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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術29巻9号

2001年08月発行

雑誌目次

病気のはなし

劇症肝炎

著者: 井上和明 ,   山田雅哉 ,   与芝真

ページ範囲:P.1048 - P.1052

新しい知見
 劇症肝炎の予後は原因により大きく異なることより,その原因診断には迅速性が求められる.抗原,抗体を用いた原因ウイルス診断は,抗原による診断はウイルス量の少ない場合は役に立たず,抗体による診断は抗体が急性期に出現しない場合は役に立たない.近年迅速診断法として,realtime detection PCR(RTD-PCR)が普及しつつある.この方法の原理は次のとおりである.1組のプライマーの間に,両端を別々の色素で標識されているプローブを設定すると,両者の距離が近い場合はエネルギーを打ち消し合って発光しないが,PCRを行うことによりTaqの5′エクソヌクレアーゼ(exonuclease)活性により色素が遊離されるとエネルギーの打ち消し合いが解消されて発光する.発光の立ち上がりのサイクル数を解析することによりDNAおよびRNAの定量を短時間で施行することも可能になっている.

技術講座 生化学

リポ蛋白分画中の脂質組成の分析

著者: 日髙宏哉 ,   山内一由 ,   戸塚実

ページ範囲:P.1053 - P.1059

新しい知見
 脂質代謝異常すなわちリポ蛋白代謝異常は動脈硬化・虚血性心疾患に強くかかわっている1).リポ蛋白はいくつかの特徴的な脂質およびアポ蛋白の組成を有する粒子群である.それぞれの粒子群は血漿中のコレステロール,トリグリセライド,リン脂質などの脂質の輸送に関与し,その吸収・合成・貯蔵・異化・利用の場で重要な役割を果たしている2).臨床検査において,血漿中の各脂質の濃度の測定は高脂血症や低脂血症のスクリーニングとして重要であり,リポ蛋白代謝異常の詳細を捕えるためにはリポ蛋白分画中の脂質組成の分析が必須である.最近では,アガロース電気泳動を用いた脂質の特異染色法がリポ蛋白の脂質分析の簡易法として注目されている.

免疫

梅毒TP抗体の測定法

著者: 足立佐和子 ,   山田輝雄

ページ範囲:P.1060 - P.1064

新しい知見
 TP(Treponema pallidum)抗体測定は,自動化と,より簡便な試薬を用いた測定法の開発が進められルーチン化されている.従来,被検検体は主に血清または血漿であったが,近年,全血でも測定可能な全自動蛍光免疫測定装置による測定法が開発され,緊急手術時など至急検査の測定時間の短縮が可能となった.また,測定法の多くが用手法であるSTS法(serologic testfor syphilis)でも免疫凝集測定装置を用いた測定法が開発された.これにより梅毒血清スクリーニングセット検査の自動化が可能となり,さらなる迅速化,検査の効率化が期待されている.

微生物

淋菌の検査法

著者: 髙橋聡 ,   廣瀬崇興

ページ範囲:P.1065 - P.1068

新しい知見
 淋菌(Neisseria gonorrhoeae)は,比較的抗菌薬に耐性化(プラスミド性または染色体性)しやすいとされている.現状としては,本邦ではキノロン系抗菌薬耐性淋菌(quinolone resistant neisseria gonorrhoeae;QRNG)が半数以上を占め,最も問題となっている.もちろん,抗菌薬の使用量にも関係するのだが,かつて問題となっていたペニシリナーゼ産生淋菌(penicillinase-producing N. gonorrhoeae;PPNG)とテトラサイクリン高度耐性淋菌(tetracycline resistant N.gonorrhoeae;TRNG)とは,海外の状況とは異なりわが国ではほとんど問題となっていない.QRNGに関しては,その耐性機構がキノロン耐性決定領域(quinolone resistant determining region;QRDR)の変異であり,淋菌のgyrA,parC領域のアミノ酸の変異であることが明らかとなっている.また,最近では,セフェム系抗菌薬を含めた多剤耐性株の報告もみられる.したがって,MIC測定を継続していくことが必要である.

