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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術3巻4号

1975年04月発行

雑誌目次

病気のはなし

白血病

著者: 小沼宗心 ,   大橋辰哉

ページ範囲:P.10 - P.16

 白血病は,白血球系統の腫瘍性増殖を来す病気で,近年非常に増えてきた悪性腫瘍のひとつである.日本の頻度を,死亡率の年次変化でみると,1947年には人口10万対死亡率は1.1であったが,1971年には,人口10万対死亡率は3.4となり,3倍以上に増加している.この傾向は,日本のみでなく,世界的な傾向である.
 性別では男がやや多く,年齢別では2つのピークがあり,0〜4歳の小児期と45歳以上の壮老年期に頻度が高い.

技術講座 生化学

血糖定量法

著者: 内田壱夫

ページ範囲:P.58 - P.64

現在,検査室で一般に利用されている定量法は原理的に表1のごとく,ブドウ糖のC1のアルデヒド基の還元性を利用する方法,糖の酸性下における縮合反応を利用する方法,酵素を用いる方法に大別される.具体的には,用手法では,大部分(約80%)が縮合反応を用いたo-TB法が採用され,自動分析法では,フローシステムにおいては還元法,ディスクリートシステムでは酵素法,もしくは縮合法にほぼ整理され,最近では,酸素電極法を原理としたグルコースアナライザーも普及しつつある
 本稿では,特に利用度の高い定量法の概要について,自動分析法を含めて解説したい.また,いずれの定量法を選択するにも,その方法の原理,特徴を十分認識して使用しなければならないので,各定最法の特徴,問題点を中心に述べる.したがって,テクニックの細部については参考文献を見ていただきたい.

血液

血球観察上の知識・1—血球観察までの諸準備

著者: 亀井喜恵子

ページ範囲:P.65 - P.69

 血液学的検査の中で形態学的検査ほど非科学的,非合理的で技師1人1人の主観が入り込みやすく,またそれが成績に大きく影響するものはない.
 しかし観察する条件をある程度,標準化することによって個々の差を幾分でも狭くすることは可能と思われる.

血清

CRP

著者: 上尾八郎

ページ範囲:P.70 - P.73

1.CRPとは
 CRPとはC反応性タンパク(C reactive protein)の略称である.1930年にTillettおよびFrancisが肺炎球菌の構成成分の研究中,その菌体成分中より Cpoly-saccharideを抽出し,これと反応して沈降物を生ずるタンパクを発見,C reactive proteinと名づけた.CRPのCとは,研究中3番目に発見したという意味で,アルファベットの第3番目の文字になぞらえてCと名づけられた.それゆえこのC多糖体は,肺炎球菌感染症患者血清との間に抗原抗体反応を起こすものと考えられ,もっぱら沈降反応が行われてきた.
 しかし,その後多くの研究者によってCRPは当初考えられていた肺炎球菌感染症患者血清中にみられる抗体ではなくて,一般に体内で活動性炎症を来している疾患——菌血症,化膿性炎症,リゥマチ熱などの溶連菌感染症,細菌性心内膜炎など,あるいは退行性病変(組織の破壊を来す疾患),心筋硬塞,各種臓器の悪性腫瘍などが進行しているごく初期に(12〜24時間のうちに)非特異的に患者血流中に出現し,C多糖体と反応して沈降物を生じ,正常人血清とは沈降物を生じないことが認められた.それゆえに,somatic polysaccharide,あるいはacute phase substanceなどとも呼ばれていた.

生理

シグナルとノイズ・13

著者: 石山陽事 ,   村崎義紀 ,   根岸勇

ページ範囲:P.74 - P.76

《サンプル1》
 1.解 答
 村崎 まず徐波成分が非常に多いという印象を受けます.果たしてこの徐波成分が全部脳波なのかちょっと疑問ですが,恐らく脳波による徐波が出現しているところへ別にアーティファクトが混入しているのではないかと思います.それはどれかというと,後頭部である周期をもって出現しているデルター帯域の波形でこれが左後頭の場合と右後頭の場合でまるっきり位相が逆転しています.普通,脳波の場合,単極誘導において左右の後頭部で位相が逆転することはまず考えられないので,恐らくこれは間違いなくアーティファクトであろうと想像できます.何に由来するものかですが,右の後側頭部に筋電図がある周期をもって入っている.これが後頭部のデルター帯域波と調和関係で出現しているので恐らく後頭部を周期的に動かすような動作があって,そのために入ってきたのではないかと思います.それから眼球の水平運動がある場合でも後頭で位相が逆転する場合があるんですが,その時には前側頭で著明に眼球の動きに一致したゆるやかな波が逆転して入ってきます.これにはそういう変化が見られないので,眼球運動ではなく後頭部を周期的に動かしたために入ってきた揺れではないかと思います.

