ,   M.O.

ページ範囲:P.97 - P.97

 短大あるいは大学卒の臨床検査技師が医師になるにはどのような方法があるのでしょうか.医学部への編入は可能でしょうか.

Q Aeromonas属菌の分類と簡易同定

著者: 川上由行 ,   小穴こず枝

ページ範囲:P.98 - P.101

 このごろAeromonas属が便より検出されることがありますが,同定キットではうまく同定できません.よい方法がありましたらご教示ください.

今月の表紙

血液培養検査

著者: 小栗豊子 ,   三澤成毅

ページ範囲:P.57 - P.57

 症例 患者は33歳,女性で妊娠35週.臨床診断はSLE,続発性シェーグレン症候群.抗SS-A抗体陽性,治療目的で血漿交換を施行した.今回,38.3℃の発熱をきたしたため,入院(産婦人科)となり,6月29日,血液培養が行われた.なお,患者の原疾患は活動性を認めず,ステロイドも未使用である.入院の9日前,乳製品を摂取していた.
 分離培養:血液培養瓶は,1本のみ提出されたので,嫌気性菌の観察のためそのまま培養した.培養後2日目,その上層部は全体的に著しく混濁し,ピンク色(溶血?)を呈していた.瓶のふたを開けた際,ガス発生や悪臭は認められなかった.

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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