病理

腎生検における蛍光抗体法

著者: 長濱清隆 ,   原茂子

ページ範囲:P.1069 - P.1075

新しい知見
 遺伝性腎疾患の1つであるアルポート(Alport)症候群の原因がIV型コラーゲンの異常であることが明らかにされた.IV型コラーゲンは糸球体基底膜の構成成分の1つでα1からα6までの6種のアイソフォームがあることが知られている.このうち,最も多いのがα5鎖の異常であり,α5鎖遺伝子はX染色体上に存在するため本症候群の多くは伴性優性遺伝の遺伝形式をとる.従来,アルポート症候群の確定診断は電顕所見に頼るしかなかったが,数年前からこのα5鎖に対する抗体が市販され,蛍光抗体法でも診断ができるようになった.

絵で見る免疫学 基礎編・20

モノクローナル抗体とポリクローナル抗体

著者: 高木淳 ,   玉井一 ,   隈寛二

ページ範囲:P.1076 - P.1077

抗体の特徴
 モノクローナル抗体は,優れた特異性を持つ抗体が大量に得られることのみならず,抗原抗体反応の科学的解析を容易にし,免疫学にさらなる進歩をもたらした.これを最も基本的な計算式で示す.一定量の抗原〔Ag〕と抗体〔Ab〕の反応が平衡状態で抗原抗体結合物〔Ag・Ab〕が産生される式は,〔Ag〕+〔Ab〕⇔〔Ag・Ab〕で示される.〔Ag・Ab〕の生成量は,〔Ag・Ab〕/〔Ag〕〔Ab〕=Kで表され,Kを平衡定数(アフィニティ定数)とよぶ.生成量が多い場合のKは大きく,少ないと小さい.さらに,この式から導かれる式b/f=K(q-[B])は,b/fをY軸に,[B]をX軸とし,傾きがKなる一次直線である.この式で描かれるグラフをスキャッチャードプロットと言い,このグラフの傾きから平衡定数が求められる(図1).
 しかし,筆者らがポリクローナル抗体時代に実験的にKを求めたが曲線になり,Kは抗体と結合している抗原の量[B],すなわち〔Ag・Ab〕によってそれぞれ異なるKが得られた.ポリクローナル抗体は,特異性の異なる複数の抗体が各々異なる平衡定数を持っているからであり,イムノアッセイ系の熱力学的な裏づけが困難であった.しかし,モノクローナル抗体を使用するとスキャッチヤードプロットは直線になり,1個のKが得られる.

見開き講座 分子細胞遺伝学への道しるべ・8

核酸3.RNAと蛋白質合成

著者: 田村高志

ページ範囲:P.1080 - P.1081

 今回のテーマは主題から少し横道に逸れることになるが,DNAのRNAへの転写,RNAのアミノ酸への翻訳から蛋白質合成という遺伝情報の流れについて理解してもらいたい(図1).

検査データを考える

尿試験紙の異常反応

著者: 舛方栄二

ページ範囲:P.1085 - P.1091

はじめに
 尿試験紙を用いた尿定性検査は各種疾患のスクリーニング,治療経過のモニタリング,また学校検尿に代表される各種健診などで最も一般的に行われている.最大の特徴は尿に試験紙を浸すことにより最高10項目もの検査情報が瞬時に得られることであり,最近では臨床検査の重要な初期検査の1つとして広く行われている.
 しかしこの試験紙法には十分に留意しなければならない点もあり,検査の現場でもしばしば定量値などと乖離した結果として現れてくる場合も見受けられる.これが偽陰性,偽陽性反応1)と呼ばれる現象である.本稿では代表的な偽陰性,偽陽性反応について解説し,併せて尿試験紙における異常反応について説明を試みる.

臨床検査に必要な統計処理法・20

定性検査・半定量検査データの統計処理—カイ二乗(x2)検定は万能ではない

著者: 細萱茂実

ページ範囲:P.1109 - P.1113

はじめに
 臨床検査で扱うデータは,その数量的性質から量的データと質的データとに大別される.量的データとは,血中成分の濃度や細胞数の測定値などで,定量検査の一般的な成績を指す.これに対し,質的データとは検査結果が陰性と陽性,あるいは-,±,1+,2+,……となる定性・半定量検査データ,あるいは血液型などの名義尺度の検査成績である.量的データについては,平均や標準偏差などよく知られた統計量がデータの要約に利用され,またt検定をはじめ各種の統計的手法を利用する機会も多い.しかし,質的データの統計処理については,カイ二乗(x2)検定など一部の手法を除き,広く一般に利用されている手法は少ない.そこで,検査成績が陰性・陽性のように2分類となる二値データ,および-,±,1+,…のようにデータのカテゴリーに自然な順序がある定性・半定量検査データの統計処理法について整理する.