一般

検体の取り扱い方

著者: 田中和雄

ページ範囲:P.77 - P.79

 一般検査室で取り扱う検査材料には,尿,糞便をはじめ,胃,十二指腸液,穿刺液など多種のものがあり,これらを用いて生化学的な定性試験,定量試験,形態学的な検査や微生物学的な検査などが行われている,また,尿検査については,PSP排泄試験やFishbergの濃縮試験,クリアランス試験などの負荷試験なども実施している所もある.一般検査に用いられるこれらの検体は,採取方法,保存法が正しく守られない限り,誤った成績を示すことが多く,疾患の診断や治療にも大きな影響を及ぼすことになる.従って,一般検査に用いる検査材料も正しい取り扱い方については熟知しておくことがきわめて大切である.

巻頭言

若い検査技師に望むことなど

著者: 藤田啓介

ページ範囲:P.5 - P.8

 最近,再び若い研究者や学生とともに実験室の中で過ごす時が,24時間の大半を占めるようになってきました.かねてから深い関心を寄せていたテーマに取り組んで,その実験に着手し,ついつい研究の迷路に深入りしかけた当初は,わたくしも,独断や偏見が,おのずから脳ミソに入り込むはずの年ですから,アナクロニズムの不安は当然あったのですが,それだけでなく,今までの生活様式を切り捨てて,新しい仕事に立ち向かう時のいつもの心理的な抵抗も,多分にあったことは確かです.しかし研究の場と時間が多少とも与えられ,研究施設をゼロから整備する過程で,自分がかつて使いなれた分析機器や,この10数年の研究の空白の時期に新しく開発された分子ふるい,TLC,高速液クロ,FID,ガスクロマス,クリーンベンチなどの目新しいものを,たまたま使ってみて,今日の研究手段が言葉では表現しえないほど画期的な進歩と変革を遂げていることを実感として知ったことは,新鮮な驚異でありました.

病人と病気と病院

法医学と検査

著者: 内藤道興

ページ範囲:P.17 - P.20

 法医学とは一口にいえば"法津上問題となる医学的事項について研究し応用する学問"であり,その対象は生体,死体,物体,現場,書類の5種類に分けることができ,応用の面からは司法上,行政上,立法上に3大別される.生体検査としては傷害,強姦などの事件の他,疾病,年齢,酩酊度の決定,精神鑑定,親子鑑定などがある.死体については外表検査(検屍)と解剖があり,死因,創傷,凶器,自他殺,死後経過時間,毒薬物,疾病などを明らかにする.現場では犯罪の立証に役割を演ずる資料の採取,保存にあたるが,法医学的資料は人体の一部またはそれから由来するあらゆるものが対象となる.木稿では法医学書の中で主として"物体検査"あるいは"証拠材料の検査"などの章で述べられている部分についてその概略を平易に解説したいと思う.

基礎から応用へ

相転移

著者: 戸川達男

ページ範囲:P.21 - P.24

 相転移というと難しいことのように思われるかもしれないが,氷の融解や水の蒸発のような身近な現象である.相(phase)というのは,たとえば水について考えると,化学的には同一のH2Oという物質が,温度や圧力の異なる条件下で,氷,水,水蒸気のように物理的に異なる性質をとることを表す概念で,水の場合3つの相があるという(正確には氷には物理的性質の異なる7種くらいの相があることが知られている).
 温度や圧力が変化して,物質の性質すなわち相が変化するのが相転移である.相転移の条件は,物質に固有のものであり,純粋な物質の転移点,たとえば氷の融解点,その沸点などは物理量(この場合温度)の基準値として用いることができる.また逆に,成分が未知の試料の転移点を測定して,成分についての情報を得る方法もある.このように,物質の転移は検査にも深い関連がある.

種と共生

著者: 大家裕

ページ範囲:P.25 - P.28

 我々はノミやシラミといった昆虫が,寄生虫という呼び方をされる生物のグループに属することを知っている.また,"ヒト回虫"が我々の消化管内に住む寄生虫であることを知らぬ人はないであろう.我々の祖先もまた,ずっと昔から寄生虫の存在について知っていたようである.紀元前1550年に書かれたエジプトの医書に,すでに回虫,条虫の感染,治療についての記載があるというし,旧約聖書にも寄生虫の由来についての宗教的な説明がなされている.もっとも,我々人間なり,あるいは動物なりの体内に,どうしてこういった寄生虫が存在するかについての科学的な説明ができるようになったのはそんなに古いことではなく,言葉としての表現法の問題だけであるにしても,"お腹に虫がわく"というような言い方は,最近までかなり一般的であったように思う.そして,我々が寄生虫という言葉から受ける印象は,虫卵検査を受けた経験とか,駆虫薬を飲まされた経験と交錯して,あまり快いものではないようである.
 しかしながら,寄生虫によって営まれる寄生生活を詳細に調べてゆくと,そこには,この地球上の生物あるいは生命現象について,普遍的な理解を持つうえでいとぐちになるような大切な,そしておもしろい現象が数多く見うけられる.それは,寄生ということが,この自然界に存在する様々な生物が互いに影響し合ういくつかの基本的な型の一つであるということからも当然のことと考えられる.

酵素の分布とその活性度の変化

著者: 降矢震

ページ範囲:P.29 - P.32

 現在日常行われている酵素検査の多くは一種の戸籍調べである.試料中に消長する酵素活性から,その由来する臓器の病変を推定する.火事の現場を見なくても,避難してくるのが看護婦ならば火元は病院だろうと想像できる.派手な身なりの若い女がぞろぞろ来ればキャバレーが焼けたらしいと思う.白衣を着た男だと見ただけでは判らない.そばに寄って消毒薬の臭がしたら病院らしく,魚の臭なら魚屋,強い香料なら床屋が火元かなということになる.血清アミラーゼの高値から膵炎を疑うのは前者であり,単純な測定でははっきりしないから電気泳動で分離しようというのは後者に当たる.血清コリンエステラーゼ活性から肝でのタンパク合成能をみようというような間接的なものもあるが,酵素検査の基礎知識の第一歩はそれぞれの酵素が生体内にどのように分布しているか,それがいかに変動するかを知ることであろう.

統計学的思考・1

著者: 土肥一郎

ページ範囲:P.33 - P.34

 数字で表現される定量的判断,明暗とか色彩あるいは快,不快とかのような定性的判断など,物の状態の捕らえ方にはいろいろあるが,これらの観察は必ず,それに基づいた差別の判定を目的としたものである.しかも観察にはその精密さに応じたレベルの誤差がつきものであり,これを考慮に入れて物を考えるくせをつけていないと,両極端の誤りを犯す.一つは,誤差につきまとわれる測定なら信用できないからやめようという考え,もう一つは磨きぬいた技術で測ったものは,実用上問題になるほどの誤りを含まないから,統計処理など必要とせず絶対の真理を与えるのだという考えである.観測の対象の性質および観測技術の精密さに応じて誤差の程度はいろいろであるが,誤差と比較してどの程度のひらきがあるかという考え方をすれば,以上のような敗北主義,または独善という2通りの誤まりを避けることができる.これから10回にわたり,表題のもとになるべく具体例について統計処理技術を適用しながら紹介を試みることにする.

知っておきたい検査機器

自動化学分析装置(フローシステム)

著者: 古川一郎

ページ範囲:P.35 - P.36

原理と構造
 比例秤量ポンプを用いてチューブを定速でしごき,試料,希釈液,試薬,空気などを吸い上げる.一連の細長いチューブの中を,絶え間なく希釈液や試薬類を流し,その流れの中に,一定間隔で,一定量の試料を加え,希釈,混合,必要に応じて除タンパク,加熱などを行った後,比色測定を行う.また一定間隔に,一定量の気泡を加えることにより,流動している液を分節し,液の混合を容易にするとともに,前後試料間の相互汚染を防いでいる.このように試料の採取から反応,比色測定までを,一連のチューブの中で,絶え間ない液の流れの中で行うことから,この原理に基づいた自動分析法をcontinuous flow system,略してフローシステムと呼んでいる.
 このフローシステムは,1957年,Skeggsによって開発され基本的には図1-Bに示すごとくサンプラー,比例秤量ポンプ,透析器,加熱槽,比色計,記録計の各部から構成されている.

最近の検査技術

腸内細菌科の簡易同定法

著者: 小栗豊子

ページ範囲:P.37 - P.42

 最近腸内細菌科を主とするグラム陰性杆菌の同定に必要な性状をセット化した簡易法が出現してきた(表1).これらの方法が現在の日常検査法に導入され得るか否かはなお異論があるが,この中の主な方法についてその使用法ならびに判定法を中心に紹介したい.