ラボクイズ

問題:呼吸機能【3】

ページ範囲:P.1078 - P.1078

7月号の解答と解説

ページ範囲:P.1079 - P.1079

オピニオン

検査室の明るい未来をめざして

著者: 久保田勝秀

ページ範囲:P.1084 - P.1084

 昨今,多くの先生方や先輩技師から,雑誌などを通して臨床検査技師へのさまざまな提言が寄せられています.その内容の一部を紹介すると,検査の意義と病態との関連を勉強すべし,日常検査データは“宝の山”であり,専門職としての解析力と知識を持つべしなどです.もちろん日臨技会員46,000名のうちには多くの優秀な技師がいることは誰しも承知しているでしょう.ただ,全般的にみた場合,積極的に病態生理とデータ解析に熱意を示す臨床検査技師がさらに多くいることが切望されていると思われます.
 どのような職種にも学ぶ努力を続ける人,その反面あまり力が入らない人がいるのは事実ですが,臨床検査技師の場合にはこのギャップが大きいようです.

けんさアラカルト

E-mailを利用したテレサイトロジー

著者: 浜浦健 ,   石原明徳

ページ範囲:P.1095 - P.1095

はじめに
 遠隔画像診断は一般的に送信側施設と受信側施設との双方に対応した専用の端末,ソフトウェアを必要とし,他機種間での互換性を有しません.また,使用する機器は高額であるのが現状です.今回われわれは,近年急速に普及しつつあるインターネットのE-mailを利用して細胞診の画像伝送を行う“簡易的テレサイトロジー”を試みましたので紹介します.

Laboratory Practice 血液 骨髄塗抹標本の見かた 異常細胞の見かた・3 リンパ球系の異常

2.数の異常と形態異常 細胞質の異常(1)

著者: 清水長子

ページ範囲:P.1092 - P.1094

はじめに
 リンパ球の異常には数の異常,形態異常,機能の異常がある.リンパ球増加はリンパ球の絶対数が4,000/μl以上,リンパ球低下は1,500/μl以下と定義されている.リンパ球増加は単クローン性増加と多クローン性(反応性)増加とに大別され,単クローン性増加をきたす疾患群としては悪性リンパ腫の白血化や,慢性リンパ性白血病群の①慢性リンパ性白血病(chronic lymphoid leukemia;CLL),②前リンパ性白血病(prolymphocytic leukemia;PLL),③毛様(有毛)細胞白血病(hairycell leukemia;HCL),④大顆粒リンパ球性白血病(large granular lymphocytic leukemia;LGLL)が,多クローン性増加をきたす疾患としてはウイルス性疾患が挙げられる.

生理 この症例をどう読むか

機能画像診断としてのサーモグラムフィ

著者: 永江学 ,   星川久義

ページ範囲:P.1096 - P.1098

 サーモグラム(熱画像)検査は多くの画像診断が形態画像診断を中心にしているのに対して,本法は機能画像診断を目的とした検査法であることを念頭に置いて検査および評価をしなくてはならない.今回2症例を呈示し,機能画像診断としてのサーモグラフィに関して述べる.

病理 細胞像からここまでわかる

子宮体部(1) 子宮内膜の正常組織・細胞

著者: 都竹正文 ,   平井康夫

ページ範囲:P.1100 - P.1102

子宮体部の構造
 子宮体部の壁は内腔側から,子宮内膜(endometrium),子宮筋層(myometrium),子宮外膜(perimetrium)の順で構成されている.
 子宮筋層は厚さ1cmを超える平滑筋の層である.子宮外膜は結合組織から成っており,子宮の上部では漿膜が最外層を被っている.子宮内膜(以下,内膜)は被覆上皮,内膜腺,間質から構成される.被覆上皮および内膜腺は単層の円柱上皮で,線毛細胞と分泌機能を有する細胞から成るが,内膜腺では後者がほとんどを占める.内膜はまた月経時に剥離しないで残る深層の基底層と,月経時に剥離,放出される表層の機能層とに分けられる.基底層の内膜腺は月経周期によってほとんど変化せず,増殖期初期の内膜腺に類似した像を呈する.