ひとこと

二三の希望

著者: 阿部正和

ページ範囲:P.44 - P.45

 "検査はだれがやっていると思いますか?" と患者さんに尋ねてみますと,"お医者さんでしょう"という答の返ってくる場合が多い.もちろん,以前に比べれば,臨床検査技師,あるいは衛生検査技師の存在は一般に認められるようにはなったが,今でもなお縁の下の力持ち的な存在としかみられないという傾向のあることを認めざるを得ない.しかし,考えてみるがよい.検査が近代医療に果たしている役割がどれくらい大きいかを.検査技師の立場をまず医師が認めると同時に,検査技師の方々一人一人が,大いに精進されて,その存在を一般の人に十分認めさせるように努力していただきたいものである.ここに,日ごろ考えていることの二三を述べて皆さん方のご参考に供したい.

検査の昔ばなし

中央検査室以前

著者: 緒方富雄

ページ範囲:P.46 - P.47

 1年あまり前,年でいうと昭和48年(1973)11月24日,わたしは北里大学で開かれた第20回日本臨床病理学会総会で"臨床病理学——その過去と将来"という題で記念講演をした.なぜ"記念講演"であったのかというと,次のような理由からである.日本臨床病理学会の前身である臨床病理懇談会が第1回の会合を開いたのが昭和26年(1951)11月20日で,この懇談会が発展して"日本臨床病理学会"と改称されたのがそれから2年後の昭和28年(1953)12月である.それは昭和48年からちょうど20年前になる.その第1回総会は翌昭和29年(1954)に入って開かれたが,上述の北里大学での総会はちょうど第20回にあたったわけである.この学会の発足とは少し食い違うが,第20回総会を迎えたということは,十分記念する価値があるというわけで,総会長斎藤正行教授が記念講演を企画し,それをわたしにするようにと命じたのである.
 わたしはこの記念講演にずいぶん力を注いだが,時間の制約があったので,言い足りないところが少なくなかった.それでこの講演を"臨床病理"(第22巻臨時号,359,1974)に掲載してもらう時に,かなり手を加えて整備した.しかし論旨を変えたわけでない.

マスターしよう基本操作

水銀の取り扱い

著者: 松本佶也

ページ範囲:P.49 - P.53

 蒸気や微粒子が人体を侵害する毒性を持つと言われるが,金属で流動性を持つなどの特性ゆえに,多量の水銀が臨床検査室でも使われている.多少にかかわらずにの水銀の検査室での取り扱いは,十分に留意されているだろうか.使用中飛び散った細粒は完全に回収されているだろうか.精製された水銀もある程度使えば血液,脂肪,試薬,塵芥などによって汚染される.
 この汚染された水銀の洗浄法としてLother Meyer法,Hamilton法やこれらの改良型の器具や装置もあるが,今回は筆者が日常行っている水銀の簡便な細粒回収法と汚染水銀の洗浄法を解説することとする.

学園だより

名古屋大学医学部附属臨床検査技師学校

ページ範囲:P.54 - P.55

学校長 牛島 宥
所在地 名古屋市昭和区鶴舞町65

クローズアップ

浅井正樹—名大病院検査部臨床化学

著者: 村井誓子

ページ範囲:P.56 - P.57

新しい機器を使いこなす力量を
 48年3月末,ディスクリート方式の日立400が入った.それまでは主にオートアナライザーが稼働していたので,項目を変換する際,測定法の違いや機種による測定値の差が問題となった,しかし今まで臨床側に報告していたデータの積み重ねは無視できない.名大病院では今までの値に合うようブランクと標準液の設定値を変えることによりこの問題を解決した.従来法との相関,精度などを含めて実際に動くまでに2か月かかった.その後も慣れない操作によるトラブルが続いた.他の検査は3か月ごとにローテーションがあるが,浅井さんは2年間動いていない.
 "ようやくトラブルが出尽くした感じがします.最近 になって機械のポイントがわかってきました.1年半 たった時トラブルの回数をパレート図にしてみまし た.それをもとに今は検査交代時の注意としていま す".

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医学用語集

著者: 山中學

ページ範囲:P.43 - P.43

121)荻野学説;Ogino theory
 1924年荻野により発表された説で,生理的な婦人の排卵期は,月経周期の長短に関係なく常に一定で,次回月経前12〜16日(14日±2日)の5日間であるという.この排卵期を避ける避妊法があり,一般には萩野式避妊法という名のほうが知られている.

検査室で必要な数表—自然対数

ページ範囲:P.48 - P.48

略語シリーズ

ページ範囲:P.79 - P.79

BAL British anti lewisite;解毒剤,Dimercaprol,2,3-Dimercapton-propanolのことで,SH基2個を持つヒ素,水銀などの解毒剤(筋肉内注射).
BBB bundle branch block;脚ブロック.心室中隔内刺激伝導障害で,心電図ではQRSの幅が広がる.

国家試験問題 解答と解説

ページ範囲:P.80 - P.83

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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