生化学 精査と治療に生かす検査データ

肝硬変

著者: 中野博 ,   高野友爾

ページ範囲:P.1104 - P.1105

はじめに
 肝硬変は肝内に瀰漫性に広がる慢性炎症に起因する病態で肝細胞機能障害,肝内結合組織の増生と偽小葉の形成(肝細胞の再生)が特徴である.主な病因はB型,C型肝炎ウイルスの持続感染であるが,そのほか飲酒,薬物摂取,自己免疫機序による肝細胞破壊も成因となる.肝硬変の症状は肝実質細胞の機能低下,門脈圧亢進,肝内,および肝外にできた門脈と静脈循環系との短絡路形成が主な成因である.肝硬変は肝細胞機能の障害の程度によって代償性(代償期)と黄疸,腹水,意識障害などが出現する重症型の非代償性(非代償期)に分類される.
 肝硬変は肝病変の終末像で,肝細胞の機能不全(肝不全),上部消化管の静脈瘤破裂による吐血,高率に合併する肝細胞癌が三大死因である.

トピックス

リンパ球性心筋炎とCRP

著者: 神田享勉

ページ範囲:P.1118 - P.1119

■急性心筋炎とリンパ球性心筋炎
 心疾患の既往歴がないにもかかわらず胸部苦悶感,動悸,呼吸困難などの心症状をきたし,左室収縮能低下,心電図異常などの他覚症状を認めた場合,急性心筋炎を疑う必要がある.心筋炎の診断は臨床上しばしば困難である.それは心筋炎に特異的な検査上の特徴がないことによる.Hurstら1)は急性期の心筋炎の診断には心筋生検が最も有用であるとしているが,心筋生検陰性でも否定はできない.通常,発症に先行し感冒様症状があり,心電図異常,心筋の逸脱酵素の高値,CRP陽性となる.ウイルスが原因の心筋炎では,発症直後と2週間後とのペア血清でウイルスの抗体価が4倍以上に上昇することが,ウイルス感染の診断には必要である.心筋生検は特徴的な炎症細胞浸潤と心筋崩壊を認め,in situ hybridization によるウイルスゲノムの同定で陽性となれば確定診断できる.しかし確定診断できる確率は5%以下である.加えて,心筋炎は急性期は重症でも生命予後は比較的よく完全治癒例も少なくない.心機能の回復がみられなければ拡張型心筋症に移行する可能性もある.ウイルス性心筋炎は文献的にはよく知られているが,その確定診断が困難であることより,実際に診断できることは少ない.そこで組織学的にリンパ球の浸潤と心筋崩壊とが認められれば,リンパ球性心筋炎と診断する.

シスタチンC(GFRマーカー)

著者: 下条文武 ,   風間順一郎

ページ範囲:P.1119 - P.1121

はじめに
 糸球体濾過値(glomerular filtration rate;GFR)は腎機能を知るうえで最も重要な指標である.一般に,GFRの低下に伴って血清のクレアチニン値が上昇することはよく知られているが,いくつかの問題がある.まず,クレアチニンの定量がヤッヘ(Jaffé)法で行われているところも多いが,酵素法に比べてその精度が劣るという測定上の問題点がある.また,体内のクレアチニンは筋細胞より産生されるため,筋肉量の少ない老人や糖尿病の患者では腎機能低下の程度に比較して血清クレアチニン濃度が低値をとる.したがって,血清クレアチニン値からGFRを評価するには注意を要する.さらに,血清クレアチニン値がGFRを反映しない範囲が大きいことである.この範囲は,クレアチニン盲目領域(creatinine blind range)とも言われている.
 以上のように,血清クレアチニン値からGFRを推測するには多くの問題がある.これに対して,最近血清シスタチンC値は新しいGFRマーカーになることが注目されるようになった.

SMBGにおける測定技術上の問題点

著者: 中山年正

ページ範囲:P.1121 - P.1123

 SMBG(Self Monitoring Blood Glucose,自己血糖モニタリング)は,測定器具の性能向上により爆発的に普及しており,その検査件数は,今や検査室の測定件数の3倍とも5倍とも言われている.国産のSMBG測定器は,高い信頼性を得て,米国を中心に多量に輸出されている.病院でも,その簡便性のみならず,数mg/dlの再現性という著しい再現性から,日常的に内分泌科,腎臓科などの病棟で広く使用されている.
 このような状況に鑑み,ISO(International Organization for Standardization,国際標準化機構)は,SMBG測定器の製造者に対する国際規格の作成を検討している.すなわち,“ヒト糖尿病管理用体外血糖モニタリングシステムの性能基準の求め方1)”であり,1998年草案として委員の間に配布・検討された.文書は検討用のものであり,一般には入手できないが,わが国では,日立製作所の野村靖がエキスパートメンバーとして参画していたため,この情報は臨床化学会糖尿病関連専門委員会に伝えられ,重大事項として“自己血糖測定(SMBG)の標準化プロジェクト”(代表:山形大学富永真琴教授)の発足となった.その後の2年ほどの検討により,この草案(TC212-CD15197,以下TC212)は,ISOでの投票結果,小差で事実上保留となった.

今月の表紙

類デンプン小体

著者: 今井宣子

ページ範囲:P.1108 - P.1108

 症例:泌尿器科,70歳,男性.
 診断:前立腺肥大症.

けんさ質問箱

Q 術前検査としてのGFRとBGMの意義

著者: 鈴木洋通 ,   Y.T.

ページ範囲:P.1124 - P.1125

 当院では術前検査としてGFR(糸球体濾過量)を実施していますが,24時間蓄尿は患者さんにとって苦痛であり,特に高齢者の場合は難しい面もあります.できればGFRを廃止してBGM(β2-ミクログロブリン)測定に変更したいのですが,GFRとBGMとで違いがあるのでしょうか.

Q 電流知覚閾値測定の診療報酬点数

著者: 長谷川修 ,   H.T.

ページ範囲:P.1125 - P.1126

 1998年4月から区分番号D239-2の電流知覚閾値(一連)200点の項目が増えましたが,機材,手技などの具体的な内容についてご教示ください.知覚神経伝導速度(SCV)のS波,SEPにおける上肢刺激,Fz-C 3′4′s上のN20との関連などはどうなのでしょう.

検査じょうほう室 輸血:輸血検査と血液型の謎

ABO血液型と小腸性ALP

著者: 松下誠

ページ範囲:P.1114 - P.1115

はじめに
 血清中の小腸性アルカリ性ホスファターゼ(IAP)がABO血液型のBまたはO型で分泌型のヒトにより多く検出されることは,今から30年以上も前に報告されている.当初,IAPが血液型に依存する理由は,IAPがA型赤血球と結合するため速心分離後の血清中には存在しない,あるいはIAPの血中からのクリアランスがABO血液型によって異なることなどが考えられていた.しかし,1998年のわれわれの報告を契機に新たな局面を迎えている.
 以下にIAPと血液型との関連性について述べてみたい.

免疫:日常検査の中での新発見

ラテックス粒子の凝集?—TP抗体測定法

著者: 片川一之

ページ範囲:P.1116 - P.1117

はじめに
 現在では多くの測定法に免疫反応が用いられている.この反応は感度,特異性ともに優れているが,時として検体中に存在するさまざまな物質により,非特異反応の起こることが指摘されている1,2).梅毒検査における梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum;TP)に対する抗体検査は用手法である梅毒トレポネーマ感作血球凝集(Treponema pallidum hemagglutination;TPHA)法が主流であったが,近年,迅速で簡便な汎用自動分析装置を用いたラテックス免疫比濁法が普及してきた.われわれはラテックス免疫比濁法を用いたTP抗体測定について検討し報告3)してきたが,今回は非特異反応を中心に解説する.

海外だより

就職へのキーワード

著者: 椎名奈津子

ページ範囲:P.1082 - P.1083

 今回の海外リポートは,就職についてお話しします.現在の日本は臨床検査技師だけではなく,細胞検査士も就職難と言われており,自分が希望する職種や就職先を捜すのは困難です.アメリカでも,必ずしも自分の希望がかなえられるわけではありませんが,日本に比べれば多少恵まれているようです.私は幸運にも希望した施設に就職できましたが,そこに至るまでの経緯と友人の体験を交え,こちらでの就職先の選び方を紹介します.

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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